健康
Health care
いのちまで人まかせにしないために
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いのちまで人まかせにしないために
2025.02.14
エピジェネティクスという科学を覚えていますか?
これは、ピアノ奏者がDNAの鍵盤を弾き、健康というメロディーか、病気という不協和音を奏でるという考え方です。
エピゲノムは、環境からの治癒のシグナルや有害なシグナルを拾う非常に敏感なマイクのようなものです。
同様に、DNAもエピゲノムを通じて、あなたの人生全体が伝えるあらゆるメッセージを注意深く聴き取っています。
悪いものが多すぎるとエピゲノムはダメージを受け、老化を早めます。
一方、良いものは遺伝子コードの指令に変換されます。
この発見の驚くべき点は、DNAは変えられないものの、エピゲノム(あなたの人生の音楽がどのように奏でられるか)は可変で、エクスポソーム(ヒトが生涯曝露する環境因子の総体)のようにわたしたちがコントロールできるものであるということです。
環境毒素や放射線などわたしたちがコントロールできないものもありますが、エピゲノムはそれらから大きな影響を受けます。
健康長寿プログラムの長寿ツールや戦略の一部は、エピゲノムに好ましい影響を与えることによって機能するようにデザインされています。
ゾンビの黙示録は現実に存在します。
ただし、あなたが想像するようなものではありません。
これまで述べてきたように、プログラムされた細胞死、つまりアポトーシスは、古くなったり傷ついたりした細胞を一掃し、新たな細胞用に部品を再利用するためのものです。
しかし、細胞が完全に死滅しない場合もあります。
そうした細胞は、いわゆるゾンビ細胞、つまり老化細胞になります。
このゾンビ細胞は、DNAの損傷、極端に短いテロメア、化学的・毒性的ストレス(炎症を引き起こす食生活や生活習慣などを含む)から生じ、ガン、心臓病、肝臓病、認知症、パーキンソン病、白内障、関節炎、筋肉減少(サルコペニア)といった老化に伴うあらゆる疾患を加速させます。
ゾンビ細胞は体内を徘徊しながらサイトカインと呼ばれる危険な分子や他の分子を分泌して炎症を促進し、周囲の細胞をゾンビ細胞(老化細胞)に変えていきます。
このため、連鎖反応が引き起こされます。
このサイクルは、年齢とともに免疫系の機能が衰えるため、さらに悪化します。
これらの細胞から分泌される炎症性メッセージが体内にあふれるようになり、「炎症性老化(インフラメイジング)」というダメージが引き起こされます。
炎症はさらに多くのゾンビ細胞を生み出し、危険で致命的な自己増殖サイクルを引き起こします。
老化研究の多くは、このゾンビ細胞をいかに殺すかに焦点を合わせています。
幸運なことに、ゾンビ細胞を殺し、炎症の進行を止め、組織の修復、若返り、再構築を可能にする天然化合物や医薬品は存在します。
それはセノリティクス(老化細胞除去薬)と呼ばれる、天然化合物と医薬化合物からなる新たなカテゴリーです。
ある研究では、ゾンビ細胞を死滅させるためにリンゴやタマネギに含まれる天然化合物ケルセチンと白血病の化学療法薬ダサチニブを組み合わせたところ、マウスの寿命が36%延びたという結果が得られました。18
ミトコンドリアを健康に保つためには、ライフスタイルや食習慣の見直しが必要です。
エネルギーを効率よく生み出すために、ミトコンドリアが最も適した環境で働けるようにすることが重要です。
次の方法でミトコンドリアを活性化させ、機能を向上させることができます。
ミトコンドリアを活性化させることは、身体全体のエネルギーを向上させるだけでなく、健康的な老化をサポートする重要な方法となります。
これらの対策を実践し、日常生活に取り入れることで、エネルギーの枯渇を防ぎ、より健康で活力のある生活を送ることができるでしょう。19
この状況は決して避けられないわけではありません。
良いニュースは、傷ついたミトコンドリアを掃除して取り除く方法がすでに確立されており、ミトコンドリアの数を増やし、その機能を向上させる方法も明確になっていることです。
言い換えれば、エネルギーを高めるためには、古い1970年製の遅い旧車を新しい速くてクリーンな水素自動車に変えるようなものです。
古くなったミトコンドリアをきれいにし、若返らせるための最良の方法は、低デンプン・低糖質の自然食品、質の良い脂肪、そしてマイクロバイオームを支えるポリフェノールが豊富な食生活を送ることです。
さらに、間欠的ファスティングやカロリー制限、冷水浴(コールドプランジ)や水シャワー、温冷浴、有酸素運動、筋力トレーニングといったホルミシス(良いストレス)ルーチンを取り入れることが重要です。
これらの方法を実践することで、ミトコンドリアの修復と再生が促進され、エピゲノムの問題解決やゾンビ細胞の除去、DNAの修復、さらにはテロメアの延長が期待できます。
身体の生物学的仕組みは遺伝子によってコントロールされているとはいえ、その遺伝子は、栄養豊富な食品の一形態──つまり欠けている前駆物質(Precursor)に対処する標的サプリメント──及び生活習慣の改善という、かなりシンプルで薬物を使わない処方によって永続的な「修復」モードに保てることを科学は証明している。
Dr. サラ・ゴットフリート(Sara Gottfried, MD)医学博士・ハーバード大学医学部卒。科学者、研究者、講演者、コネクター、学者、探求者、母親であり、ニューヨークタイムズのベストセラー作家。
References