栄養

Nutrition

あなたは、あなたが食べてきたそのものです

なにを食べたらいいの?

2022.03.31

1977年にアメリカで報告され、日本でも話題となった『アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書』(通称『マクガバンレポート』)は、食事と生活習慣病(慢性疾患)の因果関係についての研究報告です。

5000ページにもおよぶレポートには、「ガンは薬では治らない」、「ガン及び生活習慣病の原因は90%以上食事である。

アメリカ人は動物性タンパク質と動物性脂肪を摂りすぎている。

また、加工食品の弊害もある」といった問題が提起され、報告書の最後はこう結ばれています。

 

 …人類は、もっとも理想の食事にすでに到達している。

それは、日本の伝統食である。

 

伝統的な和食を食べる傾向の高い高齢者が、その傾向が低い高齢者に比べて認知症や要介護になるリスクが低いことが科学的に明らかになっています。

また、腸で引き起こされるほぼすべてのガンは大腸に見られ、小腸にはまず見られません。

多くの研究者は、大腸に棲むおびただしい数の細菌に関係しているのではないかと考えています。

オランダのユトレヒト大学のハンス・クレヴァース教授は、食生活に関連していると指摘しています。

マウスは小腸にガンができるが、大腸にはできない。

しかし、欧米風の食事を与えると逆になる。

また、フランスのジョセフ・フーリエ大学のミッシェル・デュロルジュリル博士らの研究グループによる「リヨンダイエット心臓研究」が提唱したのが、1959年にミネソタ大学の栄養学者アンセル・キーズが著した『健康な食生活を送る方法(How to Eat Well and Stay Well)』という本の中で勧めている「地中海食」です。

地中海食は、果物や野菜、穀物、イモ類、ナッツ類、オリーブオイルを中心に動物性食品を少量摂るといったスタイルの食事です。

今や「和食」は「地中海食」とともに、世界で最も健康的な食事スタイルであるとされ、国際的に認知されています。

しかしひと口に和食といっても、時代によってさまざまに変化しています。では、どのような和食が理想なのでしょうか?

東北大学の都築毅准教授らの研究チームが、各年代の食事の献立を作成し、マウスによる動物実験を行ったところ、1975年の和食を食べたマウスが最も寿命が長かったという研究結果を報告しています。(図1)

学習記憶機能が良好で、ガンの発生率が最も低かったと明らかにしています。

研究チームは、1975年型和食を次のように定義しています。

多様性

いろいろな食事を少しずつ摂取する

調理方法

煮る、蒸す、生食を優先し、ついで、茹でる、焼く。揚げる、炒めるは控えめに

食材

大豆食品や魚介類、野菜(漬物)、果物、海藻、きのこ、緑茶を積極的に摂り、卵、乳製品、肉も食べ過ぎないように適度に摂取

調味料

だしや発酵調味料(醤油、味噌、酢、みりん、酒)をうまく利用し、砂糖や塩を取りすぎないように気をつける

形式

一汁一菜を基本とし、主菜と副菜をあわせて3品以上が理想。ご飯とおかずを一緒に摂る口内調味は咀嚼回数が増え、食後の高血糖を軽減する働きが期待される

1960年には穀類が約7割、動物性食品が1割ほどでした。つまり、かつての日本人は、エネルギーの大半を米などの穀物から摂っていたわけです。

その後、肉類や乳製品が増えたことなどによって、1980年には穀類が約5割、動物性食品が2割に変化しています。

この80年頃の食事は、炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスが良いと評価されていた時代です。

しかしその後の食生活は、あなたも実感されている通りさらに変化し、脂質や肉類、食品添加剤(化学合成物質)が増加し、野菜の摂取が減り、肥満、低栄養が問題視されるようになったわけです。

明治維新以降、「裕福」な食事は欧米風の食事だと、致命的な勘違いをしている人が沢山います。

しかし生理学的な観点からすれば、伝統的な和食こそ「豊かな食事」なのです。

人それぞれのアレンジがあって良いと思いますが、1975年型の食事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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