美と健康の真実を考える

Vol.7 スティーブン・R・ガンドリー『食のパラドックス ─ 6週間で体がよみがえる食事法』2018年 白澤卓二 訳 翔泳社

2020.02.13

スティーブン・R・ガンドリー『食のパラドックス─6週間で体がよみがえる食事法』2018年 白澤卓二訳翔泳社

THE PLANT PARADOX The Hidden dangers in "Healthy"Foods That Cause Disease and Weight Gain by Steven R. Gundry, M.D.


■著者プロフィール

スティーブン・R・ガンドリー(Steven R. Gundry M.D.)

医学博士。ヒト微生物叢と腸との関わりの世界的権威。2000年、手術不能な冠動脈疾患患者が食事法の変更とニュートリシューティカル(アミノ酸)サプリメントの組み合わせによって劇的に回復したことに感銘を受け、それまでのトップ心臓外科医としてのキャリアの方向性を大きく変えて、カリフォルニア州パームスプリングスとサンタバーバラに国際心配研究所と、その下部機関として回復医療センターを設立。そこで大半の疾病を食事法と栄養摂取を変えることで治療する研究と臨床を行なっている。対象には心臓病、糖尿病、自己免疫疾患、がん、関節炎、腎臓疾患、アルツハイマー病などの神経疾患が含まれ、先進的な血液検査と血清検査によって患者の健康寿命を最長化している。この研究が2008年刊行の前著『Dt.Gundry’s Diet Evolution: Turn Off the Genes That Are Killing You and Your Waistline(ガンドリー博士の食事革命:あなたとあなたのウエストを殺そうとしている遺伝子をオフにする)』(邦訳未刊)に結実。近年では、臨床活動の半分以上は、世界中の医療機関から紹介されてきた自己免疫疾患患者の状態改善に割かれている。独立医師格付け機関キャッスル・コノリーによる米国のトップドクターに21年連続で、また『パームスプリングス・ライフ』誌のトップドクターに15年連続で、『ロサンゼルス・マガジン』のトップドクターに過去6年連続で選出。イェール大学、ジョージア医科大学卒業。


■訳者プロフィール

白澤 卓二(しらさわ・たくじ)

医学博士。白澤抗加齢医学研究所所長。お茶の水健康長寿クリニック医院長。米国ミシガン大学医学部神経学客員教授。1982年千葉大学医学部卒業。1990年同大学院医学研究科博士課程修了。東京都老人総合研究所病理部門研究員、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーなどを経て、2007年から2015年まで順天堂大学大学院医学科・加齢制御医学講座教授。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。日本ファンクショナルダイエット協会理事長、日本アンチエイジングフード協会理事長など。著書に『間違いだらけの危ない「生活習慣」老化ストップ!まだ間に合う!医療最前線』(講談社)、訳書に『「腸の力」であなたは変わる 一生病気にならない、脳と体が強くなる食事』(三笠書房)など。

■翻訳協力者プロフィール

酒井 泰介(さかい・たいすけ)

翻訳者。ミズーリ大学コロンビア校ジャーナリズム修士。近訳に『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバイ本性』(光文社)など。


■レビュー

本書はアマゾンU Sで上位を席巻し、世界18か国で話題が沸騰した注目の書です。昨今話題のグルテンフリー食品は、“小麦粉不使用の食品”として、主に小麦アレルギーの方や、健康意識の高い方からの支持を集めていますが、関心のある方には必須の書籍と言えるでしょう。

元々心臓外科医だったガンドリー博士は、多くの患者がヘルシーフードを食べ続けていたにもかかわらず、心臓の冠状動脈に動脈硬化病変がみられることに疑問を持ったことが本書執筆の動機になったと言います。「米国でのヘルシーフードの代表といえば、全粒粉、オーガニック野菜、未精製穀物などだが、なぜこれらの健康的な食物を多く食べている人たち、ひいては菜食主義者までもが私の外来にやってきたのだろうか。」博士は、彼らの共通点から、植物に含まれている「レクチン」という成分に注目しました。

植物性レクチンは糖鎖に結合するタンパク質で、動物が摂取すると身体の中で炎症作用を引き起こし、恒常的に摂取すると体重増加や慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患、リンパ腫や多発性骨髄腫などの腫瘍の発症基盤になると博士は主張します。どうしても体重が減らないと悩んでいる人は、もしかしたらレクチンに対するアレルギーが潜んでいるかもしれません。また本書には、健康管理に関わるさまざまな最新の研究による知見も紹介されており、日々の食生活の参考にしていただきたいと思います。


