健康

Health care

いのちまで人まかせにしないために

『便秘 LES CONSTIPATIONS』Vol.5

2022.09.03

※ 『便秘 LES CONSTIPATIONS』西 勝造 著より抜粋

乳糜(にゆうび:脂肪あるいは遊離脂肪酸が乳化しリンパに混ざった乳白色の体液)の 細菌感染

大腸内における物質の過度停滞は、単に機械的効果を与うるにすぎないもののようである。

しかし、後には大腸内の含有物に、有害な感染細菌が繁殖し、種々なる程度の炎症性変化が起こる。

このような病毒感染は、腸麻痺の昂進する場合に起こり、体の他の部分における第二次的感染と同じような続発的過程をとるのである。

腸麻痺の場合においては乳糜のバクテリア感染が起こり、これは体内のあらゆる組織の食物供給ならびに組織変化による産物の排泄に対する、これらの組織の関係を変化させる。

麻痺の場合につき、マッチ(Mutch)  氏は、結腸截除手術中種々の水準位の小腸含有物から抽出される標本に基づいて次のように立証した。

すなわち、桿菌乳糜の中には大腸菌および他の細菌が豊富に見出され、それは麻痺の程度いかんによって、その度合と水準位を異にするものであると。

マッチ氏はさらに明示して述べるところによれば、局処的停滞は、腸内における細菌の成育を助成する第一次的能因であり、胃腸管の上方部分における食物、ことに炭水化物の同化不全は、その第二次的能因である、と。 

Liver, pancreas, gallbladder and spleen detailed drawing on a white background with description

 

肝臓および膵臓の変化

腸麻痺の場合においては、肝臓細胞は、三つの明確な源泉から襲撃を受ける。

すなわち先ず第一に肝臓は、門静脈から運ばれてくる毒素または他の細菌を処理しなければならないが、これらの細菌は、麻痺した腸、すなわち殺菌力を失って、しかも多数の猛毒性細菌を含める腸から吸収されて、門静脈にとり入れられたものである。

肝細胞はまた、細かな導管網叢によって囲繞(周りを取り囲まれている)されているが、これらの導管の含有物は、総胆管に沿って侵入する細菌によって感染を受けやすい。

また肝細胞は門動脈によって養われているが、門動脈は、肝細胞の排泄または化成し得なかった毒物を含める血液を運んでくることがある。

 

初期の腸麻痺においては、肝臓は異常に大きくなっているように思われるが、しかし後には、正常よりも明らかに小さくなるのである。

 

労働者の骨格が、その環境に適応するために、あらゆる変化を起こして、その結果、その人の生命が短縮されると同じように、胃腸管内の変化に伴い、かつ、これに所依して起こる変化は、結局生命を短縮する傾向がある。

これらの 器官内における、こうした変化は、疾患としての部類に入るものである。

肝臓は、身体の栄養供給に対する関係が変ることによって、幾多の状態を現わすことは明らかである。

細菌が胆嚢に及ぶと、胆石を生じ、さらに胆石によって幾多の併発症を起こすこともあれば、あるいは種々なる程度の胆嚢炎症をみるに至ることもある。

 

膵臓は、麻痺の昂進する場合には、極めて明確な変化を受けるものである。

このような変化は思うに主として炎症に基因するものであり、十二指腸から膵管に沿って病毒が感染してゆくために起こるものといえよう。

後に、膵臓の傷害された組織内に、癌腫を生ずることがある。

同じような病毒惑染過程は、膵臓の急性炎症を起こすこともある。

侵入する細菌は、また、結石形成の核心を成し、そして結石が所在していると、幾多の重症性併発症が起こる。

マッチおよびジョルダン両氏の立証するところによれば、昂進する慢性腸麻痺はしばしば糖尿病の場合に見ることが多いという。

肝臓と膵臓とは、いずれも不純な血液の供給を受けるので一般的に機能が低下し、各自の導管を通して、病毒惑染小腸と直接に連絡を保つような不利に陥るのである。

 

Human kidney cross section on scientific background. 3d illustration

 

腎臓の変化

排泄器官の中で、肝臓に次いで最も多くの張圧をこうむるものは腎臓である。

すなわち腎臓に対しては、異常な毒素や細菌のみならず過多な副産物をも排泄するための張圧が、加わってくるからである。

腎臓の受ける変化は、極めて多種多様であって、あるものは緩徐たる過程であるため、 その進展が、ほとんど認知されないものもあれば、あるいはまた、はなはだ急性のものもある。

