人体
Human body
大自然の叡智の結晶・人体
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大自然の叡智の結晶・人体
2024.05.31
先日筆者が定期購読している機関誌で、興味深いコラムを見かけました。
弊社のお客さまに、ご興味がありそうなコンテンツでしたので、全文を引用してご紹介します… 出版元に叱られるかもしれませんが。
著者は、元皮膚科医という異色の経歴をもち、肛門専門医の指導医の資格も持つ女性医師・佐々木みのり先生です。
ささき・みのり/肛門科専門医
肛門科専門医の指導医の資格を持ち、第一線で手術まで担当する数少ない女性医師のひとり。元皮膚科医という異色の経歴を生かし、肛門周囲の皮膚疾患の治療を得意とする。「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となる「肛門の便秘」を治すことで「切らない痔治療」を実現。日本臨床内科医学会で教育講演を行うなど、新しい便秘の概念を提唱する。現在、明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設「大阪肛門科診療所」(旧大阪肛門病院)に在籍。
今から40年以上前のこと。
自宅がボットン便所だった私は友人の家でトイレを借りた時、水を流すつもりで押した スイッチがお尻洗浄用のもので、驚いて腰を浮かしたためにびしょ濡れになってしまいました。
その頃の家庭の温水洗浄便座の普及率は1割以下。
トイレでお尻を洗う習慣はおよそありませんでした。
一躍人気家電として躍り出たのは、1980年にTOTOが「おしりだって、洗って欲しい」 という衝撃的なキャッチフレ—ズで売り出した「ウォシュレット」(商品名)から。
今や普及率は8割を超え、家庭だけでなく公衆トイレにも装備されています。
当初は肛門科の学会でも「お尻はよく洗って清潔に」と温水洗浄便座を推奨。
痔の手術後の傷も洗浄できると、皆がこぞって使い始めたそうです。
ところがしばらくすると痔ではない肛門のトラブルが発生。
それに気付いた医師が、学会で症例報告し警鐘を嗚らし始めます。
ちょうどその頃、医師になった私は元皮膚科医という経験と知識で肛門の皮膚を観察していました。
すると洗ってキレイになっているはずが、なんと悲しいことに洗っている人ほどお尻が汚いのです。
診察のために肛門を見ると、肛門周囲に便が付いている!
患者さんに尋ねると「排便後、温水洗浄便座で念入りに洗浄した」と言うのです。
中には「下着が汚れるから」と、生理用ナプキンを当てて来院する患者さんまでおられ ます。
聞けば、「排便後しばらく経つと汁のような便が出てきて気持ち悪い」と。
しかし念入りに洗えば洗うほど症状は悪化。
「肛門のしまりが悪い」と心配して受診される患者さんが増えていきました。
しかし診察しても肛門に異常はありません。
それではなぜ、便失禁のような症状が起きたのでしょう?
それは温水が肛門の中に入り、出し残した便と混じって「便汁」となり、肛門から出て来ていたのです。
肛門周囲には、便だけでなくトイレットペーパーが付着している人も多くいます。
これも温水洗浄便座のせい。
水に溶ける性質を持ったトイレットペーパーで濡れた肛門を拭くと、溶けた紙が肛門に付着してしまうのです。
洗い過ぎたお尻は悲惨な状態になっていきます。
まず、皮膚表面を潤している皮脂膜が洗い流されて、さまざまな皮膚トラブルが生じます。
肛門周囲の皮膚が真っ白になったり、逆に色素沈着して黒くなったりして、ホクロとシミだらけのお尻に。
皮膚の第一次バリアーである皮脂膜が剥がれると、メラノサイトが活性化されて増殖し、シミや黒ずみを引き起こすのです。
悩ましい肛門のかゆみも、洗いすぎによって引き起こされます。
温水で皮脂膜が剝がれると、かゆみを選択的に伝える神経線維が皮膚表面に伸びてきて増殖することが分かっています。
長年、温水洗浄を使い続けた患者さんに多く見られる症状が、肛門狭窄です。
洗い過ぎた皮膚が炎症を起こして硬くなり、伸縮性のない開きにくい肛門になってしまうのです。
肛門狭窄を起こすとちよっとしたことで肛門が切れやすくなり、重症になるとオナラをしただけでお尻が裂けるように。
さらに悪化すると、手術をして肛門を拡げなければならなくなるため、笑い事ではありません。
そして由々しきことが、温水洗浄便座の使用によって肛門に性病をうつされるケ—ス。
肛門の性病と呼ばれる尖圭(せんけい)コンジローマは、アナルセックス(肛門性交)によって感染するとされているHPV感染症です。
肛門性交をしていない患者さんに尖圭コンジローマが増えてきたため、当初は「アナルセックスをしたことを患者が隠しているのだろう」と思われていたのですが、その後、症例が多発。
私が「性行為を介さない肛門尖圭コンジロ—マ」という学会発表をしてから、温水洗浄便座原因説が広く認知されました。
尖圭コンジローマは通常は治療を必要としますが、温水洗浄便座によって引き起こされたものは洗うのをやめただけで自然に治ることが多く、肛門洗浄によって引き起こされたことの証明にもなっています。
不特定多数の人が使用するトイレでの洗浄は、どんな病気をもらうか分かりませんか ら要注意です。
※尖形コンジローム(Condyloma acuminatum)は、ヒトパピローマウイルス6、11型などが原因となるウイルス性性感染症で、生殖器とその周辺に発症する。淡紅色ないし褐色の病 変で特徴的な形 態を示し、視診による診断が可能である。自然治癒が多い良性病変であるが、パピローマウイルスの型によっては悪性化にも注意しながら経過観察することが必要となる。
巷にあふれる痔にまつわる情報の多くが間違っています。
それゆえ、誤った自己治療で悪化したり、必要のない手術を受けて後遺症で苦しんだりする患者さんが後を絶たないのでしょう。
ここでは誤情報の中でも特に知って欲しいものをピックアップしてお伝えします。
もっと知りたい方は 是非、拙書『痛みかゆみ便秘に悩んだらオシリを洗うのはやめなさい』(あさ出版)、『便秘の8割はおしりで事件が起きている』(日東書院本社)をお読みください。
痔を「恥ずかしい」と思うからか、家族に内緒にしている患者さんが少なくありません。
そんな患者心理につけ込んだ、「誰にも知られず自宅でコッソリ治せます」というコマ—シャルを展開する、高額な痔の薬があります。
そこには「痔は薬で治る」と堂々と書いてあります。
これは薬機法・薬事法に違反していると思うのですが、「ぢ」で有名な江戸時代から続く〇〇堂は特別優遇措置でもされているのでしょうか。
わらをもつかむ思いで大金をはたいて購入し、家族に内緒で使っている患者さんを大勢見てきました。
その金額、なんと20年間で5000万円!
