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Health care
いのちまで人まかせにしないために
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いのちまで人まかせにしないために
2024.01.12
弊社のお客さまなら、「セロトニン」のことはよくご存知だと思います。
セロトニンには、さまざまな重要な働きがあります。
セロトニンはよく「ハッピーホルモン」とも呼ばれていますよね。
実はこれ、腸内でつくられるセロトニンではなくて、「脳内のセロトニン」のことなのです。
この「脳内セロトニン」は認知症、とくに「アルツハイマー病」と深い関係にあることがわかっています。
高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。
他人事とは言っていられない状況です。
ということで、今回は主に「脳内セロトニン」のお話しです。
本稿はVol.1と2の2回に分けて投稿いたします。
アルッハイマー病の根本原因は、「酸化ストレス・炎症体質」と「精神的ストレス」です。
精神的ストレスは、脳への血流を滞らせることがわかっています。
これを防ぐ方法のひとつが、「脳内セロトニンを増やす」ことです。
セロトニンは神経伝達物質のひとつで、腸粘膜に大部分が存在し、そのほか血液中の血小板に8%、脳内視床下部などの中枢神経系に2%ほどが存在します。
このわずか2%しかないのが「脳内セロトニン」なのです。
セロトニンには血管を収縮させる作用があるほか、痛みの調整、脳血管の収縮活動の調節、睡眠や覚醒といった生体リズム、体温、呼吸、情緒や気分、食欲、嘔吐、生殖、心臓などさまざまな重要機能と密接にかかわっています。
セロトニンが欠乏すると、これらの活動にも大きな支障をきたすことになります。
セロトニンは血液脳関門(血液中の物質が脳に入るのを制限する)を通過できないため、神経伝達物質として脳内で働くセロトニンと、血小板あるいは腸管に存在して消化管活動に直接かかわるセロトニンとは、生成のメカニズムや作用がまったく異なります。
ひとくちに「セロトニン」と言っても、脳内セロトニンとそれ以外とではまったく別々に作られ、まったく異なった役割を担っているのです。
当然ですがセロトニンは、血液脳関門を通過できませんから、脳内で使う分は、脳内で作らなければなりません。
脳内のセロトニン神経細胞は、脳の中心部(縫線核)にあり、その数は数万と決して多くはありません。
しかし、1個の神経細胞は幾万にも枝分かれして脳に広く分布し、あらゆる脳神経系と結合しているため、量が少ないにもかかわらず脳神経の伝達物質として脳の広い範囲に影響を与えて、人の精神や行動に重要な役割を果たすのです。
また、セロトニンは目覚めとともに活発化する「交感神経」にも作用し、目覚めてから活動的な行動をとるために、体を適度なスタンバイ状態にしてくれる働きもあります。
脳神経の伝達回路には、セロトニン神経以外にも、快感や陶酔感を増幅するドーパミン神経回路や、さまざまなストレスによって覚醒反応を引き起こすノルアドレナリン神経回路などがあり、セロトニン神経はこの2つの神経を抑制する働きがあります。
つまり興奮と不安状態を解消して、心の状態を中庸に保つわけです。
セロトニンの働きが弱くなると、不安やイライラが強くなってしまいます。
精神的ストレスに強くなるためには、脳内セロトニンが充分に働くようにしなければならないのです。
実はセロトニンを増加させようとすると、それを抑制しようとする力が働きます。
この働きを「オートレセプター」と呼んでいます。
したがって、セロトニンを高める何らかの方法を実践しても同時に反対の力が働くため、すぐには効果があらわれません。
セロトニン神経の活動レベルを高く維持(改善)するためには、オートレセプターを繰り返し刺激し続けることによって、セロトニン神経の活性を全体的に高めてやるしかないのです。
オートレセプターの変化には1〜2ヵ月を要しますから、気長に根気強く継続することが重要となります。
脳内セロトニンの動きを見ると、神経伝達物質として神経終末(シナプスと呼ばれる神経細胞から出た長い手の末端の部分)に放出されると、すべてが次に伝達されるわけではなくて、約8割が元の神経終末に再び取り込まれることがわかります。
