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大自然の叡智の結晶・人体

オートファジー:古来伝わる聖なる儀式「断食」の科学的論考Vol.4

2022.10.14

“ Autophagy: A Scientific Discussion of the Ancient Sacred Ritual of Fasting ”

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸

弊社が提唱しております「マイナス腸活・7つの習慣」には、「オートファジー」が重要な要素として組み込まれています。

このオートファジーを活性化する食事が、ケトジェニック・ダイエットで、その中でも重要な役割を果たすのがオメガ3脂肪酸です。

オメガ3とオメガ6、よく聞きますよね!

それでは、このオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸について詳しくみていきましょう。

前述の通り、必須脂肪酸の2大カテゴリーは、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸です。

オメガ6に、ネガティブなイメージを持っている方も多くいらっしゃると思いますが、実は、皮膚病や関節炎の治療、がん細胞との戦いに役立っているのです。

重要なのは「適量」を摂ることです。

omega 6 and omega 3 staying in balance – pictured as a metal scale with weights and labels omega 6 and omega 3 to symbolize balance and symmetry of those concepts, 3d illustration

しかしながら憂慮すべきは、現代人の多くが、肉や一部の野菜、植物油、豆類、ナッツ類、種子などからこの「炎症誘発性の脂肪酸」を、適量を超えて過剰に摂取しているということです。

これが問題なのです。

一方、オメガ3は、前述の通り体内でいくつもの重要な役割を果たしている非常に価値のある脂肪酸です。

細胞や臓器の正常な機能や細胞壁の形成を助け、全身への酸素循環を促しています。

オメガ3が不足すると、血管内に血栓が生じやすくなり、大幅に不足すると、記憶力や気分、視力の低下、毛髪や皮膚のトラブル、不整脈、免疫系の機能低下などが起こりやすくなります。

また、オメガ3が豊富な高脂肪食は、飽和脂肪酸またはオメガ6を多く含む食事よりもインスリン抵抗性を起こしにくくする(糖尿病にかかりにくい)ことが多くの研究によって示唆されています。

オメガ3が豊富な食事は、肝細胞や骨格筋、脂肪細胞においてはインスリン受容体へのインスリンの結合親和性を高め、骨格筋と脂肪細胞ではインスリン感受性を改善します。

つまり、オメガ3が多く含まれる食品を多く摂取することが、健康にとっては重要だということです。

Magnifying glass zooms in on the omega3 capsule with a live fish inside. Concept of how to choose omega3. Choosing the best natural fish oil.

オメガ6に偏った現代人の食習慣

しかしわたしたち現代人は、どうでしょうか?

今日の多くの人が食べる食品にはオメガ3があまり含まれておらず、オメガ6に偏った食習慣になっています。

結果として、身体は最適なバランスを保ちにくくなり、オートファジーの作用が妨げられてしまっているのです。

時代を遡ってみましょう。

旧石器時代の頃、人間の食べ物に含まれるオメガ6とオメガ3の比率は、およそ2対1から1対1でした。

それが現在はおよそ20対1となり、加工食品を避けていても、魚をあまり食べず、オメガ3が豊富な魚油のサプリメントを摂っていなければ、おそらく10対1程度ではないかと考えられています。

最近の研究では、オメガ6を含む食品を摂取すると空腹感が高まり(そのため肥満につながる)、オメガ3を含む食品を摂取すると空腹感が弱まることが報告されています。

旧石器時代、大型の狩猟動物は移動しながら野草を食べていたため、土壌に含まれるミネラルが枯渇することもありませんでした。

これらの動物の肉に含まれるオメガ6とオメガ3の割合は2対1から1対1で、そのため、当時の人間が肉を食べることはとても健康的だったと考えられます。

ところが、現在の高密度家畜飼養施設(CAFO)では、何千頭もの牛や豚、鶏が押し込められ、自由に動き回れない状態で飼育されています。

家畜にはさまざまな穀物が与えられますが、大部分は遺伝子組換え(GMO)のトウモロコシです(穀類は牛などの、本来の食べ物ではない)。

たとえば、Tボーンステーキに含まれる飽和脂肪酸の含有量は、トウモロコシ飼育の牛が100グラム当たり約9グラムなのに対し、放牧による牧草飼育の牛は100グラム当たり約1.3グラムしかありません。[15]

しかし、肉よりもオメガ6の大量摂取による身体への影響が危惧されるのは、トウモロコシ油や大豆油、サフラワー油などの植物油やナッツから摂取するオメガ6のほうなのです。

これらの植物油は加工食品の多くに使われているため、気づかないうちに摂取してしまう可能性が高いのです。

ナッツには「健康的な脂質」が含まれているとよく言われますが、種類によって異なります。

表をご覧いただくと、クルミとアーモンドのオメガ6含有量が、驚くほど多いことがわかります。

もちろん、これらのナッツも健康的な食事の一部になりえますが、毎日ナッツをたくさん食べるのなら、オメガ6とオメガ3のバランスが良いものを選ぶべきでしょう。

ジェームズ・W・クレメントは、「マカダミアナッツ」がもっともバランスが良く、脂肪のほとんどが一価不飽和脂肪酸であることを評価し、推奨しています(筆者も常食していますが、ちょっとお値段がお高いです)。

あなたが食べるナッツの選択肢が、オメガ6を含む加工食品と本物のナッツなら、種類を問わず本物のナッツを選んでください。

Bowl of macadamia nut oil and macadamia nuts on white wooden background. 

