栄養

⑴ 脂溶性ビタミンの特徴と消化吸収過程

脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kは、食事中の脂質とともに摂取され、小腸でミセル化※を経て吸収される栄養素です。

これらの吸収には、胆汁酸の分泌と膵酵素の働きが不可欠であり、胆道閉塞、慢性膵炎、小腸疾患などによってその吸収が著しく阻害されることが知られています。[1]

※ミセル化とは、親水性（水になじみやすい）と疎水性（水をはじきやすい）の両方の性質を持つ分子が、水中で球状の集合体（ミセル）を作る現象です。このミセルは、疎水性の部分を内側に、親水性の部分を外側に向けて構造化することで、本来は水に溶けない油や汚れを包み込み、水に溶けたように見せることができます。

⑵ 各脂溶性ビタミンの機能と消化管への関与

① ビタミンA（レチノール）

上皮細胞の分化や粘膜の維持に重要な役割を果たしており、ビタミンA欠乏は腸管粘膜の脆弱化と感染リスクの上昇につながります。[2]

② ビタミンD（カルシフェロール）

腸管でのカルシウム・リン吸収を促進し、骨の健康維持だけでなく、腸管バリア機能や免疫調節にも関与しています。

近年では、炎症性腸疾患（IBD）患者におけるビタミンD欠乏が注目されています。[3・4]

③ ビタミンE（トコフェロール）

強力な脂溶性抗酸化物質であり、腸管の脂質膜を酸化から守る働きがあります。

ビタミンE欠乏は脂肪吸収不全に伴って発生しやすく、とくに胆道閉塞や膵機能不全の患者で報告されています。[5]

④ビタミンK（フィロキノン/メナキノン）

血液凝固因子の活性化に必要であると同時に、腸内細菌による合成（K₂）が存在するため、抗生物質の長期使用で欠乏症が生じることがあります。

また、骨代謝や動脈石灰化の予防にも関与しています。[6]

⑶ 脂溶性ビタミン吸収不全の原因と臨床対応

脂溶性ビタミンの吸収不全は、以下のような疾患や状態において生じることがあります：

• 胆道閉塞（胆汁の分泌障害）
• 膵外分泌不全（慢性膵炎、嚢胞性線維症など）
• セリアック病やクローン病による小腸粘膜障害
• 脂質摂取の極端な制限

こうした場合には、水溶化ビタミン製剤（ウォーターミセラブル型）を用いた補給が推奨されることがあります。

大切なことですから毎回お伝えしていますが、何よりもの大切なのは、「キレイな腸内環境」を大前提に適切な栄養を摂取することです。

腸内が腐敗していては、むしろ逆効果になることもあります。

References

1. Reboul, E. (2013). “Absorption of vitamin A and carotenoids by the enterocyte: focus on transport proteins.” Nutrients, 5(9), 3563–3581.
2. Stephensen, C. B. (2001). “Vitamin A, infection, and immune function.” Annual Review of Nutrition, 21, 167–192.
3. Cantorna, M. T., Snyder, L., Lin, Y. D., & Yang, L. (2015). “Vitamin D and 1,25(OH)₂D regulation of T cells.” Nutrients, 7(4), 3011–3021.
4. Jørgensen, S. P., et al. (2013). “Clinical trial: vitamin D₃ treatment in Crohn’s disease – a randomized double-blind placebo-controlled study.” Alimentary Pharmacology & Therapeutics, 38(3), 298–310.
5. Traber, M. G. (2007). “Vitamin E regulatory mechanisms.” Annual Review of Nutrition, 27, 347–362.
6. Shearer, M. J., Fu, X., & Booth, S. L. (2012). “Vitamin K nutrition, metabolism, and requirements: current concepts and future research.” Advances in Nutrition, 3(2), 182–195.