栄養

Nutrition

あなたは、あなたが食べてきたそのものです

ひとを養うもの 1

2025.03.07

 

自分の生きる人生を愛せ、

自分の愛する人生を生きろ

Love the life you live,

Live the life you love.

はじめに

 

冒頭文は、ボブ・マーリーの名言です。

しかしどうでしょうか、人生はなかなか思った通りにはなりません。

自然界は「原因と結果の法則」に支配されています。

結果には例外なく、それを引き起こした原因があるという原則です。

私たちの人生は、ある確かな法則にしたがって創られています。

私たちがどんな策略をもちいようと、その法則を変えることはできません。

「原因と結果の法則」は、

目に見える物質の世界においても、

目に見えない心の世界においても、

つねに絶対であり、ゆらぐことがないのです。

ジェームズ・アレン(James Allen)

 

では、思った通りにならない原因とは何でしょうか?

それは実際に、行動したかどうかです。

わたしたちの人生は、行動した(または、しなかった)通りになるのです。

 

あなたの夢見る人生のために、

美と健康を支える

これは弊社のミッションを、タグラインとして表したものです。

わたしたちは、現代の歪んだ生活環境において「食べることより、排泄を優先するよう行動してください」と提唱していますが、健康の基本は良好な栄養状態にあることも認識しています。

栄養不良あるいは飢餓状態にある時に、どのような医学的治療を施したとしても、病んだ心身が改善を示すことは不可能だからです。

1日2食や少食の食習慣は、腸内腐敗・酸性腐敗便、宿便を予防し改善するための習慣ですが、ともすれば「栄養欠乏」に陥る可能性を孕んでいます。

西医学健康法の創始者・西勝造は、栄養を「ひとを養うもの」と定義し、重要視していました。

IV Drip Vitamin Infusion Therapy Saline Bag

私事で恐縮ですが、筆者は最近まで父の介護に奮闘していました。

あらん限りの看護を尽くしましたが、天寿の致すところ95歳を一期として永眠いたしました。

父は7年ほど前に重度の弁膜症を発症しました。

しかし従来の医学には、弁膜症を寛解させる治療法がありません。

筆者は栄養療法に関する知識が多少あり、幸運なことに父は“マグネシウセラピー”によって寛解し、これまで普通に生活することができました。

そして晩年は、肺に水が溜まってしまう心原性肺水腫を患い、(肺が胃を圧迫するため)食事も思うに任せず、様々な種類のサプリメントによって栄養を補い、生命をつないでいく毎日でした。

書籍『シナトラ・ソリューション』

心原性というのは、“心臓機能の低下に伴う”という意味ですが、医師が処方する利尿剤と併用して、タウリン酸マグネシウムやL–カルニチン、R–リボース、コエンザイムQ10のサプリを活用するスティーブン・シナトラ博士の「シナトラ・ソリューション」も取り入れ、また肺機能を活性化させる「N–アセチル・システイン(NAC)」や「グルタチオン」なども飲用していました。

そのおかげもあってか、肺水腫の症状である「ピンク色の痰」や息苦しさもなくなりました。

しかし食事から十分な栄養を摂ることができず、筋肉はどんどん衰え(サルコペニア)て、歩行する力もなくなりました。

人が初めて身につける社会性は「トイレ」だと言われますが、この習慣は根強く脳に刻まれるようです。

それが仇となり、転倒するようになりました。

これは危険ですから、非常用の呼出ベルで1階にある両親の寝室と2階にある筆者の部屋を繋ぎました。

通常は母からの呼出ベルが鳴ると、2階から急行して、父を抱き抱えてトイレ(ポータブルトイレ)に連れて行くのですが、父が一人で就寝しているときに、トイレに立ち、転倒して頭を打ち、救急搬送されました。