■本文要約

健康には、ある種の植物を摂取することが欠かせないことに疑問の余地はない。植物は人間に力を与え、数百種ものビタミン、ミネラル、抗酸化物質、その他の栄養素をもたらし、それは生きることばかりか、元気に暮らすために欠かせない。しかしそこにはパラドックス(二律背反)が潜んでいる。

植物が地上に進出したのはおよそ4億5000万年前と考えられているが、その後昆虫や動物などの捕食者が現れ、植物は捕食者から身を守る必要から進化し、レクチンなどの植物性化合物を合成するようになった。

これまでの15年間に、私の1万人以上の患者たちがプラントパラドックスプログラムを実践して体重を減らし、さらにはさまざまな病気を治してきた。命を支えてくれる当の野菜や果物が、同時に有害な物質をも宿している。

シアル酸は動物の腸、脳、神経末端の間、関節、あらゆる体液、血管壁などに含まれる糖分子だが、レクチンがシアル酸に結合すると神経間の連絡が阻まれる。これがブレインフォグ(頭がもやもやして思考が萎えた状態)の原因だが、インフルエンザ他の病気の原因となるウイルスの侵入を可能にもする。

昨今話題のグルテンは、一部の人に問題を引き起こす植物成分の一例だが、グルテンはレクチンと総称されるタンパク質の1つで、プラントパラドックスの一端に過ぎない。

レクチンは健康問題を引き起こしかねないことに加え、体重増加も促す。小麦に含まれる小麦胚芽凝集素(WGA)と呼ばれるレクチンが体重増加を促しているのだ。アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、米国の成人の70.7%が太り過ぎで、そのうちほぼ38%は肥満である。20年前には、肥満はわずか20%だったのに。悲しいことに今や米国人の肥満は新たなる常識となり、レクチンはこの肥満増悪に重要な役割を担っている。

腸管の表面積はテニスコート1枚分もあるが、表面の粘膜はわずか細胞1つ分の厚さしかない。レクチンはゾヌリンという化合物を生成して、腸壁の細胞間の結合をこじ開け(リーキーガット・腸漏れ)、身体の免疫機構による攻撃を促す。分子擬態によって免疫機構をすり抜け、体内の情報伝達を妨害し、混乱を引き起こす。例えば、脂肪細胞に無駄な脂肪を貯めさせたり、白血球に自らの身体を攻撃させたりするのだ。
WGAというレクチンはインスリンにそっくりで、脂肪細胞の埠頭に着岸して飢えに備えて果糖を取り込ませる。だが本物のインスリンと違い、決して離岸しようとしない。結果は破滅的で、筋肉は減り、脳や神経細胞は飢え、糖はすぐさま脂質へと変換され、脂肪がどっさり生み出される。つまり肥満やインスリン抵抗性をもたらすのだ。

また、タンパク質の消化を妨害したり、フリーラジカル(遊離基。活性酸素など)を放出して炎症を促し、腸粘膜を薄くする。そして腎炎を憎悪させたりもする。

小麦に潜んでいる悪党、小麦胚芽凝集素(WGA)は、グルテンに関係なく、ふすまに含まれている。つまり白パンはグルテンを含むが、WGAは含まない。一方、全粒小麦パンは災厄の種を両方含んでいるのだ。

大半のレクチンは割合に大きいが、WGAは小さなタンパク質だ。だから腸の表粘膜が損傷していなくても、他のレクチンよりも簡単に透過できる。

大豆やレンズ豆などの豆類は、どんな食品群よりもレクチンの含有量が多い。キササゲやイナゴ豆やインゲン豆5粒で、5分もかからず血栓を作ることができる。アフリカ原産で今では南カリフォルニアにも自生しているトウゴマ(別名ヒマ)から発見されたレクチンであるリシンは、知られている限り最も強力な毒だ。リシン分子数個で人間を数分以内に殺すことができるため、スパイ御用達になっているほどだ。

全粒穀物が「ヘルシーフード」とみなされるようになったのはこの数十年のことで、恵まれた階級の人々は「白い」パンを食べることになったことに留意したい。もちろん当時の金持ちらには知る由もなかったが、挽いてふすまを取り除いた穀物は全粒穀物よりもずっとレクチン濃度が低く、だから彼らの方がおなかの調子が良かった。

