人体
Human body
大自然の叡智の結晶・人体
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大自然の叡智の結晶・人体
2024.09.13
今回の投稿は、繰り返しお伝えしております「マイクロバイオーム(微生物叢)」のお話しです。
つまり、わたしたちの体に共生している常在細菌、運命共同体である目に見えない仲間たちについて、2回に分けてご紹介していきます。
前回お伝えした「ミトコンドリア」も細菌由来の小器官ですが、マイクロバイオームとあわせて考えてみると、生命の鍵を握っているのは微生物なのかもしれませんね。
マイクロバイオームは、体内に生息する微生物の集合体であり、大腸に最も多く集まっています。
この微生物の大部分は細菌ですが、真菌やウイルス、その他の菌も含まれています。
マイクロバイオームは、消化や免疫、血糖バランス、ホルモン産生、代謝、代謝柔軟性など多くの機能を支えており、主要な生体プロセスの大半に関与しています。
これらの微生物はあなたと共生関係にあり、微生物はあなたの健康を保ち、あなたは微生物に住処を提供しているのです。
マイクロバイオームには有害微生物(悪玉菌)も存在し、居場所を構えていますが、これが増殖しすぎると健康上の問題を引き起こす場合があります。
たとえば、消化異常、炎症、代謝障害、血糖バランスの乱れ、ホルモン異常、肌荒れ、気分障害などがその原因となり得ます。
ですから、断食博士甲田光雄医師(医学博士)は生涯を通じて、健康の第一条件は「大腸のおそうじ」だと主張しておられたのです。
しかし、朗報もあります。
栄養素やポリフェノール、食物繊維が豊富な食品を摂れば、有用微生物(善玉菌)の成長を促し、この有用微生物が有害微生物を抑え込むのです。
しかし、砂糖や植物油、精製炭水化物を多く含むジャンクフードを食べると、炎症を促進する有害微生物の増殖を促します。
では質問です。
あなたは、どちらの微生物に餌を与えたいですか?
答えは明白ですね!
マイクロバイオームは、いくつかの重要な形で代謝に影響を及ぼします。
そのひとつは血糖代謝です。[1]
血糖値スパイクの変化がマイクロバイオームの変化と関連していることが、研究で明らかにされています。[2]
たとえば腸内微生物はインスリン分泌や短鎖脂肪酸産生、胆汁酸代謝、脂肪細胞調節に影響を及ぼし、そのすべてが血糖コントロールに影響し得ます。
また、腸内微生物はあなたの食欲や食物からのエネルギー吸収、肝脂肪の蓄積、腸運動性、脂質代謝にも影響を及ぼします。[3]
腸内マイクロバイオームは、ミトコンドリアの代謝や新しいミトコンドリアの生成に加え、機能不全を起こしたミトコンドリアの除去に影響する各因子の調節も担います。[4]
たとえば、ポリフェノールの一種であるエラジタンニンやエラグ酸を含むザクロやベリー類、ナッツ類を食べると、私たちのマイクロバイオームはこれらをウロリチンAに変換します。
この分子はミトコンドリアの機能を高め、炎症を減らし、マイトファジー(電荷を失った機能不全のバッテリーの除去)を促し、これらすべてが細胞の健康を高めます。
マイクロバイオームとミトコンドリア間のクロストーク(相互作用)は血糖調節異常や糖尿病につながるおそれもあります。[5]
あなたのマイクロバイオームが正常に機能していない場合、ミトコンドリアも何らかの悪影響を受けていると考えてまず間違いありません。
ジャンクフードを食べたときの炎症作用の一部は、腸内の炎症を悪化させる微生物に餌を与えることによるものです。
砂糖や飽和脂肪がたっぷり含まれ、食物繊維や栄養素が少ない粗悪な食事は、あなたの腸内マイクロバイオームの構成を変え、本来優勢であるべき善玉菌よりも悪玉菌のほうが優勢になります。[6]
マイクロバイオームがダメージを受けると、免疫力が損なわれます。
マイクロバイオームは、病原体に適切に対応できるよう免疫系を鍛える重要な役割を担っています。
健康なマイクロバイオームは、ウイルスなどの異物と元々身体にある細胞とを判別できます。
攻撃すべき対象と保護すべき対象を見分けるには、健康なマイクロバイオームが必要です。
健康なマイクロバイオームがなければ、身体が自身を攻撃する自己免疫疾患に陥るリスクが高まります。
この問題を悪化させるのは、消化管の炎症が引き起こす腸管バリアの損傷です。
これがリーキーガット(腸管壁浸漏とも呼ばれる)です。
さまざまな事象が腸管バリアを傷つけ、腸の透過性を高めます。
リーキーガットの原因として既に述べたような、現代のライフスタイルが及ぼす影響の他に、抗生物質の使用、環境内の毒素、その他の薬剤(特に抗生物質、イブプロフェンやナプロキセンといった非ステロイド系抗炎症薬)、寄生虫感染、カンジダなどの真菌の異常増殖、アレルギー性食品の摂取、胃酸分泌低下、膵機能不全(消化酵素の産生不足)などが挙げられます。
