栄養
Nutrition
あなたは、あなたが食べてきたそのものです
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あなたは、あなたが食べてきたそのものです
2024.02.23
予想を遥かに上回るたくさんのお客さまから『Magnesium Therapy』(書籍)をご請求をいただきました。
マグネシウムの人体における重要性を認識している人は、おそらく国民の1%もいないと思います。
ぜひ参考にして、限りある人生を豊かにしていただければと思います。
さて、マグネシウムは生物にとって最も重要なミネラルですから、欠乏すると人体のあらゆるシステムに不具合を生じます。
しかしながら、マグネシウムは鉄とは違い、体内に「循環するシステム」がありません。
また、人体の多くの機能をサポートしているため、大量に消費されます。
ストレスに見舞われただけでも、多くのマグネシウムが消失します。
ですから、不足したらサプリメントなどで補給する必要があるのです。
不足すると脳の記憶力や学習力にも悪影響を及ぼしますから、注意が必要です。
「スーパー栄養素」という言葉を使うのはためらわれますが、マグネシウムや亜鉛はそれに値します。
1905年アメリカにおいては、75歳以下でうつ病を発症する米国人はわずか1%でしたが、1995年には、24歳前にうつ病を発症する人が6%に増加しました。
50年の間に、食品の製造方法は根本的に変化したのです。
つまり、加工食品または超加工食品です。
ネスレ社、コカ・コーラ社、ペプシコ社、クラフト社、マース社、ユニリーバ社などの収益は、それぞれ単独で世界の半数以上の国の税収を凌駕します。
食品大手トップ10が、世界中の市販食品の80パーセントを握っているのです。
各社の2017年時点でのの売上高は平均で年間400億ドルを超え[1]、20118年の利益は総計で1000億ドルを上回っています。
ですから現在では、さらに巨大化していると考えられます。
そして、ここ日本においても同様の道を辿っています。
食品産業が穀物を精製して白い小麦粉や白いパンを製造するようになり、焼き菓子のミネラル含有量が減少したため、全粒穀物(精白などの処理で、糠となる果皮、種皮、胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物やその製品)の消費量は劇的に減っています。
例えば、1905年当時、人々はパンから1日に約400mgの食用マグネシウムを摂取していました。
しかし1955年(米国)には、マグネシウムをほとんど含まない白パンを食べるのが当たり前になりました。
マグネシウムは、一般の人々のうつ病の増加につながるとは考えにくいかもしれませんが、脳内でマグネシウムが果たしている役割を見てみれば、なぜ重要なのかがわかるはずです。
マグネシウムには「奇蹟のミネラル」や「アンチエイジング・ミネラル」「脳と心臓のミネラル」「生命の発火剤」など、様々な呼び名がありますが、マグネシウムは「精神安定剤の元祖」とも呼ばれています。
何十年もの間、ストレスや不安に対する家庭薬として使われてきました。
実際、ビクトリア朝時代の多くの水治療センターでは、当時の医師の処方に従って、治療用の入浴や飲用として、マグネシウムを豊富に含む水が提供されていたのです。
不安障害、パニック障害、化学療法による吐き気の治療に用いられるベンゾジアゼピン系のアルプラゾラム・ブルーピル短効性鎮静薬
現代科学によれば、マグネシウムは脳内の多くの化学経路にとって重要であり、セロトニンなどの重要な神経伝達物質の生成や、カルシウムの脳への興奮作用のバランスをとる上で重要な役割を果たしています。
ビタミンB群は脳の健康に不可欠な栄養素です。
そしてマグネシウムは、多くのビタミンB群を活性型に変換するために必要なのです。
例えば、多くのビタミンは食品中に活性型として存在していませんが、細胞に吸収されるためにわずかな化学変化を起こす必要があります。