今日、誰もが精米よりも玄米の方が健康的と「知って」いる。だがアジアで米を主食とする40億の民は常に精米して食べている。馬鹿げているって?いや、とても賢いことだ。糠にはレクチンが含まれており、アジアの文化では数千年もそれを取り除いてきた。私もかつては白い穀物は茶色い穀物に劣ると考えていたが、今ではくら替えした。中国人、日本人、その他のアジア人は歴史的に肥満、心臓病、糖尿病、その他の米国に蔓延する病気と縁が薄い。直言しよう、肥満に苦しむのは「全粒穀物善玉論」の誤解にとらわれているせいだ。

今では全粒穀物運動は主流派にさえなり、朝食シリアル、パン、その他の健康食品として売り込まれるベイク製品は、「全粒穀物は善」という誘惑的なキャッチコピーと共に出回っている。だがこの流れは、人々の腸を広く傷め、他の健康問題への扉を開いている。全粒穀物製品と加工食品の消費増大は、レクチン摂取の二重苦だ。

1950年以降、米国のパン業者はイースト菌のようなパンを膨らませる材料をトランスグルタミナーゼ(グルタミン転移酵素)などで代替えするようになったが、これには結着作用がある。一方で、伝統的なイースト発酵法で製パンすると、イーストが小麦中のレクチンを破壊して無害化する。フランスとイタリアではほぼすべて白パンであり、全粒小麦など使っていない。グルテンは含んでいるがイースト菌に消化されており、WGAは含まない。

グルタミン転移酵素は魚肉や精肉の結着剤としても使われる(カニ蒲鉾はその一例)。肉接着剤と俗称されるのはそのためだ。残念ながらグルタミン転移酵素は血液脳関門を通過し、神経伝達物質を混乱させるので非常に有害性が高く、パーキンソン病に似た症状を呈するグルテン(運動)失調症の原因になる。それにもかかわらず、グルタミン転移酵素はアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可された食品添加物として製品ラベルに表示義務がないのだ。

白斑は、皮膚の色素が減退して起きる皮膚症状だ(同じ問題を抱えていたマイケル・ジャクソンが年を追って白くなっていったのはこのためだ)。白斑の原因は皮膚中で色素を作り出すメラノサイト(メラニン形成細胞)と呼ばれる細胞が徐々に破壊されることで、この細胞は神経細胞が皮膚表面に移動して変異したものだ。レクチンは腸粘膜を突破すると、免疫機構を活性化し、相手かまわず攻撃させる。つまり、レクチンによく似た構造を持つ重要な構造をもろとも攻撃させるのだ。メラノサイトは抗原と誤認され、白斑が発症するのである。

健康管理に取り組む上で、ガンドリー博士は、過去16年間、自院で診てきた多くの患者から学んだ2つのルールがあるといいます。

ルールその1は、「何かの食品を食べることより、何かの食品を食べないことの方がずっと大事」。水しか取らない断食によってさまざまな病気が治ることは驚くほどだが、何も食べるなというのではない。このルールはヒポクラテスの教え「万病は腸に始まる」に沿っている。腸を痛めつけるのをやめれば、総じて快調になるのだ。腸内微生物叢はあなたを「あなた」にしている細胞の90%を占め、あなたを「あなた」らしくしている遺伝子材料の99%を含んでいる。だから腸内の出来事は腸内だけにとどまらない。

ルールその2は、「腸内微生物叢に気を配り養うこと。そうすれば彼らはあなたに気を配り養ってくれる。なにしろあなたは、彼らの棲みかなのだから」。今や私たちは事実上、腸内に荒廃地を抱えている。抗生物質、制酸剤(プロトンポンプ阻害薬・PPI)、イブプロフェンやナプロキセンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などを長らく用い、加えて高脂肪で高糖質の西洋式食事をしてきたおかげで、かつての見事な熱帯雨林は今や荒れ果てている。自分の腸は居住に適さない「食の砂漠」だと思ってほしい。そこでは悪玉菌だけが、あなたが彼らに与えるもの(砂糖、精製炭水化物、飽和脂肪酸、つまりジャンクフード)をむさぼり食って暮らしている。

奇跡の薬・抗生物質は多くの人を救い、これからも救うだろう。1960年代後半から1970年初頭にかけて開発されたさまざまな抗生物質は、複数の系統の細菌をまとめて殺菌できる(今日使われている抗生剤の大半はこのタイプ)。だが、こうした広範囲抗菌スペクトル性抗生物質は、ごく慎重に使用する必要がある。これらの抗生物質の投与は、手当たり次第に無差別爆撃を仕掛けるようなもので、腸管内の細菌叢をあらかた殺している。驚くなかれ、それが回復するまで2年はかかる。加えて、子供が抗生物質を服用するたびに、将来クローン病、糖尿病、肥満、喘息などを発症する可能性が高まるのだ。

