美と健康の真実を考える

Vol.4ロバート・H・ラスティグ『果糖中毒─19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』2018年中里京子訳ダイヤモンド社

2019.07.31

ロバート・H・ラスティグ『果糖中毒─19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』2018年中里京子訳ダイヤモンド社

Fat Chance: Beating the Odds Against Sugar, Processed Food, Obesity, and Disease by Dr. Robert H. Lustig


レビュー

なぜ人類は突然太りだしたのか?

「たった30年という短期間に、なぜ世界中でこれほどまでに肥満が広まってしまったのか。」肥満には「有毒物質」が関係している。世界中のほぼ全ての食べ物・飲み物に浸み込んでいる悪玉物質は「糖分」なのだ。これまでこの問題は様々に責任転嫁され、確かなことは分からず、何の手段も取られず、問題は放置されてきた。本書は、100%の科学的研究と歴史的事実に基づいた「肥満の科学」として、個人にも社会にも有意義な変化をもたらすことをテーマとしている。

本書は、「16年間におよぶ医学研究、学術集会、同僚研究者とのアカデミックな話し合い、論文を読み合う抄読会、政策分析、そして患者を治療してきた経験のすべてを集大成したものから生まれたものだ。」そして、「本書で伝える情報に利益相反(公正な判断を妨げる利害関係)はいっさいない。」私は、食品業界の手先でもなければ、どんな団体の代弁者でもない。」本書は、厳密なデータ分析を行い、ハードサイエンス(理論が常に実験や観察で証明できる科学)の裏付けによって、ごく正直に見解に至ったものである。

肥満の原因を個人のせいにするのは簡単だ。だが、それは誤った答えである。」本書では、メディア(しかも医師の口から)で、よく語られる理論に反論を唱える。体がどのようにエネルギーを燃焼させ蓄積するのかを科学的に見ていく。また、ホルモンが、胎児の脳に「ダイエットの邪魔をしてくる脳」へ進化的に発達させる影響を説明する。さらに、脂肪組織がどのように問題をもたらすのかの科学について理解を促す。工業化し、グローバル化した「アメリカの食習慣」などの私たちを取り巻く環境が、本当に「有毒」であることを証明する。そして最後に、「個人的な環境」を改善して、あなたと家族を守るためにできることを紹介しよう。


著者プロフィール

ロバート・H・ラスティグ(Robert H. Lustig)

1957年ニューヨーク生まれ。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医科大学院小児科教授。マサチューセッツ工科大学卒業後、コーネル大学医学部で医学士号を取得。2013年にはカリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクールで法律学修士号(MSL)も取得。小児内分泌学会肥満対策委員会議長や内分泌学会肥満対策委員会委員などを歴任。「果糖はアルコールに匹敵する毒性がある」と指摘した講義のYouTube動画「Sugar: The Bitter Truth(砂糖の苦い真実)」は777万回以上視聴されるほど大きな話題になった。


訳者プロフィール

中里京子(なかざと・きょうこ)

翻訳家。訳書に『依存症ビジネス』(ダイヤモンド社)、『ハチはなぜ大量死したのか』(文芸春秋)、『不死細胞ヒーラ』(講談社)、『ファルマゲドン』(みすず書房)、『チャップリン自伝』(新潮社)ほか。


本文要約

「肥満は自己責任」のウソ

19億人が「太り過ぎ」の時代

私の患者に、6歳で体重45キロの肥満に悩むラテン系の少年がいる。息子は、オレンジジュースを毎日4リットル近く飲むと言う母親に、「フルーツを食べ、ジュースを飲まないようにしなさい。」と指導した。オレンジジュース4リットルは、毎年50キロの体脂肪になる量なのだ。すると母親は、「ではなぜ、WIC(低所得者層に食料を提供する米国農務省のプロジェクト「婦人児童向け栄養強化計画」のこと)は、私たちにジュースを配給するのか?」と素朴な疑問を口にしたのである。

世界的な肥満の拡大には、科学的根拠がある。しかし、政策が科学の障害となり、科学による政策誘導を妨げているのだ。解決策はなく、肥満に対する社会問題はますます複雑化し、家族の崩壊や多くの命を奪っている。

わずか20年前、糖尿病が占める死亡の割合は13%だった。しかし今や、40%以上の死因が糖尿病である。そして新たに糖尿病と診断される3分の1以上は、10代の青少年なのだ。2001年に600万人と報告された深刻な体重過多の子供たちは、過去10年間で3倍に増加し、いまや2000万人を超える勢いだ。

肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症(血中の脂質量の異常)、心血管疾患(心臓病)などの慢性代謝性疾患(メタボリックシンドローム)は激増している。肥満に関連する代謝性疾患には、非アルコール性脂肪性肝疾患、腎疾患、多嚢胞性卵巣症候群などの病気がある。

さらには、肥満に関連して同時に生じる併存疾患には、整形外科的問題、睡眠時無呼吸症候群、胆石、うつ病などがある。こうした病気は過去30年間のうちに増えており、肥満の大流行による医学的被害は深刻だ。

2011年9月、国連総会は、「いまや非感染症疾患(糖尿病、がん、心臓病)は、発展途上国を含めた世界の健康にとって、感染症疾患より大きな脅威である」と宣言した。また、世界保健機関(WHO)は、過去28年間に、世界の肥満人口が2倍になったと発表している。そしてわずか10年で、栄養不足よりも、肥満の人が30%も多い世界になったのだ。

2018年にWHOは、2016年時点の体重過多(BMI25以上)の成人は19億人、うち肥満(BMI30以上)が6億5000万人と発表した。つまり肥満は、アメリカだけの問題ではなく、発展途上国を含む、世界中の国で起きている医学的、社会的問題なのだ。

近年の予測では、2030年までに、実にアメリカの成人人口の65%までが体重過多に陥り、1億6500万人が肥満に苦しむという。現在、成人の55%が体重過多・肥満といわれているが、これは決して死刑宣告ではない。病的肥満のうち20%は、代謝的に健康で、正常な寿命をまっとうできる。ほかの80%についても、「問題の原因を見極め、自分の代謝リスクを調べ、自分の生化学的反応を変えられるかどうか」で健康を改善できる。

さて、残りの正常体重の45%の成人はどうだろう。「生まれつき」やせている人は、素晴らしい遺伝子を持っているのだから、清涼飲料水を大量に飲もうが、ジャンク菓子を食べようが、体重は全く変わらず、健康長寿をまっとうできると思っているかもしれない。こうした人は、数年前まで多数派の一人だった。だが、今では少数派だ。あなたの多くの仲間は、「ダークサイド」に堕ちてしまったのだ。

あなたを「ダークサイド」に押しやるものは何だろう。あなたが、たとえ痩せていたとしても、代謝性疾患や早死から逃れられるとは限らない。正常体重の人の最大40%までが、慢性代謝性疾患のしるしであるインスリン抵抗性(インスリンの効き目が悪くなる状態)を抱え、うち20%が、腹部MRIで脂肪肝を示す。肝臓の脂肪は、体脂肪とはかかわりなく、糖尿病を発症させるリスク要因である。あなたの遺伝子が変わらなくても、生化学的な反応は変わるのだ。

人が死ぬのは、臓器に不具合が生じるためで、肥満そのものによって死ぬことはない。つまり、肥満は慢性代謝性疾患の原因ではなく、肥満は、慢性代謝性疾患(メタボ症候群)を抱えているしるしなのだ。そして、あなたを殺すのは、このメタボ症候群なのである

あなたの健康や生活を蝕んでいるのは、内臓脂肪(腹部の臓器についた脂肪)と肝臓脂肪なのだ。しかし、代謝的に活発な内臓脂肪を減少させる方法はいくらでもある。「どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをする」という金科玉条や、現在の肥満についての考えを捨て去ることから始めよう。


カロリーを減らしても脂肪は減らない

現在、最も広く一般に信じられているカロリーに関する「エネルギー保存の法則」の解釈は、「食べたら、食べた分を燃やさないと、残ったカロリーが体内に蓄積される」というものだ。ニュートンによる「エネルギー保存の法則」とは、「閉じたシステム内の、エネルギー量は常に一定である」というもので、以下の数式で表される。U(エネルギー量)=Q(熱量)—W(仕事量)。要するに、仕事量と熱量が等しければ、内部エネルギーは一定のままになる。

つまり、エネルギーバランスと体重(U)を一定に保つには、食べたカロリー(Q)を、燃やすカロリー(W)によって相殺しなければならないことになる。こうして、肥満は「非常識極まる(暴食か怠惰な)行動」の結果であると考えられるようになったのだ。

肥満の大流行を起こした犯人は誰なのか?まず挙げられるのは、「肥満は自己責任」という価値観だ。世界的肥満の大流行に利害関係を持つほぼすべての機関は、肥満は、「個人がみずからの意思で選んだ行為の結果」で、「自己責任」という考えを支持し、社会的通念を導いている。また、この考えは、政府と保険会社にとって、肥満ケア対策を低レベルに留めるための格好の言い訳になっている

