健康

Health care

いのちまで人まかせにしないために

低インスリンダイエットや糖質制限は食事療法の救世主なのか⁈ Vol.2

2024.01.05

能登半島地震で被災された皆様へ

1月1日 16時10分ごろ発生した地震によって被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

皆様の安全と被災地の一日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。

 


善玉菌が合成する「短鎖脂肪酸」が糖尿病を改善する

 

善玉菌は、消化管で消化できなかった食物繊維やオリゴ糖などの未消化糖質をエサとして、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」 などの短鎖脂肪酸を合成します。

※脂肪酸とは、油脂を構成する成分のひとつで、数個から数十個の炭素が鎖のように繋がった構造をしています。

そのうち炭素の数が6個以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、酢酸、プロピオン酸、酪酸などが含まれます。

短鎖脂肪酸は、ヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が発酵することにより生成されます。

生成された短鎖脂肪酸の大部分は大腸粘膜組織から吸収され、上皮細胞の増殖や粘液の分泌、水やミネラルの吸収のためのエネルギー源として利用されます。

また、一部は血流に乗って全身に運ばれ、肝臓や筋肉、腎臓などの組織でエネルギー源や脂肪を合成する材料として利用されます。

その他にも短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にすることで有害な菌の増殖を抑制する、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、ヒトの免疫反応を制御する、などさまざまな機能があることが知られています。

こうして作られた酢酸の半分は全身のエネルギーとして利用され、残り半分とプロピオン酸は肝臓でエネルギー源に、そのほかは脂肪合成に使われます。

また、酪酸は吸収されるとすぐに腸管壁細胞のエネルギー源として利用されることから、腸細胞の新陳代謝を促し、ガン細胞の増殖を抑制するといった働きがあります。

そして、大腸善玉菌が生成するこれらの短鎖脂肪酸の一部は、腸内細菌の増殖エネルギーにも利用されます。

増殖した腸内細菌は、アンモニアやアミン類などの「有害物質」を取り込んで自身の細胞膜のタンパク源とするのです。

善玉菌が腸内細菌を増やし、腸内細菌は悪玉菌が生成した有毒物質を取り去るのですから、結果的に善玉菌が有害物質の除去に一役買っていることになります。

頼もしいですね!

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なお、難消化性糖質である「食物繊維」や「オリゴ糖」は血糖を上げることなく、大腸で分解・発酵され、全身および腸管の直接的な栄養素となりますから、糖尿病の食事としてもっとも適した成分だといえるでしょう。

また、短鎖脂肪酸は適度に腸管内のpHを下げ、病原菌(感染症など)や悪玉菌の増殖を防ぎ、有毒物質の産生および吸収を抑制します。

さらに消化管粘膜の血流量を増やして粘膜への酸素供給量を増やすとともに、カルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラル類や、ビオチン、葉酸などのビタミン類の吸収も促進してくれます。

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このほか、短鎖脂肪酸には腸管壁上皮細胞の増殖や分化を調整する働きもあります。

その働きは【酪酸➡︎プロピオン酸➡︎酢酸】の順に強く、細胞膜表面タンパクの変質を抑制し、粘膜についた傷を修復するとされています。

また、腸の蠕動運動にも影響を与え、空腸の蠕動運動では【酢酸➡︎プロピオン酸➡︎酪酸】の順に強く、遠位結腸(大腸の一部)では酪酸とプロピオン酸が強い収縮を起こします。

このように、腸内細菌は短鎖脂肪酸の合成を通して腸上皮細胞の分化・増殖や嬬動運動をコントロールしているのです。

これ以外にも、すい臓からのすい液や、すい酵素の分泌量をコントロールしたり、ドーパミン神経の活性を促進したりするなど、わたしたちの体には短鎖脂肪酸にまつわる仕組みが備わっています。

「糖質制限食」は、それらを根こそぎ変えてしまうのです。

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ビオチン療法と腸内細菌との関係

 

善玉菌はビタミンKや水溶性のビタミンB群/B1・B2・B6・B3(ニコチン酸)・B5(パントテン酸)・B12・B9(葉酸)・B7(ビオチン)等を合成します。

これらは健全な腸内細菌である限り、不足することのないビタミン類といわれています。

しかし、「糖質制限食」のような〝タンパク質や脂質に偏った食事〞によって腸内細菌の健全性が破壊されると、これらのビタミン類にも不足が生じることになります。

通常、腸内常在菌(マイクロバイオーム)の「菌交代症」(構成変化)は、重病や過激な精神的ストレス(腸の虚血による)、免疫力の低下、抗生物質の服薬、抗生物質を使用した肉類などの摂取などによって生じます。

