栄養

Nutrition

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ひとを養うもの 9.4 - ビタミンB₃によって回復が見込める症状

2025.05.30

アレルギー

 

ナイアシンは、ヒスタミンをマスト細胞という貯蔵庫から放出させる作用があります。

血中ヒスタミン濃度が低くなることは、アレルギー性ショックの際に大きな助けになると考えられています。

エドウィン・ボイル・ジュニア医学博士は、事前にナイアシンを投与しておいたモルモットがアナフィラキシーショックで死ななかったことを発見しました。(1)

食物アレルギーのある患者は、ナイアシンの高用量にも耐えることができるうえ、実際にそれだけの高用量を必要とすることもあります。

アレルギーの原因となる食品を食べていないときには、耐えられる用量も必要な用量も急激に減少します。

経験的に言えば、1日あたり12,000mg(12g)のナイアシンを必要とする人は、おそらく一つ以上の食品に対してアレルギー反応を示している可能性が高いと考えられます。

アンドリュー・ソウル博士もこれに同意しており、自身の経験として以下のように語っています。

チョコレートや人工着色料を含む食品を摂取したときは、1日何グラムという高用量のナイアシンでも平気になる。

だが、これらの食品を避けると、ナイアシンの必要量が急激に下がる。

重度のアナフィラキシー型アレルギー反応を持つ人には、ビタミンCとナイアシンの併用療法が効果的です。

ピーナッツアレルギーを持つある若者は、これまで10回も救急搬送されるほどの重篤な反応を起こしており、最後には首や喉が腫れて命に関わる状態にまで至りました。

その後、ホッファー博士のもとで、まず1日3回1000mgのビタミンCから始め、数日後に50mgのナイアシンを1日3回投与し始めました。

これは、血中に広がったアスコルビン酸(ビタミンC)が、ナイアシンによって放出されるヒスタミンを分解し、ヒスタミンによる全身の負荷を徐々に軽減するという狙いによるものでした。

ナイアシンの用量は徐々に増やされ、最終的には1日3回600mgまで引き上げられました。

これにより、その後は一度も救急搬送されることはなくなりました。

もちろん、彼はその後もピーナッツを避けるように指導されていました。

数年後、彼が飛行機に搭乗した際、客室乗務員がピーナッツを配っている場面に出くわしました。

心配はしていたものの、平静を保ち、何事もなくやり過ごすことができました。

この症例は、ビタミンによって守られた一例です。

この治療法は基本的に安全であり、他の患者にも応用できる可能性があります。

なお、メイヨークリニックは数十年前に、すべての頭痛のうち75%にナイアシンが効果を示したと報告しています。(2)

このことからも、ヒスタミンとの関連が示唆されます。

ホッファー博士たちも、ナイアシンによって劇的な回復を遂げた症例をいくつも見てきました。

最も印象的だったのは、30年間激しい頭痛に苦しんできたある男性のケースです。

1日3000mg(3g)のナイアシンを1カ月継続したところ、頭痛は完全に消失しました。

 

多発性硬化症(MS)

 

近年の研究によって、ビタミンB₃こそが多発性硬化症(MS)やその他の神経疾患の治療成功の鍵であることが裏付けられています。

ハーバード医学校の研究者は、次のように述べています。

ナイアシンアミドは脱髄(だつずい)した軸索の変性を防ぎ、行動上の不具合を改善する。(3)

これは非常に朗報ではありますが、まったく新しい話ではありません。

70年以上前、カナダの医師H・T・マウントは、多発性硬化症患者に対し、ビタミンB1(チアミン)を静脈注射で、肝臓抽出物(他のビタミンB群を含む)を筋肉注射で投与する治療を開始しました。

彼はこれらの患者を27年間にわたり追跡観察しました。(4)

また、40年前にはノースカロライナ州のフレデリック・ロバート・クレンナー医学博士が、ビタミンB₃とB1、その他のB群、ビタミンCやE、さらにマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの栄養素を用いて、多発性硬化症の進行を止め、回復に導く治療を行いました。(5)

マウント医師とクレンナー医師の両者は、臨床観察の結果、多発性硬化症や重症筋無力症、その他の神経学的異常の多くは、栄養不足に陥った神経細胞に起因していると確信していました。

彼らは、オーソモレキュラー医学で用いられる高用量の栄養素を患者に投与することで、その理論を検証し、数十年にわたって臨床の場で成果を挙げてきました。

その成功例の数々が、彼らの理論の正しさを証明していると言えます。

ビタミンB群(ナイアシンやチアミンを含む)は、神経細胞の健康維持に不可欠な存在です。

そして、一度神経細胞に病理的変化が起こってしまった場合には、その損傷を修復するために高用量のビタミンが必要になります。

 

ストレス

 

