人体
Human body
大自然の叡智の結晶・人体
Human body
大自然の叡智の結晶・人体
2023.07.07
ヒトの身体を動かすためにはエネルギーが必要ですが、このエネルギーはどうやって作られているのか?
考えたことはありますか?
ありませんよね⁉︎
そんな人は滅多に見かけません。
ということで、今回の投稿は、あなたの生涯でおそらく一度も訪れないであろう希少な機会をご提供したいと思います。
生物学と化学を足した、ちょっとお堅い話しですが、少しの時間お付き合いください。
物語は、地球の誕生から始まります…。
宇宙の誕生後、宇宙空間に太陽系、そして地球が誕生したのが今から約46億年前、その地球に最初の生命が出現するのは8億年後の今から約38億年前です。
最初の生物は、核膜はあるものの核を持たない「原核生物」です。
これらの生物は、海の中を漂う有機物を利用し、酸素を使わずに生息していたと考えられています。
その後約25億年前に光合成を行う原始光合成生物という藻類が登場します。
それまで地球上には酸素は存在しませんでしたが、そこに太陽光エネルギーで無機物である二酸化炭素と水から「ブドウ糖(グルコース)」などの有機物をつくり出し、酸素を放出するという光合成を行う真正細菌のシアノバクテリアが出現しました。
この痕跡が、今でもオーストラリのシャーク湾・ハメリンプールに見られる「ストロマトライト(Stromatolite)」です。
この地球上でもっとも成功した生物が、それまで無酸素状態だった地球の大気に大量の酸素分子を放出し、オゾン層が形成されて、生物にとって危険な紫外線を遮断。
そして、嫌気性生物の多くが絶滅し、酸素を利用して呼吸する微生物(α—プロテオバクテリア)が誕生したわけです。
現在、地球上の多くの生物は酸素を使って呼吸し、生きています。
酸素がなければ、わたしたちは数分で命を落とすことになります。
ところが、この原初の生命にとって酸素は、猛毒だったのです。
真核細胞の「葉緑体」や「ミトコンドリア」は、ある種の細菌が原始真核細胞に取り込まれて共生するようになって形成されたものです。
葉緑体は、光合成を行うシアノバクテリアが原始核生物と共生してできたもので、植物に存在する細胞内小器官です。
葉緑体は光合成が主要な機能ですが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の中心となっています。
余談ですが、今日では植物同士が化学物質を放出して、コミュニケーションしていることも究明されています。
不思議ですね⁈
一方、ミトコンドリアは酸素を用いて呼吸を行うα—プロテオバクテリアが原始真核細胞に共生してできたものです。
ミトコンドリアは酸素を使って細胞に必要なエネルギーを産生する重要な働きを担っています。
原始真核生物はシアノバクテリアやα—プロテオバクテリアを餌として捕食していたのですが、そのうちに寄生して細胞内小器官へと進化し、共生するようになったと考えられています。
もうこの段階で、わたしたちヒトは「スーパー・オーガニズム(複合生物)」ですね。
目に見えない微生物由来の小器官が、ヒトの身体を動かす発電所なのです。
ミトコンドリアや葉緑体が動物や植物の細胞に細胞内小器官として形成された後、地球上では生物が誕生と絶滅を繰り返しながら進化(分化)していきます。
約5億4000万年前には生物が爆発的に多様化し、現生生物の直接的な祖先が誕生しました。
これを「カンブリア爆発」と言います。
約2億5千100万年前には地球規模の激烈な環境変動により生物が大量絶滅、これをペルム紀・三畳紀絶滅と呼んでいます。
約6600万年前に起きた白亜紀・第三紀絶滅では、小惑星衝突を引き金とする環境の変化によって恐竜などが大量絶滅したと考えられています。
その後にやっと、哺乳類が進化し繁栄する時代が訪れたわけです。
このように、地球上の生物のほとんどは、酸素を使わない古代の生物から進化しました。
そのため、多くの生物は、酸素を使わないでエネルギーを産生できる代謝系を細胞内に持っているのです。
これは「解糖系」と呼ばれる生化学反応経路で、もっとも原始的な代謝系と考えられています。
生物は、細胞が活動するエネルギーとしてATPという物質を使います。
ATPはAdenosine Triphosphate(アデノシン三リン酸)の略です。
ATPは「アデニン」という物質に「リボース」という糖がついたアデノシンに、化学エネルギー物質のリン酸が3個結合したものです。
ATPは分子内に2個の高エネルギーリン酸結合を持ち、ATPがエネルギーとして使用されるとADP(アデノシン二リン酸)とAMP(アデノシン一リン酸)が増えます。
リン酸1分子を放出する過程でエネルギー産生がされるのです。
このようにリン酸分子が離れたり、結合することで、エネルギーの放出や貯蔵を行うことができるわけです。
ATPは生物が必要とする活動エネルギーを保存した「エネルギー通貨」のような分子で、エネルギーを要する生物体の反応過程には必ず使用されています。
細胞はグルコース(ブドウ糖)や脂肪酸に保存されているエネルギーをATP分子に捕獲し、筋肉の収縮や能動輸送や物質合成などの細胞の仕事に使っているのです。
こうしてヒトの体は運動することができるわけですが、このときにマグネシウムやカルシウムといったミネラルが重要になります。
すべての食物は、水分、炭水化物(糖質と食物繊維)、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった栄養素から成り立っています。
食物は唾液や胃腸のその他の「消化腺」から供給される消化酵素によって個々の栄養素に分解され、消化管から体内に吸収されて、体を動かすエネルギー源や、体を構成する成分の材料や、体の機能を調整する成分として働きます。
体を動かすエネルギーであるATPは、食物中の糖質や脂肪を燃焼させて生成しています。
米や小麦などの穀物にはデンプンという糖質が含まれていますが、これが消化管で消化されてグルコースになって吸収され、細胞内で水と二酸化炭素まで分解されてATPが産生されます。
脂肪もグリセロールと脂肪酸に分解され、脂肪酸が細胞内で分解されてATPが産生されるわけです。
では、グルコースも脂肪酸も不足したときは、どうなるのでしょうか?