そして抗生物質は、ほぼすべての米国産鶏肉や牛肉に、ペトリ皿(シャーレ)の細菌を殺せるだけの量が含まれている。それが腸内の善玉菌を殺していることは疑う余地がない。

スクラロース、サッカリン、アスパルテーム(日本では「パルスイート」などの商標で市販)その他の非栄養(ノンカロリー)人工甘味料は、腸内の善玉菌を殺す一方で悪玉菌を過剰繁殖させる。デューク大学の研究では、スプレンダ(スクラロース)をわずか一包飲んだだけで通常の小腸内細菌叢の50%が死滅してしまった。悪玉菌が増えると、防衛機構が兵糧を溜め込もうとするので脂肪が蓄積する。皮肉なことに、体重を減らすための商品が、まさにその真逆の働きをするのである。非栄養甘味料は体重を減らしたり維持したりするどころか、むしろ体重増の元凶とする研究結果は相次いでいる。

果物が健康に良いという考えは、かなぐり捨ててほしい。フルーツサラダを健康的な食事と思って注文するのは、ボウルいっぱいのキャンディーを注文するのと同じである。毒性は変わらない。種のあるものは果物だ。すなわち、ズッキーニ、トマト、アマトウガラシ、ナス、ピクルスなども果物なのだ。これらは食べると、遺伝子や脳に冬に備えて脂肪をためろ、と化学的メッセージを送る。多くの人が驚くことだが、果物に含まれる果糖を食べると、腎臓が腫れあがって痛み、死に至ることもある。

付言すると、食べても良い果物が3種類だけある。まだ青いバナナ、マンゴー、パパイヤだ。未熟なトロピカルフルーツは糖(果糖)をあまり含んでおらず、代わりにレジスタントスターチ(難消化性でん粉)が豊富だ。私たち人間はそれを分解する酵素を持っていないが、腸内細菌が好んで食べる。熟してから食べても良い唯一の果物はアボカドだ。糖をまったく含まず、良質な脂肪と可溶性繊維でできており、それは減量と脂溶性ビタミンや抗酸化物質の吸収の役に立つ。

ナス属にはナス、ジャガイモ、唐辛子、クコの実、トマトなどが含まれる。イタリア人は自国出身と言われているクリストファー・コロンブスが新大陸から持ち帰ってきたトマトを、それから2世紀の間受け付けなかったことをご存知だろうか?今日に至るまでイタリア人が皮をむき、種抜きにしてからトマトソースを作るのは、皮と種にレクチンが含まれているからだ。賢い彼らはさらに、ロマ・トマトを交配して皮や種に対する身の割合を最大化している。

パプアニューギニアの小島で、小さな農業共同体を作って暮らすキタバ人や「ブルーゾーン」と総称される長寿地域(イタリア・サルディニア島、日本・沖縄、カリフォルニア・ロマリンダ、コスタリカ・ニコヤ半島、ギリシャ・シカリア島など)で暮らす人々が食べている炭水化物の大半はレジスタントスターチで、カロリーをほとんどもたらさない。レジスタントスターチはスターチ(でん粉)の一種で、胃腸管ではトウモロコシ、米、小麦その他の典型的なでん粉や糖とは異なる振る舞いをする。つまり、あっという間にグルコースに変換(血糖)されてエネルギーとして燃焼される。脂肪として貯蔵されることはない。沖縄人のダイジョ(ヤムイモの一種)、キタバ人のタロイモやプランテインバナナ(食用バナナ)、その他のレジスタントスターチは、小腸を素通りするのだ。だから糖分として吸収されてインスリン値を急上昇させることがないのだ。腸内細菌叢はレジスタントスターチをむさぼり食って繁殖し、一方でそれを酢酸塩、プロピオン塩酸エステル、酪酸塩エステルなどの短鎖脂肪酸に変換する。これらは結腸や神経が何より好む燃料である。さらにレジスタントスターチは腸内の「善玉」菌の割合を高め、消化と栄養吸収を良くするばかりか、腸内粘膜を育む細菌の成長を促す。

高タンパク・高脂肪・低炭水化物食の人々を苦しめる「強い食欲」は、魚介類をタンパク源にしていたり、野菜やサツマイモなどの塊根からレジスタントスターチを取っている人には起こらない。

「ブルーゾーン」と総称される長寿地域に唯一共通する食習慣は、いずれも動物性タンパク質の摂取が劇的に少なかったことだ。

ヒトや甲殻類、軟体動物、鶏、象などが持つN-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)という名の糖分子は、レクチンと結びついて冠動脈疾患をもたらす。問題は、ある種の動物性たんぱく質、とりわけ赤身肉を多食すると、老化はおろか、がん、アテローム性動脈硬化症の引き金を引いてしまうことだ。どうしてそうなるのか?

