栄養

⑴ ビタミンB群の総論と消化管機能

ビタミンB群は、B₁（チアミン）、B₂（リボフラビン）、B₃（ナイアシン）、B₅（パントテン酸）、B₆（ピリドキシン）、B₇（ビオチン）、B₉（葉酸）、B₁₂（コバラミン）などから構成され、それぞれが補酵素として、エネルギー代謝、神経伝達、DNA合成、細胞修復などに関与しています。[1]

消化管では、これらのビタミンが上皮細胞の増殖や分化、粘膜バリアの維持、炎症制御、腸内細菌叢の健全化に重要な役割を果たしています。

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⑵ 消化管とビタミンB群の個別作用

① ビタミンB₁（チアミン）

チアミンは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の補酵素として糖代謝に不可欠であり、欠乏すると腸の運動機能が低下し、便秘や蠕動障害を引き起こします。[2]

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② ビタミンB₂（リボフラビン）

リボフラビンは、酸化還元酵素の補因子として機能し、粘膜の健康維持に寄与します。

不足すると、口角炎や舌炎、消化不良が見られます。[3]

③ビタミンB₆（ピリドキシン）

アミノ酸代謝や神経伝達物質の合成に関与し、吐き気や胃もたれの緩和にも効果があるとされています。[4]

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④ ビタミンB₉（葉酸）とB₁₂（コバラミン）

これらは共に赤血球の合成とDNA複製に関わっており、小腸回腸部での吸収が主に行われます。

胃の内因子がB₁₂吸収に必須であるため、胃切除後や萎縮性胃炎では吸収障害による巨赤芽球性貧血を起こすことがあります。[5・6]

⑤ ビタミンB群と腸内細菌の関係

一部のビタミンB（とくにB₇、B₉、Kなど）は、腸内細菌によって産生されることが知られており、共生関係による栄養供給が重要な代謝経路の一部となっています。

抗生物質の長期投与は、この微生物合成能を阻害し、ビタミン欠乏状態を招くことがあります。[7]

また、ビタミンB群の補給は腸内環境を整え、炎症性腸疾患の予防や治療の一助となる可能性が指摘されています。

繰り返しになりますが、腸内を衛生的に保つことが、栄養療法の前提となります。

References

1. Combs, G. F. (2008). The Vitamins: Fundamental Aspects in Nutrition and Health. Academic Press.
2. Singleton, C. K., & Martin, P. R. (2001). “Molecular mechanisms of thiamine utilization.” Current Molecular Medicine, 1(2), 197–207.
3. Powers, H. J. (2003). “Riboflavin (vitamin B-2) and health.” The American Journal of Clinical Nutrition, 77(6), 1352–1360.
4. Leklem, J. E. (1990). “Vitamin B6: a status report.” Journal of Nutrition, 120(Suppl 11), 1503–1507.
5. Green, R. (2017). “Vitamin B12 deficiency from the perspective of a practicing hematologist.” Blood, 129(19), 2603–2611.
6. Stabler, S. P. (2013). “Clinical practice. Vitamin B12 deficiency.” The New England Journal of Medicine, 368(2), 149–160.
7. LeBlanc, J. G., et al. (2013). “B-group vitamin production by lactic acid bacteria–current knowledge and potential applications.” Journal of Applied Microbiology, 115(6), 1407–1415.