保険業界は肥満の治療費を払いたくない。もし現在の大流行に対処する治療すべてに保険金を支払ったら、彼らの大事な子ブタの貯金箱はからっぽになる。肥満は、性格の欠陥、精神の異常で素行の問題だ。肥満は自分で選んだ生き方の問題だから支払い義務はない、というわけだ。彼らは、肥満が自己責任でないと一度でも認めたら最後、洪水に飲みこまれてしまうことを知っている。

20年前は、肥満は社会問題で、医学的問題ではなかった。医学界は、米国糖尿病学会や米国心臓協会など多くの専門学会が、肥満の世界的大流行を重要議題としている今日においても、「生活習慣が肥満をもたらし、その肥満がメタボ症候群を引き起こす」と言い続けている。また多くの医師も、やはり肥満は、肥満になるような行動の結果だと思っているのだ。

肥満に付け入って、肥満問題を解決する「秘策」を売りつけてくる肥満ビジネス業界は広大だ。ダイエット・サプリメント企業やフィットネスジム、医療過誤を引き起こしては、雲隠れする減量専門の医師やクリニック、さらには「肥満専門の物書き」までいる。彼らは皆、相手を納得させる程度の科学知識と一片の真実を差し出すことによって顧客をつり上げようとしているのだ。

製薬業界は、長期にわたって誰にでも効く特効薬「肥満ブロックバスター」の研究開発に多大な投資をしてきた。だが、それは夢物語だ。

彼らの「解決策」の可能性はゼロだ。もし失敗しても、それは指示どおりにやらなかったのが原因で、あなたのせいにされる。それらの方法が誰にでも効くなら、それは1つだけでいいはずだ。そんな発見をした人は、ノーベル賞を受賞して、タヒチの豪邸でテレビ番組の取材を受けることになるだろう。

「全米デブ容認改善協会(NAAFA)」は、最も活発に肥満の人々の政治的・社会的権利を支援する団体だが、同時に肥満の学術的な研究も妨害しようとしている。「太っているのはまったく正常な状態で、誇らしいことです。なのになぜ研究なんかしなくてはならないのか。」というのが彼らの言い分なのだ。

つまるところ食品業界のせいで、私たちはバランスのとれた食生活が送れなくなってしまった。市販食品業界は、「自分の口に入れた物は、食べた人に責任がある」、「どんな食品でもバランスのとれた食生活の一部になりうる」をモットーに肥満の世界的大流行に対応している。しかしこれは市販食品についてはなじまない。食生活のバランスを崩したのは、当の食品業界なのだ。彼らは自らの事業と、それを正当化するために使う言い訳の両方によって、肥満の世界的大流行の扇動者になっている

アメリカ政府が、肥満の流行に対してとっている立場は驚くほど矛盾している。2003年に元米国公衆衛生局長官のリチャード・カルモナは、肥満は国家保障上の問題だと述べ、本書執筆時の米国衛生局長官レジーナ・ベンジャミンも「アメリカ人は食べ過ぎで、運動量が少な過ぎる」というこの考えを踏襲しており、米国陸軍も同じ立場をとっている。ミシェル・オバマ元大統領夫人は「レッツ・ムーブ!」という子供の肥満撲滅キャンペーンを先導した。

しかし一方でアメリカ政府は、安く抑えた西側の食習慣を世界中に売りまくっている。農務省は、「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」や「婦人児童向け栄養強化計画(WIC)」といった低所得者向けの食料無償提供プログラムを助成する。これらは、実際には、低所得者に命をながらえさせ、文句を言わせないための制度だ。2007年までWICはロビイストの圧力に屈し、白いパンや糖分の多いジュースなどの不健康な食料を提供していた。

連邦栄養ガイドラインの「フードピラミッド」や「マイピラミッド」は、一度として科学に基づいて成作されたことがない。肥満大流行の利害関係者は、「太っているのは、自分に責任がある。自業自得で、自分で墓穴を掘ったんだ。」と皆一様に同じことを言う。そうした非難はすべて「どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをする」と言う固定観念から発しているのだ。

食べ物が大量にそして容易に入手できる今日、カロリーを燃やし尽くせる人などいない。1枚のチョコレートチップクッキーのカロリーを燃やすには、約20分間ジョギングしなければならず、ビッグマック1個なら、自転車を4時間も漕ぐ必要がある。

なぜなのか?体は脳より賢く、エネルギー消費量は、エネルギー摂取量の減少に合わせて減ってしまうからだ。したがって、どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをするとは言えないのだ。カロリーの消費量は体にコントロールされていて、カロリーの「質にも依存している」からである。

