健康
Health care
いのちまで人まかせにしないために
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いのちまで人まかせにしないために
2024.01.19
Vol.1ではセロトニンとは何か?セロトニンが欠乏するとどのような影響があるのかをみてきました。
セロトニンの重要性がご理解いただけたのではないでしょうか⁉︎
では、どのようにして大切な「脳内セロトニン」を増やしたらよいのでしょうか?
それには「セロトニン神経を刺激する」と「食べ物から取り入れる」という、大きく2つの方法があります。
まずは前者について見てみましょう。
① セロトニン神経を剌激する
セロトニン神経を刺激するには次の4つの方法があります。
● 早寝早起きの規則的な生活を心がける
セロトニンは太陽の出ている日中に分泌されやすく、日が沈んでからは分泌が少なくなる。
これは人間が本来持っている生活リズム「日中に活動して夜は寝る」 に準ずるものです。
この基本原則を守ることが、セトニン神経の活性化には効果的なのです。
● 太陽の光を浴びる
セロトニンは、睡眠ホルモンである「メラトニン」と相対する性質がある。
簡単に言うと、セロトニンは脳の覚醒を促し、メラトニンは睡眠に作用するということです。
太陽の光のように非常に強い光や明かりを浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がストップし、代わりに脳に覚醒を促すセロトニンの分泌が活発になります。
したがって、昼夜逆転の生活や日中なのに部屋の中にばかりいるようだと、セロトニンとメラトニンの分泌のバランスが崩れて不眠症などの原因となってしまいます。
認知症の被介護者を、なるべく昼間に寝かせておいて自分の用を済ませようなどと都合のいいことを考えていると、結局は夜に苦労をすることになる上に、病状の改善も望めないというわけです。
毎日太陽の光を浴びてセロトニン神経を刺激するだけでなく、生活のリズムを整えることも大切です。
日光を浴びるのなら、できれば紫外線が強くなる前の時間、日の出から朝8時までのあいだがベストです。
女性なら、美白も気になりますよね‼︎
両手を広げ、全身で朝日を浴びるようにします。
時間は5分〜15分ほどで充分です。
もし外に出られなければ、カーテンを開けた部屋の中でもOKです。
全身に光を浴びることを意識して、できれば「気持ちいい!」と言葉に出してみてはいかがでしょうか。
太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラトニンを作ってくれます。
メラトニンには強い抗酸化作用があるので、脳で発生する活性酸素を除去し、アルツハ イマー病の原因物質の生成を抑制することにもつながりますし、快眠の秘訣でもあります。
● リズミカルな運動をする
スクワットや階段の昇り降りなど、一定のリズムを刻む運動を反復して行なうとセロトニン神経が活性化されると考えられています。
スクワットに限らず、「ウォーキング」や「深呼吸」(腹式呼吸)、「フラダンス」など、リズムのよい運動を継続することがセロトニン神経の活性化に役立つのです。
リズム運動はウォーキング、ジョギング、自転車、ダンスなど、一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返す運動であれば何でもいいようです。
太陽の光を浴びながらのリズム運動はもっともお勧めです。
中国では朝、みんなで集まっての太極拳が日常的に行われていますよね。
「運動」はアルツハイマー病の原因物質を除去する特効薬なのです。
● 人とのふれあい(グルーミング)が大切です
グルーミングは、「サルの毛繕い」でよく知られていますよね。
〝 群れ社会の中で発生するストレスに対して緩和を試みる行為 〞です。
これを人間の社会にたとえるなら〝人と人とが近い距離で触れ合うこと〞でしょう。
筆者も大好きな仕事後の赤ちょうちん、井戸端会議、家族での食事、旅館で友人や家族と一緒にお風呂に入ることもグルーミングの一種でしょうか。
同じ場所にいて同じ空気を吸いながら、打ち解けて会話を交わし、みなが笑顔となるこれがグルーミングです。
このとき、Good Vibes(良い波長)が大切です。
事実、スキンシップや人との触れ合いが、セロトニンの活性化とストレスヘの耐性向上に効果があるとされています。
グルーミングは「癒し」そのものなのです。
そうすると、海馬へ血液がどんどん流れていきます。
アルツハイマー病の根本原因のひとつが「精神的ストレス」ですから、部屋に閉じこもるのはよくありませんよ。
多くの人たちと楽しく触れ合うことが大事なのです。
② 食べ物から摂取する
脳内セロトニンを増やす第2の方法は「食べ物から取り入れること」です。
セロトニンは、きのこ類や果実類、野菜類に含まれています。
それらの食べ物からとることもできますが、血液中に含まれるセロトニンは血液脳関門を通過することができません。
つまり、いくら一生懸命これらの食品を摂ったとしても、脳内セロトニンには何の影響も与えないということなのです。
食べ物から直接とれないとなると、どうしたらよいのでしょうか?
