栄養

Nutrition

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3.15 腸とアレルギー

2025.11.07

——腸内環境の乱れが免疫応答を狂わせる

⑴ アレルギー疾患の背景にある腸内細菌叢の異常

アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎など)は、免疫系の過剰反応により、無害な物質(花粉、ハウスダスト、食品など)に対して異常な炎症反応を起こす状態です。

この背景には、腸内環境の乱れ(ディスバイオーシス)が深く関与していることが多くの研究で示されています。[1]

腸内細菌は、免疫寛容(tolerance)の形成において重要な役割を果たしており、乳児期における腸内細菌叢の多様性は、その後のアレルギー発症リスクに大きく影響します。

とくに、Bifidobacterium(ビフィズス菌)やLactobacillus(乳酸菌)の減少は、制御性T細胞(Treg)の誘導障害や腸管バリアの脆弱化を引き起こし、アレルギー反応を助長する要因となります。[2・3]

Tight junction as intercellular barrier between epithelial cells outline diagram.

⑵ 腸管バリア機能とアレルゲン侵入

アレルギー反応の発端として、腸管バリアの破綻がしばしば見られます。

腸粘膜のタイトジャンクション(tight junction)がゆるむことで、未消化のタンパク質や外来抗原が過剰に体内へ侵入し、免疫系がこれを「敵」として認識しやすくなります。

この状態は「リーキーガット(leaky gut)」と呼ばれ、さまざまなアレルギー疾患や自己免疫疾患の温床になります。[4]

また、アレルギー患者では腸粘膜の炎症が持続しており、常在菌との共生バランスが失われていることも報告されています。

こうした変化は免疫グロブリンIgEの過剰産生やヒスタミン放出を誘発し、症状を慢性化させる原因になります。[5]

⑶ 栄養療法によるアレルギーの改善

腸内細菌叢のバランスを整えることは、アレルギー症状の軽減につながります。

とくに、プロバイオティクス(生きた善玉菌)やプレバイオティクス(善玉菌のエサとなる食物繊維)の摂取が有効であるとされています。

複数の臨床研究では、乳酸菌やビフィズス菌を含むサプリメントやヨーグルトが、アトピー性皮膚炎や花粉症の症状を緩和する効果を示しています。[6・7]

さらに、ビタミンD、ビタミンA、オメガ3脂肪酸、亜鉛、マグネシウムなどの栄養素は、アレルギー性炎症を調整する免疫系に作用し、症状の予防や軽減に寄与することが知られています。[8・9]

ビタミンDは特に、Treg細胞の誘導や抗炎症性サイトカインの産生促進により、免疫バランスの調整に貢献します。

そして何よりも、腸内を衛生的に保つことが優先されます。


 

References

 

  1. Pascal, M., et al. (2018). “Microbiome and allergic diseases.” Frontiers in Immunology, 9, 1584.
  2. West, C. E., et al. (2015). “Gut microbiota and allergic disease: new understanding.” Annals of Allergy, Asthma & Immunology, 114(5), 339–345.
  3. Arrieta, M.-C., et al. (2015). “Early infancy microbial and metabolic alterations affect risk of childhood asthma.” Science Translational Medicine, 7(307), 307ra152.
  4. Fasano, A. (2012). “Leaky gut and autoimmune diseases.” Clinical Reviews in Allergy & Immunology, 42(1), 71–78.
  5. Brandtzaeg, P. (2010). “The gut as communicator between environment and host: immunological consequences.” European Journal of Pharmacology, 668, S16–S32.
  6. Pelucchi, C., et al. (2012). “Probiotics supplementation during pregnancy or infancy for the prevention of atopic dermatitis: a meta-analysis.” Epidemiology, 23(3), 402–414.
  7. Wang, Y., et al. (2016). “Effects of probiotics on the allergic responses in young children with atopic dermatitis.” Pediatrics, 137(5), e20152964.
  8. Litonjua, A. A., & Weiss, S. T. (2007). “Is vitamin D deficiency to blame for the asthma epidemic?” Journal of Allergy and Clinical Immunology, 120(5), 1031–1035.
  9. Mickleborough, T. D. (2013). “Omega-3 polyunsaturated fatty acids in physical performance optimization.” International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 23(1), 83–96.
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