オメガ6を多く摂りすぎると健康に悪いことは、1966年のオーストラリアで行われた「シドニーにおける食事と心疾患に関する研究」[16]などで知られています。

心臓疾患の予防に食事がもたらす役割についての最も説得力のある報告は、1999年に発表された「リヨンにおける食事と心疾患に関する研究」[17]でしょう。

この研究は、心臓発作の経験者を、米国心臓病協会が推奨する食事をとったグループと、果物や野菜、魚が豊富な地中海式の食事と、さらに食事にオメガ3を補充し、オメガ6の大部分をカットした食事を摂取したグループの2つに分けて行われたものです。

その結果は、後者の地中海式食事+オメガ3のグループが、前者のグループに比べて、致死的および非致死的な心臓病の発生率が「7割以上少なかった」、というものです。

この研究は、従来の「高コレステロールの食事は心臓病を招く」という理論に異を唱えるものでした。

実際、地中海式の食事には、他の食事に比べて統計的に有意なメリットが認められたため、研究は予定より早い段階で終了しました。

何より、このダイエットを摂ったグループでは、実験中の4年間で心臓突然死に見舞われた人が一人もなく、がんの罹患率も低かったのです。

米国医師会は、「コレステロール悪者説」を撤回し、2015年に改訂された『健康的な食事ガイドライン』には、「コレステロールを制限しない」という文言が追加されています。

つまり、これまでのように、食事でコレステロールを制限する必要はない、ということになったのです。

Composition with natural organic coconut oil on wooden table. 

2017年、米国心臓協会が、ココナッツオイルは健康に良くない飽和脂肪酸だ、という声明を発表し、医学会は大騒ぎとなりました。[18]

この声明の裏に金銭的な動機があることを疑う意見があり、事実、米国心臓協会は、大豆生産者から資金提供を受けていたことが発覚しています。

しかし現在では、ココナッツオイルは精製されておらず、自然な形のもの(精製穀物油とブレンドされていないもの)を摂取する限り、「不健康ではない」ことが常識になっています。

ココナッツオイルは優れた料理油で、食べた物に豊かな風味を加えることもできるうえに、中鎖脂肪酸(MCT)を摂ることもできます。

 

いかがでしたか?

これで、脂質についての基本的な知識が整理できたでしょうか。

伝統的な和食には、焼き魚や煮魚などが定番です。

お米は炭水化物、つまり糖質ですからご飯は1杯ぐらいにして、サラダボウルやおひたしなどで野菜を多く摂れば、理にかなった食事ですね。

禅僧がなぜ健康体を維持できるのか?

容易に理解できますよね!

余談ですが、禅僧の毎日の習慣である「四つん這いになっての廊下の拭き掃除」は、腸がよく動き、スムーズな排泄に直結しています。

つわりに悩む妊婦さんや、なかなか排泄が思うように出来ないとお困りなら、是非、四つん這いになって歩き回ることを試してみてください。

 

Continued in VOLUME 5


References

THE SWITCH: IGNITE YOUR METABOLISM WITH INTERMITTENT FASTING, PROTEIN CYCLING, AND KETO by James W. Clement with Kristen Loberg 2019.

15 Cynthia A. Daley, Amber Abbot, Patrick S. Doyle, et al., “A review of Fatty Acid Profiles and Antioxidant Content in Grass-Fed and Grain-Fed Beef,” Nutrition Journal 9, no.10 (March 2010)

16 Christopher E. Ramsden, Daisy Zamora, Boonseng Leelar-thaepin, et al., “Use of Dietary Linoleric Acid for Secondary Prevention of Coronary Heart Disease and Death: Evalution of Recovered Data from the Sydney Diet Heart Study and Updated Meta- analysis,” The British Medical Journal 346 (February 4, 2013): e8707.

17 Michel de Lorgeril, Patricia Salen, Jean-Louis Martin, et al., “Mediterraniean Diet, Traditional Risk Factors, and the Rate of Cardiovascular Complications After Myocardial Infarction: Final Report of the Lyon Diet Hearts Study,” Circulation 00, no.6 (February 16, 1999): 779-85.

18 Frank M. Sacks, Alice H. Lichtenstein, Jason H. Y. Yu, et al., “Dietary Fats and Cardiovascular Disease: A Presidential Advisory from the American Heart Association,” Circulation 136, no.3 (2017): el-e23.

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