脂質はすべて同じではない。抗炎症性のような貴重な特性を持つよい脂質もあれば、心臓病や脂肪肝疾患などをもたらす悪い脂質もあるからだ。また、たんぱく質も同様に、卵のように食欲を減らしてくれる質の高いものや、ハンバーガーのパティなどの、インスリン抵抗性とメタボ症候群に関連性がある分枝鎖アミノ酸を大量に含む低質なものもある。

炭水化物には、「デンプン」と「糖分」の2つのクラスがある。デンプンは「ブドウ糖(グルコース)」だけでできていて、あまり甘くなく、体内のあらゆる細胞でエネルギー源として使われる。糖分(シュガー)には、ブドウ糖やガラクトース、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)などいろいろな種類がある。私が本書全体をとおして「糖分」と言うときは、「甘い」糖、つまり、果糖分子(フルクトース)を含んでいる「ショ糖(砂糖の主成分)」と「異性化糖」を指す。異性化糖とは、主にトウモロコシから作られる高フルクトース・コーンシロップ(HFCS)のことだ。含まれる果糖が50%未満の物は、「ブドウ糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものは「果糖ブドウ糖液糖」、90%以上のものは「高果糖液糖」と呼ばれる。

果糖は非常に甘く、例外なく脂質に代謝される果糖は、あなたをダークサイドに引きずり込む悪者ナンバーワン、肥満帝国のダースベーダーだ

私たちが摂取する果糖の量は、過去30年間に2倍になり、20世紀の100年間では6倍になった。米国農務省の記録によれば、肥満の世界的大流行が加速しても、タンパク質と脂質の合計摂取量は比較的一定のまま留まっている。しかし、1980年代に米国医師会、米国心臓学会、米国農務省がこぞって「低脂肪」食習慣に切り替えるガイドラインを作成したため、総摂取カロリーに脂質が占める割合は40%から30%に低下した。タンパク質の摂取量は15%前後と、比較的一定の割合を保っていた。

総摂取カロリーが増加し、脂質の総摂取量が変わらなかったとなれば、何かほかの栄養素の摂取量が増えたことになる。総摂取カロリーに占める「炭水化物」の割合が、40%から55%に増えていたのだ。内訳は、デンプンが49%から51%に微増したのに対し、果糖の摂取量は8%から12%に増加し、特に子どもたちのあいだでは、総摂取カロリーの15%にまで達していたのである。

これらの矛盾点から、「カロリーによって働きが異なる」と言う教訓を導くことができる。つまり、「燃やされるカロリーはすべて同じ働きをするが、口にするカロリーは同じ働きをするわけではない」と。私たちが摂取する食品の質は、食べる量に影響をあたえる。「肥満自己責任」論は、本物の科学によって粉砕されるべき都市伝説の1つなのだ。

肥満を自分の強みとみなす人、肥満を好ましいとか、まねしたいとか思う人がいるだろうか?誰も好き好んで肥満になる人などいない。もし肥満が、増加したエネルギー摂取と減少したエネルギー消費だけの問題なら、ダイエットで摂取量を減らし、運動する消費量を増やせば効果が出るはずだ。

そして、意味のある期間にわたって、落とした体重を維持することが重要だ。たいてい最初の3ヶ月から半年のあいだは減量効果を発揮することを示す報告は無数にある。しかし、そのあと体重が一気にリバウンドするのだ。ダイエットが必ずしも効果を発揮しないことは研究によって判明しているが、運動療法は、さらに効果が低い。肥満「予防」のためにライフスタイルを変える効果はほとんどないどころか、行動を変えることもままならず、BMI(ボディマス指数)が改善できる可能性は本質的にゼロである。

今日、世界中のどこでも、肥満問題を免れることはできない。肥満の流行は、アメリカだけの「流行(エピデミック)」ではなく、「世界的流行(パンデミック)」なのだ。アメリカのすぐ後には、イギリス、オーストラリア、カナダがつけ、過去10年間に、肥満の子どもたちは、フランスで5%から10%に、日本では6%から12に、そして韓国では7%から18%に増加。比較的貧しいマレーシアは、地球上で最も2型糖尿病の多い国になってしまった。中国の小児肥満の割合は、都市部で8%に達した。ブラジルの肥満増加率は、2020年までにアメリカに追いつくと予測されている。深刻な栄養失調問題を抱えるインドでさえ、体重過多の子どもたちが増え、2004年の17%から、いまや27%までになっている。肥満と2型糖尿病の最大増加率を示す地域は、アジアとアフリカだが、それらの多くは富裕国ではない。

アメリカのファストフード文化は、いまや世界標準だ。味や長い賞味期限、低価格、輸送しやすさ、そしてクールなマーケティングなどがその理由だ。このような背景には、地域の飲料水の汚染問題もある。市販のソフトドリンクは、飲料水より安全で安く、入手が安易で、また牛乳よりも安く手に入る。

