健康

Health care

いのちまで人まかせにしないために

科学的根拠にもとづく、運動によるバイオハック Vol.3

2024.11.08

コエンザイムQ10

アンチエイジングのためには、運動と共に適切な栄養摂取が必要です。

シンプルな「エイジ マネジメントプログラム」をお探しで、同時に心血管疾患の予防にも関心のある人向けに、米国を代表する予防心臓専門医の一人スティーブン・シナトラ博士が推奨する 1 日の栄養摂取量は次のとおりです。

 

・魚油 1 グラムを含むマルチビタミン/ミネラル ファンデーション プログラム

・コエンザイム Q10: 90-150 mg

・L-カルニチン: 250-750 mg

・D-リボース: 5 g

・マグネシウム: 400 mg

 

このリストにあるコエンザイム Q10 のもう 1 つの重要な貢献は、炎症マーカーであるC反応性タンパク質 (CRP) を減らす能力であり、心臓発作後の転帰がより良好になる理由も説明できます。

今回の投稿はタンパク質のお話しから始まりますが、同じタンパク質でも「C反応性タンパク質 (CRP)」は厄介者です。

数値が上がっているときはなんらかの感染症にかかっていることが多く、細菌やウイルスによる感染症などが疑われます。

細胞が破壊されることによって増えるものとしては、悪性腫瘍、熱傷、外傷、手術後などがあります。

 

・0.4~0.9mg/dLは軽度で、アトピー性皮膚炎や軽い風邪などでも出る値です。

・1.0~2.0mg/dLは高熱、ウイルス感染症、ひどい火傷などで出る値です。

・2.0~15.0 mg/dLは中程度で、透析や糖尿病、細菌感染、重度の外傷などが考えられます。

・15.0~20.0 mg/dLは重度で、関節リウマチ、肺炎、悪性リンパ腫などが考えられます。

 

敗血症などの重症感染症の場合も極めて高い値になることが多く、注意が必要です。

C反応性タンパク質 (CRP)は以前は、肺炎球菌による肺炎の際に出るタンパク質と考えられていましたが、検知感度が上がった今は、正常時でも血液中にごくわずかに存在することがわかっており、組織が破壊されたり炎症を起こしたりすると、12時間以内に急激に増加し、病気が快復すると急速に正常値に戻ることが知られています。

このように短時間で反応するタンパク質を「急性相反応物質」と呼びます。

コエンザイム Q10 は、ミトコンドリア膜、ミトコンドリア DNA、細胞壁をフリーラジカルの攻撃から保護する強力な抗酸化物質です。

しかし、体内で最も重要な機能は、エネルギー代謝における中心的な役割です。

コエンザイム Q10 は、眼の水晶体にある遠隔細胞も含め、すべての細胞を酸化損傷から保護します。

 

タンパク質はどれくらい摂ったらいいのか?

 

筋肉の形成と維持は次の要素から成ります。

筋肉への物理的負荷と、負荷を与えた後に筋肉を回復させるための時間と原材料です。

その原材料がタンパク質です。

運動プログラムを始めたら、マクロ栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質)を分析するフードトラッキングアプリでタンパク質の摂取量をモニタリングしましょう。

タンパク質の推奨摂取量にばらつきがある理由を突き止めるのに、やや時間がかかったので、あなたの時間を節約するために、推奨摂取量(Recommended Dietary Allowance:RDA)を簡単にまとめてみました。

 

1日の推奨摂取量は、体重1キロ当たり0.8グラムですが、定期的に運動している場合、これでは少なすぎるでしょう。

糖尿病や慢性腎疾患を患っている人(タンパク質が多すぎると腎臓にストレスをかけるリスクがある人)は、1日のタンパク質摂取量を体重1キロ当たり0.8〜1グラムに収める必要があります。[31]

65歳以上の人は、適正な筋肉量を維持してフレイルを回避するために、1日体重1キロ当たり1.2グラム以上タンパク質を摂取する必要があります。

栄養不良や急性・慢性疾患がある、もしくはケガをしている高齢者、さらには定期的に運動していない人は、1日体重1キロ当たり1.2〜1.5グラムの摂取を目標にしたいところです。[32]

一般的なアスリートは、1日体重1キロ当たり1.4〜1.7グラムを摂取すべきです。

ランナーは、トレーニングのニーズを満たすため、1日体重1キロ当たり1.4〜1.7グラムの摂取が必要になります。

しかし、最新の研究によると、持久系アスリートは1日体重1キロ当たり1.8グラム以上の摂取が必要とみられます。

男性の持久走ランナーは1日体重1キロ当たり1.8グラムの推奨摂取量を多くの場合満たしていましたが、女性ランナーはこの高い方の基準を満たしていないケースが多かったと研究者は指摘しています。[33]

