⒏ 腸内に食べた物が長く留まるほど、有害物質によるリスクが高まる
2025.05.23
あなたは、あなたが食べてきたそのものです
You are what you eat.
わたしたちは今、史上最悪の有害食品環境の真っ只中に暮らしています。
これは、紛れもない事実ですが、食品メーカーは、わたしたちを不健康にしようとしているわけではありません。
ビジネスの原則に則って、つまり顧客のニーズに対して忠実に対応した結果なのです。
デイヴィッド・ケスラー博士によれば、食品業界には顧客を満足させる以上の目的があるといいます。[1]
つまり、業界全体が、食品を通じて〝過剰な刺激を与えること〞に投資し〝延々と食べつづけさせることのできる力を生み出そうとしている〞ということです。
仕事は忙しいし、子供にも手が掛かる、自分で作るのは面倒くさいなぁ。
でも今すぐ欲しいんだよね。
値段が高いのは困る、安く買いたいよなぁ。
見た目が良くないのはちょっとねぇ。
それに賞味期限は長くないと。
帰宅まで、あれやこれやと用事を済まさないといけないから、傷みやすいのはねぇ…
つまり、「安い」「簡単」「便利」「キレイ」「美味しい」これが、わたしたちのニーズです。
このニーズに対応して、使用が激増したのが「食品添加物」です。
超加工食品に使われている添加物は、合計で1500種類ほどあると言われています。

Potato salad, supermarket side dish
たとえばスーパーやコンビニで売られている「ハム入りポテトサラダ」には、1パックでおよそ50種類の添加物が使われています。
「㏗調整剤」などは一括表示が可能で、「加工助剤」は表示義務がありませんから、商品に使われている全ての添加物は表示されません。
では、このハム入りポテトサラダに添加されている㏗調整剤を外したら、どうなるでしょうか?
まず持ち帰りに保冷剤とクーラーボックスが必要になります。
それだけではありません。
真っ直ぐ家に帰って、2時間以内に食べなければならないのです。
これが超加工食品をめぐる現実です。
いかがですか?
添加物に限って言えば、作る人、売る人、食べる人がすべてメリットを享受しているのです。
コンビニのおにぎりには、添加物がおよそ20〜30種類、幕の内弁当で、約200種類が使われています。
しかし昨日買ったおにぎりが、今日も食べられるのは添加物のおかげなのです。
専門家の間では〝超加工食品は、食べ物の形さえあれば、味も色も食感さえも、添加物を使えばどうにでもなる〞と言われている食べ物です。
超加工食品や調理済み食品を利用した生活をしていると、およそ400〜500ぐらいは毎日のように口に入れる計算になります。
添加物の化学物質に毒性があるかどうかは、人体実験をもとに認可されていない以上、その安全性は完全に解明されているとは言えません。
健康よりも利益が優先。
これが経済的合理性の実態です。
食品添加物は、わたしたちの食生活に様々な利便性を与えてくれていますが、工場で作られる「お皿に載った化学物質」加工食品には、どのようなリスクがあるのかを知っておく必要があります。
一例として以下のように様々な有害物質が使われています。
コンビニ弁当からシャンプーまで、何日でも保存できる魔法の保存料「ソルビン酸カリウム」は、発ガン、成長不順、腎臓肥大などの有害性が報告されています。
加工肉やパック野菜、イクラなど、食品を輝かせる「亜硝酸塩」には、発ガン、遺伝子への悪影響、頭痛、記憶障害、うつ症状などの有害性が報告されています。
食品にもっちり感、とろみを付ける、「カラギナン・グアーガム、増粘多糖類」には、胃潰瘍、食欲不振、衰弱、発ガン、軟便、慢性的な腸の不調などの有害性が報告されています。
バターを使わずに、サクサク感をだせる、菓子パン、クッキーの必需品「ショートニング(トランス脂肪酸)」には、動脈硬化、心臓病、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの有害性が報告されています。
硬化油とも呼ばれるマーガリンなどのトランス脂肪酸は、植物油からつくられた人工的な脂肪です。
ドイツの化学者ヴィルヘルム・ノーマン(Wilhelm Normann)が一九〇二年に発明し、今日まで長年のあいだバターや動物性脂肪の健康的な代用品と考えられてきましたが、これが致命的な間違いだったことが明らかになっています。
トランス脂肪酸は、ミトコンドリアによって分解されません。[2]
トランス脂肪酸は、ほかのどんな脂肪よりもはるかに心臓に悪く、肝障害の原因になります。
ハーバード大学のダニエル・リバーマン(Daniel E. Lieberman)は〝トランス脂肪酸は、要するに、ゆっくり効いてくる毒のようなものだ〞と指摘しています。
「トランス脂肪酸」は、二〇〇三年には世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が「総摂取エネルギー量の1%未満」という国際基準を設けています。
その後、二〇〇六年にはアメリカでも商品パッケージへの含有量表示を義務づけたことから、アメリカ保存食品製造業者協会(GMA)によれば、加工食品への使用量は86%も減少したといいます。
当然、米国のファストフードチェーンは、(顧客から訴えられないように)米国内ではもうトランス脂肪酸を使用していませんが、日本のある大手グローバルファストフードチェーンは、まだ使用をつづけているようです。
ちなみに、大手ファストフード・チェーンのハンバーガー1個には、およそ60種類の添加物が使われていますが、法律上表示は必要ありません。
その場で調理して販売する場合、持ち帰り弁当、惣菜のバラ売りと同様に表示義務はないのです。
通常ファストフードで使用する場合、オーストラリア産などの、乳が出なくなった乳牛─乳牛の肉は、牛乳よりもたくさんのIGF–1を含んでいる(EUの公式発表)─の赤身肉で充分と言われています。
パサパサで風味がないため安価で供給できます。
それに油の多いバラ肉を2割程度混ぜ、油と乳化剤、決着剤等を加え、柔くジューシーに仕立てます。パテ1個に油10gは含まれています。
これにフライドポテトと甘い飲料をセットにすると、軽く600〜800キロカロリーを摂取することになるのです。
ハンバーガーが安く供給できるのは、90%以上の食材を輸入する無駄のないシステム、冷凍パテを短時間で同時に焼き上げる特殊な調理機、そしてそれらを支える添加物があるからです。
冷めてしまったハンバーガーは、パンもパテもすぐに硬くパサパサになってしまうため、10分以内に販売するのが原則だそうです。
アメリカでは、法律と条例により、二〇二一年にトランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニングなどの油が、食品市場から完全に消えましたが、日本では厚生労働省が規制しておらず、表示義務すらありません。
海外からの観光客が〝日本は何を食べても美味しい!〞と言う理由がよくわかります。
しかし米国産などの赤身肉や加工肉、さまざまな化学物質が添加された超加工食品にしても、日々の食生活の中で「食べない」というのは現実的ではないでしょう。
スーパーの生鮮食品は、原産地の表示が義務付けられていますから、確認が可能です。
しかし加工食品は重量が最も多い食材が(たとえば)肉でない限り、産地を明記する義務はありません。
また前述の通り、店舗で作られたお惣菜なども原料原産地表示は不要です。
また、食物の全ての添加物をチェックするのは困難ですし、日々の忙しさを考えれば、コンビニ弁当やインスタント食品に頼らざるを得ないでしょう。
日本経済の難病は、国民の健康状態にも大きな悪影響を与えています。
「美味しい食事・幸福食」の旨味成分は糖質・脂質ですから、「グルメ脳」が食欲を抑えるのは難しいのではないでしょうか。