過去10年間に最も高い肥満上昇率を示したグループは、2歳〜5歳までのグループだ。さらには、肥満の流行は、生後6ヶ月の乳児さえ見られる。食習慣と運動不足という理論は、こと、この生後6ヶ月の乳幼児グループについては、まったくつじつまが合わない。肥満の世界的大流行は私たちの生化学的反応の変化が原因で、それを引き起こしたのは環境の変化なのである。


脳があなたを太らせる

インスリンは、ブドウ糖やアミノ酸、脂肪酸の上昇を膵臓が検知すると、膵臓内にあるベータ細胞が分泌するホルモンだ。インスリンは俗に「糖尿病ホルモン」として知られている。糖尿病患者はインスリンを注射して血中のブドウ糖濃度、つまり血糖値を下げるからだ。では、そのブドウ糖はどこへ行ったのだろう?それは脂肪だ。エネルギー貯蔵ホルモンとして働くのが、インスリン本来の役目なのだ。インスリンがなければ、エネルギーの貯蔵は起きない。つまり、インスリンが多ければ多いほど、脂肪も増えるということだ。インスリンは、細胞脂肪のドアを開ける鍵の役割をになっていて、エネルギーは細胞に入り、脂肪として貯蔵される。

インスリンのレベルが下がると、プロセスは逆に働き、中性脂肪は分解され、脂肪細胞は縮小し、体重が減る。脂肪酸は再び、血中に入り、肝臓に戻って、肝臓やその他の器官によって燃やされるのだ。

脳の基底部にある親指の爪ほどの「視床下部」は、体中にあるほぼすべてのホルモン系を制御する「起点」になっている。視床下部の下位構造は「視床下部腹内側核」と呼ばれ、エネルギーの貯蔵と消費をコントロールする実行機能を備えていて、私たち人間は、手に入れたエネルギーを戦わずに手放したりはしないのだ。視床下部腹内側核は、脂肪の貯蔵と栄養素の代謝に関する情報を「レプチン」というホルモンとインスリンによって受け取る。

迷走神経は、脳を、腹部のすべての消化器官だけでなく、脂肪細胞にも結びつけている「エネルギー貯蔵神経」で、あなたの食欲を支配している。

視床下部腹内側核は常にレプチンシグナルを探している。レプチンは脂肪細胞が生成・分泌するタンパク質で、血流に乗って視床下部に行き、「脂肪内に十分なエネルギーが貯蔵されている」と伝える。脳の飢餓状態は、視床下部腹内側核がレプチンシグナルを検知できないために起こるのだ。

遺伝子変異のために起こる「レプチンの欠損」は、「暴食」と「怠惰」な行動を、生まれつき定められたものにする。しかし現在までに、レプチン遺伝子の突然変異を持つ子供は世界中で14人しか見つかっていない。

地球上にいる19億人の体重過多、肥満の人たちは皆、「レプチン抵抗性」という問題を抱えている。このレプチン抵抗性の解読こそが、肥満解決の「究極の答え」なのだ

脳がレプチンシグナルを感知できずに、体が飢えているとみなすと、迷走神経が過熱して、より多くのエネルギーを蓄えようとする。膵臓に働きかけ、ブドウ糖の上昇に見合う以上の余分なインスリンを分泌させる。これがノンストップのエネルギー貯蔵と体重増加を引き起こすのだ。

消化されたそれぞれのエネルギー分子には、エネルギーを燃やす、脂肪分の少ない区画(心臓、肝臓、腎臓、脳、筋肉)に行くか、エネルギーを貯蔵する区画、つまり脂肪に行くかという選択肢がある。どちらの区画がエネルギーを得ることになるかは、インスリンが決めているのだ。インスリンがあればあるほど、エネルギーは脂肪区画に向かうのである。

今では、多くの科学者の研究により、視床下部腹内側核内におけるインスリンの作用がレプチンシグナルを遮断することが判明している。ひいてはインスリンが「レプチン拮抗薬」(レプチンの作用を阻害して、その作用効果を弱める薬)として働くことを示唆している。レプチンが常に正しく機能していたら、体重が増える人はいなくなるということだ。

インスリンは、体の中でエネルギーを脂肪細胞に貯めさせ、脳の中では、レプチン抵抗性と「脳の飢餓」を引き起こす。現代人の大部分は、体重にかかわらず、同量のブドウ糖に対して、30年前の2倍の量のインスリンを分泌している。もしインスリンが悪者で、人類が史上初の高インスリン血症に陥っているのだとすれば、この余分なインスリンはどこからきたのだろう?


