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⒎ 砂糖という毒

2025.05.23

アスパルテームに発ガン性の懸念
—— 世界保健機関による最新の発表とその意味

 

二〇二三年7月、世界保健機関(WHO)傘下の国際ガン研究機関(IRAC)は、人工甘味料「アスパルテーム」に発ガン性の可能性がある物質に分類すべきだとする見解をようやく発表しました。

アスパルテームは、同じ量の砂糖と比べ甘味度が約200倍もあり、カロリーが抑えられる上、製造コストも安く済むというメリットがあります。

そのためアイスクリーム、ガム、歯磨き粉、シリアルなどあらゆる加工食品のほとんどすべてに幅広く使われている化学合成された食品添加物です。

また超加工食品にはショ糖やスクロース、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖・HFCS)などのフルクトースも含まれています。

Junk food health risk nutrition

二〇二一年、名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らの研究チームは、これらの砂糖の摂り過ぎによって起こるメタボリックシンドロームへつながる脂質代謝異常(肝脂肪・高中性脂肪血症)が腸内環境の変化によるものであることを究明し、オランダの科学雑誌『The Journal of Nutritional Biochemistry』に発表しています。[1]

とくにHFCSなどのフルクトースは食材に元から含まれるものではないことから、あとから添加される糖の取り過ぎが問題だと考えられています。

肥満は万病の元といわれ、そして世界的、とりわけ食糧事情のいい先進国において問題となっており、糖尿病も世界的に増加しています。

これまでは、肝臓にフルクトースが大量に流れ込むことが原因とされていましたが、小田准教授の研究チームをはじめ、世界中のさまざまな研究チームの研究により、それが間違いであり、もはや古いパラダイムであることが明らかにされています。

 

「超加工食品」に含まれる危険な糖
—— HFCS(異性化糖)やショ糖など添加糖のリスト

 

加工食品や甘味飲料に使われている添加糖類は、けっして「甘い生活(La dolce vita)」をもたらすものではありません。

虫歯はもちろん、肥満、糖尿病、心血管系疾患およびガンの発症リスクを高めることが解明されています。

では、加工食品やソフトドリンク(清涼飲料水)の材料として記載されている添加糖類には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。

⑴ コーンシロップ

⑵ 異性化糖(デンプンを構成するブドウ糖を甘味の強い果糖へと酵素やアルカリによって異性化させ、その果糖とブドウ糖を組み合わせてできた糖類

⑶ ハイフルクトースコーンシロップ:HFCS)

⑷ 麦芽シロップ

⑸ 白砂糖・黒砂糖

⑹ ブドウ糖(グルコース)

⑺ 果糖(フルクトース)

⑻ デキストリン

⑼ 乳糖(ラクトース)

⑽ 麦芽糖(マルトース)

⑾ 添加糖

⑿ 糖蜜

⒀ ショ糖(スクロース)

⒁ トレハロース

⒂ きび砂糖

アメリカ心臓病協会(AHA)は〝子どもは、1日あたり25g(小さじ約6杯)を超える量の添加糖類を摂取すべきでない〞また、〝24ヶ月齢未満の幼児に対しては、摂取させるべきではない〞という勧告を出しています。[2]

清涼飲料水(ソフトドリンク)のほとんど全てが、加工処理及び異性化糖や人工甘味料と添加剤などを使って製造されています。

一九七〇年代に日本で実用化された異性化糖(HFCS)は、砂糖・グラニュー糖よりも安価で、ものすごく甘く、そして使いやすいため、ソフトドリンクの材料として、また工業的に生産されている甘味食品の添加物として世界中で広く使用(約42%)されています。

異性化糖は、肥満、メタボリックシンドロームおよびⅡ型糖尿病の蔓延に深く関わっています。[3〜5]

大規模な疫学研究では、子どもの1日あたりのソフトドリンクの摂取量が1本多くなるごとに、肥満になるリスクが60%増加するという実験結果が報告されています。[6]

反対に、その他の研究では、ソフトドリンクの摂取量を減らすことが体重の減少につながるという結果が示されているのです。[7・8]

Eating junk food nutrition and dietary health problem

腸内環境の変化がもたらす代謝異常
—— 研究が明かした糖と腸内細菌の関係

 

果糖(フルクトース)は、インスリン抵抗性および肝脂肪を引き起こすため、特に有害な物質であることが知られています。[9〜11]

動物実験では、果糖の摂取によって、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が変化し、消化管の透過性や肝臓での炎症反応が亢進することが報告されています。[12]

人工的に甘味が加えられた飲料の長期的な摂取は、心血管系疾患、脳卒中およびガン(特に膵臓ガン、結腸ガン)の発症リスクの増大につながります。[13〜15]

権威ある科学誌『サイエンス(Science)』に報告された研究では、異性化糖を含むソフトドリンクは、摂取量がそれほど多くない場合でも、結腸ガンの発症につながる可能性が示唆されています。[16]

わたしが「甘いもの」を止められないのは、わたしの意思が弱いせいだ。

と思っているとしたら、それはちょっと違います。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校・内分泌学部小児科のロバート・ラスティグ(Robert H. Lustig)教授は〝その原因は果糖がもつ中毒性にある〞と指摘しています。

果糖には中毒性があり、ジャンクフードの摂取を止めようと思っても、なかなか止められない(Junk food addiction)現実を実感している人は膨大な数にのぼります。

これは脳が、糖分に乗っ取られた状態だからです。

子どもたちへの影響と世代を超える害
—— マイクロバイオームの破壊が未来に及ぼす影響

 

