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⒈ 「豊さが招く病気」の時代

2025.05.23

禽獣は食い、人間は食べる

知性ある人間だけがその食べ方を知る 

── ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン『美味礼讃』より

豊さが招く病気、つまり生活習慣病は、すべて同じ元凶から発症しています。

すなわち「病気促進要素」が過剰で、「健康促進要素」が不足している有害な食習慣やライフスタイルです。

栄養は、それが自然由来の本物の食べ物から摂取しているかどうかが基本です。

今日、世界では、間違った不健康な食生活とガンなどの生活習慣病の関係は、およそ常識になってきています。

一九七七年にアメリカで報告され、日本でも話題となった『アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書』─通称『マクガバンレポート』─は、食事と生活習慣病(慢性疾患)の因果関係についての研究報告です。

この5000ページにもおよぶレポートには、

ガンは薬では治らない。

ガン及び生活習慣病の原因は90%以上食事である。

アメリカ人は動物性タンパク質と動物性脂肪を摂りすぎている。

また、加工食品の弊害もある。

といった問題が提起され、報告書の最後はこう結ばれています。

人類は、もっとも理想の食事にすでに到達している。

それは、日本の伝統食である。

そしてその翌年、アメリカ国民に公開されています。

これが今日の「和食ブーム」の科学的根拠の一つになっています。

『ニューヨーク・タイムズ』紙が「疫学研究のグランプリ」と絶賛し、「現代栄養学のバイブル」とも言われる、生物医学研究史上、最大規模の栄養学の疫学調査(通称「China Study」)をご存知でしょうか?

一九八三年から一九九〇年にかけて行われたこの調査は、人間の「食習慣」「ライフスタイル」、および「病気」についての研究で、アメリカ国立癌研究所が資金提供し、米国コーネル大学、英国オックスフォード大学、中国予防医学研究所が合同で、中国農村部、および台湾で行われたものです。

そしてこの疫学調査の指揮をとったのは、栄養学の世界的権威で、「栄養学のアインシュタイン」とも称される米国屈指の栄養学者、T・コリン・キャンベル(T. Colin Campbell)博士です。

この研究で明らかにされたのは〝「動物性の栄養」を摂取するか、それとも「植物性の栄養」を摂取するかによって、健康にもたらされる影響は著しく違う〞という驚くべきものです。

そして〝動物性食品はガンの最大の要因であり、この食習慣をやめて、植物性食品主体の食事に切り替えれば、ガンばかりか、心臓病・脳梗塞・糖尿病・骨粗鬆症・関節リウマチ他のさまざまな自己免疫疾患・アルツハイマー病・白内障・加齢黄斑変性(AMD)など、あらゆる病気を予防し、回復させることができる〞ことを科学的に立証したのです。

T・コリン・キャンベル博士は、植物由来の食物をできるかぎり自然の状態に近いかたち(ホールフード)で食べる「プラントベース・ホールフード Plant-based whole food」が、あらゆる医療行為に優る、最も効果的な治療法だと報告しています。

Jane Anne Plant

イギリスの科学者で『乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか』の著者でもあるジェイン・プラント(Jane Anne Plant)教授は、自らの乳ガンの原因を突き止める過程で、このキャンベル博士らの疫学調査がきっかけのひとつとなったと述べています。

また映画『Food Inc.』の監修で知られ、二〇一〇年に「Times」誌の「世界で最も影響力を持つ100人」にも選出されたハーバード大学、カリフォルニア大学バークレー校大学院教授マイケル・ポーラン(Michael Kevin Pollan)は〝ほどほどの量を、植物中心に食べようEat food. Not too much. Mostly plants.)〞と勧めています。

そしてポーランのメッセージを3語に凝縮した〝本物の食べ物を食べようEat real food.)〞というのは、『果糖中毒 ・ 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(二〇一八年 ダイヤモンド社)の著者、ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)博士(小児科医・カリフォルニア大学サンフランシスコ校医科大学院教授)で〝さまざまなダイエット法に欠けているのは、「本物の食べ物は、本質的に良いものだ」という考えである〞と指摘しています。

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