筋肉量を維持したいウェイトリフティング選手は、1日体重1キロ当たり1.6グラム以上の摂取が必要となります。[34]

たとえば、体重68キログラムの人は、推奨摂取量(RDA)に従うなら、1日当たり約54グラムのタンパク質の摂取を目指すことになります。

もしこれが筋肉量を増やそうとしているウェイトリフティング選手なら、108グラム以上のタンパク質摂取が必要となります。

持久走ランナーならば、122グラム以上のタンパク質(筋肉の成長に必要な最低限の量)の摂取が必要です。

 

また、自分の理想体重に基づいてタンパク質の必要摂取量を計算しなければならないため、筋肉量を増やそうとしているか減らそうとしているかによっても、必要摂取量が多少変わることを覚えておいてください。

年齢を重ねたときに命を脅かす最大の脅威が、フレイル(加齢による筋力や活動量の低下で脆弱になる状態)と肥満です。

この2つは転倒や代謝性疾患につながるおそれがあります。

65歳以上になると、筋肉の成長のためのタンパク質同化作用が低下するため、若いときと同じ量のタンパク質を摂っても、それを筋肉の形成に使うことがあまりできなくなります。

その結果として筋肉が細るため、65歳以上の人には、タンパク質を1日体重1キロ当たり1.2グラム以上摂ることをお勧めします。

ふだんから運動している高齢者は、筋肉のタンパク質合成を最大化するために、運動後90分以内に40グラムのタンパク質を摂取する必要があると、研究は示唆しています。[35]

 

タンパク質はいつ摂ればいいのか?

 

筋肉のタンパク質合成は、運動後に筋成長を促すアミノ酸が十分循環しているかどうかに左右されます。

特に女性の場合、運動後に必須アミノ酸(EAA)のロイシンが十分あることが必要です。

ロイシンは脳に入ると、筋肉を成長させるよう身体に信号を送ります。

この信号を、運動後十分なタンパク質を摂ったときに作動する細胞内の筋成長スイッチと考えましょう。

ギリシャヨーグルトやプロティンシェイクなど、ロイシンを豊富に含む食べ物を補給することが有効です。

タンパク質の摂取量が足りないと、体力や体格の向上は見込めず、ジムトレーニング後に余計な痛みが出ます。

運動後のタンパク質補給は、筋肉のタンパク質合成に大きく関わりますが、その必要量と最適なタイミングは年齢と性別によって異なります。

閉経前の女性は、運動後に30グラムのタンパク質が必要であり、タンパク質補給に最適なタイミングは運動後90分以内です。閉経後の女性の場合は、運動後に40グラムのタンパク質が必要であり、タンパク質補給に最適なタイミングは同じく運動後90分以内です。

男性はトレーニング後、20グラム以上のタンパク質が必要であり、タンパク質補給に最適なタイミングはトレーニング後3〜18時間以内です。

必要なタンパク質をすべてホールフード(未加工の丸ごとの食材)から摂るのが理想的ですが、そうやって必要摂取量を満たすのが難しいこともあります。

仕事や旅行など多忙な生活のなかでタンパク質の必要摂取量を満たせない日は、筋肉のタンパク質合成信号を作動させるために必須アミノ酸(EAA)5グラムをサプリメントで補うという方法もあります。

必須アミノ酸は体内でつくれないアミノ酸なので、食べ物から摂らなければなりません。

筋肉の増量があなたの優先事項なら、プロティンサプリメントを検討しても良いでしょう。

2018年の研究[36]は、プロテインサプリメントの摂取は健康な成人の筋力と筋肉の大きさを著しく高めるが、1日体重1キロ当たり1.6グラム前後でその効果が頭打ちになることを明らかにしました。

動物を丸ごと使用した動物性プロテインブレンド(加水分解ビーフ、フリーズドライ内臓肉、骨、血液を含む)と植物性プロテインパウダーの両方を使っているという人もいます。

植物性プロティンパウダーは、ピープロテイン、パンプキンシードプロテイン、チアシードプロテイン、ココナッツプロテイン、ヘンプシード(麻の実)プロテインなどからつくられたものです。

コラーゲンプロテインは、グリシンを増やすのに特に効果的です。

内臓以外の肉を主に食べている患者は、診療時の尿中有機酸検査でグリシンの欠乏がよくみられます。

グリシンは骨や腱といった結合組織に存在します。

グリシンはコラーゲン合成を高めることがわかっており、グリシンの欠乏は変形性関節症の発症につながるおそれがあります。[37]

動物性のグリシン源は、コラーゲンプロテインパウダー、ボーンブロスプロティンパウダー、ボーンブロスなどです。動物性食品を口にしないヴィーガンに適したグリシン源には、セサミシード、パンプキンシード、大豆、ホウレンソウ、ピスタチオがあります。

