美と健康の真実を考える

Vol.6 横田邦信『糖尿病に勝つ!「マグネシウム食」革命』2019年 主婦の友社

2019.09.09

横田邦信『糖尿病に勝つ!「マグネシウム食」革命』2019年主婦の友社


レビュー

「今、私たち日本人に不足していながら、どうしても必要なもの。それは「マグネシウム」です。マグネシウムは金属としての認知度は高いが、私たちの体に不可欠な「必須ミネラル」としてはあまり知られていない。

私が「マグネシウム」の重要性について知ることになったのは、私が研修医の時代にお世話になった本田正節(ほんだまささだ)先生の影響です。東京第二病院(現・国立東京医療センター)の医師だった本田先生は、よく酸化マグネシウムを患者さんに処方していました。「酸化マグネシウムは、とても大事なミネラルの化合物で、安全で、昔からひんぱんに処方されている薬。いろいろなことによく効くんです。少量ならその制酸作用によって良い胃薬になり、多く飲めば緩下剤としても働く。そして、マグネシウムは不整脈にもけっこう効く場合があるんです。」というのがその理由でした。

当時の日本では、マグネシウムの認知度・理解度ともに驚くほど低く、海外の最新研究なども参考に考察し、マグネシウムの重要な働きを知りました。同時に、現代の日本人は悲しいほどマグネシウムの摂取不足に陥っていて、ある病気との関わりがあることも突き止めました。

今や国民病とも言われる「糖尿病」の原因は肥満にある、というのが定説ですが、臨床現場では「肥満でないのに糖尿病の人」は同じくらいか、むしろ多いのです。

1960年以前、日本に糖尿病患者はほとんどいませんでした。しかし、欧米型の食事が浸透し、糖尿病の患者さんの数は激増したのです。このため専門医の間でも「糖尿病の増加は、食生活の欧米化による脂肪やエネルギーの摂りすぎによる」と考えられていました。しかし、データを詳しく調べたところ、脂肪やエネルギーの摂取量は20年以上も前から減少しており、「エネルギーや脂肪の摂りすぎが糖尿病増加の原因である」という考えとつじつまが合いません。

細かくデータを検証すると「大麦や雑穀など、白米以外の穀物摂取が激減した時期と、糖尿病患者が急増した時期が見事に一致するのです。つまりそれは、もう一つの「日本人の食生活の変化」なのです。

大麦や雑穀に含まれていて、白米や小麦(パン)に含まれていないものとは?それは「マグネシウム」です。その後の研究で、「慢性的なマグネシウムの摂取不足と糖尿病の発症には因果関係がある」との仮説を立てて、「糖尿病患者にマグネシウムを補充すると病態が改善する」という実証結果を得ました。

不足しているマグネシウムを積極的に補うことで、糖尿病は改善が期待できます。日常生活で「マグネシウム食」を積極的に摂るための具体的ルールやテクニックをお伝えするのが本書執筆の動機です。毎日たっぷり摂るマグネシウムの力で、あなたの体はきっとよい変化を迎えているに違いありません。


ポイント1

慢性的なマグネシウム不足は、糖尿病の発症をもたらし、高血圧、メタボリックシンドローム(慢性代謝性疾患)などの生活習慣病にもつながる。

ポイント2

今こそ必要な「マグネシウム食」革命!そば、バナナ、のり、ひじきなどに代表される高マグネシウム食品を食べてマグネシウム不足を解消することで、糖尿病の改善が期待できる。糖尿病に限らず、マグネシウムがもたらす健康効果は多岐にわたり、書ききれないほどたくさんある。

ポイント3

高マグネシウム食品まる覚え標語「そばのひ孫と孫わ(は)優しい子かい?納得!!」を覚えて、食卓に「マグネシウム食」革命を起こそう!


著者プロフィール

横田邦信(よこたくにのぶ)

東京慈恵会医科大学客員教授・医学博士

昭和26年東京生まれ。東京慈恵会医科大学・同大学院卒業。現在同大学客員教授、同大学附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科客員診療医長、日本生活習慣病予防協会参事、日本糖尿病学会学術評議員。主な著書に『糖尿病ならすぐに「これ」を食べなさい!』(主婦の友社)『マグネシウム健康読本』(現代書林)などがある。


