⒖ 一汁一菜でいいじゃないですか!!
2025.05.23
週末の昼時、ファストフード店のドライブスルーに、家族連れの車が列をなしています。
こうした光景を目にするたびに、なんとも言えない冷やかな気分になるのは筆者だけでしょうか!?
小児期や青年期、成人期初期は、超加工食品によるダメージを受けやすく、肥満になりやすい時期でもあります。
子どもたちに「正しい食育のあり方」を教えることは、親としての大切な義務なのです。
そして、その時期は早ければ早いほど良いでしょう。
煩(わずらわし)がられても「繰り返し」教えることが大切です。
豊かな食事とは、「見た目」や「品数」、「美味しい」ではなくて、「健康的」であることです。

BOLOGNA, ITALY – OCTOBER 22, 2018: Fruit and vegetable stall in the center of Bologna, Italy
日本に比べて、コンビニやファストフード店が極端に少ないヨーロッパでは、「料理を手づくり」する文化が今もなお息づいています。
一部の大都市を除いて、「八百屋さん」「魚屋さん」「お肉屋さん」「(イースト菌を使った)パン屋さん」といったお店が、ちゃんと生き残り、国民の健康を支えているのです。
かつての日本も、そうした食習慣や食文化が一般的でしたが、近年の日本の世情はどうでしょうか?
豊かさは歪に進歩し、仕事や子育て、日常の雑事に追われ、ストレスが蔓延、心の余裕が失われています。
さらに、商業的利益が優先するグローバル化の波に翻弄されつづける日本には、さまざまな分野の外国資本が流入し、安価で利便性の高い食品が街中に溢れ、そこかしこに誘惑があります。
このような現状では〝ついつい安価で便利な美味しい食べ物に手が伸びてしまう…〞という人も多いのではないでしょうか!?
なにも、欧米式のメインディッシュを作る必要はありません。
「素食」でいいじゃないですか!もうそろそろ、戦後の日本に蔓延した「豊かな食事=西洋式の食事」という錯覚から遠ざかってはいかがでしょう!?
料理研究家の土井善晴氏は、そうした人に〝一汁一菜・ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい〞と提案し、次のように述べています。
わたしが『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)を書いたきっかけは、「土井善晴の大人の食育」といった勉強会(二〇一五年)で、若い女性、結婚を控えたカップルや、子供をもった女性が、大勢来てくれたとき、彼女たちから、「幸せな家庭を持ちたいけれど、料理ができない、料理した事がない」「子供を手料理で育てたいと思うけれど、どうすればいいか分からない」という切羽詰まった声を聞いたからでした。
それまでわたしは彼女たちの苦しみ、悩みを理解していなかったので本当に驚きました。
わたしは日常の料理をたいそうに考えていませんでしたから、ごく当たり前に「ご飯を炊いて具沢山の味噌汁を作ればいい」と話したのです。
一汁一菜でまずはオッケー、一汁一菜は手抜きでないと、ごく当たり前にしてきたことを彼女たちに話したのです。
彼女たちみんなが喜んで安心したようでした。
一汁一菜は何も新しいことではなく、昔から日本の生活にあった食事スタイルです。
実際に我が家でも忙しい日はそうしていたし、料理屋の3食の食事もすべて一汁一菜が基本でした。
ちゃんこ鍋とは味噌汁のことですから、相撲部屋も一汁一菜が基本です。
世界に誇る日本の懐石料理も、一汁一菜からはじまります。
一汁一菜というスタイルを基本にして考え、日々の暮らしの中で変化させていけばよいのです。
どんな民族にも、何を作ろうなんて考えなくても、簡単に作れて、飽きることなく毎日食べられる食があるのです。
フランスなら、温かい野菜スープに、パンとチーズがあれば食事になるでしょう。
それ以上の料理は、時間があるとき、心に余裕があるとき、お金があるときに、食べたいもの、食べさせたいものを作ればいいのです。
味噌汁を作るだけなら、10分もしないうちに温かいものが食べられます。
それ以上のことは、やらされるのではなく、自分の意思でやることです。
そうすれば料理は楽しみになる、できるのです。
メインディッシュの作り方なんて後回しでいいのです。
筆者はこの一汁一菜に、主菜としてオーガニックの「サラダボウル」を加えることをお勧めします。
もちろん、添加物がいっぱいの市販ドレッシングは避けて… Extra Virgine Olive Oilと「本物の塩」をパラリだけでも美味しいですよ。
沖縄の人たちのように、ご自宅の庭やマンションのベランダの小さなスペースでオーガニックな自家菜園に挑戦できたらいいですよね。
「カット野菜」は便利ですが、「次亜塩素酸」に漬けられ消毒されていることを憶えておいてください。
References
『消化・吸収—基礎と臨床—』細谷憲政 監修、武藤泰敏 編著/第一出版
『IL-17産生ヘルパーT細胞サブセット』岩倉洋一郎 他/東京大学医科学研究所
『アレルギー疾患と食事・栄養因子』植木彰/自治医科大学 講演録(2007年3月)
『環境とアレルギー』市瀬孝道/大分県立看護科学大学
『成人におけるビオチンの目安量についての検討』柴田克巳/循環器疾患等生活習慣病対
『薬で治らない生活習慣病』奥山治美 著/黎明書房
『腸内環境学のすすめ』辨野義己 著/岩波書店
『免疫と腸内細菌』上野川修一 著/平凡社新書
『ヒトの生化学』水上茂樹 他 著/講談社サイエンティフィク
『食の安全の科学』菅家祐輔・坂本義光 編著/三共出版
