社会
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人間が、人間らしく生きる環境
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2022.04.28
1994年に米国で出版された、医師のための心得を収録した『ドクターズルール425─医師の心得集』[1]の、ルール173に、医薬品の多剤服用に関して、次のような記述があります。
4種類以上の薬を飲んでいる患者についての比較対照試験はこれまで行われたことはなく、3種類の薬を飲んでいる患者についての試験もほんのわずかしか行われていない。
4種類以上の薬を飲んでいる患者は、医学の知識を超えた領域にいるのである。
また、東大病院老年科の入院患者2,412名を対象とした、薬の併用による副作用の研究では次のように報告されています。
⒈ 飲む薬が1〜3種類の場合、副作用の発生頻度は7%
⒉ 4〜5種類の場合、約9%
⒊ 6〜7種類の場合、約13%
日本では2種類までの組み合わせについては、ある程度研究が進んでいますが、3種類以上の組み合わせになると、ほとんど研究がありません。
また、4種類以上の組み合わせにおいては皆無だと言われています。
つまり、『ドクターズルール』が言及する「医学の知識を超えた領域」とは、服用している患者の体に何が起こるか、判断も予測もつかないという意味なのです。
そして『ドクターズルール425─医師の心得集』には、医薬品に関して次のようなルールもあげられています。
18. 可能ならすべての薬を中止せよ。それが不可能ならば、できるだけ多くの薬を中止せよ。
20. 特定の臓器に特異性のある薬は存在しない。すべての薬の効力は全身に及ぶ。
172. あらゆる薬について、絶対に出ない症状というものはない。すべての薬について、どのようなことでも起こりうる。
174. 投与薬の数が増えれば、副作用の起こる可能性は、指数関数的に増える。
多剤服用に関する問題は、厚労省も看過できないと判断したのか、2018年2月に高齢者に適正な医薬品指針を有識者会議に示し、おおむね了承されています。
現代医学は薬物療法が主体で、製薬会社や病院などは、薬を処方しなければ利益が上がらないという仕組みの上に成り立っています。
病人がいなければ事業は衰退し、逆に病人が増えれば利益が増えるという二律背反のミスマッチな構造なのです。
世界の医薬品業界では、ビッグファーマと呼ばれる巨大製薬会社が売上を伸ばしています。
3年連続で売上高世界一となったスイスのロシュは、前年比8.1%増(公表通過ベース)の618億6900万ドル(約6兆7428億円)を売り上げました。
2位は517億5000万ドル(前年比3.5%減)の米ファイザー、3位は474億4500万ドル(6.0%増)のスイス・ノバルティス。以下、米メルク(468億4000万ドル、10.7%増)、英グラクソ・スミスクライン(431億200万ドル、9.5%増)と続き、8位までは前年と同じ顔ぶれとなっています。
また、シャイアー買収が通年で寄与した武田薬品工業は売り上げを大きく伸ばし、日本の製薬会社としては初めて世界トップ10入りを果たしています。
この状況から鑑みても、世界中で病人が増えていることがうかがえます。
ここで疑問に思うことは、巨額の研究費を投じて開発された医薬品の売上が伸びているのにも関わらず、病人は減っていないということです。
現在、日本には1万8000種類以上の医薬品が流通していると言われています。
どの製薬会社のどの薬を使ったら良いかなど、薬剤師でさえ把握しきれないのが実情なのです。
はたして、医薬品は病気を治しているのか?
健康な人を増やしているのか?
あなたは、どうお考えになりますか?