本文要約

今こそ私たちが摂るべき栄養素「マグネシウム」

そもそも「マグネシウム」とは何か?──必須ミネラルとしてのマグネシウム

元素記号「Mg」の「マグネシウム」は一般的には金属としての特性がよく知られています。実用金属としては最も軽く、強度も兼ね備えたマグネシウムは、航空機に使われる合金の材料や、昔の写真撮影に使われたフラッシュ(現在のストロボ撮影)、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、カメラ、自動車、鉄道車両など実に幅広く使われています。

アルミニウムよりも軽いマグネシウムは、「軽量化」「小型化」という時代のニーズに応える素材として、最近では、リチウムイオン電池に代わる次世代電池としてマグネシウム電池が脚光を浴びている。

一方で、マグネシウムが体に必要不可欠な栄養素として大切な働きをしていることはご存知でしょうか?生命維持に欠かせない三大栄養素「タンパク質」「脂質」「炭水化物」に加えて「ビタミン」が第4の栄養素、そして「ミネラル」が第5の栄養素です。

ミネラルは、足りないと欠乏症状が出て、補充するとその症状が治まる16種類の「必須ミネラル」とそれ以外の「非必須ミネラル」に分類されます。必須ミネラルはさらにカルシウムやナトリウム、リンなど「1日の摂取量が100mg以上必要」な「主要(多量ともいう)ミネラル」7種類と、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素など1日の必要摂取量が100mg未満の「微量ミネラル」9種類に分けられ、マグネシウムはその主要ミネラルの一つです。しかし、知名度がマイナーリーグのマグネシウムは、日本では栄養素としての研究が海外に比べて遅れているのです。

マグネシウムは漢字では金へんに「美」と書いて「鎂」と表記します。旁(つくり)に「美」が使われているのは、マグネシウムが白く美しい閃光を放つ美しい金属だからです。

「マグネシウム」の名は、古代ギリシャのマグネシア地方に産出した「magnesia alba(マグネシアアルバ)」という物質に由来するとされています。Albaはギリシャ語で「白い」という意味で、マグネシアアルバはマグネシウムとカルシウム(石灰)の混合物として産出し、古くからさまざまな病気の治療に使われていました。

天然のマグネシウムは単体で産出するのではなく、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどを主成分とする鉱石に多く含まれています。記録では1755年、スコットランド人のJ・ブラックがマグネシウムと石灰を分離してマグネシウムを発見しました。


マグネシウムの重要な働き

マグネシウムがもたらす健康効果は多岐にわたり、書ききれないほどたくさんあります。中でも代表的なものを4つ紹介します。

ひとつ目は「強い骨や歯を作るために不可欠」であること。私たちの骨にはカルシウム同様、マグネシウムもたくさん含まれています。体重70kgの人のマグネシウム量は20〜30g、その60〜65%が骨や歯の組織に、残りの約35〜40%は筋肉や軟部組織、細胞外液中にあります。

マグネシウムとカルシウムは密接な関係にあり、ある一定の割合でバランスを保って存在しています。どちらかが欠けると、バランスが崩れてもう片方の働きも弱まってしまうのです。

骨や歯についていえば、カルシウムがリンと結びついた「リン酸カルシウム」が骨の「強度」に関わり、マグネシウムとリンが結びついた「リン酸マグネシウム」は骨の「柔軟性」や「弾力性」を高める役割があります。骨が簡単に折れないのは、実はマグネシウムのおかげなのです。

マグネシウム量が不足すると、まず結晶表面のマグネシウムが溶け出して細胞の外に出て行きます。すると、その出ていったマグネシウムを補うために、結晶内のマグネシウムが動員されます。このとき、マグネシウムとペアになっているカルシウムも骨から流出してしまうため、骨の主成分のハイドロキシアパタイトの結晶密度が低くなり、骨がスカスカの「骨粗しょう症」になってしまうのです。

マグネシウムは筋肉の動きに大きな影響を及ぼしており、激しい運動を行うアスリートに絶対欠かせない必須ミネラルとして注目を浴びています。マグネシウムは筋肉の「伸縮運動」のなかで、筋肉を弛緩(ゆるめる)させる方向に作用しているのです。

一方、カルシウムは筋肉を収縮(縮める)させる方向に働き、この二つのミネラル成分のバランスが保たれることで、筋肉は正常に働くのです。したがって、マグネシウムの不足は、いわゆる「こむら返り」を起こしやすくするということです。

こむら返りは、就寝中や運動中、あるいは妊娠中にも起きることが多く、糖尿病患者も足がつりやすいことで知られています。糖尿病になると、尿中へのマグネシウムの排出が増えてマグネシウム不足に陥って筋肉の動きが鈍くなり、けいれんを起こしやすくなるのです。また、先天的にマグネシウムの吸収が難しく、けいれんを頻発する「原発性低マグネシウム血症」という病気では、マグネシウムの静脈注射による投与で症状を治めます。