では、セロトニンがどうやって作られるのかに注目しましょう!
セロトニンは必須アミノ酸の「トリプトファン」を原料として、ビタミンB6などのビタミン類、およびマグネシウムや亜鉛などのミネラルを補酵素(生合成を補助する ) として生成されます。
つまり、原料となるトリプトファンを摂ればいいわけです。
ここで注意してほしいことがあります。
それは、トリプトファンがセロトニン以外にも 「ナイアシン」(ビタミンB3)の原料になっていることです。
しかも、ナイアシンもビタミンB6を補酵素として作られます。
つまり、セロトニンと同じプロセスを経て作られるということです。
問題はセロトニンよりも、ナイアシンを優先的に生成されることです。
ということは、もしナイアシンが不足していたら、せっかくトリプトファンを摂ってもナイアシンの生成が優先されてしまい、セロトニンの生成は後回しにされてしまうということなのです。
ナイアシンを分子生成するためにはトリプトファン分子が必要となります(セロトニンなら1分子)。
ナイアシンを生成するために原料のトリプトファンが、先に数多く消費されてしまうのです。
その分、セトロニンの生成量は減ってしまいます。
これは逆の見方をすると、食事などによってナイアシンを充分に摂ることができれば、体内でナイアシンの生合成に使われるトリプトファンの量が少なくなり、その分セロトニンの生成のためのトリプトファンが確保できるということです。
脳内セロトニンの不足を改善するには、まずはビタミンB3(ナイアシン)をしっかり摂ることが大切なのです。
もちろん、原料となるトリプトファンの摂取に加えて、生成に必要な補酵素であるビタミンB6やマグネシウム、亜鉛も意識して摂ることです。
トリプトファンはタンパク質を含む多くの食品に含まれています。
特に肉類、魚介類、豆類,種実類、乳製品などの「高タンパク質食品」に多量に含有されています。
しかし、トリプトファンからセロトニンヘの代謝(体内で化学的に変化すること)は、他のアミノ酸の代謝と競合関係にあります。
どういうことかというと、さきほどのナイアシンの例と同様に、単にトリプトファンが多く含まれる食品をとったからといって、セロトニンヘの代謝が優先されるわけではなく、体を構成するタンパク質の合成やそのために使用される酵素などの合成が優先されるということなのです。
残念ながら、ここでもセロトニンの優先順位は低いのです。
したがって、トリプトファンの量よりも他のアミノ酸との比率が重要となります。
脳内セロトニンが生成されるためには、原料のトリプトファンが血液脳関門を通過する必要があるわけですが、他の必須アミノ酸であるフェニルアラニンやロイシンといった分岐鎖アミノ酸も、トリプトファンと同じ経路を通って脳内に取り込まれます。
つまり、トリプトファンの脳内への取り込み量は、フェニルアラニンやロイシンなどのアミノ酸の血中濃度にも影響を受けるのです。
この点に注意して食品を見ると、トリプトファンよりもフェニルアラニンやロイシンの含有比率の高いものが結構あります。
その代表が肉類や乳製品です。
肉類や乳製品などの動物性タンパク質を摂り過ぎると、結果的に脳内のセロトニンの生成量が少なくなります。
〝 脳内セロトニンを増やすために、トリプトファンを多く含むレバーやバナナなどをとりましょう 〞と推奨する健康本などを見かけますがこれは大きな間違いです。
トリプトファンの量より、トリプトファンに対するフェニルアラニンやロイシンの含有比の小さいことが重要なのです。
脳内セロトニン以外の、血液中のセロトニンに関しても、トリプトファンの量よりも他のアミノ酸との比率が重要になります。
たとえば、筋肉の合成にはトリプトファン以外のアミノ酸が多く使われます。