知り合いの先生のところでは1億円払ったという患者さんも。
ある患者さんは、薬を買うと無料電話相談ができて、そこで 「信じて使い続ければ痔は治る」と説明され、20年使用したそうです。
それで治れば当院には来ませんが、どんどんひどくなり、生活に支障を来すようになったから手術を受けに来たわけです。
他にも、薬でお尻がかぶれて真っ赤に腫れているのに「好転反応です。毒が出ている証拠。そのまま使い続けてください」と言われ、皮膚がただれて座れなくなったケ—スもありました。
一番悲しかったのは、痔だと思って薬を使い続けたら癌だったというケース。
薬の副作用で癌が引き起こされた可能性も否定できないだけに、罪作りです。
そもそも、痔であると誰が診断したのか?
100歩譲って電話相談員が医師だったとして、電話でどうやって肛門の診察をするのやら。
肛門に発生する癌は早期発見すれば完治することが多いので、「肛門だから痔だ」と決めつけず、せめて癌ではないことを医療機関で確かめましょう。
肛門科が恥ずかしければ、消化器内科で大腸内視鏡検査を受けてください。
また肛門疾患にはイボ痔(痔核・脱肛)、切れ痔(裂肛)、肛門ポリ—プ、見張りイボ、皮垂(ひすい)、痔瘻(じろう)、肛門搔痒症(こうもんそうようしょう)、 肛門カンジダ症、肛門ヘルペスなどがあり、治療法が異なります。
「痔」と一言で片付けず、専門医に診てもらって、正確な診断を仰ぎましょう。
痔は薬で治りません。
痛みや出血、腫れなどの「痔に伴う症状」を抑えることはできますが、根本治療にはならないので騙されて使い続けないことです。
痔の薬の多くにステロイドが入っているので、 長期使用によって副作用が出ている患者さんもたくさんいます。
「妊娠をきっかけに痔になった」「出産のいきみでイボ痔になった」と巷でよく言われていますが、これも誤情報です。
特にイボ痔は、肛門にできた静脈瘤のようなものです。
長年のうっ血の結果できるのであって、大きくなるまでには相当の年数がかかります。
だから出産のいきみでできたものではありません。
出産時のいきみで一時的に肛門が腫れることはありますが、一時的なもので産後数カ月経つと元に戻りますから、「痔だ!」と慌てて手術を受けないことです。
世の中の便秘情報のほぼ全てが腸にまつわるものです。
乳酸菌や食物線維など便秘解消のためのものは全て腸に効きます。
「腸活」という言葉があるように「便秘=腸」を連想する人がほとんどでしょう。
でもよく考えてみてください。
腸は便を作って運ぶところ、便の製造工場のようなものです。
一方、肛門は完成した便を出すところです。
腸(製造と運搬)と肛門(排泄)のどちらもうまく機能しなければ快便とは言えませんね。
便秘は「便を秘める」と書くように、決して「便が出ない」ことではありません。
だから每日排便があってもスッキリ出し切れずに出口に残っていたら便秘なのです。
私はこれまで27年間、10万人以上の肛門を診てきましたが、痔や肛門のトラブルを抱えて私の外来を受診される患者さんの、実に8割以上は每日排便がある人でした。
患者さんご本人も「快便の私がどうして痔になったのか分からない」とよくおっしゃいます。
その答えが「出口の便秘」です。
排便後に残っているから「出残り便秘」と呼んでいます。
残った便が肛門を直撃して痔になります。
スッキリ排泄できている人は痔になりません。
それが痔になる人とならない人の違いです。
痔や肛門のトラブルは排泄の結果であり、間違った排泄を治さずに薬を使っても、注射や手術をしても、また痔になります。
痔を根本治療するための第一歩は、正しく排泄すること。
肛門の便を出さずして治療なしです。
肛門に何かトラブルを抱えている方は、薬を使う前・手術を受ける前に、排便を見直してみてください。
実は弊社のお客さまからも、温水洗浄便座に関するお悩み相談が多く寄せられます。
肛門を守っているのは、わたしたちと共生している細菌たち(マイクロバイオーム)です。
細菌を敵に回すと、人間もやられます。
COVIT-19以降、細菌は敵だ!という間違った認識が広がっています。
これも「間違いだらけの日本医療」のひとつです。
Notes
Renaissance vol.17 ダイレクト出版
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