マグネシウムは「カルシウム拮抗薬」と呼ばれ、互いに協力したり、反対に拮抗作用(二つの要因が互いに効果を打ち消し合うように働く作用)を持つことで、バランスを取りながら体の維持調整を行なっているのです。

マグネシウムには、血圧をコントロールして高血圧を防ぐという重要な働きもあります

日本高血圧学会が定めた高血圧の基準は、診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、あるいは家庭血圧(起床時)が135/85mmHgを超えて高い場合を指します。

高血圧状態が続くと血管に常に負担がかかるため、血管の内壁が傷ついたり、柔軟性が損なわれたりして、動脈硬化を引き起こしやすくなります。高血圧の原因としてよく知られているのが塩分の摂りすぎですが、日本人に多い要因としてあまり知られていなかったのがマグネシウム不足なのです。

マグネシウムが不足し、細胞内のカルシウムの量が増えると、平滑筋のバランスが収縮しやすくなります。縮んだ血管内を血液が流れるため圧力が高く、血圧が上がってしまうのです。マグネシウムには血管を拡張させる働きがあり、血流をスムーズにして血圧を下げるのです。日本人のメタボ危険因子の多くが高血圧です。

「エネルギーを作りだすこと」もマグネシウムの代表的な役割です。私たちが生きていくうえで必要なエネルギーの主原料は、主にブドウ糖です。ブドウ糖が分解される過程でできるATP(アデノシン三リン酸)という物質が、細胞内で別の物質に分解されながらエネルギーを生み出し、細胞が活性化して各臓器が正常に機能し続けます。

マグネシウムは、ブドウ糖を分解してATPを作り出すときに必要な10種類以上の酵素の働きを活性化させています。マグネシウムが不足すると、これらの酵素の働きが鈍く、ATPの産出が不調となり、全身の細胞が活動できずに、慢性的な疲労感や倦怠感を感じることになります。

マグネシウムは、そのほかに体内にある350種類以上の酵素を活性化させています。「酵素」には消化酵素や酸化酵素、エネルギー代謝酵素など、人体に関係するものだけでなんと2万種類以上もあります。なかでもマグネシウムは新陳代謝に関わる酵素と結びついて、体内でその働きをサポートする重要な役割をもっています

日本では、マグネシウムの研究が進んでいた欧米先進国と異なり、その重要性が認識されておらず、厚労省の摂取量の調査データも比較的最近のものしかありません。調査データからも分かるように、日本人は大幅にマグネシウムが足りていません。1日のマグネシウム摂取基準は、30~49歳の男性が370mg、女性が290mgなのに対して、現状では男性が約120mg、女性が約80mg程度不足しています。

日本人がこれだけ圧倒的なマグネシウム不足に陥ったのは、戦後の「食の半欧米化」にその原因があります。1960年代に欧米流の食生活が浸透するようになり、パン食が増え、お米も精白された白米が主流になりました。日本の昔ながらの主食だった玄米や大麦、ひえ、あわなどの雑穀は、食物繊維の他に主要ミネラルのマグネシウムの宝庫なのです。マグネシウムは胚芽やヌカの部分に多く含まれているため、精白加工するほどマグネシウムの含有量は減っていきます。

加えて塩の精製法が変わったことも大きな要因です。1972年に塩の製法が工業化されて純度の高い精製塩が主流になりました。マグネシウムなどのミネラルを豊富に含む「ニガリ」が塩にほとんど含まれなくなりました。海水を蒸発させる塩田法で作っていた塩は「粗塩」と呼ばれ、昔の食生活では日常的なマグネシウムの摂取源だったのです。

私は、カロリーだけでは判断できない栄養失調を「新型栄養失調」と呼んでいます。現代人の栄養状態は、戦時中や戦後まもなくのころの栄養失調とは異なり、食べ物は豊富にあるのにタンパク質やビタミン、ミネラルなど特定の栄養素だけが足りない状態になっているのです。マグネシウム不足は、まさに慢性化した「新型栄養失調」なのです。

ストレスやアルコールの過剰摂取などでもマグネシウムは減っていきます。ストレスがかかることで尿中に排出されるマグネシウム量が増え、またアルコールを飲み過ぎても尿細管で行われるマグネシウムの吸収が鈍くなり、尿中への排出量が増えます。