 

タンパク質の摂りすぎは逆効果⁉︎

 

老化を研究している科学者は、特に運動不足の場合、タンパク質の摂りすぎが加齢関連の疾患を加速させる可能性があると考えています(IGF-1)。

身体は成長のためにタンパク質を—菜園に蒔かれた肥料のように—使い、筋肉であろうとガン細胞であろうと、体内で育んでいるものすべての成長を促すというものです。

運動によってマイオカインと呼ばれるシグナル分子が分泌され、このマイオカインがガン細胞を攻撃して殺すよう免疫細胞に信号を送ります。

運動しなければ免疫細胞がこの信号を受け取らないため、タンパク質からの成長信号が、体重増加や加齢に伴うガン細胞の成長を促すおそれがあります。

アラン・アラゴンなどのエビデンスに基づく栄養学の研究者たちは、タンパク質不足は脂肪減少や筋肉維持、筋肉の質、運動パフォーマンス、心臓代謝などに悪影響を及ぼすため、長寿を阻む大きな脅威であると確信しています。

さらに、最近の調査では、人間はBCAA(分岐鎖アミノ酸)の数値が年齢とともに低下し、フレイルによってさらに低下すると結論づけています。[38]

1日体重1キロ当たり1.6グラムのタンパク質の摂取を目指すようにして、週に5日の運動を心がけ、それ以外の日や旅行中は、「プロティンサイクリング」をときどき取り入れているという人もいます。

プロティンサイクリングとは、週1回、タンパク質の摂取量を1日20グラム未満に制限することです。

運動していないときに断続的に栄養を枯渇させるこの習慣は、オートファジー(死んだ細胞の除去)を促進します。

 

心の状態を最適化する運動 — ヨガ・太極拳

 

運動は単に心拍数を高め、筋肉を鍛えるだけのものではありません。

年齢を重ねても可動性を維持し、転倒の防止に不可欠な、バランスと柔軟性を高めることも、運動の重要な目標となります。

また、運動はメンタルヘルスにも良い効果をもたらします。

ヨガと太極拳は、身体的な負担が軽い運動ですが、とてもポジティブな気分になれます。

「身体化認知理論」がこの効果を説明しています。[39]

この理論によれば、私たちの動き方や体形のコントロールの仕方は、顔の表情や身振りとともに気分や認知行動を変えます。

それらは双方向の関係にあります。

私たちの気分が動き方に影響を与えるように、私たちの立ち方や身体の運び方、動き方は気分に影響を与えるのです。

たとえば、ダンスをすると気分が良くなり、前かがみで座ると気分が落ち込むのは、そこに理由があるのだろう。

特定の運動は、心拍数を高めない低エネルギーで負担が軽い運動であったとしても、体内のエネルギーを高めます。

東洋と西洋の運動理論の融合という観点から瞑想的運動を分析したある研究[40]は、気功を行うと深いリラックス状態になり、筋緊張のバランスが整い、柔軟性と固有受容感覚(身体が空間のどこにあるかを感じる力)が高まると同時に、脳の可塑性や連動性、血流、(転倒防止に関わる)バランスが向上し、さらには、副交感神経の働き(「安静と消化」モード)が活発になることを立証しました。

ヨガ、太極拳、気功といった心と身体にアプローチする「マインドボディエクササイズ」の素晴らしいところは、柔軟性や体力、バランス、血流、内分泌腺の刺激、連動性を向上させ、同時にリラックス反応も引き出す点です。

気功と太極拳は、呼吸にしっかりと注意を払いながら身体に意識を集中する瞑想的な動きを取り入れているため、呼吸を遅くして、副交感神経の働きを高めます。

これによって自律神経系のバランスを整える深いリラックス状態が引き出されます。

また、多面的動作を行うと、身体は一体的に動き、それが認知機能や脳の可塑性、神経と筋の連動性、注意力、姿勢をコントロールする力が高まります。

この種の瞑想的運動が炎症を抑え、免疫力を高め、DNA修復を促すことを明らかにした研究もあります。[41]

ヨガは太極拳や気功と少し異なります。

曲げたり捻ったりする動作によって内分泌腺の刺激に特に効果を発揮し、姿勢とバランスを改善し、柔軟性と体力を高めます。

しかし、最も興味深い効果のひとつは、気分を変えられることかもしれません。

1890年、ウィリアム・ジェームズ(William James[42]は、感情が姿勢や身体の状態を左右する場合もあるが、姿勢や身体の状態も感情を左右する(もしくは感情を強める)場合があるという理論を打ち出しました。

私たちは幸せだから笑うというだけではなく、笑うと幸せになるのだとジェームズは説明しました。

ヨガは、思考・感情と身体活動とのこうした双方向関係を促進します。

 