つまり、再回収されるわけです。
脳内セロトニンはそもそも量が少ないことから、常に一定レベルの量を保つためのシステムがあるのです。
ところが、肉体疲労等で体に乳酸がたまるとセロトニンの合成が抑制されてしまいます。
しかも乳酸にはセロトニンの再回収を促進する働きがありますから、神経伝達に使用されるはずのセロトニンが余計に回収されて不足する事態を招くのです。
疲れて乳酸がたまると不安になったり、イライラしたり、気力が衰えたりするのはそのためなのです。
このようなストレス状態に陥ると、リラックス系の「副腎皮質ホルモン」が分泌されます。
副腎皮質ホルモンは、神経終末にあるセロトニンの再取り込み口を一時的に塞ぐ働きをします。
セロトニンの再回収を中断することで、より多くのセロトニンを伝達に使用しようとするわけです。
慢性的なストレス状態が続くと副腎皮質ホルモンの分泌も続くため、セロトニンの再取り込み口をずっと塞いでしまうこととなります。
セロトニンの合成量が変わらなければ、神経伝達物質として使用されるセロトニンはますます不足します。
するとさらにストレスを受けて副腎皮質ホルモンが分泌され、セロトニンがより不足するという悪循環に陥るのです。
そして最終的には、再取り込み口自体が消滅してしまいます。
副腎皮質ホルモンは、海馬の神経細胞を破壊する働きもあるため、こうした悪循環を断たない限り、アルツハイマー病の改善は実現しないのです。
集中力が落ちる、摂食障害を起こす、さらには糖尿病の原因ともなる「低体温症」や「肥満」にもセロトニンは関係しています。
そのメカニズムはこんな感じです。
一般的に、朝起きると筋肉や神経の働きを高めるために体温が高くなり、夜に向けて体温は上昇、就寝前にもっとも高くなります。
体温が低下を始めるのは就寝後です。
この変化をグラフ化すると、セロトニンの1日の分泌量変化とほぼ一致します。
縫線核(ほうせんかく)は、セロトニンの生成以外にも血液の温度センサーとしての働きがあります。
そのためセロトニンが少ない人は、血液の温度を感知しても体温を調整する温熱中枢に充分な剌激(指令)を与えられないため、なかなか体が温まらないのです。
つまりセロトニンが少ないと冷え性になりやすく、体の機能をいつまでも活性化できないということです。
片頭痛に悩んでいる人のほとんどが、同時に冷え性にも悩まされているのはこうした理由からなのです。
ちなみに、女性は男性より脳内セロトニンを合成する能力が約3分2と低いといわれています。
セロトニンの原料となる「トリプトファン」が欠乏すると、脳内セロトニンの合成は男性の4分の1にまで減少してしまうことも女性に冷え性が多い理由です。
次に肥満ですが、セロトニンが不足すると食後の満足感を得ることができなくなります。
したがって常に食欲旺盛な状態となり、食べることにブレーキが利かなくなるのです。
血糖のエネルギーヘの代謝も阻害されますから、肥満や糖尿病になりやすい。
逆に脳内のセロトニンが充分にあれば、食後に満足感や充実感を得られるので肥満は 解消していくことになります。
さらにセロトニンが増えることによって基礎代謝が上がります。
そのため脂肪を効率よく燃焼させることもできるようになるのです。
一見すると痩せているように見えても、セロトニンが不足していると内臓脂肪がたっぷりついてしまっている場合があります。
痩せ型なのに間食が我慢できない、内臓脂肪率が高い、高脂血症や高コレステロール血症だという人は、もしかするとセロトニン不足が原因かもしれないので気をつけてください。
また、姿勢の悪い人や正しい姿勢を続けられない人も、脊髄を通って背中や背筋を刺激するセロトニンが不足している可能性があります。
さらにセロトニンには、消化管の蠕動運動などを活発化する働きもあります。
したがってセロトニンが不足している人ほど、便秘になりやすいのです。
次回のVol.2では、以下のコンテンツをご紹介します。
脳内セロトニンはどうしたら増やせるのか?
● セロトニン神経を剌激する
脳内セロトニンはどうしたら増やせるのか?
● 食べ物から摂取する
セロトニンに不利な競合関係とは?
脳内セロトニンを増やす特効薬とは?
脳内セロトニンを増やすための食事とは?