粗塩と穀物の摂取量(マグネシウム摂取量)が減った時期は、糖尿病患者が増えた時期と見事に一致します。身体機能の維持に欠かせないマグネシウムが不足することで、骨粗しょう症や慢性疲労、こむら返り、便秘、片頭痛、尿路結石など数多くの体調不良が引き起こされ、中でも高血圧や狭心症、心筋梗塞、メタボリックシンドロームなど、最近急増している「生活習慣病」と密接な関係にあることがわかっています。

近年、日本で問題視されている「生活習慣病」は、偏った食生活や運動不足、喫煙、飲酒、睡眠不足、過労、ストレスなどの生活習慣がその発症や進行に深く関わる病気の総称です。具体的には心筋梗塞や狭心症、糖尿病、脂質異常症、高血圧、脳卒中(脳梗塞と脳出血)、がんなどがあり、日本人の死亡原因の大半を占める疾患です。

また、生活習慣病と合わせて耳にすることが多い「メタボリックシンドローム」(通称メタボ)は、「内臓肥満」(わが国では必須項目)に加えて、血圧・脂質・血糖値などに二つ以上の数値以上が重なった状態をいいます。メタボになると、動脈硬化など生活習慣病の発症率がグンと高まることがわかっています。

生活習慣病の中でも怖いのが、高血圧や脂質異常症、糖尿病などによって起こる深刻な血管障害、つまり「血管の合併症」で、動脈硬化によって引き起こされます

血管は加齢によって衰えますが、メタボリックシンドロームが原因で若くても動脈硬化は進みます。一時的に血流が途絶えたりして細胞や臓器、筋肉に十分な酸素や栄養が送られなくなり、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる疾患を引き起こしてしまうのです。

「メタボリック」は代謝の意味ですが、代謝異常によって起こる複数の病態が動脈硬化の発症を高めるのです。過食や運動不足で肥満やインスリンの効きが悪い状態が引き起こされ、高血圧や脂質異常症、高血糖などを発症。そこから動脈硬化が進み、ドミノ倒しのようにさまざまな病態が影響し合いながら進行して、狭心症や心筋梗塞など心臓血管や脳にトラブルが起こることを「メタボリックドミノ」といいます。

肥満状態は、筋肉や脂肪などに血中のブドウ糖を取り込んで血糖値を下げるインスリンの効きを悪くします。

マグネシウムには、インスリンの受容体への親和性を高める作用がありますが、マグネシウムが不足するとこの結合がうまくいかなかったり、インスリン受容体の化学反応を阻害したりしてインスリンの効きを悪くします。


そもそも糖尿病ってどんな病気?

日本人に激増する糖尿病の恐ろしさ

糖尿病は「血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)を下げる唯一のホルモンであるインスリンの作用不足によって起こる、慢性的な高血糖状態を呈する代謝疾患群」と定義されています。つまり「慢性的に血糖値が高いこと」。これが問題です。

糖尿病は、若い人に多いインスリン分泌の欠如あるいは枯渇が原因で発症する1型糖尿病と、インスリンは分泌されているものの量が少ないか、効きが悪くて血糖値が下がらない状態の2型糖尿病に大別され、日本人の糖尿病の95%以上は2型糖尿病です。

糖尿病は本人が無自覚のまま進行する「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」と呼ばれ、気づいたときには取り返しのつかない「合併症」を発症していることもあるのです。

戦後、日本における2型糖尿病の有病率は激増しました。1987年に厚労省が初めて行った調査では約660万人だった患者数は、2002年には740万人とわずか5年間で50万人も増え、2017年の国民健康・栄養調査では約1000万人と推計されています。これは、国民の約10人に1人が糖尿病患者およびその予備軍であるということを意味します。

血糖値は食事や運動、ストレスなど様々な要因で一日中変動しています。とくに大きく変動するのが食事の後です。食べ物が消化されてできたブドウ糖が腸から吸収されて血液中に溶け込むと、血糖値は上昇します。このとき、健康な状態ならブドウ糖を細胞に取り込み、効率よく交換して代謝を行うため、しばらくすると血糖値は下がってきます。

血糖値は100ml(1dl)の血液に含まれるブドウ糖の(mg)で計り、正常な人の空腹時の血糖値はおおよそ70〜110mg/dlの範囲にあり、食後の最も高いときでも140mg/dl程度までしか上がりません。

一方、糖尿病と判断される基準は、空腹時で126mg/dl以上、または食事の2時間後の血糖値が200mg/dlのいずれかを満たす場合です。糖尿病による脱水状態における特徴的な症状は、「多尿」「口渇」「多飲」です。高血糖状態が続くと、