転倒による大きな問題はありませんでしたが、1週間後に息を引き取りました。

95年の寿命と健康寿命の差は約1週間でしたが、今日の主流医学に「栄養療法」はありませんから、入院の時点で、余命はわずかとなるだろうと覚悟をしました。

筆者にとって、この数年間に及ぶ父親のヘルスケアは、健康の、そして“栄養”の重要性を痛感する実体験となりました。

人のニーズには「問題解決(ソリューション)」と「願望成就(デザイアー)」がありますが、多くの人は願望を叶えることに執着し、足元の問題解決を等閑(なおざり)にします。

あなたの夢見る人生は、経済的な豊かさや社会的成功を手にすることでしょうか。

しかし、その晩年が病気に苦しめられる悲惨なものだったとしたら…慢性病というのは、不健康な日々の行動(代謝ストレス)が長年積み重なって発症します。

つまり今現在が、あなたの未来なのです。

さて、わたしたちを苦しめる代謝ストレスは、以下の要因によって引き起こされます。

  • 栄養不良及び飢餓
  • 腸内異常醗酵(腸内腐敗)及び酸性腐敗便による自家中毒
  • 微生物の体内侵入
  • アレルギー及び過敏症
  • 中毒反応 ― 金属、有機分子、ハロゲン(塩素、フッ素)、動物・植物・虫の生物毒素
  • 心理社会的な(社会的要因と心理的要因の相互作用による)もの

つきつめて考えれば、心身ともに健康な人間を支えている物理化学的な土台は、正常な生化学反応に他なりません。

そうである以上、人それぞれの生化学的・栄養学的な状態は、その人が健康を維持できるか病気になるかを決める基本条件なのです。

そして栄養摂取の基本的行動指針は「本物の食べ物を、植物を中心に、生で丸ごと食べる」ことです。

サプリメントは文字通り「補助的に補給」するものとしてご理解いただきたいと思います。

Tablets, capsules, dietary supplements, vitamins on spoons.

● 動物にとっての必須栄養素

太古の昔、単細胞生物は動物でも植物でもありませんでしたが、無機塩類、水、酸素、日光にだけ依存した生き物であったことから、植物に近い生命だったのかもしれません。

一方、動物の生命は一つの細胞が他の細胞を呑み込み、生き延びたときに初めて発達されたのでしょう。

というのは、この単純なステップによって、細胞が多量の有機化学物質を生合成するのに必要な全てのエネルギーが、他の代謝機能に転用できるようになったと考えられるからです。

近隣の細胞を呑み込んだ最初の細胞こそが、地球上の全ての動物の生命の母体となったと考えられます。

節約されたエネルギーは、移動や細胞群体(コロニー)のために使われたり、多細胞動物を生み出すために使われました。

もし我々が自分の身体の中であらゆるものを自前で生合成しないといけない状態が続いていたなら、わたしたちは恐らく植物のままだったはずです。

最初期の動物細胞は、植物のように塩を摂取して生きていたか、あるいは他の細胞を呑み込むことによって生きていたに違いありません。

自前であらゆるものを生合成する必要性は徐々に消えていき、これらの細胞はますます他の細胞を食べることへの依存を深めていきました。

有機分子を生合成するのに必要な機構は、他の目的をやり遂げることができる生化学的機構へと、徐々に変容していったのでしょう。

ビタミンのような栄養素が生成されなくなると、それは摂取しなければならない「必須栄養素」になりました。

こうして我々がビタミンと呼ぶ分子は、8種類のアミノ酸同様、「必須」のものとなったのです。

● 様々な栄養が奏でるハーモニー

栄養療法の先駆的研究者の一人である生化学者のロジャー・ウィリアムズ(Roger Williams)博士は「オーケストラの原則」と呼ぶ基本的診療思想(コンセプト)を強調しています。[1]

オーケストラにおいて一つの楽器を別の楽器よりも重要だと考えることはできないのと同じで、人体も必要とする全ての栄養素が使える状況でなければなりません。それらは「全員が一体」となって協調しながら働くのであって、何か一つが過剩にあっても別のものが不足しているのを代償することはできません。

実際的な話でいうと、サプリメントをどんなにうまく使ったとしても、砂糖や添加物がたっぷり含まれた食品を食べつづけているようでは、その埋め合わせはできず不協和音を生み出します。