牛、豚、羊はNeu5Acより酸素原子が1つ多いNeu5Gcを持っており、それらの肉を食べると、あなたの免疫機構はこの糖分子を異物と認識する。Neu5GcとNeu5Acの構造はほとんど同じである。すると抗体が作られ、それは自分の血管上のNeu5Acに結着する。こうして免疫機構は、自前のNeu5Acを赤身肉由来のNeu5Gcと誤認して総攻撃を仕掛けてしまうのだ。

これは友軍誤爆の典型例で、肉より魚介類や軟体動物を中心とした食生活の方が心臓の健康状態を保てる理由の1つだ。

また、大量のタンパク質を代謝することは高血圧、肥満、そして寿命短縮に関わっている。さらに、動物性タンパク質に含まれるある種のアミノ酸 ― メチオニン、ロイシン、イソロイシン ─ は、どうやら急激な老化とがん成長の元凶のようである。さらには、アルツハイマー病発症リスクは肉消費量に直結しているのである。動物性タンパク質量を制限することは、健康年齢も寿命も延ばすのだ。がん患者には、がん細胞は動物性タンパク質が大好きであることを強調したい。

1930年代にがん細胞の代謝のアキレス腱を見つけたノーベル賞受賞者オットー・ワールブルクの功績に感謝しなければならない。正常細胞と違い、がん細胞のミトコンドリアはケトンからATP(アデノシン三リン酸)を作ることができない。またやはり正常細胞と違い、糖を酸化させてATPを作ることもできない。代わりにがん細胞は、酵母やバクテリアと同じように、糖を発酵させるという非常に非効率な方法に頼っている。そのため、がん細胞は細胞分裂するためにも、正常細胞に比べて18倍もの糖を必要とする。それだけではない。がん細胞はグルコース(ブドウ糖)よりもフルクトース(果糖)を発酵させることを好む。これも果物を食べるべきでないもうひとつの理由だ。


※ケトン体

カルボニル基(>C=O)と2個の炭化水素((R-)が結合した化合物の総称で、一般式では R-C=O-R’ で表記されます。体内に存在するケトン体にはアセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどがあります。

ケトン体は脂肪の合成や分解における中間代謝産物であるため、通常、血液中にはほとんど存在しませんが、糖尿病や糖質制限、絶食など、脳や筋肉のエネルギー源である糖質(グルコース)が利用できない時に代わりのエネルギー源として使われます。


およそ2000年前、北欧における乳牛の突然変異によって、乳が通常のA2型カゼインではなくA1型カゼインを含むようになった。A1カゼインは消化を通じてβカソモルフィンというレクチンに似たタンパク質になり、すい臓でインスリンを生み出すβ細胞に取りつく。そのためこの牛乳やそれから作られたチーズを食べると免疫反応が促され、すい臓を攻撃し始める。これが1型糖尿病の主原因と考えられている。

南欧の牛、山羊、羊はA2カゼイン乳を出し続けているが、A1牛の方が丈夫でより多くの乳を出すので、農家はこちらを好む。世界で最も多い乳牛は白黒まだらのホルスタイン種で、その乳は問題の多いこのタンパク質を含んでいる。牛乳を飲むと体調が悪くなるという人は、ほぼ確実に乳牛の品種が悪いのであり、牛乳そのものに罪はない。ブラウンスイス、ベルギーブルなどの品種はいずれもA2乳牛だ。乳製品を取るならA2型カゼイン種だけにすべきなのはこのためで、山羊や羊の乳に変えるのも安全だ。

ことわざ通り「食は人なり」(ヒポクラテスの「医食同源」も同じ)、食べ物が人を作るのだ。したがってあなたは、あなたが食べているものが食べてきたもので作られているのである。有機栽培の野菜や放牧された家畜製品を食べているなら、その栄養は、土や、その家畜が食べた草および動物に由来しており、それがあなたの全細胞へと受け渡される。