体を動かすためのエネルギーがうまく生産されないことから、疲れやすくなり、倦怠感を覚えるのも典型的な症状といえます。

「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」は糖尿病の「三大合併症」と呼ばれ、全身の血管、とくに毛細血管に顕著に現れます

糖尿病網膜症は、網膜の毛細血管が傷ついたり、詰まったりして起きる障害です。最悪の場合、失明に至る合併症で、日本人の中途失明原因のトップクラスを占めます。

糖尿病腎症は、血管が固くなると血液のろ過ができなくなり、末期には腎機能が低下して腎不全になる病気です。人工透析で血液の浄化を行う必要があり、心不全など心臓にも障害が出ることがあります。

糖尿病神経障害は、毛細血管と神経の障害により足に壊疽(えそ)が起こり、しびれや痛みを感じる末梢神経障害、発汗異常、めまい、立ち眩み、また不整脈など循環器系の障害、下痢などの胃腸障害、神経因性膀胱炎による排尿障害などの自律神経障害を併発することもあります

インスリンは、人間が分泌するホルモンで唯一、血糖値を下げる働きをします。食べ物が消化されて作り出されるブドウ糖は、腸管から血液に吸収されるため食後は血液中のブドウ糖が増え、誰でも血糖値が上がります。すると、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むために、膵臓の内部に島状に散在する「ランゲルハンス島」という細胞群に含まれるβ(ベータ)細胞から、インスリンというホルモンが分泌されます。

エネルギーとして使われずに余ったブドウ糖は、筋肉ではグリコーゲンに、脂肪細胞では脂肪に変換されて、肝臓や筋肉細胞、脂肪細胞に蓄えられます。貯蔵されたグリコーゲンや脂肪は、運動などでエネルギーを使うと再び分解され、ブドウ糖として血液中に供給されます。この一連のメカニズムを「糖代謝」といいます。インスリンは、糖代謝のバランスをコントロールする重要な役目を担っているのです。

インスリンが十分働かないと血液中のブドウ糖が処理されず、高血糖状態が続いてしまいます。膵臓で作られるインスリンの分泌量が足りないと、ブドウ糖が処理できなくなります。すると膵臓は本来必要とされる量以上にインスリンを作り出す(代償性インスリン分泌)ことになります。

インスリンが十分働かない理由として、インスリン自体は十分な量が分泌されていても、効果を発揮できない状態というのがあります。加齢などでさらに効き目が悪くなると、ますますインスリンの量が必要になり、そのうち膵臓のβ細胞が疲弊してインスリンが作り出せなくなる「代償性機能不全」を起こし、いずれは糖尿病を発症することになります。

2型糖尿病では、インスリン抵抗性が注目されますが、日本人はインスリンを分泌する能力そのものが、欧米人と比べて遺伝的に低いことがわかっています。農耕民族の日本人は、高脂質食に慣れた欧米人よりもインスリン分泌能力が低い傾向にあるのです。

細胞膜の表面には「インスリン受容体(レセプター)」があり、インスリンを識別して結合するため、ブドウ糖はインスリンのサポート無しでは細胞内に取り込まれません。インスリンの作用が不足した場合、ブドウ糖は細胞内に入れずに、血液内に溜まってしまうのです。

インスリンの効き目が悪くなることを「インスリン抵抗性」といいます。インスリン自体には問題が無いのに、その仕事を遮断したり無効にしたりする物質によって、結果としてブドウ糖を取り込めない状態になり、インスリンが働いていないように見えるわけです。

これまで2型糖尿病発症のメカニズムの定説とされているのが、次の説明です。「現代型の生活によって内臓肥満が増えたことにより、インスリン抵抗性が発現。さらにより多量のインスリンを作り出そうとする(代償性インスリン分泌)ために膵臓に負荷がかかる。そのまま作用不足が解消されていないと最終的にはインスリンの分泌不全を招き、結果ブドウ糖の処理能力が低下して糖尿病が発症する」

しかしこの説明では、日本人に多い「肥満でないのに糖尿病である」ケースの説明がつきません。「肥満以外にも何か発症要因があるはず」です。糖尿病患者が増えた原因には、平均エネルギー摂取量でも脂肪摂取量でもなく、その他の栄養素が関わっているのです。