私たちの筋肉も食肉と同じようにトリプトファン比率が低いということは筋肉量が増えるときにはトリプトファン以外のアミノ酸が多く使われるということなのです。
要するに、筋肉をつけようとすればトリプトファン以外のアミノ酸が多く使われることから結果的にトリプトファンの割合が増えるということです。
わかりやすく言えば、〝 筋肉を増強すればトリプトファン濃度が高まり、脳内へのトリプトファンの取り込み量が増えて脳内のセロトニン不足が改善される 〞 ということです。
つまり〝運動して筋肉をつけなさい〞ということになります。
ちなみに、女性よりも男性のほうが脳内セロトニンの生成量が多いのは、男女の筋肉量の違いによるものではないかと推測されます。
ここで注意したいのが、無理なダイエットなどで筋肉量を落としてしまうことです。
筋肉量が減ればトリプトファン以外のアミノ酸の量が増え、トリプトファンの脳への取り込み量が減ります。
当然、脳内セロトニンも減少します。
その結果、基礎代謝が低下して、中枢神経の働きも悪くなるという悪循環になります。
ただ痩せるだけのダイエットをしただけでは、むしろ肥満になりやすい体質となってしまうのです。
アミノ酸とのバランスから考えると、米飯中心の食事(和食)なら大豆や大豆製品との相性がよく、小麦や肉類、乳製品中心の食事(洋食)なら、芋類・野菜類が必要不可欠という見方ができます。
小麦や肉類、乳製品など、トリプトファン比率の低い食品を摂り過ぎの上に運動不足が重なれば、多くの場合、セロトニン不足に陥ります。
逆に、動物性タンパク質を少々摂ったとしても、充分な運動で筋肉を鍛えて筋肉量を増やせば、セロトニン不足には陥りにくいということです。
肉類や乳製品の多い食事をする場合には運動が必要不可欠であり、逆に運動量の少ない 減量(ダイエット) をするときには、肉類や乳製品を摂り過ぎないようにする必要があります。
もしあなたが「糖質制限食」や「タンパク質ダイエット」をしているのなら、くれぐれも充分な運動を忘れないことです。
脳内セロトニンを増やす(減らさない)ための食事についてまとめておきましょう。
肉類や乳製品など動物性タンパク質を摂り過ぎない
芋類、野菜類、きのこ類、海藻類を努めて摂る
コラーゲンなどのゼラチン類を摂らない
パン、パスタ、うどんなどの小麦製品に偏らない(米飯、蕎麦を適宜摂る)
トウモロコシやその加工品、種実類(アーモンド、落花生、小豆やあんこ)を摂り過ぎない
トリプトファン比率の高い果実類(キウイフルーツ、柿)、種実類(ごま、ココア)、魚介類(鰹、しじみ)を努めて摂る
ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB6、マグネシウム、亜鉛を多く含む食品を摂る
筋肉を鍛える(筋肉量を増やす、維持する)
腸内環境を健全(衛生的)に保つ
少し補足すると…
「腸内環境を健全に保つ」とは、腸内細菌もピタミンB3(ナイアシン)の生成を行なっており、腸内細菌が活発に活動していれば、体内でナイアシンを生成する負担が減ることになります。
つまり、間接的にセロトニンを増やすことにつながるということです。
腸内環境を悪くするのは動物性タンパク質の摂り過ぎですから、ここでも肉類や乳製品の摂り過ぎには注意が必要となります。
また、女性に人気の「コラーゲン」にはトリプトファンがまったく含まれていないばかりか、部分的に変性したゼラチンは消化吸収されるものの、ほとんどが人の消化酵素では消化されないため、腸内では悪玉菌のエサになるだけです。
経口摂取のコラーゲンが肌に潤いを与えるという科学的根拠はまったくありません。
むしろ腸内環境を悪化させるものだという認識が必要です。
腸内の衛生環境の維持・改善は、間接的にアルツハイマー病の予防・改善にもつながるのです。
覚えておいてくださいね!