※ビタミンB群に属する栄養素としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸などがあります。
ビタミンB群はあらゆる種類の酵素の補酵素として働いています。
その中でも、ビタミンB群は特に代謝ビタミンとよばれ、私たちが生きるための源であるエネルギーをつくるのに必須です。食品から摂ったビタミンB群はそのまますぐには働けません。
いったんからだの中で働ける形(活性型)に変えられてから、やっと働けるようになります。
このときにマグネシウムが必須なのです。
動物実験によると、マグネシウムは私たちの学習と記憶を助け、長期的には記憶力を保護するのです。
一部の学者はマグネシウムの摂取量(毛髪中のマグネシウム量で測定)が学業成績に関連すると主張しているくらいです。
つまり、マグネシウムが不足すると「頭が悪くなる」のです。
お子さんを頭脳明晰に育てたい親御さんにとって、マグネシウムは重要な栄養素だと言えるでしょう。
また、マグネシウムはコルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を抑制し、血液脳関門(脳には、血液から細胞や病原体等が簡単に入らないようにする仕組み)に作用して、コルチゾールが脳に入るのを防ぐことも判明しています。
マグネシウムはストレスの影響を受けると、容易に体外に排出されます。
現代に生きる勤労世代は、特に過剰なストレスにさらされており、このストレス要因だけでも、マグネシウム欠乏であることが推測されます。
古来、私たちの祖先は、天然の野菜や肉、魚介類をたくさん使った食事からマグネシウムを補給していました。
今日では、マグネシウムはほとんど食品から摂取されず、ペットボトルや水道水にも微量にしか含まれていません。
成人の1日のマグネシウム推奨摂取量は、米国で320~420mg、日本で260~300mgとされていますが、私たちが1日に370mg以上のマグネシウムを摂取することは難しい状況です。
マグネシウムを多く含む食品は、アーモンド、ほうれん草、カシューナッツ、ピーナッツ、豆乳、黒豆、インゲン豆、バナナ、レーズン、玄米などが挙げられます。
ただし、マグネシウム含有量は、栽培されている土壌にどれだけのマグネシウムが含まれているかによって決められます。
酸性雨などによってマグネシウムが欠乏した土壌で育った植物には、マグネシウムがほとんど含まれていないのです。
わたしたちのほとんど全てがマグネシウム不足だと考えられますが、体内にどれくらいの量のマグネシウムが存在するかを知ることはできません。
血液にもマグネシウムは含まれていますが、体内のマグネシウム量が多くても少なくても、血中マグネシウム量は、常に1%程度になるよう厳密に調整されています。
マグネシウムは主に細胞に存在するため、血中のマグネシウム量を測っても無意味となってしまうのです。
亜鉛は強力な抗酸化物質で、フリーラジカル(人の体を酸化させ、錆びさせるもの)の攻撃からDNAを守ります。
亜鉛は、脳を含む細胞を生き生きとさせ、抗炎症作用によって老化のプロセスを遅らせることができます。
ちなみに、男性の読者の皆さんは、亜鉛は男性器の機能を維持・改善するためにも不可欠だということを憶えておいてください…重要なので、念のため。
50年以上前、科学者たちは脳内に亜鉛が大量に存在することを発見し、現在では神経細胞の小胞、つまり重要な神経伝達物質(ニューロン同士の会話を可能にする分子)を含む小さな「袋」に亜鉛が特に集中していることがわかっています。
興味深いことに、脳内で最も高濃度の亜鉛が、海馬(学習と記憶の中枢)の神経細胞で発見されています。
マサチューセッツ工科大学とデューク大学の科学者たちは、亜鉛の役割を観察しました。
彼らは、亜鉛をタンパク質に結合させ、移動可能な「遊離」亜鉛の量を減らすと、海馬の2つの重要な細胞グループ間のコミュニケーションが妨げられることを発見しました。
遊離亜鉛がなくなると、細胞は会話しなくなるのです。
