健康
Health care
いのちまで人まかせにしないために
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いのちまで人まかせにしないために
2023.02.24
目次
ヒトの消化管は、口腔から肛門までの長い管で、全長は約8メートルから9メートルもの長さがあり、重さが約1100グラムで、この管組織すべての表面積は、なんと約400平方メートルにもなります。
小腸は消化管のなかで最も長い臓器で、その全長は6〜8メートルとか、身長の4〜5倍などといわれますが、これは死体の話しであって、生体ではもっと短いといわれています。
しかし、それでも結構な長さです。
信じられないかも知れませんが、小腸と大腸をあわせた内部の表面積は約32㎡もあり、これはテニスコート1面分に相当する広さです。
ところで、小腸が栄養や水分を吸収する所であることは誰でも知っている事実ですが、1日に8リットルもの水分を吸収していることを知っていましたか?
これは案外知られていません。
なぜなのか?
わたしたちヒトは毎日、そんなにたくさんの水を飲んでいないからです。
口から入る水は1日に、せいぜい1・5リットル程度です。
ところが、体内で分泌される消化液、すなわち唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液などが加わるからで、消化管内の水分は実に9リットル以上に達するからなのです。
そして、そのうちの約80%が、小腸から吸収されるわけです。
こんなに大量の水が一体どこにあるのか?と疑問に思われた方は、「人体の構成成分の64%が水である」ことを思い出してください。
重さにして体重の5分の3にもなるのです。
容易に納得できるでしょう。
このように多量の水分を吸収するため、小腸粘膜の表面積は見かけよりも、著しく広くなっています。
小腸には襞(ひだ)が多く存在するうえ、絨毛(じゅうもう)と呼ばれる無数の小突起があります。
1個の絨毛の大きさは長さ約1ミリ、幅約0.1〜0.3ミリですから肉眼で見ることができます。
このような絨毛が、ビロードのように小腸の内壁を覆っているわけです。
絨毛を電子顕微鏡で拡大してみると、その表面には「微絨毛」というさらに小さな小突起が密生しています。
このように、肉眼 ➡︎ 光学顕微鏡 ➡︎ 電子顕微鏡というレベルで、それぞれ襞や隆起があるので、小腸粘膜の表面積はずいぶんと広くなるわけです。
「小腸と大腸をあわせた内部の表面積が、テニスコート1面分に相当する広さ」もあるという意味がご理解いただけたでしょうか!?
いずれにしても、これだけ広大な面積に8リットルの水を撒けば、表面がちょっと湿るぐらいで、すぐに吸収してしまうことは容易に想像できますよね。
さて、宿便のお話しです。
毒素は主に大腸、そして身体中の脂肪細胞にたまります。
毒素が多く蓄積している体は、毒を薄めようとして水分と脂肪分の蓄えを増やします。
クスリを多用する人の身体が時と共にむくみ、肥満になるのはそういうわけです。
今この時点で、あなたの大腸には1・5〜7㎏の宿便が排泄されずに滞留している可能性があります。
宿便は非常に毒性が強く、免疫力を低下させ、栄養の消化吸収を著しく妨げ、新陳代謝を不活発にし、さらには呼気や体臭をキツく(悪臭に)します。
したがって宿便は、あなたを健康に保つ、または健康な状態に戻すために一刻も早くデトックスすべきものです。[1]
ところが、大腸内視鏡で観察しても腸管内にそれらしきものの存在が確認できないとの理由から、現代医学では現在も宿便の存在は否定されています。
現代の医学では、腸内洗浄をおこなうアンチエイジングなどのクリニックがありますが、腸内洗浄と断食による排泄の違いは、腸内洗浄が他力であるのに対して、断食は自力で排泄されるということです。
現代医学の大腸専門医が宿便の存在を否定するのは、断食による大量の宿便排泄を、医師としても患者としても経験していないからなのでしょうか?!