日本人の食生活が変わったことによって激減したのは、「マグネシウム」なのです。炭水化物は分解されるとブドウ糖になり、摂取量が増えていれば糖尿病が増える可能性はありますが、現実的には炭水化物の摂取量は減っています。

1971年までの塩は、塩化ナトリウムの他にマグネシウム、カルシウムをはじめ多くの微量ミネラルを含む、いわゆる「自然塩」が主流でした。それらは「差塩(さしじお)」または「黒塩」と呼ばれ、塩化ナトリウムの含有率は60〜70%といわれています。

ところが塩田の廃止によって塩の製法が工業化され、不純物を取り除いた塩化ナトリウム含有率99%以上の「精製塩」が流通することになり、マグネシウムやカリウムなどのミネラルの多くが失われてしまったのです。

また塩の変化期と「大麦・雑穀」の摂取がストップしてしまった時期が同じなのです。精製された白米は、「食生活の半欧米化」によっても日本人の主食の座をキープしていますが、穀物の中ではマグネシウムの宝庫である大麦や雑穀(あわ・ひえ等)の摂取は減っているのです。

マグネシウムを多く含む食材を摂らなくなったことに起因する栄養失調こそ、2型糖尿病の発症と増加に深く関係しているのです。そしてその後に行った臨床研究で、マグネシウム補充が糖尿病発症の抑制に大きな成果をもたらしたという事実と、世界中の医療研究者による見事な実証報告により、「マグネシウムと糖尿病には因果関係がある」ことが明らかになりました。

日本人の糖尿病へのステップは以下の通りです。①日本人はインスリン分泌能力が遺伝的に低い②食の半欧米化による内臓肥満と食事からのマグネシウムの摂取不足が重なる③インスリン抵抗性が発現する④代償性インスリン分泌も十分にできない⑤耐糖能異常からすぐに糖尿病を発症。

インスリンの2つのレセプターのうち「αサブユニット」と結合すると「βサブユニット」側が刺激を受けて活性化し、シグナルを発します。すると、ブドウ糖を細胞内に取り込む「GLUT4(グルットフォー)」(糖輸送担体)と呼ばれる物質が細胞膜表面に集まってきます。GLUT4によって取り込まれたブドウ糖は分解されて、エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が作られます。

この過程で、マグネシウムは①インスリンがレセプターと結合する②レセプターが活性化してシグナルを送る③シグナルを受けたGLUT4が細胞膜面に移動する、の働きに関わっているのです。マグネシウムが不足するとブドウ糖が血液中に残って血糖値が上がり、血糖値を下げるためにさらに分泌されたインスリンも無駄になります。これが「マグネシウム不足によってもたらされるインスリン抵抗性」です。

マグネシウムの不足によって、「インスリンの分泌能力」も低下します。インスリンを分泌する膵臓のβ細胞もブドウ糖を細胞内に取り込みATPを作り出しますが、β細胞には骨格筋細胞にあるような「インスリン受容体」がありません。膵臓はインスリンがなくても「GLUT2」と呼ばれる糖輸送担体によって直接ブドウ糖を取り込むことができます。

取り込まれたブドウ糖は「解糖系」と呼ばれる糖の代謝経路を経て、ピルビン酸や乳酸に分解され、ATPを産生します。さらにピルビン酸は酵素のサイクル反応である「クエン酸回路」に入って、ここでも細胞内でATPが作り出されます。β細胞の多くの段階でたくさんのATPが作られますが、この分解過程で10種類以上の酵素がマグネシウムを必要としているのです。

ではこの過程でマグネシウムが不足するとどうなるのでしょうか?①ブドウ糖の分解には酵素が必要だが、マグネシウムがないと酵素が働かない②したがって十分な量のATPが作られない③ATPが不足すると、カリウムATPチャネルが開いたままで、カルシウムチャネルが開かない④カルシウムが細胞内に流れ込まず、インスリンが分泌されない。このように、マグネシウムの不足が必要な連鎖を止め、正常なインスリン分泌の歯車を狂わせてしまうのです。


臨床研究でわかったマグネシウムの大きな効果

「マグネシウムを補充すると、インスリン抵抗性が改善される」ことを実証する臨床研究では、天然濃縮マグネシウム液(MAG21)を使い、糖尿病患者に毎日300mgのマグネシウム溶解液を摂ってもらい、この仮説を実証することができました。