生命という交響楽において、何か単一の栄養素というのは、首席バイオリニストのようなものです。

別の栄養素や別の薬物では替えがきかないのです。

本稿は主にオーソモレキュラー医学による論考をベースに数回に分けて、栄養素の働きや栄養療法についてご紹介していきます。

● オーソモレキュラー医学(栄養学)の並外れた臨床成果

1930年代から1950年代にかけて※オーソモレキュラー医学(栄養学)の分野でフレデリック・R・クレンナー(Frederick R. Klenner)、マックス・ゲルソン(Max Gerson)、ウィリアム・J・マコーミック(William J. McCormick)、ウィルフリッド・シュート(Wilfried Shoot)とエバン・シュート(Evan Shoot)らは先駆的な活躍をしました。しかし、残念なことに彼らの並外れたすばらしい臨床成果は、今日、医学の教科書には載っていません。

現代の主流医学の医療専門職という階級社会の中では、栄養などというものは取るに足りないもの・・・・・・・・・で、臨床現場で何の役割も果たしていない、と見なされていることは明らかです。

これらの医師は「薬物」と「手術」「放射線」にほぼ完全に頼り切りなのです。

フレデリック・R・クレンナー

Frederick R. Klenner, MD.

● オーソモレキュラー医学の歴史・概念・理論の概要

オーソモレキュラー医学(Orthomolecular Medicine) は、1968年にノーベル賞受賞者であるライナス・ポーリング(Linus Pauring)博士が提唱した栄養療法の一分野です。

「オーソ(ortho)」は「正しい」、「モレキュラー(molecular)」は「分子」を意味し、身体にとって最適な分子(栄養素)を適切な量で供給することにより、健康を維持・回復させることを目的としています。

 

○ 理論と基本原則

⑴ 栄養素による健康維持と疾患予防

ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸などの栄養素を最適な量で補給することで、細胞機能を正常化し、病気を予防・治療する。

⑵ 個々の生体化学的個性を重視

個人の栄養状態や遺伝的要因に応じて、必要な栄養素の種類や量は異なる。

⑶ 高用量栄養素の活用

例えば、高用量のビタミンCが免疫機能を強化し、抗酸化作用を発揮することが知られている。

⑷ 従来の薬物治療と異なるアプローチ

一般的な医薬品が症状を抑えるのに対し、オーソモレキュラー医学は栄養素を使って病気の根本原因にアプローチする。

Vitamin B3. Vitamins in capsules. White capsules with vitamin B3, niacinamide or nicotinic acid are scattered on the table from a bottle on a white background. Dietary supplements in tablets.

○ 歴史的背景

  • 1950年代:精神疾患への栄養療法を研究したエイブラム・ホッファー博士とハンフリー・オスマンド博士が、ナイアシン(ビタミンB3)の高用量投与による統合失調症の治療効果を発見。
  • 1968年:ライナス・ポーリング博士が「オーソモレキュラー」という概念を発表し、以降、分子栄養学的アプローチが広がる。
  • 1970年代以降:ポーリング博士がビタミンCの抗がん作用や風邪予防効果について研究を進め、オーソモレキュラー医学の認知度が高まる。

○ 現代の応用

現在では、オーソモレキュラー医学は慢性疾患(心疾患、糖尿病、神経疾患など)、精神疾患(うつ病、不安症、統合失調症)、免疫機能の改善、アンチエイジング など幅広い分野で活用されています。

特に、高用量ビタミンC療法やマグネシウム補充療法などが注目されています。

このように、オーソモレキュラー医学は 「適切な栄養を最適な量で摂取することで、健康を維持し病気を予防・治療する」 という考えに基づいており、現代の機能性医学や栄養療法にも大きな影響を与えています。

 

すべての病態、すべての疾病、すべての病気を追求するとミネラル欠乏にたどりつく

ライナス・ポーリング(Linus Pauring)

 

 

“ひとを養うもの 2” につづく


 

Reference

 

(1) Williams, R J. The Wonderful World Within You. New York: Bantam Books. 1977.

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