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⒌ 遺伝子組み換え食品 (GMO: Genetically Modified Organism)

2025.05.23

遺伝子組み換え食品(GMO)とは何か?

 

遺伝子組み換え食品(GMO:Genetically Modified Organism)は、遺伝子組み換え技術によって品種改良された食品のことを指します。

主に、外来遺伝子の導入や内在性遺伝子の発現の促進・抑制を行い、農薬や除草剤の使用回数の減少など、農業生産性の向上を重視した第一世代の遺伝子組み換え食品があります。

また、食物の成分を改変することにより、健康の維持・増進や栄養価を高めることを目的とした、消費者にとっての利益を考慮した第二世代の遺伝子組み換え食品も存在します。

第二世代の遺伝子組み換え食品としては、高オレイン酸を含む大豆(低リノール酸)や、高リシン含有とうもろこし(リシンは必須アミノ酸の一種で、穀類中心の食事では最も不足しやすいアミノ酸であり、とうもろこしは穀類の中でも最もリシン含有量が低い)などが、日本での安全審査手つづきを終えています。

今後は、栽培が不可能であった地域での耐寒性、耐乾燥性、耐塩性を備えた遺伝子組み換え食品や、健康増進や病気治療を目指した遺伝子組み換え食品の研究・開発が進むと予想されます。

また、これらの性質を備えた食品が急増することが予想されます。

たとえば、スギ花粉症対策として、スギ花粉アレルゲンの一部を含有させた米や、経口免疫寛容によるスギ花粉症緩和を目指した研究などが進められています。

さらに、低アレルギー性をはじめ、リシンやトリプトファン、コレステロール抑制、高血圧抑制、糖尿病予防などの目的を持つ遺伝子組み換え米の研究も行われています。

このように、遺伝子組み換え食品には多くのメリットがあり、今後の展開が非常に期待されています。

 

遺伝子組み換え食品の安全性は、本当に確立されているのか?

 

しかし、GMO(遺伝子組み換え作物)に関する是非については激しい論争があります。

主な論点は、生態系への影響、経済問題、倫理面、そして食品としての安全性などです。

これらの論争の背景には、アメリカを中心に、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカの農業生産国などにおける、少数のアメリカの種子開発企業による世界的な食料支配への脅威や危惧が存在します(政治的・経済的問題)。

いずれにしても、遺伝子組み換え作物の作付面積は増加しており、2008年現在、全世界の大豆の70%、とうもろこしの24%、綿の46%、ナタネの20%が遺伝子組み換え作物であるとされています(1,入部人調査資料)。

アメリカでの作付けの割合は、大豆92%、とうもろこし80%、綿86%となっています(2008年米国農務省NASS資料)。

遺伝子組み換え食品の安全性については、遺伝子そのものやその遺伝子によって産生されるタンパク質の急性毒性などについて、定められた項目を開発企業が自ら実施し、提出された書類の審査のみが承認機関で行われます。

基本的な考え方は、組み換えられた植物がその姿、形、主要な成分などにおいて組み換え前のものと実質的に同じであれば、中長期的な毒性試験は求めないというものです。

これは、とうもろこしや大豆など、遺伝子組み換え前の植物が元々長きにわたり食されてきたものであり、組み込まれる遺伝子も多くは毒性のない他の植物や微生物に備わった特徴を利用するものであるとの判断が背景にあるように思われます。

実際、今日までに遺伝子組み換え食品を明確に否定する事例はほとんど報告されていません。

 

GMOと農薬:見過ごせないもうひとつの問題

 

安全性の一例として、害虫抵抗性のために使われる毒素(ごく普通に見られる土壌細菌で特定の昆虫に毒性を示すタンパク質)について考えてみましょう。

Bt遺伝子導入植物では、対象となる昆虫が食べると、その消化液中にある酵素によってタンパク質が消化され、毒性を持つペプチドが生成されます。

そのペプチドは、幼虫の消化器官にある受容体と結びつき、複合体を形成します。

この複合体が上皮細胞に穴をあけ、その細胞が破壊されることで、幼虫は死んでしまいます。

一方、ヒト(他の哺乳類や鳥類なども含む)の消化器官では、胃酸によってペプチンが消化され、Bt毒素は生成されません。

また、ヒトの消化器官にはそのような受容体がないため、ヒトには毒性を示しません。

「虫が食べて死ぬようなものをヒトが食べてよいはずがない」という意見は、必ずしも理にかなっているわけではないようです。

しかし、遺伝子組み換え食品が生態系や経済問題、倫理的な問題を除いた場合、純粋に食品として問題がないかというと、必ずしも安全だとは言い切れないように思われます。

たとえば、前述の毒性を持つBtタンパク質に関しても、アミノ酸単位まで消化・分解されることが前提とされています。

Baby face with eczema on cheeks. Atopic dermatitis. Allergy. Dry skin, rash, itch and other dermatology symptoms. Baby skin care and medical treatment. Healthcare and skin diseases.