さらに、高血圧の患者6名は最高血圧、最低血圧、平均血圧すべてが低下し、明らかな血圧の改善(降圧効果)が見られました。通常高血圧治療には、増加したカルシウムによる血管収縮作用を抑えるためカルシウム拮抗薬を使いますが、この降圧効果は、マグネシウムのもつ「天然のカルシウム拮抗薬」としての特質によって血管が拡張されたためです。マグネシウムが降圧処方薬と同じ効果を発揮したと考えていいでしょう。

脂質異常症の5名の患者さんについては、マグネシウム摂取後の中性脂肪値の平均が著しく低下するという効果も見られました。マグネシウムが不足すると中性脂肪を分解する脂質分解酵素の働きが低下します。それが糖尿病患者に脂質異常症を発症させる要因の一つですが、この臨床研究によってこのメカニズムも裏付けられたことになります。

こうして私の臨床研究で「マグネシウムは、インスリン抵抗性に加えて天然のカルシウム拮抗薬としての役割を果たし、また脂質分解酵素を活性化させることが明らかになり、糖尿病をはじめ多くの病気治療の「革命」となることがわかったのです。

糖尿病の人を対象とした本書では触れていませんが、マグネシウムを十分に摂取することで、他にも幅広い疾病予防・改善の効果を期待できます。

糖尿病(高血糖)高血圧脂質異常症が合わさったメタボリックシンドローム脳梗塞虚血性心疾患など命に関わる重大な疾病の発症リスクは、マグネシウムを積極的に摂ることで十分に下げられます

他にも便秘症こむら返り口内炎・歯周病水虫尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)、片頭痛イライラ慢性疲労などの改善や解消など、マグネシウムがもたらす健康効果は枚挙にいとまがありません。

骨粗しょう症の改善・予防PMS(月経前症候群)の不快症状を改善する働きも期待できるのは、女性にとってはうれしい効果ではないでしょうか。


ここまでは、本書の「マグネシウム」と「糖尿病とは」「マグネシウム不足による糖尿病発症のメカニズム」について要約してきましたが、本書の後半では「マグネシウムをたくさん摂るための食生活」のキーワード「新・昭和食」、名付けて「横田式和食」について解説しています。

そばのひ孫と孫わ(は)優しい子かい?納得!!」という標語は、マグネシウムを多く含み、ふだんの献立に取り入れやすく、手に入りやすい食品の頭文字をつなげたものです。

そば」平均的な茹でそば1人前には100〜150g程度で、この分量で約30mg以上のマグネシウムを摂ることができます。そばにはマグネシウムの他、ポリフェノールの一種で血管強化作用、抗酸化作用が期待できるルチンも豊富に含まれます。マグネシウムもルチンも、そばの実の皮にの部分に多いため、白い更科そばより見た目が黒っぽい田舎そばの方が多く摂取でき、そばの実を皮ごと挽いたそば粉だけで打った十割そばがおすすめです。

バナナ」バナナ1本はちょうど100gぐらいで、30mg以上のマグネシウムを摂取できます。食べ応えのわりには、1本86キロカロリーと意外に低カロリー。バナナにはカリウムも豊富に含まれ、血圧の気になる人には、塩分の排出効果が期待できます。

のり」のりには100gになんと300mgものマグネシウムが含まれ、カリウムやカルシウムなどの主要ミネラル類、ビタミンAなども豊富に含まれ、もちろんローカロリーです。のりなら味付けのり、焼きのりだけでなく韓国のり、佃煮などなんでもOKです。

ひじき」調理前の干しひじきには、100gになんと620mgのマグネシウムが含まれています。ひじきは、海苔と同様カリウム、カルシウム、ビタミンAを豊富に含み、鉄分や食物繊維も飛び抜けて豊富な、栄養素の宝庫と呼べるスーパー海藻です。

まめ」まめには色々な種類がありますが、総じてマグネシウムが豊富です。茹でた後でも乾燥時の半分程度の量のマグネシウムが残っています。また、大豆には必須アミノ酸のリジンやスレオニンのほか、女性ホルモンと同様の効果を発揮するイソフラボンも豊富です。

五穀」五穀は古来主要な5種の穀物「米・麦・粟・きび・豆」を指す言葉ですが、最近では様々な雑穀の総称として用いられます。雑穀には白米の何倍ものマグネシウムが含まれています。

豆腐」豆乳をニガリ(塩化マグネシウム)で固めた昔ながらの豆腐には、マグネシウムが豊富に含まれています。同様に、豆腐の加工食品の厚揚げ、油揚げ、豆乳、おからなどもマグネシウムが豊富です。ただ、一般に市販されている豆腐には凝固剤にニガリ以外の成分を用いているものも多く、これらにはそれほどマグネシウム量を期待できません。見分け方は、パッケージの原材料表記の凝固剤部分が「塩化マグネシウム(ニガリ)」など単独で表記されていることです。

