社会

Social

人間が、人間らしく生きる環境

「不食の人」森美智代さん

2022.07.23

 

森美智代(もりみちよ)さんは、「一日に青汁一杯だけ」の食生活・食べない人として、テレビや雑誌で多く紹介されています。

また医学的見地からの検査依頼も多く、理化学研究所(バイオリソースセンター微生物材料開発室室長)の辨野義巳(べんのよしみ)先生などの研究で、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

森さんは、「このような食生活を、望んでしたわけではありません。必要に迫られて、断食や少食にしているうちに、気がつくとそうなっていたのです」と、おっしゃっています。

森さんは、21歳で不治の病といわれる難病(特定疾患)の脊髄小脳変性症を発症し、神経内科の医師から「しだいに進行して寝たきりになるだろう。進行を食い止める治療法はない」と告げられたそうです。

脊髄小脳変性症は、『1リットルの涙』(幻冬舎)というノンフィクション闘病記の著者・木藤亜也さんと同じ病気です。

この物語は、女優の沢尻エリカさんが主演し、ドラマ化されたことで、多くの人が知ることになりました。

森さんはその後、断食指導の神様と称された甲田光雄医師のもとで、断食や食養生によってこの不治の病を克服されたのです。

森さんは、「キレイな腸」がいかに重要かということを、身をもって知る第一人者の一人なのです。

現在は大阪府八尾市で鍼灸院を開業し、三重県名張市では断食リトリート「あわあわ」を主宰しておられます。

また鍼灸治療のほか、講演などでも活躍されています。

本稿は、マイナス腸活の第一人者の森美智代さんが、これまでの体験や、日々の患者さんへの指導経験から、弊社のお客さまへのアドバイスを寄稿して頂いたものです。

森美智代さんは、断食などに関する著書も多く、関心のある方は是非講読してみてください。

 


プロフィール

森美智代 1962年生まれ。短大卒業後、養護教諭として大阪府で勤務中に難病の脊髄小脳変性症を発病。以来西式甲田健康法を実践し、難病を克服。その後、鍼灸学校に入り、鍼灸師の免許を取得。現在、大阪府八尾市で森鍼灸院を開業。1日約50キロカロリー青汁1杯とサプリメントだけの生活を20年近く続けている。著書に『食べること、やめました』、町田宗鳳氏との共著に『「ありがとう」をいうと超健康になる』『食べない人たち』『食べない人たち ビヨンド』秋山佳胤、山田鷹夫共著『おうち断食で病気は治る』(ともにマキノ出版刊)『「食べない」生き方』サンマーク出版刊 『新装版 断食の教科書』ヒカルランド刊『開運!龍体文字の奇跡』『書いて開運!龍体文字練習帳』マキノ出版

 


「大腸のおそうじ(=マイナス腸活)」の重要性について

森美智代

 

甲田先生のところでスイマグを飲みながら断食をしていると、あちこちからお腹がグルグル鳴る音が聞こえてきたものです。

それは空腹時に十二指腸からでるホルモンのモチリンの作用だそうです。

消化器の腸も消化液をだし蠕動運動をして栄養を吸収するだけではなく、内分泌ホルモンまで作って排出もしている。

すごいですね。

「宿便は万病のもと」と言われていますが、宿便のある所に「腸マヒ」があり、腸の動きが悪くなっています。

腸マヒがあるところは、東洋医学でいう「気」が少ないところであり、老廃物が溜まって汚れているところで、そこが、病気の原因と言われています。

 

腸には体中の免疫細胞の7割が集まっている

食べた物を消化吸収する腸には、「全身の免疫を司る」という重要な役割があることが分かってきました。

「腸内細菌」が、腸に集結する「免疫細胞」をコントロールしています。

腸は、食べ物だけでなく、病原菌やウイルスなどが常に入り込んできます。

体内で最も密接に“外界”と接するところです。

だからこそ腸には、病原菌やウイルスなどの外敵を撃退してくれる「免疫細胞」が大集結して、体中の免疫細胞のおよそ7割!大量の免疫細胞が、栄養や水分を吸収する腸の壁のすぐ内側に密集して、外敵の侵入に備えています。

 

その上、腸の中には、特別な研修室まであります。

それが、「パイエル板」と呼ばれる、小腸の壁の一部に存在する平らな部分です。

パイエル板の表面には、腸内を漂うさまざまな細菌やウイルス、食べ物のかけらなどの「異物」を、わざわざ腸の壁の内部(つまり体内)に引き入れるための“入り口”が用意されています。