今では有機栽培の野菜や果物は、一般的な栽培方法によるものよりビタミンやミネラルがはるかに多いことの確証が得られており、さらに重要なことにポリフェノールもより多い。放牧された家畜にも同じことが言える。穀物や大豆に含まれるレクチンは、一般的な飼育法による家畜の肉、乳、卵にも含まれ、それはあなたの腸に入ってからも悪さをし続けるのだ。

夏には牧場で草を食み冬には干し草を食べて育った牛から作ったハンバーガー(あるいは牛乳やチーズ)と、厩舎でレクチンたっぷりのトウモロコシや大豆を食べて育った牛から作ったハンバーガーとでは、大変な違いがある。第一に、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の割合が違う。いくつか例外はあるが、オメガ6脂肪酸は炎症を引き起こすが、オメガ3脂肪酸はそうではない。トウモロコシや大豆は主にオメガ6脂肪酸を含むが、草はオメガ3脂肪酸を多く含む。さらに問題を複雑にするのは、米国では、ほぼすべてのトウモロコシや大豆は遺伝子組換え(GMO)されているということだ。

米国で栽培されているトウモロコシの大半(家畜の飼料になるもの)は、Btコーンと呼ばれる遺伝子組換え品種である。これはマツユキソウから取った強力なレクチン生成遺伝子をトウモロコシに挿入して害虫耐性を高めたものだ。遺伝子組換えトウモロコシを与えると鶏は骨量減少や骨粗そう症になるのだ。

私たちの食生活の2大レクチン源は、トウモロコシと雑穀のキヌアである。フランスでは1900年、人間の食用に適さないからとトウモロコシを豚の飼料以外に用いることを禁止したのをご存知だろうか?そのきっかけは、トウモロコシを主食として取り入れていた北イタリアで先天性知力低下(クレチン病)が蔓延したことだった。そしてご存知の通り、トウモロコシは豚にとっても(牛にとっても)本来の食べ物ではない。

悪い話はまだ続く。鶏、鶏卵、豚、牛、牛乳はアフラトキシンで毒されている。これはトウモロコシ、小麦、大豆に取りつくカビや菌が生み出す毒物だ。こうした化合物は人畜共通に有害で、遺伝子変異や発がんと結びつけられている。穀物や大豆はとりわけアフラトキシン汚染が起こりやすい。アメリカ農務省(USDA)は、こうした毒物が最終製品すなわち私たちが食べる肉や牛乳にどれだけ含まれるかについては、何の管理も基準も設けていない。

レクチンたっぷりの植物から化学的に抽出した油は、できる限り避けるべきだ。ロスマリン酸(ローズマリーに含まれる)の含有率が最も高いエゴマ油の使用をお勧めする。ロスマリン酸は認知能力や記憶力を改善する。エゴマ油はリノレン酸の含有率も高く、オメガ3脂肪酸の1つとしてリヨン・ハート・ダイエット(1994年に心臓に優しい食事法として金字塔を打ち立てた)に取り入れられている。他に良い代替物になるのがMCT油(液状ココナッツ油)である。MCT油は中鎖脂肪酸トリグリセリドの略で、100%ケトンでできている。肉体はMCTケトンを体脂肪に変換することなく、容易に燃やすことができる。通常のココナッツ油と違い、MCT油はいやらしいリポ多糖(LPSs)が便乗する長鎖脂肪酸をまったく含まない。他にマカダミア油、クルミ油、アボカド油、藻類油、ギーなども良い代替油だ。

子供の肥満増加と完全に一致する食品は2つだけ、もちろんピザとフライドチキンだ。1970年代から、子供たちはこうした食品を多食し始めた。どんな公立学校でもよい、給食のメニューを調べてみればわかる。ピザとチキンが多いほど生徒のBMIは上がる。通常のピザは、レクチンを大量に含む3つの材料からできている。小麦、カゼインA1とインスリンのように働く成長因子を大量に含むチーズ、そしてソースのトマトだ。チキンはどうかって?庭を歩き回って昆虫を食べていたかつてと違い、今日の大半の鶏は、その短い生涯をエストロゲン類似物質のヒ素やフタル酸を混ぜた大豆とトウモロコシを食べて過ごす。この鶏肉にパン粉の衣をまぶして、ピーナッツ油や大豆油で揚げれば、まさにレクチン爆弾のでき上がりだ。ピザやフライドチキンを常に食べていれば、体内のレクチン濃度は高まり、それにつれて体重もほぼ確実に増える。