ヨガは科学的にも心身を健康にする

 

ヨガは、感情と身体のバランスを養うために自分でできる最も効果的な活動のひとつです。

身体のバランスは健康寿命を延ばすうえでとても重要であり、ヨガは次に挙げるようなさまざまな種類のバランスを養います。

 

・静止しているとき(マウンテンポーズなど)に安定した姿勢を保つ静的バランス

・さまざまな姿勢で空間を移動しているときに、かかとからつま先までを真っすぐにするなど、安定した姿勢を保つ動的バランス

・予測される姿勢外乱(姿勢の乱れの原因となる外部からの力)を見越した予期的バランス(ヨガのポーズとポーズの間の移行がその向上に役立ちます)

・転びそうになったときに姿勢を立て直すような、予期せぬ姿勢外乱を打ち消す機能的な反射神経を指す反応的バランス[43]

 

ヨガについてもうひとつ興味深い点は、圧電気という科学的視点から説明できることです。[44]

圧電気は身体を曲げたり伸ばしたり捻ったりしたときに生じます。

これが電流に変換され、ある種のストレスを身体に与えるのです。

骨と筋肉は、ある程度弾力性と圧縮性があり、身体の動きによって伸びたり縮んだりできます。

これは一見難しくない運動でも実際は多くのエネルギーを生み出す理由のひとつと考えられます。

メカニカルストレス(機械的刺激)や圧力、潜熱は、コラーゲンや腱、骨に蓄積する電荷を生み出します。[45]

ヨガは種類が豊富で、引き締まった筋肉をつくり柔軟性を高める「アシュタンガ」のような体力を要する激しいものから、すべての臓器・血管・筋肉・神経・骨を取り巻いて正しい位置に保持する体内の結合組織である筋膜に効く「陰ヨガ」のような軽めのものまであります。

私たちは筋膜に多くの緊張を抱えています。

ある理論によれば、私たちは筋膜に感情とトラウマを抱えており、筋膜は絶え間ない脅威に反応して硬くなるというものです。

筋膜を身体の光ファイバーケーブルシステムと捉えてみましょう。

感情が行き場を失うとよく痛みを感じますが、適切なストレッチをすれば、身体的ストレスと感情的ストレスの両方の解消に効果があります。

とはいえ、他の運動と同様、まずは軽いものから始めましょう。

陰ヨガでもケガをする人はいます。

できるかどうか不安なものは避けたほうが良いですし、痛みが出ればやめるべきです。

身体が硬ければ多少の痛みを伴うのが普通ですが、それは身体を伸ばすことによる痛みであって、ケガの痛みではありません。

ヨガのクラスに参加して、インストラクターから正しいポーズを習ってみましょう。

 

筋肉をつければ長生きもできる⁉︎

 

ここで警鐘を鳴らしておきたいです。

ミレニアル世代は、体力の基本的な尺度である握力が低下しています。

2016年の研究によると、現在30歳未満の男女は、1985年に同じ年齢だった人たちと比べて握力が著しく低いです。[46]

握力の低下は、この世代が将来フレイルに陥ることを暗示する恐ろしい前兆です。

フレイルを防ぐには、筋肉が落ちてからではなく、いまのうちに体力をつける必要があります。

強い筋肉を維持していることは、健康寿命と長寿の主な予測因子となります。

部屋の中を歩き回れなければ、ほとんどの人は介護施設に入ることになりますし、転倒は高齢者の身体機能障害や死亡の主な原因です。

80代の人の半数が、可動性の制限によって転倒しやすくなり、介護の必要性が高まります。

また、転倒や骨折の後、高齢者の4%が急性死に至り、40%が2年以内に死亡し、60〜80%が機能を完全に回復できません。[47]

転倒は骨粗しょう症を患う人にとって特に大きな問題となります。

米医学誌『メノポーズ(更年期)』に掲載された45〜69歳の女性1100人以上を対象とした研究によれば、上半身と下半身の健康状態は、身体的リスクに加えて、中高年女性のうつ病や不安症とも関係しています。[48]

虚弱状態を測るひとつの尺度が握力低下であり、もうひとつの尺度が椅子から立ち上がるのに時間がかかることです。

その両方が、うつや不安症状の増加と関連性がありました。

サルコペニアとは、老化に伴う筋肉量の減少とその結果生じる身体の虚弱化を指します。

サルコペニアは身体機能障害の増加、転倒、入院、介護施設入居、そして死へとつながります。

進行性の筋肉構造の喪失(筋肉量の減少、筋脂肪の増加、握力の低下で測られるもの)と機能の喪失(歩行速度の低下や最大酸素摂取量の低下で測られるもの)がサルコペニアの特徴です。

このプロセスの第一段階がミトコンドリアの機能不全です。

しかし、ご存じのとおり、運動によってミトコンドリアの健康を高め、このプロセスを逆行させることができます!