そこから引き込んだ「異物」を、パイエル板の内側に密集する大量の免疫細胞たちに触れさせ、人体にとって有害で攻撃すべき敵の特徴を学習させているのです。

こうした腸での訓練を受けた免疫細胞たちは、腸で守りを固めるだけでなく、血液に乗って全身にも運ばれ、体の各所で病原菌やウイルスなど敵を見つけると攻撃します。

一見腸とは無関係に思えるインフルエンザや肺炎などに対する免疫力の高さも、腸での免疫細胞の訓練と密接に関係しています。

腸はまさに「全身の免疫本部」です。

体を守るよう腸でしっかり訓練されているはずの免疫細胞が「暴走」し、本来攻撃する必要のないものまで攻撃してしまうという異常、それが、さまざまな「アレルギー」や、免疫細胞が自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と呼ばれる病気です。

 

こうした免疫の暴走が招く病気の患者さんは「腸内細菌の異常」があることがわかってきました。

人間の腸内にいる腸内細菌はおよそ1000種類、100兆個以上とも言われています。

その中で、重症のアレルギーと、多発性硬化症、異なる2つの病気に共通して減少していた腸内細菌は、それが「クロストリジウム菌」という腸内細菌。

およそ100種類いると言われるクロストリジウム菌の中で、ある種類が少なくなっている、どうやら「免疫細胞の暴走」と深く関わっているらしいのです。

クロストリジウム菌の役割

これまで免疫細胞と言えば、外敵を攻撃するのが役目と思われていましたが、発見された免疫細胞(Tレグ)は、その逆。

クロストリジウム菌という腸内細菌は、腸の中の特別な免疫細胞(Tレグ)に、むしろ仲間の免疫細胞の過剰な攻撃を抑える役割を持つことがわかってきました。

その免疫細胞は、「Tレグ(制御性T細胞)」と名付けられています。

免疫細胞には、攻撃役とブレーキ役も存在していたのです。

このTレグの働きで、全身の各所で過剰に活性化し暴走している免疫細胞がなだめられ、アレルギーや自己免疫疾患が抑えられていることがわかってきました。

大事なTレグが、腸内細菌の一種であるクロストリジウム菌の働きによって、私たちの腸でつくり出されていることが、明らかになってきました。

 

クロストリジウム菌は、私たちの腸内の「食物繊維」をエサとして食べ、「酪酸」と呼ばれる物質を盛んに放出します。

この物質、実は腸に集結する免疫細胞に「落ちついて!」というメッセージを伝える役割を担っています。

クロストリジウム菌が出した酪酸が、腸の壁を通って、その内側にいる免疫細胞に受け取られると、Tレグへと変身するのです。

もし腸内でクロストリジウム菌が出す酪酸が少なくなると、Tレグも適正に生み出されなくなると考えられます。

腸内でクロストリジウム菌が明らかに少なくなっていた、あの重症のアレルギー患者さんや、多発性硬化症の患者さんは、腸内でTレグを生み出す働きが弱くなっている可能性が考えられます。

そのため日本人の腸内には、長い時の流れの中で、食物繊維を好んでエサにするクロストリジウム菌などの腸内細菌が多く住み着くようになったと考えられています。

日本人の腸内細菌は、食物繊維などを食べて「酪酸」など“免疫力をコントロールするような物質”が多くありました。(海藻を分解することが出来る腸内細菌などは、日本人の腸に特有のものとして知られています。)

 

このクロストリジウム菌について、私の腸内細菌を調べていただいたところ、大変多く存在していました。

皆さんが、私のような腸内細菌を持っていれば、アレルギーや自己免疫疾患に苦しまなくてもいいのではないかと思います。

この頃は、腸や腸内細菌の重要性が科学的にわかってきたので、発酵食品などがよいと取りざたされています。

味噌汁やぬか漬け、納豆、塩こうじ、甘酒、キムチ、ヨーグルトなど、健康に関するテレビや雑誌では沢山出ています。

ある患者さんが、私のところに来られて、昨日、失神して救急車で運ばれたと言うのです。

そして、脳とかを調べてもらってもどこも悪いところがなかったと言うことでした。

しかし、私はおなかを触ってパンパンだったので、これは、腸にガスが溜まって、それが脳に吸収されて、失神したのだなと思いました。

とっても料理好きで賢そうな主婦の方だったので、「毎日発酵食品を食べていませんか?」とお尋ねすると、「はい、健康にいいというので、ヨーグルト、納豆、キムチ、塩こうじなど毎食取るようにしています」ということでした。

それが腸にガスがたまって、頭がふらふらした原因だったのです。

そこで、「これから、お腹がすっきりするまで、ご飯を多くしておかずを少なく、昔のお弁当みたいに、野菜も果物も少しにして食べてください」と言ってアドバイスをしたのです。