動物実験では、亜鉛の欠乏が神経の再生に影響を与え、脳細胞の死亡率を増加させ、学習や記憶の障害につながることが証明されています。
亜鉛についてこれまでに分かっていることから、これは驚くべきことではありません。
しかし、アルツハイマー病患者の脳における亜鉛レベルの低下を報告した研究がある一方で、他の研究では、アルツハイマー病とプラーク形成を促進する異常に高い亜鉛含量との間に明確な関連があるとされています。
これはパラドックスですね。
この矛盾を解くには、更なる研究が必要なようです。
つまり、亜鉛をたくさん摂取することが、必ずしも良いわけではありません。
繰り返し申し上げていますが、適切な量が大切だということです。
欧米では亜鉛欠乏症が蔓延しており、成人の約20%が食事から十分な亜鉛を摂取できておらず、公衆衛生上の懸念が高まっています。
おそらく日本においても、同様の傾向にあると推測されます。
亜鉛はマグネシウムと同様に体内に貯蔵できませんから、毎日、女性で約9mg、男性で約11mgの亜鉛を摂る必要があります。
かき、カニ、ロブスター、牛肉、鶏肉は特に亜鉛が豊富で、定期的に食べていれば亜鉛不足になることはないでしょう。
ベジタリアンの食事には亜鉛はほとんど含まれておらず、豆類、ひよこ豆、ナッツ類、かぼちゃの種などにごく少量含まれています(その量は土壌によって異なります)。
しかし、医師から亜鉛欠乏症と診断されていない限り、微量ミネラルである亜鉛や鉄のサプリメントは勧められません。
サプリで摂取すると、過剰摂取する可能性が高いからです。
ちなみに鉄は体内に循環するシステムがあり、成人の1日の鉄分補給摂取量は、1mgです。
たとえば「有機豆乳200ml」を毎日飲めば、ちょうど1mgの鉄分を、毎日、摂取することができます。
微量ミネラルは「本物の食べ物」から摂取するようにしてください。
さて、冒頭でも申し上げましたが、今日では欧米の超巨大企業の利益追求によって食品の性質が大きく変わってしまいました。
利益の追求は、ある意味企業の使命ですから、それ自体は批判されるようなことではありません。
しかし、企業活動には「倫理」や「道徳」「正義」といった思想がともなっていなければなりません。
人間の健康を害してまで、利益を優先するようなことがあってはならないのです。
話しは変わりますが、上杉鷹山が、羽前の国、米沢藩の世継ぎとなったのは、まだ17歳の時でした。
上杉藩は1601年の関ヶ原の戦いで反徳川方にまわったため、石高は大幅に減封され、藩領も米沢の地に移されました。
荒れ果てた新領では藩の維持が難しく、負債は何百万両にものぼりました。
これを生涯を賭けて建て直し、理想の王国としたのが上杉鷹山です。
17歳で江戸一番の貧乏藩の藩主となった上杉鷹山は数々の試練を乗り越えて、米沢藩を江戸有数の裕福な藩へと復活させたのです。
そして、農民や武士など藩のみんなに惜しまれながら72歳で生涯を終えました。
振り返ってみると、上杉鷹山は自分の生活と人生を全て捧げ、米沢藩の未来と民衆の幸せのために尽力した人生だったといえます。
鷹山の物語は、内村鑑三の『代表的日本人』(岩波文庫)にも綴られています。
余談ですが筆者は、上杉鷹山の生き様を自身への戒めとしています。
内村鑑三は、このように綴っています。
東洋思想の一つの美点は、経済と道徳とを分けない考え方であります。
東洋の思想家たちは、富は常に徳の結果であり、両者は木と実との相互の関係と同じであるみます。
木によく肥料をほどこすならば、労せずして確実に結果は実ります。
「民を愛する」ならば、富は当然もたらされるでしょう。
〝ゆえに賢者は木を考えて実をえる。小人は実を考えて実をえない。〞
このような儒教の教えを、鷹山は、尊師細井から授かりました。
Reference
1 Kate Taylor, “These three companies control everything you buy’, Business Insider(4 April 2017)