Chemical components on the shampoo label: Sodium Lauryl Sulfate (sls, sles).
また食品以外でも、化学合成された添加物のリスクについて理解しておく必要があります。
シャンプーやボディソープなど、化粧品分類の洗剤にはほとんど、ラウリル硫酸塩や○○スルホン酸、ラウレス硫酸Na、フェノキシエタノール、ソルビン酸といった強烈な強酸性の界面活性剤が大量に含まれています。
界面活性剤は、水と油を混ぜ合わせる働きから、お皿を洗ったり、様々な油汚れなどを洗浄する際に必ず使われます。
界面活性剤は、他の化学物質まで引き連れて、皮膚から体内に吸収されてしまいます。
経皮吸収は経口と違い肝臓を通りません。
よって、全く解毒されずに全身を循環することになり、これらの「経皮毒」は、細胞や組織を冒し、生命維持機能に多大な悪影響を及ぼします。
化粧品の保存剤として普通に用いられるパラオキシベンゾエート(通称パラベン)は、エストロゲン様作用を示す内分泌撹乱物質である、と言及する科学者もいます。
生活習慣病は、長年の蓄積によって発病します。
微量だからといって放置すれば、取り返しのつかない結末を招きます。
ペラペラの薄紙1枚も、1000枚集まれば電話帳ほどの厚みと、重さになるのです。
法律によって、化粧品メーカーには「全成分表示」が義務付けられています。
しかし一方では、「キャリーオーバー」という制度もあり、原材料メーカーなどの下請け業者の時点で混入したり、手を加えた物質については〝完成品メーカーが全てを把握することは難しい〞という理由で、表示義務を免除するという制度です。
しかし、あなたは不思議に思いませんか?
完成品メーカーが、下請業者が混入したりした成分を把握できない、などということがあるのでしょうか?
下請業者は、何を原料にどのような添加物を混入したかは、当然把握しているはずです。
それを報告してもらうだけでよいはずです。
何のための「全成分表示」なのでしょうか。

Fresh organic vegetable selection in produce aisle at grocery store supermarket.
一方、「無添加」とは、どういう意味なのでしょうか?
無添加とはもちろん添加物が無い、という意味ですが、以前は「指定成分」とされていた150種ほどの化学物質を使っていない、という意味で捉えられていました。
しかし今日では、数万種の化学物質があり、化学物質は無限に合成できるため、その最終判断はメーカーに委ねられています。
つまり、明確な定義や法の規制がないのが実態で、「無添加」は無意味なイメージ商法のキャッチコピーとなっています。
わたしたちがこれだけの文明生活を営み、利便性の高い「化学合成物質」に依存している以上、環境ホルモンやダイオキシンによる汚染なども完全に避けることは困難です。
人によりますが、食べた物が消化・吸収されて排泄されるまでに掛る時間は、およそ22時間から33時間ですそれを超えて腸内に食べた物が長く留まるほど、有害物質による老化や病気のリスクが高まります。
〝腸は再吸収〞し、有害物質はとめどなく全身を循環してしまうのです。
References
1. David A. Kessler, The End of Overeating: Taking Control of the Insatiable American Appetite, Emmaus, PA: Rodale Books, 2009(『過食にさようなら:止まらない食欲をコントロールする』伝田晴美訳2009年エクスナレッジ)
2. L.H.Terri et al.(2008) “Severe NAFLD with Hepatic Necroinflammatory Changes in Mice Fed Trans Fats and a High-Fructose Corn Syrup Equivalent, ”American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Liver Physiology, 295(5): G987-5.