筋力トレーニングと有酸素運動のどちらでも、適切なタンパク質摂取を組み合わせることで、サルコペニアを防ぐことができます。[49]

平均的な人は、晩年の約10年間を介護されながら生活しますが、身体活動を維持している人は、介護される期間を平均で1〜3年に短縮できます。

女性の場合、25〜30歳までに筋肉量が毎年約1%ずつ減り始めます。[50]

70歳までに筋断面積の最大30%を失い、80歳までに40%を失う可能性があります。[51]

年齢とともに柔軟性も失われて身体が硬くなり、それに伴って可動域が減少し、多くの日常生活動作がしづらくなります。

年齢とともに骨密度は低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなります。

女性は思春期に骨量の大半を形成し[52]、18歳前後で骨密度が最も高くなります。

閉経後にエストロゲンが減少すると、骨密度が急激に低下し、骨粗しょう症の発症につながる場合があります。

成人期に最適な骨量に達していないと、ゆくゆくはフレイルや虚弱状態に陥るおそれがあります。

ウェイトトレーニング(その他、骨に何らかのストレスを与えること)は、加齢で低下した骨密度を少しでも回復させる最も効果的な方法のひとつです。

しかし、研究によれば、その効果はエストロゲン補充療法を受けているか否かに左右される可能性があります。[53]

 

運動を習慣化する秘訣は「気持ちいい〜」

 

筋肉や骨の強化に取り組むのに早すぎることはありません。

生理的レジリエンスを高め、フレイルを防ぎ、年齢を重ねても可動性を保ち、有酸素能力を維持してミトコンドリアの量と健康を高めることを本気で望むなら、運動を最優先すべきです。

定期的な筋力トレーニングで筋量と筋力を保ち、バランスと柔軟性が試される固有受容感覚を高める運動でこれらを維持し、予測できない方法で身体を動かすことでレジリエンスを保つようにしましょう。

さまざまなトレーニング方法に、次々と適応することを身体に覚えさせ、(ケガをした後などの)虚弱化の予防に体系的に取り組みましょう。

運動を始めたばかりのときは、さほど気分が良くならないかもしれません。

むしろ、疲労や痛み、体力の消耗を感じるでしょう。

しかし、痛みに負けずに最初の2〜3週間運動をやり通せば、それだけの価値はあります!

起き上がって運動する意志力をずっと持ち続けるのは難しいかもしれませんが、最初の2〜3週間は何とか続けてみましょう。

そうすれば運動するのが気持ち良くなり、数日サボると運動したくてたまらなくなるはずです。

トレーニングのつらさではなく、トレーニング後の気持ち良さに意識を向けましょう。

自分が楽しめるエクササイズや、一緒にトレーニングする仲間を見つけましょう。

ジムに入会しても、自宅から通いやすいトレーニングクラスに参加しても良いです。

自分のペースでかまいません。

まったく運動しないよりは、少しでも運動するほうが良いと肝に銘じましょう。

運動は、目先の効果だけにとどまらず、健康寿命を延ばし、エネルギー・体力・可動性を高め、寿命を延ばすといった先々の効果も期待できる素晴らしいバイオハックです。

 

まとめ—運動によるバイオハック

 

・健康レベルを判断するために安静時心拍数をトラッキングする。

・自分の中強度運動と高強度運動の範囲を計算する。

・心肺フィットネスを判断するために最大酸素摂取量をトラッキングする。

・例に挙げたHIITを試す。

・ウェイトトレーニングの基本的なエクササイズを覚える。

・ジムに通えないときは、自重トレーニングを試す。

・活動レベルに基づいて、自分のタンパク質必要摂取量を計算する。

・タンパク質補給に最適なタイミングを知る。

・ヨガなどのマインドボディエクササイズを組み込む。

・老化に伴うフレイルリスクの低減に向けたトレーニング計画を立てる。

 

運動によって健康を最適化し、バイオハックする方法について詳しく見てきました。

運動は心身の健康を保つために欠かせない要素であり、継続的な運動習慣を取り入れることが重要です。

自分なりの最適な運動プランを見つけて、実践してみましょう!