これに対して、断食博士・甲田光雄医師は次のように重大な懸念を表明しています。
現代医学者たちの間には、この宿便の存在およびそれの及ぼす作用について意外なほど理解されておりません。
しかも、宿便を排除するキメ手と思われる断食療法(現代医学ではこれを絶食療法と呼称しております)の指導者の中に、宿便の存在について、むしろ否定的な見解を主張する人もおられるのです。
しかし、わたしたちは自らの体験を通して、また長年の臨床経験の中で、宿便の存在を現実のものとして確認してきました。
そして宿便の排除に伴う劇的な症状好転例を身近に見聞し、人間の健康に及ぼす宿便の影響を恐ろしいまで痛感しています。
したがって「宿便の存在に気がつかない、あるいはそれを認めないという医師たちが果たして本当にいろいろな病気を根治に導くことができるであろうか」と疑わざるをえないわけです。
これは実に大きな問題です。
西医学健康法ではこの誤認や偏見が、生活習慣病・慢性病、さらには今日、難病と呼ばれる病気を減らせない大きな要因であると考えています。
では宿便とは、一体何なのでしょうか?
体外に排出される便の内容物のうち、食べた物の残渣はわずか3〜4割で、残りは体内で不要となった細胞などの老廃物や有害物質、腸内細菌などの残骸です。
これらの残骸は、リンパ管や血管などを流れる体液によって運ばれ腸に達します。
ですから、あなたが断食をしたとしても便は、常に作られつづけるのです。
断食をして肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲンがなくなると、体は脂肪の代謝経路からエネルギーを得ようとするメタボリックスイッチが起こります。
蓄積していた脂肪を燃やし、脂肪を分解したときに発生するケトン体を燃料にするということです。
これがケトーシスという代謝現象ですが、脂肪が燃やされるとそこに蓄積されていた親油性の有害物質も溶け出します。
断食していて食物を食べていないのに「黒いタール」のような便が大量に排泄されることがありますが、分かりやすく言えばこれが宿便です。
わたしたち現代人は、農薬や殺虫剤、食用の家畜に投与された抗生物質やホルモン剤、ジャンクフードなどの加工食品の食品添加物、さらにはダイオキシンなど、実に多くの有害な化学合成物質を全身から吸収しています。
実は有害な化学合成物質は、水に溶けないため体外に排出(デトックス)できないのです。
水に溶けない親油性の「化学合成物質」は、脂肪組織に蓄積されるため、これをデトックスするには断食を行って、脂肪を燃やす必要があるわけです。[2]
要するに宿便の元は、腸以外の体内に蓄積した細胞などの老廃物や有害物質、そして腸内細菌などの残骸なのです。
言い換えれば「万病の元を濃縮」したような便のことです。
断食による健康効果とは、体内に長年蓄積された有害物質をデトックスすることで得られるものなのです。
1955年(昭和三十年)に大阪で起きた「森永砒素ミルク事件」や1968年に九州・福岡県を中心に起きた「カネミ油症事件」で断食療法が有効だったのは、このようなメカニズムによるものです。
※詳細は弊社の書籍『揺るぎない人』下巻をご覧ください。
ちなみに不食の人・森美智代さんは、宿便には「黒いヘドロのような、ドブ臭い便」、「茶色っぽい便や白い便」、「茶色の中にスイカの種のように点々と黒い部分が混じった便」など様々な便があると言っています。
前述の通り、腸皺壁(ちょうすうへき)は広大な面積で、微細な絨毛、微絨毛で覆いつくされています。
これらの絨毛の間にある微小な食物残渣・老廃物・腸内細菌などの残骸が、大腸に滞留し、水分を抜き取られて便となるわけです。
微小とは言え、テニスコート一面からかき集めればかなりの量になります。
これらの便は、日々排泄される便で、なかにはこれを「蓄便」と呼ぶ専門家もいます。
一般的に「下剤」とは、この蓄便の排泄を手助けするものです。
甲田医師は、更に次のように説明しています。
胃腸の処理能力を超えた過食は、それを収納する胃腸が伸びたり垂れ下がったりします。
そうなると安定が悪いため、あちこちに胃腸がへばりついてしまう。
するとへばりついたところに癒着が起きますが、癒着したところは変形して細くなり、捻れたりします。
そこに食べた物の残渣が引っかかって、宿便として渋滞するというわけです。
癒着が進めば、腸は動かなくなります。
腸は蠕動運動が不十分になり、宿便がさらに溜まる悪循環に陥ってしまうのです。