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それ以外にも、たとえば普段は魚肉類の摂取が少ないのに、長期間漁船に乗って魚中心の食事を摂ることになったとか、欧米に赴任して肉類・乳製品の多い食生活に変わったなど、「食生活の大きな変化」が原因となる場合もあります。

菌交代症を起こすと厄介なことに、元の健全な状態に戻ることは一生ありません。

特にビオチン産生菌が劣勢になり、ビオチンをエサとする悪玉菌が増殖してしまったときには困りもので、糖尿病や乾癬、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などの誘因となります。

※掌蹠膿疱症とは、手のひらや足のうらに、うみをもった小さな水ぶくれ(膿疱)がくり返しできる病気です。膿疱の中には細菌やウイルスなどの病原体は入っていないため(無菌性膿疱)、直接触れても人に感染することはありません。

一般的に、ビオチンは多くの食べ物に含まれていることや、腸内細菌で合成されることから、日本では長いあいだ、不足することのないビタミンとして扱われてきました。

しかし、「ビオチン療法」という糖尿病の治療法があるように、糖尿病患者にとっては不足しやすく、非常に重要なビタミンなのです。

「糖質制限食」のような難消化性糖質の少ない食事を続けると、プロピオン酸産生菌の活性低下により、充分な量の「リポフラビン」(ビタミンB2)やビタミンB12が確保できなくなります。

近年、ビタミンB12や葉酸(B9)は、ガンの特効薬としても有望視されていますから、ここでもガンのリスクが高まると考えられます。

ちなみに、腸内細菌の劣悪化によって善玉菌がニコチン酸(ナイアシン、ビタミンB3)の産生を充分に行わなくなると、脳内のセロトニン(神経伝達物質)の合成量も減少することになります。

その結果、「切れやすくなる」とともに「ストレスが溜まりやすい体質」となり、片頭痛やパニック障害などの神経系の障害アルツハイマー病などの誘因ともなります。

あなたのまわりで「糖質制限食」を実践している人にはイライラし、切れやすい人が多いのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

これに「マグネシウム欠乏」が加わると、事態はさらに悪化します。

糖質制限食やマグネシウム欠乏は、人格まで変えてしまう恐れがあるのです。

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善玉菌の抗ガン作用と抗酸化作用

 

腸内細菌は「第二のゲノム」とも呼ばれ、重要な働きをしています。

大事なことですから、もう少し腸内細菌のお話しをつづけます。

善玉菌には、「ニトロソアミン」や「トリプP1」(焼き魚などの焦げの成分)など、発ガン物質を分解し無害化する働きがあります。

焼肉や焼き魚を食べるときに、焦げをきれいに取り除いて食べるなんて味気ないですが、焦げにはトリプP1やヘテロサイクリックアミン(乳、大腸、前立腺のような器官に腫瘍をもたらす)が含まれているのは事実です。

これらの発ガン物質を完全に除去するのは大変です。

でも大丈夫です、腸内細菌が代わりに処理してくれます。

通常の食事から摂取される程度の焦げであれば、すぐに発ガン性と結びつくといった報告はありませんが、これらに加えてタンパク質、脂肪、食塩の摂り過ぎが、乳ガンや大腸ガンなどを促進させると考えられています。

善玉菌には「抗ガン作用」や「抗酸化作用」に関して次のような働きがあります。

● ニトロソアミンという発ガン物質は、ニトロレダクターゼという酵素によって第二級アミンと亜硝酸塩から合成されます。

● 善玉菌はこの酵素の活性を阻害することにより、ニトロソアミンの産生を抑制します。

● 免疫系で重要な役割を担う「マクロファージ」の活性化を促進するとともに、リンパ 球の分裂増殖を促進してさまざまな感染症や細胞のガン化を防ぎます。

● 細胞を傷つけ、生活習慣病や老化の原因となる過酸化脂質を消化管内で減少させます。

● 赤血球の分解物である「ビリルビン」が胆汁の一部として十二指腸に排出されると、 大腸善玉菌によりウロビリノーゲンという抗酸化物質に代謝・再吸収されます(ウロビリノーゲンはビタミンE、ビリルビン、βカロテンなどの抗酸化物質よりも強い抗酸化作用がある)。

● 免疫系の影響として、ビフィズス菌(善玉菌)の増大は、消化管の局所免疫を活性化し、免疫グロブリンIgAの産生を増強します。

善玉菌は腸内を酸性化し、病原菌による感染や細菌による下痢などを予防します(善玉菌のバリア効果)。

善玉菌がいなければ、有害なイーストやカンジダなどの真菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌などの細菌に容易に感染しやすくなるのです。