糖分が脳に快楽を与える

アメリカ人の成人の30%がファストフード店で食事し、マクドナルドは1日あたり4600万人に食事を提供している。1950年代のアメリカのファストフードが外食の総売上高に占める割合は4%にすぎなかった。だが1997年、その割合は34%にまで上昇した。そして、海外では決して安い食べ物ではないファストフードは、発展途上国を含む世界中に普及している。世界はなぜファストフードに依存してしまったのだろうか?この疑問の中心にあるのは、依存の生物学だ。

報酬は、人間が生き延びるための主な原動力で、脳は報酬を求めるように「配線」されている。脳の報酬系は複雑だが、突き詰めて言えば、それは「快楽経路」ということができる。この経路は、原始的な感情や生殖活動の衝動、生存本能などが収められていて、それらが発現する場所だ。この報酬メカニズムは、種の永続化と生存に欠かせない繁殖のための性行動や、物を食べることを促すための食の楽しみなどの行動を強化するために進化したと考えられている。

快楽経路は、脳の深部にある、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)と側坐核(そくざかく)の2つの部位を結ぶ神経ルートからなる。快楽の感覚は、腹側被蓋野が側坐核にシグナルを送って、神経伝達物質であるドーパミンを放出させたときに生まれる。放出されたドーパミンが、側坐核にある特定のドーパミンD2受容体に結合すると、快楽の感覚が生まれる。

快楽経路が正常機能していれば、エネルギーの貯蔵量が十分足りている状況では、食べ物をそれ以上食べないように助けてくれる。この経路は、エネルギーの需要ではなく、「おいしいかどうか」に基づいて、食べるという行為を仲介するらしいのだ。

食べ物と薬物に共通する依存症プロセスには、以下の3つがある。プロセス1)ドーパミンが増えると報酬を感じる。プロセス2)ドーパミンがなくなると報酬もなくなる。プロセス3)たくさん摂るともっと量が欲しくなる。

これらの教訓は、依存症をきたす薬物と同じくらい、食物についてもあてはまる。人は薬物に感作(同じ刺激に対する反応が増強される現象)するため、同じ効果を得るためには、もっと多い量の薬物が必要になる。

インスリン抵抗性は腹側被蓋野内でレプチン抵抗性を導き、側坐核からドーパミン除去を妨げることによって、カロリー摂取の増加を促す。「満腹信号」であるレプチンが作用しないと、ドーパミンが側坐核からクリアされず、さらに食べさせる刺激が留まり続けるのだ。

インスリンとレプチンの抵抗性は、食物摂取を増大させるだけでなく、マフィンやチーズケーキといった、脂肪と糖分にまみれた「おいしい」食べ物の摂取も増大させるのだ。「ミセス・フィールズ」(アメリカ発祥のクッキー専門店)がどこのショッピングモールにもあるわけが、これでおわかりだろうか?

私たちは皆ファストフードが大好きなのだ。ファストフードは、大量の脂肪と糖分、塩、カフェインを最小パッケージに詰め込んだ食べ物だ。考えただけでよだれが出る。安く、素早く、セルフサービスで提供してくれる。かわいい包とレストランの雰囲気が「セイリエンス」(もっと好きにさせる特性)を増大させる。

ドーパミンが側坐核に分泌されると、ビッグマックに食らいついた私たちの報酬の感覚は際立ち、インスリンによる多幸感が訪れる。通常はこれで終わりになるはずだが、インスリン抵抗性があると、「欲しい」は精神的なニーズを、そして「必要」は生理学的なニーズを引き起こす。もはや、オンやオフにすることなどできない。

これこそ、どんな乱用物質にも当てはまる依存の本質だ。ニコチンでも、モルヒネでも、コカインでも、アルコールでも、すべてでこの現象が起きている。そして食べ物も例外ではなく、こうした依存は誰にでも起きる。あなただって避けては通れない。

米国心理学会の『精神疾患の分類と診断の手引き第4版新訂版』(DSM-IV-TR)によれば、物質依存には7つの基準があり、物質依存があるという診断を下すには、少なくとも3つを満たすことが必要だ。ファストフード店をよく訪れる人たちは、複数の基準をあわせ持つ傾向がある。

基準1)「耐性」量が日に日に増える。この症状の定義は、「同じ効果を得るために、より多くの物質を摂取する必要が生じている、または継続使用したために、同じ量の物質では以前と同じ効果が得られなくなっている」というもの。ビッグマックは依然としてドーパミンをみなぎらせるが、インスリンがドーパミンを側坐核からクリアしないので、報酬感が維持されない。あなたは以前と同じレベルの報酬を手にするだけのために、ビッグマックをもっと食べなければならなくなるのだ。