腸管バリアが損傷すると、食物の粒子や細菌の毒素が漏れて血中に入り込みます。
これが全身性炎症を引き起こしてエネルギーを大きく消耗させ、免疫細胞を食物の粒子にさらすことで、身体が食物に対して異物であるかのような反応を見せ始めます。
この段階で自己免疫疾患や炎症性疾患を発症する可能性があります。[7]
もしあなたが、お腹にガスが溜まる、膨満感、軟便(下剤を服用していないのに)、過敏性腸症候群※といった消化器異常に悩んでいるなら、リーキーガットかもしれません。
リーキーガット症候群の兆候には他に、食物不耐性、季節性アレルギー、湿疹、自己免疫疾患、慢性疲労症候群(あるいは単にいつも疲れている状態)、不安症やうつ病といった気分障害、栄養十分な食事をしても体重が減る、関節の痛みや腫れ、集中力の低下、カンジダ菌の異常増殖や小腸内細菌異常増殖症(SIBO)の診断などがあります。
※過敏性腸症候群 (IBS) は、アメリカ人の最大 16% が罹患する消化器疾患で、女性と若年成人にかなり多く見られます。 [8]
IBS の一般的な症状には、下痢、便秘、またはそれらの組み合わせ、膨満感、腹痛、ガス、排便困難または排便時のいきみなどがあります
IBS の従来の治療法は、主に患者が訴える症状に基づいています。
下剤、食物繊維、下痢止め、さらには低用量の抗うつ剤などの特定の薬剤が処方されることもあります。
一方、IBS の根本的な原因には、次のようなものがあります。
•小腸内細菌異常増殖 (SIBO)
•腸内細菌叢の乱れ (腸内細菌の全体的な不均衡)
•食物過敏症および/または腸漏れ
•胃酸の低下
•H.plyori(ヘリコバクター・ピロリ) またはその他の腸内感染症
治療法は、各個人の全体的な評価と根本的な原因によって当然異なりますが、IBS 患者に対する一般的な治療法には、細菌の異常増殖を除去し、消化器官の成分を補充し、腸壁を修復し、健康な腸内細菌を再び増殖させ、ライフスタイルのバランスを取り戻すための、個人に合わせた 5R 腸治癒プロトコル(Vol.2で説明します)が含まれる場合があります。
https://rootfunctionalmedicine.com/root-cause-medicine
免疫力が落ちた状態でストレスや感染などの環境障害にさらされ、これに遺伝的性質が組み合わさると、自己免疫疾患を発症するおそれがあります。[9]
自己免疫疾患とは、基本的に、身体の免疫系が誤って自身を攻撃することを指します。
自己免疫の仕組みはこうです。
身体は本来、耐性というものを保持しており、それは身体の一部と外来の病原菌の区別がつくことを意味します。
私たちの免疫系は、ウイルスや細菌といった感染を引き起こす微生物に存在する特定のペプチドを認識します。
免疫細胞はこうしたペプチドを特定すると、これを攻撃するのです。
しかし、過剰に活性化した免疫系は、体内細胞で見つかるよく似た抗原と、消化管から漏れ出た未消化の食物粒子を混同することがあります。
すると身体は自身を攻撃し始め、消化管をターゲットにしたり、神経細胞や皮膚細胞、膵臓細胞、関節組織を攻撃し損傷したりするわけです。
炎症を抑え、腸の粘膜内層を修復し、悪玉菌に対する善玉菌の割合や腸内微生物の多様性を高める(腸内の微生物の種類を増やす)ことで、リーキーガットを治すことができます。
腸内の有用微生物の種類を増やす最良の方法のひとつは、食べる食品の種類を増やすことです。
季節に応じて、さまざまな旬の果物や野菜を食べるようにしましょう。
複数の動物性タンパク源と植物性タンパク源を組み合わせて、多様なタンパク質を摂るよう心がけましょう。
また、マイクロバイオームの栄養になるポリフェノールを含むさまざまな種類のハーブやスパイスを使うのもおすすめです。
マイクロバイオームの健康を高め、血糖バランスを改善する食事のもうひとつの重要なポイントが食物繊維です。
マイクロバイオーム内の善玉菌は食物繊維を餌にしています。
食物繊維は野菜、果物、ナッツ類から摂るのが最適とみられます。
野菜・果物・ナッツ類を軸とした食物繊維の豊富な食事を摂った被験者群と、穀物と豆類を軸とした食物繊維の豊富な食事を摂った被験者群を比較したある研究では、野菜・果物・ナッツ類を軸とした被験者群のほうがより良い結果を示しました。[10]
興味深いことに、運動もマイクロバイオームの多様性に大きな役割を果たします。
運動は腸内の善玉菌の量を増やし、免疫力を押し上げ、腸管バリア機能を改善し、機能的代謝能を高めることがわかっています。[11]
そして何よりも大切なのが、腸内を衛生的に保つことです。
弊社のお客さまなら、もう充分に実感しておられると思いますが…。
結果は行為を正当化する
exitus scta probat
オウィディウス(Ovid 43BC-AD17/18)
References