日本人の腸内細菌は、食物繊維などを食べて「酪酸」など“免疫力をコントロールするような物質”を多く産生します。

しかし、体にいいといっても、取りすぎると、腸内で異常に発酵して、大変なことになるかもしれません。

この頃、頭がふらふらするという方がこられて、お腹がパンパンな人が多いのです。

 

健全な腸の働きをするためには、

少食をして空腹を味わって、

モチリンを出すようにすることと、

金魚運動や毛管運動、合掌合蹠運動、背腹運動をして、

1時間ぐらい歩いて、

スイマグを飲んで、

生水と柿茶を1日1.5リットルくらい飲むようにして、

朝食抜きの1日2食にして、

基本的に玄米・菜食で、

1日1杯の青汁を飲んで、

甘いもの、果物、コーヒー、小麦粉製品、アルコール、乳製品、もち米製品などを食べないようにしていれば、

むやみに腸のために発酵食品をとらなくても大丈夫です。

 

それに、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを持つ人には、発酵食品はやめてくださいというほどです。

それは、腸壁が発酵食品の刺激によって荒れて症状がかえってひどくなることがあるからです。

私のところで、アレルギーの方が来られると、玄米ばっかり食べてくださいといいます。

野菜の繊維も多すぎると腸を荒らしますし、動物性食品もアレルゲンになります。

甘いものも炎症をひどくします。

 

では、腸の粘膜に優しいのは何だというと、ご飯です。

ひどい人には、3週間も4週間も玄米ばっかり食べてください。

皮膚が治ってきたら、豆腐を足していきましょう。

それでよくなってきたら、薄い色の野菜を2倍に薄めてから飲みましょう。

体重が減ると、瞑眩反応が起こって皮膚がズルズルになるので、お腹いっぱい玄米を食べて、体重が減らないようにして、皮膚と腸粘膜が治ってきたら、そこから、宿便を取るための断食や生菜食をしましょうといっているくらいです。

断食中や減食中に出る宿便には、身体の脂肪が溶けて、分解されて、脂肪の中に封じ込められていた老廃物が溶け、それが全身に回って排出されるので、腸からは宿便になり、皮膚からは断食疹になり、子宮からおりものとなり、尿も異常なにおいがしたり、鼻水、目やに、耳くそ、体臭となってデトックスされるのです。

脂肪の中の毒までが出きらないと、本当にきれいな体にならないので、最後までやってほしいです。

今まで、飲んできた薬のにおいや、石鹸のにおい、化粧品のにおいが出てくるかもしれません。

腸の粘膜が完全によくなったら、抗原が入ってこないので、沢山あった抗体の数も減ってきます。

そうしたら、何を食べても発症しない完全に治った状態になります。

皮膚の症状が落ち着いてから、仕上げに生菜食を半年くらい実行されたアトピーの患者さんは、皮膚がピカピカ輝いて普通の人よりもきれいになっていきます。

最初の玄米ばっかりたべているころは、おかずやおやつがないので、1日4合くらい食べる人もいますが、そうでないと体重が減って、瞑眩反応が出て、思ったようになおらないからです。

こんなに食べてもいいのかなと思うみたいです。

玄米ばっかりで栄養は大丈夫かなと思われるかもしれませんが、1か月断食するわけではありませんし、玄米は白米より栄養があるので、何とかやっていけます。

つまみ食いするとやり直しで、振出しにもどります。

豆腐や青汁の時にひどくなったら、また前の段階に戻ります。

コメアレルギーの人は難しいかもしれませんね。

食べ物アレルギーでなくても、化学物質過敏症や、電磁波過敏症、日光、寒冷なども、免疫の病気なので、同じように考えています。

 

いかがでしたか?

甲田光雄先生の指導で実際に難病を克服したご本人だけに、経験と実践にもとづいた説得力がありますね。

発酵食品などのプレバイオティクスは、腸が健康で腸内環境が衛生的に保たれている人にのみ有効にはたらきます。

便秘症状が改善されないままに「メーカーの宣伝」を鵜呑みにすると、逆効果になるリスクが高いのです。

何かを口にする前に、大腸のお掃除を日々励行して「腸内の腐敗」を発生させないことが肝要です。

毎日「便やオナラの臭い(悪臭・腐敗臭は無いか?)」「便の色(黄色か黄色がかった黄褐色かどうか?)」をチェックする必要があります。

 

 


Footnote

※モチリン(Motilin)は、小腸Mo細胞から分泌されるペプチドホルモンである。モチリンは、胃腸の運動の生理的周期性運動亢進サイクルを増大させ、ペプシンの生産を刺激させる。

unshakeable lifeトップへ戻る