 

定期的な運動習慣がある人から病気は退散する

 

スシュルタ(Sushruta、Susruta)「外科手術の父」と称される古代インドの医師

スシュルタは生没年不詳のため、彼が生きていた年代は諸説あり、紀元前1000年から800年ごろにかけて活躍したとする説、紀元前6世紀ごろに活躍したという説、紀元後2世紀から3世紀にかけて生きたという説など、正確な時期は判明していない。

インド二大古典医学書の一つ『スシュルタ・サンヒター』は、カーシー地方の王であったダンバンタリが弟子のスシュルタに外科的治療法を教える構成をとっており、スシュルタ自身が編纂を行なったとされている。

 


 

Notes

  1. Raphael Bize, Jeffrey A. Johnson, and Ronald C. Plotnikoff, “Physical Activity Level and Health- Related Quality of Life in the General Adult Population: A Systematic Review,” Preventative Medicine 45, no. 6 (2007), https://doi.org/10.1016/j-ypmed.2007.07.017.
  2. Sang-Ho Oh, Don-Kyu Kim, Shi-Uk Lee, Se Hee Jung, and Sang Yoon Lee, “Association Between Exercise Type and Quality of Life in a Community-Dwelling Older People: A Cross-Sectional Study,” PLOS One 12, no. 12 (2017), https://doi.org/10.1371/journal.ponc.0188335.
  3. Diane L. Gill, Cara C. Hammond, Erin J. Reifsteck, et al., “Physical Activity’ and Quality’ of Life,” Journal of Preventative Medicine and Public Health 46, no. 1 (2013), https://dx.doi. org/10.3961%2Fjpmph.2013.46.S.S28.
  4. David A. Raichlen and Gene E. Alexander, “Adaptive Capacity: An Evolutionary’ Neuroscience Model Linking Exercise, Cognition, and Brain Health,” Trends in Neurosciences 40, no. 7 (2017), https://doi.org/10.1016%2Fj.tins.2017.05.001.
  5. Alexandre Rebelo-Marques, Adriana De Sousa Lages, Renato Andrade, et al., “Aging Hallmarks: The Benefits of Physical Exercise,” Frontiers in Endocrinology 9, no. 258 (2018), https://dx.doi.org/10.3389%2Ffendo.2018.00258.
  1. “Brain-Derived Neurotrophic Factor Controls Mitochondrial Transport in Neurons,” Journal of Biological Chemistry 289, no. 3 (2014), https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3894309/.
  2. Alejandro Santos-Lozano, Helios Paareja-Galcano, Fabian Sanchis-Gomar, et al., “Physical Activity and Alzheimer Disease: A Protective Association,” Mayo Clinic Proceedings 91, no.8 (2016), https:// doi.org/10.1016/j. mayocp. 2016.04.024.
  3. J. J. Steventon, C. Foster, H. Furby, D. Holme, et al., “Hippocampal Blood Flow Is Increased After 20 Min of Moderate-Intensity Exercise,” Cerebral Cortex 30, no. 2 (2020), https://doi.org/10.1093/ cercor/bhz.104.
  4. Valentina Perosa, Anastasia Priester, Gabriel Ziegler, et al., “Hippocampal Vascular Reserve Associated with Cognitive Performance and Hippocampal Volume,” Brain 143, no. 2 (2020), https:// doi.org/10.1093/brain/awz383.
  5. Booth et al., “Role of Inactivity in Chronic Diseases.”
  6. Y. H. Wei, Y. S. Ma, H. C. Lee, C. F. Lee, C. Y. Lu, “Mitochondrial Theory of Aging Matures: Roles of mtDNA Mutation and Oxidative Stress in Human Aging,” National Library of Medicine 64, no. 5 (2001), https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11499335/.
  7. Adeel Safdar, Jacqueline M. Bourgeois, Daniel I. Ogborn, and Mark A. Tarnopolsky, “Endurance Exercise Rescues Progeroid Aging and Induces Systemic Mitochondrial Rejuvenation in mtDNA Mutator Mice,” Biological Sciences 108, no. 10 (2011), https://doi.org/10.1073/pnas.1019581108.
  8. Bhupendra Singh, Trenton R. Schoeb, Prachi Bajpai, Andrzej Slominski, and Keshav K. Singh, “Reversing Wrinkled Skin and Hair Loss in Mice by Restoring Mitochondrial Function,” Cell Death and Disease 9 (2018), https://www.nature.com/articles/s41419-018-0765-9.
  9. Hannah Arem, Steven C. Moore, Alpa Patel, et al., “Leisure Time Physical Activity and Mortality: A Detailed Pooled Analysis of the Dose-Response Relationship,” JAMA Internal Medicine 175, no. 6 (2015), https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2015.0533.
  10. U.S. Department of Health and Human Services, 2018 Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition, https://hcalth.gov/our-work/nutrition-physical-activity/physical-activity- guidelines/current-guidelines.
  11. Arem et al., “Leisure Time Physical Activity and Mortality.”