糖尿病患者に改めて言おう。ケトンはミトコンドリアに運ばれるためにインスリンを必要としない。顔パスでOKなのだ。脂肪は糖尿病患者の友人である。(きっと人からはその逆を聞かされているだろうが)。もうひとつ覚えておくべきことがある。脂肪とケトンが友人である一方、タンパク質、炭水化物、果糖は敵である。栄養士がなんと言おうと、糖尿病とは過剰なタンパク質、糖、果物が気の毒なミトコンドリアを疲弊させているために起きる代謝の乱れに過ぎない。糖尿病は完全に治療可能な病気で、私はそれを日々目撃している。

断食はまったく自然なことだ。断食が危険だなどという「専門家」は無視すれば良い。人類はかつて定期的に断食していた。別に流行だからでも腸内細菌叢を浄化したいからでもない。もっと単純な理由、すなわち食料は常に手に入るとは限らなかったからだ。これについては1972年に行われたある研究が参考になる。被験者は23人の肥満者で、60日間の飢餓ダイエットを行った。まず彼らにインスリンを注射して血糖値を下げた。彼らは全員すぐさま強度の低血糖症状を起こし、発汗、低血圧、めまいなどが見られた。そして60日間の実験期間の終わりにまたインスリンを注射すると、彼らの血糖値は極端に低かったにもかかわらず、まったく意識清明だった。血液検査した結果、彼らの脳はグルコース(ブドウ糖)の代わりにケトンを燃焼してエネルギー源にしており、そのためグルコースを必要としなかったことがわかった。これは人間が炭水化物やタンパク質から糖を得られない場合に適応し、ケトンを主たる燃料にできることの証拠である。伝統的にすべての偉大な宗教では何らかの断食が精神鍛錬の手段として組み込まれていることを忘れないでほしい。週に1日の断食を行っているモルモン教徒は、それを行っていないモルモン教徒に比べて、寿命がはるかに長い。


殺虫剤は蚊が媒介する感染症の犠牲者減少に役立ったし、病虫害防除剤は作物の収量を増加させ、数十億人単位の人々を飢餓から救った。だが殺傷物剤の害も同じほど大きい。それらは食肉を含めた食品を通じて、果ては接触するだけでも、私たちの体内に強毒をもたらしている。こうした毒(化合物)は胃腸菅や皮膚から侵入して、遺伝子の働きの制御パターンを模倣する悪者で、体内の信号交信を根本的にかく乱してしまう。

モンサント社の除草剤ラウンドアップとダウ・ケミカルが開発したエンリストは共に、2,4-D(ベトナム戦争で使われた悪名高い枯葉剤エージェント・オレンジの原材料)を含んでおり、こうした主要かく乱物質は、穀物や豆で肥育された畜肉や乳製品、穀物、それを原材料とする製品にも残留・検出されている。

短期間の研究によれば、この薬剤はシキミ酸経路(植物経路)を使って雑草を麻痺させ枯死に至らせるのが作用機序だが、動物にはこの経路がないため、理論的に穀物や豆に残留するラウンドアップは人間に害を与えないとされている。だからFDA(アメリカ食品医薬品局・Food and Drug Administration)は、ラウンドアップは安全と認可した。

では何が問題か?G M O食品は新種のタンパク質やレクチンを作り出し、それを食べると私たちの免疫機構は異物と認識し炎症反応が起きる。そして農家は時間と費用の節約のため、非G M O作物以外にもラウンアップを撒き、周囲の植物を枯死させている。

大規模な酪農家が使う飼料のほぼ全量がG M O作物で、収穫された穀物にラウンドアップが残留しても使用前に洗浄されるとは限らない。主成分のグリホサートは穀物やマメに残留したまま家畜のえさとなり、消費者の口に入り、それを食べた人間の母乳や臍帯血からも検出されているのだ。穀物の胚芽部分は今日の「全粒信仰」のため、「健康的」な食品として消費者は直接それを口にしている。こうしてラウンドアップはあなたの胃腸管に入り、そこで本当の害をなす。

植物と同様に、腸内微生物叢もシキミ酸経路を使ってトリプトファン、チロシン、フェニルアラニンという3つの必須アミノ酸を作り出しているが、シキミ酸経路を持たない動物は、必須アミノ酸の供給を腸内細菌に頼っている。トリプトファンとフェニルアラニンは重要な快感ホルモンであるセロトニンの生成に必要で、チロシンとフェニルアラニンは甲状腺ホルモン作りに欠かせない。だが私たちがG M O食品やラウンドアップを使った作物を食べたりすると、腸内細菌のシキミ酸経路が阻害されて、これらの必須アミノ酸を作り出せなくなる。