しかし、実際にはアトピー性疾患などでは、小麦や米などのタンパク質が不完全に消化され(ポリペプチド)、それが吸収されることが発症原因とされています。

そのため、不完全な消化・吸収が起こった場合に、遺伝子組み換え食品に含まれる修飾されたタンパク質(ポリペプチド)がどのような生体内での挙動を示すかについて、明確にしていく必要があると考えられます。

特に、近年の遺伝子組み換え技術の進展は目覚ましく、それに伴い遺伝子組み換え作物も多様化しており、今後さらに予測できない危険性に対する懸念も高まっています。

農薬といえば、メタミドホスを含む中国製冷凍餃子事件や、古くは除草剤パラコートや有機リン系農薬パラチオンによる急性毒性の事故など、非常に危険な化学物質が農薬として使用されていると感じることがございます。

また、家庭菜園の普及により、一般家庭でも農薬を直接使用する機会が増え、消費者の農薬に対する危険性・安全性に対する意識も非常に高まっています。

確かに農薬は取り扱いを誤ると非常に危険であり、人体に有害な化学物質であることは間違いありません。

しかし、ほとんどの農薬は太陽光や土壌中のバクテリアによって分解され、植物に吸収された農薬も植物体内で代謝分解されて無毒化されていきます。

また、人体に吸収された微量の農薬は肝臓の解毒酵素によって解毒され、尿や便などとともに比較的短時間で排泄されることが多いです。

このため、法的に厳格に管理され、使用方法が遵守されている野菜や穀物については無農薬であることが望ましいですが、必要以上に過敏になりすぎる必要はないかもしれません。

Lancaster County, Pennsylvania-August 23, 2022: A sign warning people in both English and Spanish not to enter apple orchard due to Pesticide application

ただし、安全基準を満たしている農薬であっても、輸入食品に使用されているポストハーベスト農薬には注意が必要です。

急性毒性の問題を引き起こす可能性はほとんどないと思われますが、自国では使用が禁止されている農薬を他国への輸出については「許可する」という点には問題が潜んでいます。

たとえば、アメリカから輸入するオレンジにはポストハーベスト農薬が使用されていますが、同じ量のポストハーベストを使用した温州みかんをアメリカに輸出することはできません。

ポストハーベスト以外にも懸念すべき農薬には残留性有機汚染物質があります。

これらは化学的に安定した物質で、体内で代謝されにくく、脂溶性が高いため体内に蓄積されやすい農薬です。

特に有機塩素系農薬は、有機リン系農薬と比べて急性毒性は穏やかであるものの、一般的に分解されにくいものが多い(逆に薬効としては長持ちします)。

これらは体内に吸収された後、体脂肪などに蓄積され、代謝や免疫システムに影響を与え、様々な疾患の原因となることが考えられます。

農薬の摂取が中断され、その蓄積物が皮下脂肪などの体内脂肪に蓄積されていれば、血中には戻らず人体への影響はほとんどないと考えられます。

しかし、授乳中やダイエット中など、体脂肪がエネルギー源として使われる場合、有害物質は血中に戻り、再度悪影響を及ぼすことになるでしょう。

さらに、DDTなどの有機塩素系農薬は環境ホルモンとしての作用があることも明らかになっています。

国内では、DDT、BHC(ベンゼンヘキサクロライド)、デルドリン、アルドリンなどは残留性有機汚染物質の問題から登録失効(製造・使用が禁止)となり、農薬全体に占める有機塩素系農薬の割合は少なくなっています。

しかし、ケルセン、フェニソブロモレート、テトラジホンなど、現在も使用されている農薬類もあります。

また、ダイアジノン(有機リン系)、カルボフラン(カーバメイト系)なども環境ホルモンの疑いがもたれています。

これら農薬の分解は、一般的に大気中では太陽光によって速やかに行われ、土壌中では微生物によって分解されます。

しかし、水中では太陽光や微生物による分解は期待できず、植物性プランクトンや動物性プランクトンに蓄積されることになります。

これにより、農薬の土壌汚染や水質汚染が食物連鎖を通じて生物に蓄積され、食肉や魚介類から摂取することが問題となります。

また、体内に蓄積性が少ない農薬であっても、日々その農薬を含む食品を摂取しつづけることは、免疫系や内分泌系に影響を及ぼす可能性があり、許容摂取量以下であっても、知らず知らずのうちに他の有害化学物質と相加・相乗的に作用する可能性があることを考慮する必要があります。

グリホサート(ラウンドアップ)をめぐる世界の動きと日本の現状

 

グリホサートは、植物の成長に必要なEPSP酵素の産生を阻害します。

この酵素は腸内細菌の成長にも必要で、GMO食品を摂取すると腸内細菌が成長できなくなるのです。

またGMO食品や遺伝子編集(GE)食品の問題は、操作した遺伝子がわたしたちの体の細胞に組み込まれることだ、とする研究もあります。

これまで食品の遺伝子は、小腸で分解されて吸収されると考えられてきましたが、分解されずにそのままの遺伝子がヒトの血液中に移行することが確認されています。 [1]