  12. Barry A. Franklin, Paul D. Thompson, Salah S. al-Zaiti, et al., “Exercise-Related Acute Cardiovascular Events and Potential Deleterious Adaptations Following Long-Term Exercise Training: Placing the Risks into Perspective—An Update: A Scientific Statement from the American Heart Association,” Circulation 141, no. 13 (2020), https://doi.org/10.1161/cir.0000000000000749.
  13. James H. O’Keefe, Evan L. O’Keefe, and Carl J. Lavie, “The Goldilocks Zone for Exercise: Not Too Little, Not Too Much,” Missouri Medicine 115, no. 2 (2018), https://pubmed.ncbi.nlm.nih. gov/30228692/.
  14. “Million Women Study,” National Cancer Institute. 2022fp6JJ 1413(27’Xo https://epi.grants. cancer.gov/cohort-consortium/members/million-women-study.html.
  15. O Keele et al., “The Goldilocks Zone for Exercise.”
  16. Thijs M. H. Eijsvogels, Paul D. Thompson, and Barry D. Franklin, “The ‘Extreme Exercise Hypothesis’ : Recent Findings and Cardiovascular Health Implications,” Current Treatment Options in Cardiovascular Medicine 20 (2018), https://dx.doi.org/10.1007%2Fsll936-018-0674-3. 
  17. Magnus Thorsten Jensen, Pouk Suadicani, Hans Oletlein, and Finn Gyntelberg, “Elevated Resting Heart Rate, Physical Fitness and All-Cause Mortality: A 16- Year Follow-up in the Copenhagen Male Study,” Heart 99, no. 12 (2013), https://heart.bmj.com/content/99/12/882. full?sid=90e3623c-1250-4b94-928c-0a8f95c5b36b.
  18. Mayo Clinic Staff, “Exercise Intensity: How to Measure It,” Mayo Clinic, 2021, https://www. mayodinic.org/healthy-lifestyle/fitness/in-depth/exercise-intensity/art-20046887.
  19. Geetha Raghuveer, Jacob Hartz, David R. Lubans, et al., “Cardiorespiratory Fitness in Youth: An Important Marker of Health—A Scientific Statement from the American Heart Association,” Circulation 142, no. 7 (2020), https://doi.org/10.1161/CIR.0000000000000866.
  20. Booth et al., “Role of Inactivity in Chronic Diseases.”
  21. Zhihui Le, Jean Woo, and Timothy Kwok, “Tire Effect of Physical Activity and Cardiorespiratory’ Fitness on All-Cause Mortality in Hong Kong Chinese Older Adults,” Journals of Gerontology: Series A73. no. 8 (2018), https://doi.org/10.1093/gerona/glxl80.
  22. Katya Vargas-Oritz, Victoriano Perez-Vazquez, and Maciste H. Macias-Cervantes, “Exercise and Sirtuins: A Way to Mitochondrial Health in Skeletal Muscle,” International Journal of Molecular Sciences 20, no. 11 (2019), https://doi.org/10.3390/ijms20112717.
  23. Mikael Flockhart, Lina C. Nilsson, Senna Tais, et al., “Excessive Exercise Training Causes Mitochondrial Functional Impairment and Decreases Glucose Tolerance in Healthy Volunteers,” Cell Metabolism 33, no. 5 (2021), https://www.cell.com/cell-metabolism/pdf/S1550-4131(21)00102-9.pdf.
  24. Brian Glancy, Lisa M. Hartnell, Daniela Malide, et al., “Mitochondrial Reticulum for Cellular Energy Distribution in Muscle,” Nature 523 (2015), https://doi.org/10.1038/naturcl4614.
  25. Andre Lacroix, Tibor Hortobagyi, Rainer Beurskens, and Urs Granacher, Effects of Supervised vs. Unsupervised Training Programs on Balance and Muscle Strength in Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis,” Sports Medicine 47 (2017), https://doi.org/10.1007/s40279-017-0747-6.
  26. Osama Hamdy and Edward S. Horton, “Protein Content in Diabetes Nutrition Plan, Current Diabetes Reports 11, no. 2 (2011), https://doi.org/10.1007/sllS92-010-0171-x.
  27. Hamdy and Horton, “Protein Content in Diabetes Nutrition Plan.
  28. Hiroyuki Kato, Katsuya Suzuki, Makoto Bannai, and Daniel R. Moore, Protein Requirements Are Elevated in Endurance Athletes After Exercise as Determined by’ the Indicator Amino Acid Oxidation Method,” PLOS One 11, no. 6 (2016), https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/ PMC4913918/.
  29. “Optimal Protein Intake Guide,” Examine, 2022, https://examine.com/guides/protein-intake/.
  30. Tyler A. Churchward-Venne, Andrew M. Holwerda, Stuart M. Phillips, and Luc J. C. van Loon, “What Is the Optimal Amount of Protein to Support Post-Exercise Skeletal Muscle Reconditioning in the Older Adult?” Sports Medicine 46, no. 9 (2016), https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26894275/.