基準2)「離脱症状」不安とうつに飲み込まれる。この症状は、身体的なサイン(震えなど)と精神的なサイン(不安・うつなど)に特徴づけられる。あのビッグマックを食べないと、ドーパミンのレベルが低下して、不安とうつの波に飲み込まれてしまうということだ。

基準3)「乱用」ドカ食いと暴飲。「食べたり飲んだりする量が増えるか、意図したより長い時間食べ(飲み)続けることによる、摂取量の増大」というのがこの症状の定義だ。

基準4)「削減や放棄の要望」ダイエット法をすぐ変える。使用物質の削減や放棄を望んだり、試みたりする。ダイエット商品や「奇跡の薬」は、毎年1600億ドルを売り上げている。体重過多や肥満を抱える人は、ほぼいつも何らかの流行のダイエットにはまっていて、「体重サイクリング」、つまりダイエットとリバウンドのヨーヨー現象に陥っている。

基準5)「渇望と探求」学習して甘いものを買う。これは、「使用物質を自己投与したいという強い衝動を抱く」と定義されている。食物依存の研究では、渇望は、食べ物を探す動機として説明づけられる。薬物の渇望と探求は学習の結果であることが実験からわかっている。

基準6)「生活への干渉」普通に暮らせない。この症状の定義は、「依存物質を使用することにより、大事な仕事や人との付き合いといった人生の活動に影響が出ること」というもの。肥満は、その人の人生の質を大幅に損なう可能性がある。

基準7)「認識の上での継続使用」わかっちゃいるけどやめられない。この症状の定義は、「それを継続して使用すれば問題を悪化させるとわかっているにもかかわらず、継続使用してしまう」というもの。肥満に関連して起こる健康問題は数限りない。こうした健康問題を知っていたり、経験したりしていながらも、ドカ食いが際限なく続く。アルコールは、その生化学的特性を含め、数多くの理由からファストフードに最も似ている物質だ。

ファストフードはカロリーが高く、糖分、脂肪、カフェインが豊富に含まれている。マクドナルドにおける最も人気のある組み合わせは、ビッグマック、MサイズのマックフライポテトとMサイズのレギュラー炭酸飲料で、締めて1130キロカロリー。値段は5.99ドルだった。それは、高度に加工されていて、エネルギー密度が高く、非常に美味しく感じるように作られている。食材に含まれていた繊維の大部分、およびビタミンとミネラルの一部は加工の工程で除去されている。そして、糖分、塩分、さらにほかの添加物が風味を引き立てるために加えられている。

ファストフードには一応「栄養」が4つある。ここでのテーマは、依存症なので、食事例として、ビッグマック1個、Lサイズのマックフライポテト、そしてLサイズのコカ・コーラ(約940cc)でいこう。アメリカ人の50%が、このような食事、またはそれによく似た食事を少なくとも1週間に一回とっていることに留意されたい。

ファストフードの「栄養」1)塩分。この食事例には1380ミリグラムのナトリウム(塩)が含まれている。2005年のアメリカ連邦栄養ガイドは、ナトリウムの「許容限界摂取レベル」を1日2300ミリグラムに定めた。平均的なアメリカ人は、食事にさまざまな加工食品が含まれているために、1日3400ミリグラム以上のナトリウムをとっている。食品業界にとって、塩分は、食品の保存・賞味期限を延ばす手段の1つであるため、塩分の多さとカロリーの高さは、ほぼ常に一緒に存在する。ポテトチップスがいい例だ。とはいえ、塩分には依存性があるのだろうか?依存物質の基準に照らすと、塩分はその基準を満たしているとは言えない。

ファストフードの「栄養」2)脂質。ファストフードにとって、多量の脂質は、満足感を与えるために欠かせない要素だ。この食事例の脂肪含有量は、1日2000キロカロリーを摂取する人の1日あたりの推奨脂質摂取量の89%までを占めることになる。

飼養研究によると、脂肪由来の余剰カロリーは、炭水化物の余剰カロリーより効率的に貯蔵されることがわかっている。動物は、その種類にかかわらず、断続的に純粋な脂肪を与えられると、それをドカ食いする。ファストフードに含まれている過食を促す要因は、脂質が含まれているということだ。いわゆる「高脂質食品」はほぼ常に、デンプン(ピザなど)も、糖分も豊富に含んでいることには注意が必要だ。実際、糖分を加えると、正常体重の人々の高脂肪食品への好みが有意に高まる。そういうわけで、高濃度の脂質と高濃度の糖分の組み合わせは、高濃度の脂質だけの場合より依存度が高いと考えられる

