人体

Human body

大自然の叡智の結晶・人体

体を温めすぎてはいけない?体温は高めがよいわけではない?

2022.12.23

新型コロナウイルス(COVIT-19)の影響でしょうか?

体を温めて体温を上げると、健康にいいという説が注目されています。

ではなぜ、体を温めるとよいのでしょうか?

体温が上がると免疫が上がるので、病気の改善に効果がある、と考えられているのです。

しかし一方で、体を温めるのはよくないし、体温は高ければよいというものではない、と指摘していたのが、断食博士・甲田光雄医師です。

甲田光雄医師はつねづね、

体を外から温めることだけに頼ってはいけないし、体温は高ければよいというわけではありません。

といっていました。

体は外から温めてばかりいると、自力で熱をつくろうとしなくなります。

体温は低いほうが長生きというデータがあります。

それでは、どうすれば体は自力で熱をつくろうとするのか?

それには、冷えにさらされることだと、つぎのような例をあげて説明しています。

京都の西陣織の染め物職人は、厳冬期の鴨川に人って染め物を洗いにかける。

凍てつくように水は冷たいが、職人たちの足の体温はすぐに高くなる。

冷えのために毛細血管は収縮し、血流が途絶えるが、かわりにバイパスのグローミューが開き、そこを血液は通ってながれる。

そのため体温は確保できるし、さほど冷たく感じない。

体は外から温めると自力で熱をつくらなくなるのは、生理、代謝から自然なことでしょう。

とはいえ、体を温めるのがよいと思って、温熱療法を取り入れている人も、実際は外から温めることだけに頼っているということはないはずです。

体温については、ラットやアカゲザルを使って何十年も追跡した研究の結果、「摂取カロリーを制限すると寿命が延びる」ことがわかっています。

カロリー制限で長生きしたアカゲザルの特徴は、低体温であること、低インスリンであること、DHEA(デヒドロエビアンドロステロン=副腎皮質の一種)の加齢による減少が遅れること、の3つでした。

人間でも、そのことは確認されています。

有名な「ボルティモア加齢縦断研究」という調査で、健康な男性を長期間追跡した結果、「体温が低い人と比べて、体温が高い人のほうが、死亡率は高かった」と報告されています。

ナグモクリニック(東京都千代田区ほか)の南雲吉則総院長は、自著『空腹が人を健康にする』(サンマーク出版)において、「体は温めてはいけない」との考え方に立ち、体の中から温めるには、どうすればよいかについて、次のように述べています。

飢えと寒さの中に身をおくしかない。

お腹をすかせ、寒くすればするほど、内臓脂肪はどんどん燃焼します。

そうすれば、体内の温度も上がってきます。

また、内科医の酒井健司医師は朝日新聞の医療サイト「アピタル」の連載で、アメリカの大規模病院の外来患者3万5000人(平均年齢52.9歳。64%が女性、41%が非白人)を対象に、体温と健康との関係を調べた研究を紹介しています。

研究の結果、いくつかの病気と体温との相関関係が見つかったと、つぎのように述べています。

「たとえば、甲状腺機能低下症は低い平熱と、肥満やがんは高い平熱と関係がありました」

ではなぜ、長生きする人は低体温なのでしょうか?

平熱が低い人は長生きする傾向があるのかについて、甲田医師は「基礎代謝が低く、燃焼するエネルギーが少ないので燃えカスも少ない」との見方を示しています。

燃えカスとしてできる活性酸素が少ないということなのでしょうか。

カロリー制限をすると長生きをすることについて、前出の酒井医師は「アピタル」の連載で、

実験動物において、カロリーが少ないと無駄遣いできませんので代謝が落ち、体温も下がります。

この場合はカロリー制限が原因で、低い体温と長寿のそれぞれが結果です。

カロリー制限をせずに体温だけ下げても長寿になるとは限りません。

ただし、人間でも同じことが言えるかどうかは不明で、今後の研究を待つしかありません。

ボルティモア加齢縦断研究では、基礎代謝が高いことが死亡のリスクであることも示されたので、代謝が関係していることは確かです。

ただこれも、代謝を下げると長生きできるとは限りません。

との見解を示しています。

カロリー制限と体温については、甲田医師の調査によって、少食を長年実践してきた人では体温が低くなってきていることが明らかになっています。

前出の酒井医師はまた、アピタルの連載で、体温と免疫力の関係について、「『体温を上げると免疫力がアップして健康になる』という話には、現時点では、医学的根拠はありません」と、体温と免疫力の関係を否定しています。

Smiling young woman getting pleasure of stone therapy. 

しかし、体を温めると、免疫のシステムの中心的役割を担う白血球の数が増え、免疫力が上がると考える見方もあります。

がんに対しても、体を温めて体温が上がれば、がんを消滅させるほうに働きます。

入浴して温まると一時的に体温が上がる。

体温が上がると、ヒートショック・プロテイン(HSP)というたんぱく質がつくられますが、この物質には細胞を修復したり免疫力を高めたりする働きがあるのです。

治療としての温熱療法は、体の深部へ熱を浸透させます。

温熱療法を取り入れ、病気治療に成果をあげている医師がいることも確かなのです。

温熱療法を徹底しておこなった結果、がんが消滅したという話を聞いたこともあります。

また、現代の私たちは、昔のように厳しい寒さにさらされる環境には生きていません。

しかし一方で、夏はエアコンで体を冷やすし、一年じゅう冷たい飲み物を飲む習慣も定着しています。

そうした生活で、体を冷やす傾向は強くなっていることを考えると、体を温める温活は意味があると思われます。

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ちなみに、体温については不可解なことが多く、平均体温といわれる体温が保てていれば、それより低い人よりも健康で病気になりにくい、というデータを目にしたことはありません。

体温の高低には食事の量の多寡も関係します。

温めて体温を上げる派と、外から体を温めて体温を上げるのをよしとしない派では、ようするに物事の考え方の基本も病気改善の道筋も違うのです。

そのことをぜひ知っておいてください。

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