  31. Robert W, Morton, Kevin T. Murphy, Sean R. McKellar, et al., “A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression of the Effect of Protein Supplementation on Resistance Training- Induced Gains in Muscle Mass and Strength in Healthy’ Adults,” British Journal of Sports Medicine 52, no. 6 (2018), https://doi.org/10.1136/bjsports-2017-097608.
  32. Patricia de Paz-Lugo, Jose Antonio Lupianez, and Enrique Melendez-Hevia, “High Glycine Concentration Increases Collagen Synthesis by Articular Chondrocytes in Vitro: Acute Glycine Deficiency Could Be an Important Cause of Osteoarthritis,” Amino Acids 50 (2018), https://doi. org/10.1007/s00726-018-2611-x.
  33. David G. Le Couteur, Samantha M. Solon-Biet, Victoria C. Cogger, et al., “Branched Chain Amino Acids, Aging and Age-Related Health,” Ageing Res Rev. (December 2020) 64:101198: 10.1016/j.arr.2020.101198.
  34. Samuel McNerney, “A Brief Guide to Embodied Cognition: Why You Are Not Your Brain,” Scientific American, November 4, 2011, https://blogs.scientificamerican.com/guest-blog/a-brief- guide-to-embodied-cognition-why-you-are-not-your-brain/.
  35. Penelope Lein, George Picard, Joseph Baumgarden, and Roger Schneider, “Meditative Movement, Energetic, and Physical Analyses of Three Qigon Exercises: Unification of Eastern and Western Mechanistic Exercise Theory,” Medicines 4, no. 4 (2017), https://dx.doi. org/10.3390%2Fmedicines4040069.
  36. Lein et al., “Meditative Movement.”
  37. William James, The Principles of Psychology (Henry Holt and Company, 1890).
  38. Rainer Kiss, Simon Schcdlcr, and Thomas Muehlbauer, “Associations Between Types of Balance Performance in Healthy Individuals Across the Lifespan: A Systematic Review and Meta-Analysis,” Frontiers in Physiology (2018), https://dx.doi.org/10.3389%2Ffphys.2018.01366.
  39. Boguslaw Lipinski, “Biological Significance of Piezoelectricity in Relation to Acupuncture, Hatha Yoga, Osteopathic Medicine and Action of Air Ions,” Medical Hypotheses 3, no. 1 (1977), https://doi. org/10.1016/0306-9877(77)90045-7.
  40. Lipinski, “Biological Significance of Piezoelectricity.”
  41. Elizabeth Fain and Cara Weatherford, “Comparative Study of Millennials’ (Age 20-34 Years) Grip and Lateral Pinch with the Norms,” Journal of Hand Therapy 29, no. 4 (2016), https://doi. org/10.1016/j.jht.2015.12.006.
  42. “Stu Phillips Discusses the Importance of Dietary Protein and Its Role in Muscle,” STEM-Talk podcast, episode 82, February 25, 2019, https://www.ihmc.us/stcmtalk/episode-82/.
  43. Shamini Ganasarajah, Sundstrom Poromaa, et al., “Objective Measures of Physical Performance Associated with Depression and/or Anxiety in Midlife Singaporean Women,” Menopause 26, no. 9 (2019), https://doi.org/10.1097/gmc.0000000000001355.
  44. Jarlo llano, “Badass for Life: Avoiding and Overcoming the Challenges of Aging,” GMB, 2020, https://gmb.io/badass-for-life/.
  45. Manal A. Nasceb and Stella L. Volpe, “Protein and Exercise in the Prevention of Sarcopenia and Aging,” Nutrition Research 40 (2017), https://doi.Org/10.1016/j.nutres.2017.01.001.
  46. Nuria Garatachca, Helios Pareja-Galeano, Fabian Sanchis-Gomar, et al., “Exercise Attenuates the Major Hallmarks of Aging,” Rejuvenation Research 18, no. 1 (2015), https://doi.org/10.1089/ rcj.2014.1623.
  47. Karen L. Troy, Megan E. Macuso, Tiffiny A. Butler, and Joshua E. Johnson, “Exercise Early and Often: Effects of Physical Activity and Exercise on Women’s Bone Health,” International Journal of Environmental Research and Public Health 15, no. 5 (2018), https://dx.doi. org/10.3390%2Fijcrphl5050878.
  48. Amelia Guadalupe-Grau, Teresa Fuentes, Borja Guerra, and Jose A. L. Calbert, “Exercise and Bone Mass in Adults,” Sports Medicine 39, no. 6 (2009), https://pubmcd.ncbi.nlm.nih.gov/19453205/.
  49. “The Spark Factor / The Secret to Supercharging Energy, Becoming Resilient, and Feeling Better Than Ever” by Molly Maloof
unshakeable lifeトップへ戻る