抹茶」実は私たちが日常的に飲んでいるお茶の葉っぱにもマグネシウムが豊富に含まれています。茶葉にお湯を注いだ「お茶」には、ほとんどマグネシウムは含まれませんが、緑茶の茶葉を乾燥させ、挽いて粉末にした「抹茶」には、マグネシウムをはじめビタミンA・E・B2やサポニン、食物繊維などを余すことなく摂取できます。

ごま」ごまには、100gあたり369mgものマグネシウムが含まれています。ごまを搾った「ごま油」は、血液をサラサラにしてくれる不飽和脂肪酸で、アンチエイジング作用で注目されるビタミンE、セサミンも豊富です。

わかめ」わかめは、マグネシウムの他、各種ミネラル類、水溶性食物繊維も豊富なため、日常的に食べることで便通や腸内環境を改善する効果が期待できます。

野菜」野菜にはマグネシウムを比較的豊富に含むものが多く、多種多様なビタミン、ミネラル類、食物繊維、抗酸化作用があるポリフェノール類を豊富に含むものが多くあります。野菜でも特にマグネシウムが豊富なのは、ほうれん草、オクラ、貝割れ大根など緑色の野菜、そしてゴボウです。野菜の葉の緑色は葉緑素によるものですが、この葉緑素にマグネシウムが含まれていて、「緑色野菜の摂取量が多い人は、糖尿病を発症しにくい」という研究結果が発表されています。

」動物性食品は、マグネシウムの摂取源としてはそれほど有力ではありませんが、肉と魚では、魚の方がより多くのマグネシウムを含む傾向があります。みじかな魚で特にマグネシウムが豊富なのは、マグロの赤身、カツオ、あじ、イワシ、さばなどです。いずれも100gあたり25〜45mgのマグネシウムを含んでいます。

しいたけ」しいたけに限らず、キノコ類はマグネシウムが豊富なおすすめ食品です。乾物の方が成分は凝縮されるため、干し椎茸100gに110mg、乾燥キクラゲ100gでは210mgと高いマグネシウ含量を誇ります。

いちじく」フルーツ類でマグネシウムが豊富なのはいちじくです。干しいちじくは、生いちじくと比べてマグネシウムが豊富で、ビタミンB1・B2、カリウム、カルシウム、鉄、ポリフェノール類、食物繊維など他の栄養素も含まれています。

昆布」のりやひじき、わかめと同じく昆布にもマグネシウムが豊富に含まれています。昆布で取った「昆布だし」にもマグネシウムが豊富です。

かき」貝類は、魚と比べてさらに豊富なマグネシウムを含んでおり、100gの牡蠣には74mg、つぶ貝では92mgを摂取できます。牡蠣には良質なタンパク質が豊富で、カルシウム、リン、亜鉛などミネラルも豊かです。

いも」炭水化物を多く含むいも類は、「糖質制限」ブームで敬遠されることも多いようですが、マグネシウムを多く含む食材として適量を取り入れるのがおすすめです。

納豆」は、高マグネシウム食品の代表格。100gあたり100mgのマグネシウムを含みます。納豆は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルの五大栄養素をすべて含んでおり、血液サラサラ成分のナットウキナーゼ、食物繊維も豊富です。

とうもろこし」とうもろこしは、比較的豊富にマグネシウムを含んでいます。「ゆでる」調理方法では、ゆで汁にマグネシウムが流出してしまいます。生とうもろこしの加熱調理は、蒸したり、焼いたりする方が流出を抑えられ、ラップで包んで電子レンジで加熱する方法も簡単で、マグネシウムが無駄にならずおすすめです。

くるみ」ごまと同様に、アーモンドやカシューナッツ、ピーナッツなどのナッツ類にもマグネシウムが豊富に含まれます。中でもくるみのマグネシウム含有量は100gに150mgで、各種ミネラルに加えて、高脂血症・動脈硬化などに改善効果が期待できる注目の栄養素「オメガ3脂肪酸」のひとつαリノレン酸を豊富に含んでいるため、合併症で心疾患を誘発することが多い糖尿病とその予備軍の人にはとくにおすすめです。

マグネシウム豊富な食材には朝食向き、さらに和風メニュー向きのものが多く、主食のご飯やパンの食材を切り替えるだけで、マグネシウムの摂取量を数倍以上に増やすことができます。

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