ナイアシンは、注目に値する抗ストレス因子とされています。

ストックホルムにあるカロリンスカ研究所の臨床ストレス研究部門の責任者、レナート・レビ医学博士は、興奮・恐怖・喜びといった感情によって、脂肪酸が血中に放出されることを発見しました。(6)

これはアドレナリンが脂肪の貯蔵部位に作用し、脂肪酸の遊離を促進することで起こる現象です。

しかし、事前にナイアシンを投与された被験者では、同じようなストレス刺激を受けても、血中脂肪酸の増加は見られませんでした。

この事実は、ビタミンB₃が心臓発作を起こした患者に対してどのように治療効果をもたらすのかを説明するうえで、重要な手がかりとなるかもしれません。

ホッファー博士たちは、このようなナイアシンの抗ストレス作用について、すでに30年以上前から観察してきました。

 

ビタミンB₃によって治療できるその他の症状

 

アルコール依存症

 

アルコール依存症の治療としてビタミンB₃の使用を最初に推進したのは、アルコホリック・アノニマス(AA)の創設者の一人であるビル・ウィルソンでした。

彼はその効果を自分自身で実感し、AAの仲間30人にも有効であることを観察しました。

彼の関心がきっかけとなり、アルコール依存症にナイアシンを用いる治療は急速に広まりました。

患者数千人を対象とした最も優れた研究は、ラッセル・スミス医師によって行われました。 (7)

 

うつ病

 

一部のうつ病に対しては、ビタミンB₃が適切な栄養摂取と組み合わせることで有効な補助となる場合があります。 (8)

 

老 化

 

ビタミンB₃、特にナイアシンは、老化の進行を遅らせるのに非常に効果的であると考えられていますが、それは総合的なプログラムの一構成要素にすぎません。(9)

 

紅斑性狼瘡(エリテマトーデス/LE)

 

『太陽はわたしの敵』の著者ヘンリエッタ・アラジエム氏は、どのようにして自分の紅斑性狼瘡の治療法を探し求めてきたかを記しています。

彼女はボストンで最も優れた医師から紅斑性狼瘡であると診断され、「治らない」と明言されました。

その後、ブルガリアに治療法を知る医師がいると聞き、最終的にその医師の診察を受けに行きました。

医師は彼女にナイアシンの投与を始め、以後、彼女は着実に寛解状態にあるとされています。

多くの紅斑性狼瘡の患者が、治療の一つとしてナイアシンを使用しています。

 

白斑症

 

白斑症は、口腔や咽頭にできる前ガン病変のことを指します。

スウェーデンでは、この疾患に対してビタミンB₃が標準治療として用いられ、ガンへの進行を防ぐ効果が示されています。 (10)


 

References

(1) Boyle. In “The Vitamin B3 Therapy: A Second Communication to A.A.’s Physicians.”

(2) Hoffer. A. Niacin Therapy in Psychiatry. Springfield, IL: Charles C. Thomas, 1962.

(3) Kaneko, S., J. Wang. M. Kaneko. et al. “Protecting Axonal Degeneration by Increasing Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Experimental Autoimmune Encephalomyelitis Models ’’ J Neurosci 26:38 (September 2006): 9794-9804.

(4) Mount, H.T. “Multiple Sclerosis and Other Demyelenating Diseases.” Can Med Assoc J 108 (1973): 1356-1358.

(5) Klenner, F.R. “Treating Multiple Sclerosis Nutritionally.” Cancer Control 72:3, 16-20. (Undated reprint.) Dr. Klenner’s megavitamin protocol is available online at: www.tldp.com/issue/ll_00/ klenner.htm.

(6) Carlson, L.A, L. Levi, and L Oro.”Plasmal Lipids and Urinary Excretion of Catecholamines in Man During Experimentally Induced Emotional Stress, and Their Modification by Nicotinic Acid.” Report of Laboratory for Clinical Stress and Research, Department of Medicine and Psychiatry’, Karolinska Sjukhuset, Stockholm, Sweden, 1967.

(7) Smith, Russell F. “A Five-year Field Trial of Massive Nicotinic Acid Therapy of Alcoholics in Michigan.” J Ortho Molecular Psych 3 (1974): 327-331.

(8) Ross. Harvey. Fighting Depression. New York: Larchmont Books, 1975.

(9) Hoffer, A. “Hong Kong Veterans Study.” J Ortho Molecular Psych 3 (1974): 34-36. Hoffer. A., and M. Walker. Nutrients to Age Without Senility. New Canaan. CT: Keats. 1980.

(10) Warburg, 0. The Prime Cause and Prevention of Cancer.” Lecture at a meeting of Nobel Laureates on June 30, 1967, at Lindau. Lake Constance. Berlin-Dahlem. (English edition by Burk, Dean, and Konrad Triltsch. Wurtzburg. Germany, 1967.)

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