通常の腸内細菌叢はグルテンを食べるように進化しているが、ラウンドアップを散布された穀物を食べ、こうした菌を殺してしまうと、グルテンから守っている最大の味方を失い、グルテン過敏症になる。加えて、ラウンドアップはグルテンと結びついて抗原にしてしまい、グルテンそのものに過敏でない人にも免疫反応を引き起こす。それだけではなく、ラウンドアップは、ビタミンDを変換して身体がコレステロールを再利用できるようにする重要な肝臓の酵素(チトクロームP450酵素)を麻痺させる。つまりラウンドアップはコレステロール値を上げる。

2015年、世界保健機関(W H O)の国際がん研究機関(I A R C)はラウンドアップの有効成分グリホサートを「おそらく人間の発がん性物質」と指定した。


本書の最終章には、具体的なレクチンフリーダイエットの実践編も紹介されています。自己免疫疾患やグルテン過敏症など、アレルギー症状のある人、どうしても体重が減らないとお悩みの人はレクチンが悪さをしているのかもしれません。是非参考にしてください。


※ドイツ製薬大手バイエルは、2018年にラウンドアップの製造元である米国モンサント社を買収した。

※ドイツ製薬大手バイエル(Bayer)は2019年10月30日、除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」をめぐる米国内における訴訟が、今年7月から今月までの間に4万2700件まで急増したと発表した。(2019年10月31日 AFP)

※2003年にはデンマークがラウンドアップの散布を禁止した。カナダでは2012年末までに全州で芝生や庭での使用を禁止した。2014年にはスウェーデンやノルウェーがラウンドアップの使用を禁止した。オランダ議会は2015年末でグリホサートの使用禁止を決めた。ブラジルでも2015年連邦検察官が司法省にグリホサートを暫定的に使用禁止にするよう求めた。ドイツ、イタリア、オーストリアなど33カ国は2~3年後には禁止すると表明している。スリランカ政府は2014年、ラウンドアップの販売を禁止し、翌2015年にグリホサートの輸入を禁止した。これはカドミウムとヒ素を含む土壌でラウンドアップを使用した場合、飲料水やコメを通して重い慢性腎不全の原因となるとの研究報告を受けてのことだ。ロシアも2014年4月、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え食品の輸入を禁止した。アラブ6カ国も使用禁止に踏み切っており、ベトナムなどアジア5カ国やマラウィはグリホサートの輸入禁止を決定している。エルサルバドルやチリ、南アフリカ共和国などもラウンドアップの販売を禁止するか禁止に向けて動いている。2019年1月、フランス当局は安全性に問題があるとして、ラウンドアップ除草剤とその関連商品の販売を禁止した。

※流通業界では、2018年8月のアメリカでの判決を受けて、イギリスの流通大手がラウンドアップの販売禁止の検討を始めた。アメリカに本社を置くスーパー・コストコも2019年4月、ラウンドアップの仕入れと販売をすべて中止することを発表した。コストコは世界に約768の大型店舗があり、日本にも26店舗ある。

※ウンドアップの危険性への認識は世界的に拡散されており、店頭でラウンドアップが簡単に手に入るのは先進国では日本ぐらいになっている。世界中からはじき出され行き場を失ったラウンドアップが日本市場に一気になだれ込んできており、除草剤では売上トップの座を占めている。日本では日産化学工業が2002年5月にモンサントの日本での農薬除草剤事業を買収し、ラウンドアップの日本での販売権を引き継ぎ、「優れた効力と環境に優しい除草剤」などと宣伝してきた。

※日本政府はすでに世界的に危険性が明確になっていた2016年に「グリホサートの安全性を確認した」との評価書を公表した。この評価書を前提に2017年12月には、グリホサートの残留農薬基準を大幅に緩和した。小麦で6倍、ソバで150倍、ゴマで200倍、ベニバナの種子で400倍というけた違いの大幅緩和だ。しかもこのことをマスコミは一切報道しなかった。これによってグリホサートの残留基準は中国の基準の150倍になった。中国からの輸入野菜が農薬まみれで危険だと問題にしていたが、その中国産野菜の方がまだましという殺人的な状況になっている。

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