前述の通り、化学物質を何種類も含む超加工食品を摂取することで、腸内に棲む膨大な数の腸内常在菌(マイクロバイオーム)にも多大な影響を与えます。

マイクロバイオームは、ビタミンを生成し、免疫システムを調整し、食べ物の消化を助ける働きをしています。

米国ブリガム・アンド・ウイメンズ病院およびハーバード大学医学大学院の教授で、早期発症ガンに関する画期的な研究論文の共著者である荻野周史氏の研究によれば、食事、ライフスタイル、抗生物質の使用によって、健康に害を及ぼすものに変化してしまったマイクロバイオームは〝腫瘍発生のもう一つの顕著な要因〞であるとされています。

14種類の早期発症ガンのうち、8つが消化器系に関連しており、そのことが〝腸内マイクロバイオームの病原性の重要性を示している〞と言及しています。

近年の分子細胞生物学の応用によって、腸内細菌の解析は新時代を迎えており、腸内細菌がさまざまな疾患に関与しているということが分かってきているのです。

何世代にもわたって欧米型の食事を摂取することで、特定の腸内細菌叢と細菌系統が絶滅してしまいます。[17]

自分自身の長期的な健康状態だけではなく、自分の子どもの免疫系機能や脳の発育発達に対しても深刻な有害作用をもたらす可能性があるのです。[18]

栄養学や長寿学の世界的権威であるルイージ・フォンタナ博士は、こう忠告しています。[19]

 …それらは自然食品ではない「工業型」の食品であり、多くの合成添加剤を用いて化学的に処理された後、すぐに食べられる、またはすぐに加熱できる、とても口当たりがよい食品および飲料へと仕立てられたものである。

通常、そのような食品には、精製小麦粉、水素添加油、異性化糖(高果糖液糖)、砂糖(ショ糖・スクロース)もしくは人工甘味料および塩などが、さまざまな種類の防腐剤、人工香料、着色料、乳化剤などと一緒に含まれている。

もし健康を保持したいのであれば、このような食品を摂取してはならない。


 

References

 

1. Shumin Sun, Yuki Araki, Fumiaki Hanzawa, Miki Umeki, Takaaki Kojima, Naomichi Nishimura, Saiko Ikeda, Satoshi Mochizuki, Hiroaki Oda, “High sucrose diet-induced dysbiosis of gut microbiota promotes fatty liver and hyperlipidemia in rats.”, The Journal of nutritional biochemistry. 2021 Jul;93;108621. doi: 10.1016/j.jnutbio.2021.108621.

2. Vos. M. B., et al. Added sugars and cardiovascular disease risk in children: a Scientific statement from the American Heart Association. Circulation. 135. el017-el034 (2017).

3. Vos, M. B., et al. Added sugars and cardiovascular disease risk in children. Circulation (2017).

4. Malik. V. S., et al. Sugar-Sweetened beverages and weight gain in children and adults: a systematic review and meta-analysis. The American Journal of Clinical Nutrition. 98. 1084-1102(2013)

5. Pollock, N. K., et al. Greater fructose consumption is associated with cardiometabolic risk markers and visceral adiposity in adolescents. The Journal of Nutrition11. 142. 251-257 (2012).

6. Ludwig. D. S., Peterson. K. E. & Gortmaker, S. L. Relation between consumption of sugar-sweetened drinks and childhood obesity: a prospective. observational analysis. Lancet. 357. 505-508 (2001).

7. Hu. F. B. Resolved: there is sufficient scientific evidence that decreasing sugar-sweetened beverage consumption will reduce the prevalence of obesity and obesity-related diseases. Obesity Reviews: An Official Journal of the International Association for the Study of Obesity. 14. 606-619 (2013).

8. Shi. L. & van Meijgaard. J. Substantial decline in sugar-sweetened beverage consumption among California’s children and adolescents. International Journal of General Medicine. 3. 221-224 (2010).

9. Pollock. N. K., et al. Greater fructose consumption is associated with cardiometabolic risk markers. The Journal of Nutrition (2012).

10. Lustig. R. H., et al. Isocaloric fructose restriction and metabolic improvement in  children with obesity and metabolic syndrome. Obesity. 24. 453-460 (2016).

11. Lin. W. T., et al. Fructose-rich beverage intake and central adiposity. uric acid. and pediatric insulin resistance. The Journal of Pediatrics. 171.90-96. e91 (2016).

12. Romero-Gomez. M., Zelber-Sagi. S. & Trenell M. Treatment of NAFLD with diet. physical activity and exercise. Journal of Hepatology, 67829-846 (2017).

13. de Koning. L., et al. Sweetened beverage consumption. incident coronary heart disease. and biomarkers of risk in men. Circulation. 125. 1735- 1741.s1731 (2012).

14. Mueller. N. T., et al. Soft drink and Juice consumption and risk of pancreatic cancer: the Singapore Chinese Health Study. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preve11lio11. 19. 447-455 (2010).

15. Hodge. A. M., et al. Consumption of sugar-sweetened and artificially sweetened soft drinks and risk of obesity-related cancers. Public Health Nutrition. 2.1618-1626 (2018).

16. Goncalves. M., et al. High-fructose corn syrup enhances intestinal tumor growth in mice. Science. 363. 1345-1349 (2019)

17. Sonnenburg. E. D., et al. Diet-induced extinctions in the gut microbiota compound over generations. Nature. 529. 212-215 (2016).

18. Barratt.M. J., et al. The Gut Microbiota. Food Science, and Human Nutrition: A Timely Marriage, Cell Host Microbe. 22, 134-141 (2017)

19. “The path to Longevity – The Secret to Living a Long, Happy, Healthy Life” by Luigi Fontana

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