人体
Human body
大自然の叡智の結晶・人体
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大自然の叡智の結晶・人体
2022.04.18
弊社のお客様相談窓口には「下剤を服用して排泄する際に、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)も一緒に流れ出てしまうのですか?」というご質問が多く寄せられます。
マイクロバイオームは、約1000種、100兆個もの夥しい数の共生細菌で構成されていて、私たちヒトの心身の美と健康に多大な影響をもつ「もう一つの臓器」と呼ばれています。
腸を棲家とするこれらのマイクロバイオームは、糖尿病やアレルギーなど様々な病気に関係するとされ、炎症性の腸疾患の患者は健康な人よりマイクロバイオームの種類が少ないとの研究もあります。
ですから、お客様が心配されるのももっともなことですね。
しかし問題ありません。
腸内細菌は下剤で流出してしまうほどヤワではありません。
2016年に行われた国立がん研究センターと東京工業大学の共同研究の結果、「腸管洗浄剤内服による洗浄によって、その前後の腸内細菌叢の変動はみられない」ことが明らかになっています。
国立がん研究センター研究所の谷内田真一ユニット長は、毎日新聞2016年7月8日の記事で以下のようにコメントしています。
腸内の粘膜に残っていた菌が増えて、元に戻ったと考えられる。
腸内環境は安定しているので、(洗浄などの)多少の負荷では変わらないのではないか。
ご安心ください!
たとえば嫌われ者のウェルシュ菌は、9分間で増殖します。
そのペースで行くと、1個の細菌が2日間で、宇宙にある陽子の数を超える子孫を生み出す計算になります。
ベルギーのルーヴァン・カトリック大学の生化学者でノーベル賞を受賞したクリスチャン・ド・デューヴは、以下のように言っています。
適当な栄養を与えられれば、細菌の細胞1個は、1日に280兆の個体を生み出す。
つまり、減ることより「増えることが問題」なのです。
母親の胎内にいるとき、ヒトに常在する細菌はいないと、考えられています。
しかし出産の過程とその直後に、人体は何兆個もの細菌に占拠されることになります。
興味深いことに、これまでのマウスを使った動物実験で、完全に腸内が無菌状態のマウスは、通常のマウスよりも長生きであることが報告されています。[1]
ヒトの腸内が無菌状態であることが健康体のデフォルト(初期設定)だとすれば、腸内細菌を操作して健康になるのではなく、健康体だからマイクロバイオームが多様性とバランスを保っている、ということになります。
微生物研究の世界的権威、ニューヨーク大学微生物学教授のマーティン・J・ブレイザーが指摘している通り、プロバイオティクスやプレバイオティクス、シンバイオティクス(乳酸を産生するバクテリアを増殖させる)の健康効果については懐疑的にならざるを得ないということです。
原因と結果を履き違えているようにみえます。
大腸内のマイクロバイオームが増大すると、通常マイクロバイオームがほとんどいない小腸に生着して過剰に繁殖してしまう「小腸内細菌増殖症」、つまりシーボ(SIBO・Small Intestinal Bacteria Overgrowth)という病気になってしまうのです。
SIBOに罹ると、頑固な下痢や便秘、腹痛、オナラ、その他お腹の違和感に悩まされることになります。
憂慮すべきは、この便秘や下痢に対しては下剤や整腸剤などの単純な処方では効果がないということです。
そしてさらに気掛かりなことは、近年この病気が激増しているということです。
西勝造の箴言を思い出してください。
長命を得んとするものは、
腸内を清くせよ。
何かを食べたり、飲んだりするのが「プラス腸活」ですが、腸を活性化するのが目的なら、腸活は「マイナス腸活」が原則です。
毎日の「内側からキレイ」が大切ですね。
近年では、洗浄で腸内をキレイにして体質改善や健康増進を図るという「腸内デトックス」も広まってきています。
Reference
1 n. Moran, “The evolution of aphid life cycles,”Annual Review of Entomology 37(1992):321-48.