このような腸の状態になると、本来排泄されるはずの蓄便も宿便となってしまうということです。
宿便を排泄するためには、まず「蓄便」と「宿便化した蓄便」を排泄して、腸管の詰まりを解消しておく必要があります。
これらを排泄して、体内に蓄積された「細胞などの老廃物や有害物質、腸内細菌などの残骸=宿便」を排泄するわけですが、これには「断食」が必須なのです。
なぜなら、ケトーシス(脂肪を燃焼させて有害物質を溶け出させる)や、オートファジー(細胞レベルの再生や廃棄を促進させる)を発現させる方法は、科学的に、断食(ファスティング)以外にないからです。
宿便を排泄して、より健康になりたい!健康を取り戻したい!という方は、専門家の指導のもとに「本断食」に挑戦してみてはいかがでしょうか。
体質が変わった!病気が治った!人生観が変わった!という人もいるほど、劇的な変化がもたらされる可能性があります。
しかし断食を一度行なって宿便が排泄されても、宿便はまた溜まります。
代謝は日常的な現象なのです。
そこで甲田医師は、「宿便をできるだけ溜めないためには結局、普段から少食(食べる回数が少ない)・小食(食べる量が少ない)にするしかない」との考えに至り、朝食抜きの1日2食を推奨しているわけです。
オートファジーやケトーシスが始まるのは、最後に物を食べてからおよそ12時間後です。
1日2食の食習慣の場合、おおむね16時間の断食が、毎日、可能です。
日々4時間は、オートファジーとケトーシス状態になりますから、日常的には間欠断食(Intermittent fasting)が現実的な選択肢となります。
つまり、「大腸のおそうじ」+「少食・小食」で、宿便(わたしたちの健康を害する2大有害物質)の排泄の可能性を高めるというわけです。
この4時間のあいだに「運動」をすれば、さらに効果的です!
病気とは健康な状態に戻ろうとする生体の反応です。
もちろん健康な状態に戻すために、先ず実践しなければならないのが「スムーズな排泄」です。
わたしたちは、心身の不調のほとんど全てに「腸内腐敗(腸内異常醗酵)」及び「宿便─体内に蓄積した有害物質」の悪害が影響していると考えています。
ということで、もう一つ。
弊社にお寄せいただきますご相談の中で、「バナナ状の便が理想なのですが、、」というお話しをよくお伺いします。
しかし、バナナ状の便を支持する科学的根拠は見あたりません。
ところがこの考えは広く社会に根をおろし、消えそうにありません。
図のように、腸内に便が長く滞るほど、便は水分を抜き取られ硬くなり、腸内腐敗の害による危険性も高まって、さらに悪臭・腐敗臭もキツくなります。
もちろん、体臭や口臭も悪化していき、脳にも悪影響を与えます。
なかなかトイレに行けない状況もあるかと思います。
このような社会生活上の問題以外、大腸内に便を長く留めておくメリットは何もありません。
早ければ、早いほど良いのが排泄のサイクルです。
フランスには、こんな諺(ことわざ)があるほどです。
下痢症に馬鹿なし
“Qui est diarrhéique, clést un homme non – imbécile.”
悪臭・腐敗臭のない、黄色または黄色がかった黄褐色で、柔らかいフレッシュな便が理想なのです。
痔にもなりませんよ。
きっと元気に長生きできるでしょう!
References
1. Cleanse and Purify Thyself, by Richard Anderson, N.D., N.M.D.
The Detox Diet: A How-to and When-to Guide for Cleansing the Body, by Elson M. Haas, M.D.
Internal Cleansing, by Linda Berry, D.C., C.C.N.
The Master Cleanser, by Stanley Burroughs
Healthy Living: A Holistic Guide to Cleansing, Revitalization and Nutrition, by Susana Lombardi
『西勝造著作集』の第7巻『便秘と宿便』より抜粋。
2.Clear Body, Clear Mind, by L. Ron Hubbard
Purification: An Illustrated Answer to Drugs, by L. Ron Hubbard