 

食事をしなくても悪玉菌はエサに困らない⁈

 

大腸悪玉菌は毒性や発ガン性を発揮し、多臓器不全、敗血症、大腸ガン、炎症性腸疾患(IBD)などにかかわっています。

とはいえ、まったく不要なものではなく、多過ぎても少な過ぎても有害となります。

なぜなら、善玉菌は悪玉菌が生成するアンモニアやアミン類などのタンパク源がないと自身の細胞を作ることができないからです。

つまり、バランスが大事なのです。

大腸善玉菌のエサは、食事由来の難消化性糖質です。

一方、悪玉菌の場合は食事由来の未消化タンパク質に加え、消化酵素や脱落した消化管上皮細胞、唾液、消化液、腸液に含まれる尿素などをエサとします。

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この中でわたしたちにコントロールできるのは、食事由来のタンパク質だけです。

それ以外のものは常に体にあって、悪玉菌に供給されています。

一般的に動物性タンパク質は、消化吸収率が比較的高いという特徴があります。

しかし、脂質や食物繊維、消化の悪いタンパク質などを一緒に摂ったり過食したりすれば、大腸に到達する未消化タンパク質の量が増えます。

特に消化の悪いタンパク質としては「牛乳」、プロリンを多く含むコラーゲンやゼラチン、乾燥・燻製・焦げなど変質した魚肉類(ハム、ソーセージなどの加工肉)、魚卵の外皮、脂質の多い肉類(ソーセージ、霜降り肉など)、脂質に含まれるタンパク質(脂身の肉)などがあります。

「糖質制限食」は、動物性タンパク質の摂取量を多くして糖質を制限することから、大腸悪玉菌を増長させるとともに、腸内細菌(日和見菌や善玉菌など)の増殖に必要な栄養素(未消化糖質)の供給を遮断してしまいます。

その結果、腸内細菌量は激減することとなり、悪玉菌が生成する有毒物質への暴露が増えます。

また、糞便量は少なくなりますが、有害な糞便(酸性腐敗便)の滞留時間が長くなります。

さらに、腸内細菌の数や種類が少なくなると病原菌の増殖を招き、炭水化物の発酵や胆汁酸の代謝ができなくなり、病的な体質(アシドーシス/酸化ストレス。炎症体質)はますます悪化することになります。

糖質(難消化性糖質)を摂ることによって悪玉菌を減少させれば、インドールやスカトール、フェノール、硫化物などの腐敗産物の産生量が少なくなり、悪臭が改善されるとともに、ガンや多臓器不全などの疾病を回避できる可能性が高まるのです。

「糖質制限食」が糖尿病にとって唯一無二の食事法ならまだしも、健全に改善できる食事法はほかにもあります。

それでもまだ、あなたは「糖質制限食」をつづけますか?

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ところで、『毎日新聞』の電子版に〝便秘疑われる小学生は4人に1人・NPO調査「大人が気付いて」〞という記事が掲載されていました。(2023.12.28)

記事によると、

NPO法人「日本トイレ研究所」(東京都港区)は小中学生の排便記録の調査結果を公表した。

便秘が疑われる小学生は全体の26.3%に上り、同法人は「子どもの便秘は放っておくと悪化することもある。大人がはやめに気付いてケアできる環境をつくってほしい」と呼びかけている。(中略)

排便外来がある吉川小児科(東京都世田谷区)の中野美和子医師は調査結果にコメントを寄せ、「多く見積もると、20%以上の児童は生活習慣の調整や薬剤治療などの介入が必要な便秘症の可能性が高い。小中学生は治療した方がよい便秘でも、よほど強い症状がない限り、自ら便秘を訴えない。排便記録を取り、家族内で話し合いをしてほしい」とした。

Cute little boy in restroom. Toddler child trainig use toilet. Hygiene for little child

世界的に見て「ヘルスケア・リテラシー」(健康に関する知識と能力を活用する力)が高い人は、ごく僅かと言っていいと思います。

人生を楽しむ上で、最も重要な知識・習慣であるにも関わらず、ほんの数パーセントの限られた人しか、この能力を身につけていません。

残念ながら学校では教えてくれませんし、頼みの親にもその知識や習慣がなければ、子どもは誰からもこの「最も重要な教科」を学ぶことは無いのです。

子どもの将来を気にかけない親がいるでしょうか?

ヘルスケア・リテラシーの中心にあるのが「排泄」です。

是非、あなたが教師となって、子どもたちに授けてあげてください。

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