そして、これらの遺伝子は「エクソソーム(細胞外小胞)」という粒子によって運搬され、小腸粘膜から取り込まれます。

小腸粘膜から取り込まれたエクソソームは、全身の血流に入り、全身の細胞に取り込まれて遺伝子の一部となるのです。[2]

つまり、食べ物の影響が子々孫々まで伝わるということです。

さらには、エネルギー産生に必要なピルビン酸や解毒作用のあるパラオキソナーゼ–1などの酵素の産生も阻害するほか、腸壁の絨毛の表面にある微絨毛を傷つけ、消化能力を低下させます。

ちなみに、この遺伝子組み換えの種を農業界では「ラウンドアップレディー」と呼ぶそうです。

※二〇一八年8月、米国モンサント社をドイツの製薬大手バイエル社(Bayer)が買収。

モンサント社は、DDTやポリ塩化ビフェニルなどの化学薬品・農薬のメーカーとしても著名で、ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造メーカーでもある。

二〇一五年には世界保健機関(WHO)の下部組織・国際ガン研究機関が、「グリホサートには、おそらく発ガン性がある」と発表しました。

二〇一七年には米国の国立ガン研究所、国立環境健康科学研究所、環境保護庁、国立職業安全健康研究所の共同プロジェクトは、「急性骨髄性白血病」との関連を発表しています。

グリホサートには発ガン性はもちろん、植物を枯死させると同様に土壌細菌や腸内細菌も殺傷するほか、自閉症や認知症を誘発させる可能性があり、さらに精子の激減、胎児の発育に影響を与える可能性を指摘されています。

このような状況下において、ほぼ全世界でラウンドアップやグリホサート製剤の使用が禁止されています。

またドイツ製薬大手バイエル(Bayer)は二〇一九年10月、除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」をめぐる米国内における訴訟が、二〇一九年7月から10月までの間に4万2700件まで急増したと発表しました。

世界各国で使用禁止や販売中止、輸入禁止が主な流れとなり窮地に陥ったラウンドアップは、日本市場になだれ込んできています。

日本では内閣府食品安全委員会が「ラウンドアップは安全」と承認、農協が使用を推奨し、ホームセンターなどで大量に販売されています。

店頭でラウンドアップやグリホサート製剤が簡単に入手できるのは、先進国では(米国のラストリゾートと化した)日本ぐらいになっています。

米国に本社をおくスーパー・コストコは二〇一九年4月、ラウンドアップの仕入れと販売をすべて中止することを発表しました。

コストコは世界に810店舗の大型店舗があり、日本にも33店舗あります(二〇二三年8月24日現在)。

日本政府はすでに世界的にその危険性が明確になっていた二〇一六年に「グリホサートの安全性を確認した」との評価書を公表し、二〇一七年12月には、グリホサートの残留農薬基準を小麦で6倍、そばで150倍、ゴマで200倍、ベニバナの種子で400倍という桁違いの大幅緩和を行いました。

しかもこの重大な決定をマスコミは一切報道しませんでした。

農家を含めて、ほとんどの国民に知らされていないのではないでしょうか⁉

わたしたちは「日本の野菜は安全」と思い込んでいましたが、今やグリホサートの残留基準値は中国の基準の150倍となったのです。

つまり〝農薬まみれで危険だと問題にしていた中国からの輸入野菜の方がまだましだ〞という危機的状況です。

 

食の安全を守るために、私たちにできること

 

ヨーロッパでは、日本に渡航する際にこのようなパンフレットを配布している旅行社があるそうです。

日本へ旅行する皆さんへ。日本は農薬の使用量が極めて多いので、旅行した際にはできるだけ野菜を食べないようにしてください。

あなたの健康を害するおそれがあります。[3]

…これはほぼ、タバコと同じ扱いです。

買う人がいるからビジネスは成り立ちます。

すべては「消費者の責任消費意識」の問題です。

残念ながら、自然の環境を破壊する行為が、そのまま因果応報のようにわたしたちの健康を損なう結果を生んでいることは、紛れもない事実なのです。

農薬を大量に使い化学肥料で育てても、それが遺伝子組換え(GMO)であっても作物はできます。

しかしそれは自然の調和を著しく欠いたものであり、それがそのまま菌やウイルスに耐性する免疫力をわたしたちから奪うことになっています。

それが人間の健康維持にどれほどの損失であったかは、ほとんどの人は認識すらないでしょう。

そのような知識をメディアは伝えようとしませんし、医師すらそのような知識を持つ人は稀なのです。


 

References

 

  1. Mol Gen Genet. 1998 Oct; 259(6):569-76
  2. Mol Nutr Food Res. 2018 Jun;62(11):e1701050
  3. 高野誠鮮、木村秋則『日本農業再生論「自然栽培」革命で日本は世界一になる! Japanese edition』2016年 講談社
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