その一例としてはプライト氏病があるが、これは乳漿を冒す細菌の性質いかんによって、おそらく種々様々である。

腎臓が、細菌を尿道内に排泄する場合、それが疼痛を起こさずに尿道から放出されるので、細菌の所在は少しも知られないことがある。

それは、大腸菌の場合において、しばしばみるところである。

したがって他の場合においては、このような細菌が腎臓から排泄される際、激烈な症候を起こして、続けざまに強直が現われ、肉組織が迅速に失われて、極端な虚脱に陥ることになる。

極めて急性の場合においては、腎臓の表面に、小さな膿瘍が散在していることがある。かつて、私は、このような腎臓の手術を行ない、多数の膿瘍を切開して腎臓にガーゼを詰め、患者の生命を危くする病毒感染過程を阻止したことがあった。

充分に小腸の含有物を殺菌し得るような手術を行なった後には、他の器官や組織と同じく、腎臓について見出される軽快過程もまた、極めて迅速かつ顕著なのである。

 

 

生殖器官および内分泌腺の変化

腸麻痺の昂進する場合においては、卵巣は常に痩瘠(そうせき)し陥縮している(もっとも卵巣が後天的癒着を蒙って、漸進的に嚢腫性となって行く場合は別であるが)。

子宮もまた、はなはだ小さくて、麻痺の末期に至ると、分娩したことのある婦人でさえも、その子宮が幼女性のものとなることがある。

中毒性婦人の場合において、自家中毒状態を最も顕著に証拠立てるものは、性欲の喪失であろう。

これはまた、両性の正常関係に対する不快感に代わることも少なくない。

これと同じことは男子についてもいえるが、しかし、その程度は婦人ほど著しくはない。

睾丸は小さく、かつ柔かくなり、正常な睾丸惑覚が、はなはだしく損われることになる。このような変質性変化から起こる併発症こそは、主として、離婚法廷の存在を必要とする原因ということができるであろう。

 

甲状腺は、生殖機能(ことに女子の場合において)と密接な関係をもつ器官であって、女子の甲状腺の大きさに差異があるのは、男子よりも女子において、圧倒的な性的影響が与えられることを確証するものといえよう。

腸麻痺の場合においては、甲状腺は最初拡大するが、後には、はなはだしく陥縮し、指でこれを触知することができぬようになることがある。

 

麻痺が甲状腺に対して与える影響より類推していえば、脳下垂体および副腎の組織に対してはなはだしく毒物に汚染した血液が供給されて、為にその構造が傷害をこうむり、  かつその機能が漸次奪われるような場合には、これらの器官もまた、甲状腺と同じように、これに対応して慟くものといえよう。

副腎の場合においては、これは、皮膚が顕著な色素、ことに薄黒い色素を現出することによって、それと知られる。

麻痺が昂進するとアディソン氏病 (Adison’s diseaseイギリスの内科医トーマス・アディソンが1855年に発見した病気で、筋肉がゆるんで無力になり、念に体重が減少し、生命を失う)のような明確な症状が現われるが、しかしこれらの症状は、結腸截除手術を行なうと消失してしまうのである。

この点よりみれば、副腎のこうむる傷害は、修復し得ざるものではないことが知られる。

不幸にも、副腎および脳下垂体の機能に対するわれわれの知識は極めて不完全であって、従って、麻痺の結果として、その構造および機能に加えられる結果については、あまり独断的な説を立てることはできないのである。

Computer Screen in Hospital Radiology Room:  Adult Woman Standing Topless Undergoing Mammography Screening Procedure. Screen Showing the Mammogram Scans of Dense Breast Tissues.

 

乳房および口腔の変化

腸麻痺の場合においては、乳房は、はなはだ典型的な変化を受ける。

乳房は硬化して結節性となり、しばらくすると、その実質内に幾多の嚢胞が生じてくるが、その若干が、かなりの大きさをとるに至ることもある。

このような変化は、おおむね左乳房の上外方部に起始し、次いで右乳房の対応部分に現われ、後には乳房全体に及ぶであろう。

こうした変質をなせる乳房は、はなはだ癌に冒されやすいのである。

 

舌は、ほとんど常に不健全な外観を呈している。

舌は異常に大きいことが多く、歯は早くから老朽している。

咽頭および喉頭は不健全であり、嗅覚および味覚も、しばしば損なわれていて、息が、はなはだ悪臭をもっていることが少なくない。

そして患者は、口の中にいやな味のあるのを経験することになる。

 

To be continued

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