この場合は、タンパク質が分化されてできるアミノ酸がエネルギー産生の経路に入ってエネルギー源となります。
もう少し詳しく説明すると、グルコースは細胞質の解糖系でピルビン酸になり、ミトコンドリアでアセチルCoAに変換されてTCA回路と電子伝達系の酸化的リン酸化によってATOが産生されます。
脂肪酸やアミノ酸もアセチルCoAやTCA回路の代謝系に入ってATP産生に利用されます。
なんだかよく分かりませんよね⁉︎
なんとなくこんな感じと、イメージしていただければいいと思います💦
しかし人間の体は、すごいですね!
骨格筋が収縮するときのエネルギー源はATPです。
ATPがADP(アデノシン二リン酸)とリン酸に分解されるときに発生するエネルギーが筋肉の収縮に使用されます。
この収縮エネルギーを産生するときに重要なのがカルシウムです。
ATPの貯蔵量は少なく、数秒程度で使い切ってしまうので、エネルギーを使ってADPをATPに再合成します。
ATP再合成の仕組みには「クレアチンリン酸系」、「解糖系」、「有酸素系」の3種類があります。
最高の運動強度でクレアチンリン酸系は約10秒間持続可能で、解糖系は1~2分程度持続できます。
この2つは無酸素でATPを再合成できるのです。
2分以上の運動には酸素を使ったミトコンドリアでのATP再合成が必要になります。
クレアチンリン酸はクレアチンにリン酸が結合した物質で、骨格筋のエネルギー貯蔵物質として働きます。
クレアチンキナーゼによってリン酸基が外され、ADPを無酸素的にATPに再合成します。
前述の通り、最高の運動強度で約10秒間持続可能で、〝100メートル競走〞では主にこの系統でエネルギーがつくられます。
解糖系は細胞質でグルコースからピルビン酸を経て乳酸に分解される過程でグルコース1分子あたり2分子のATPを産生します。
解糖系は酸素を使わず、最高の運動強度で持続時間は1~2分間程度で、1~2分程度の〝中距離走〞は主に解糖系でATPを産生します。
この際に産生される〝乳酸〞は、運動後の疼痛の原因となる疲労物質ですが、マグネシウムやクエン酸は、乳酸を減少させる働きがあります。
ですから、アスリートにとって最も重要な栄養素の一つなのです。
参考までに!
有酸素系は酸素を使ってミトコンドリアで長時間にわたってATPを産生します。
グルコースや脂肪酸などを分解してアセチルCoAが生成され、TCA回路と電子伝達系による酸化的リン酸化によってATPが産生されるのです。
そして、1分子のグルコースあたり32分子のATPが産生されます。
主として有酸素系から多くのエネルギーを取り出す運動が「有酸素運動」で、有酸素系以外のクレアチンリン酸系と解糖系からエネルギーを取り出す運動が「無酸素運動」ということになります。
いかがでしたか?
専門用語が多くて、よく分かりませんでしたか?
しかし、これがわたしたちの体を動かすエネルギー産生の仕組みなのです。
今回の投稿はちょっとお堅いお話しだったかもしれませんが、人体というのは、よくできていますよね!
忘れてはならないのは、人体は精密工学で作られた逸品ではないということです。
エネルギーをつくり出しているのは、機械ではありません。
それは「肉」なのです。
あなたの身体は、AIで動くロボットではありませんよね⁉︎
生物(生命)は大自然(Mother Nature)が生み出した産物です。
大自然は、宇宙を創り出し、恒星や惑星が誕生しました。
太陽系では、太陽を源とした惑星、地球が創りだされました。
宇宙の作用から微生物が誕生し、彼ら微生物が植物や動物が棲める環境を実現したわけです。
つまり、太陽系第3惑星The Earthを「奇跡の惑星」「生命の星」そして「Perfect Planet」にしたのは微生物なのです。
人間という生物も、大自然の産物です。
宗教、哲学、自然科学は、この大自然に近づこうとする、人間が生み出した思考です。
大自然の産物である人間が、自らを理解しようとする知的活動は誠に有意義なものです。
しかし、大自然の産物である人間が、人間自身を完全に理解できるのだろうか?
大自然の産物である生物を理解することは、それを創りだしたもの、つまり創造主(Mother Nature)にしかできないのではないか?
とも考えてしまいますよね⁉︎
ですからわたしたちは、〝自然に倣ったライフスタイル〞こそが大切だと考えているわけです。
〝人間の頭脳が、人間にわかるほど単純だったら何もわかるはずがない〞
ヨースタイン・ゴルデル(Jostein Gaarder)
ノルウェーの小説家・児童文学作家。
1991年にノルウェーで初出版された「哲学の歴史についての本」という副題がつけられた『ソフィーの世界』で知られる。
最後にもうひとつ、
あなたが生きていくうえで、もっとも重要なことは、
〝息をすること〞です!