ファストフードの「栄養」3)カフェイン。炭酸飲料はファストフードの食事に欠かせない。マクドナルドのバリューセットでLサイズの炭酸飲料を飲んだら、カフェイン摂取量は約58ミリグラムになる。炭酸飲料における妥当なカフェインの役割とは、すでに高い報酬(糖分)が得られるようになっている飲み物のセイリエンス(特徴を際立たせるもの)をさらに増すためのものだと言うべきだろう。カフェインの依存性については十分に確立されており、『精神疾患の分類と診断の手引き第4版新訂版』に定義されている身体的および精神的な依存基準をすべて満たしている。コーヒーや炭酸飲料に含まれているカフェインは、すでに乱用物質としてよく知られており、食物依存現象の重要な部分になっている

ファストフードの「栄養」4)糖分。人間の「糖分依存」についての事例報告は山のようにあるが、本格的な依存症なのか、単に習慣的なものなのかはいまだにはっきりしない。炭酸飲料をファストフードの食事に加えると、糖分摂取量は10倍になる。マクドナルドで購入された飲料のうち71%は砂糖入り炭酸飲料だ。大規模に広まっている「炭酸飲料依存」という現象が、依存物質として判明しているカフェインを含むことによって拍車がかかっている可能性が高いのだ。ネズミのモデルでは、糖分には依存物質のあらゆる基準が当てはまることが判明している。砂糖には依存性があり、炭酸飲料には二重の意味で依存性があることは明らかだ

世界最高の国内総生産(GDP)を誇るアメリカだが、アメリカ人はあまり幸福ではない。生活の質や社会の進歩を精神的な方法で測ろうとする指標、「国民総幸福量」(GNH)のアメリカの順位は世界44位だ。もしかしたら私たちの不幸せ感は、食べ物に関係しているのではないだろうか?

幸福は単なる趣味レベルの状態ではなく、神経伝達物質のセロトニンが媒介する生化学的状態でもある。「セロトニン仮説」によると、重篤な臨床的うつ病は、脳内にセロトニンが不足することが原因だということになっている。

セロトニンの合成を脳内で増大させる方法の1つは、大量の炭水化物を食べることなのだ。もしあなたのセロトニンが欠乏していたら、あなたはどんなことをしてでもセロトニンを増やそうとする。糖分をとれば、当初は効果が得られる。つまり糖分は、セロトニンの輸送を助け、短期間、快楽を幸福の代わりにもたらすのだ。

しかし、やがてD2受容体がダウンレギュレーションされると、同じ効果を得るために、もっと大量の糖分が必要になる。インスリン抵抗性はレプチン抵抗性を引き起こし、脳は体が飢えていると判断して、持続する不幸感に対するささやかな快楽を生み出すためにドカ食いの悪循環を引き起こす。この悪循環は誰にでも起こり得る。ちょっとした不幸をちょっとした快楽で置き換えたら、あっという間に依存症だ。


ストレスを受けると太るメカニズム

多くの子どもたちや大人たちは、食べることで、心理的ストレスを癒そうとする。ストレスに誘発されるドカ食いと、ストレスによる脂肪蓄積の2つがそのメカニズムであり、動物と人間の研究において、ストレスやネガティブな感情によって、空腹でなくても食べ物の摂取量が増えることが実証されている

副腎が出す「コルチゾール」ホルモンは、ストレス、肥満、代謝性疾患の結びつきの起点となっている。コルチゾールは、体の中で最も重要なホルモンで、コルチゾールが不足するとあらゆるストレスに対処できなくなり、死んでしまうのだ。コルチゾールの急増は、脱水症状時のショック状態を回避し、記憶力と免疫機能を向上させ、炎症反応を抑制し、警戒心を増加させる。

コルチゾールは、少量かつ急増期間が短いかぎり、必要不可欠だが、大量に長期間晒されると、ゆっくりではあるが、最終的に命が奪われる。コルチゾールの血中濃度が高まると、血圧と血糖値の上昇を招き、心拍数も増える。そして、内臓脂肪を増やすことになる。

2万9000人におよぶイギリスの公務員の健康を記録した「ホワイトホール研究」では、最も高いレベルのコルチゾール血中濃度と慢性病が見られたのは、公務員の中でもいちばん低い階級グループで、社会的地位の低さと相関していた。アメリカでは、糖尿病、脳卒中、心臓病といった病気は、ストレスを最も抱えている中流と下層階級の人々のあいだで、最も拡大している。

子どもの頃にストレスを被ることは、思春期および成人期に肥満になるリスクを押し上げる要因になる。貧困のなかで暮らしているアメリカの子どもたちは20%近くにもおよぶ。食と住まいの不安定さが生涯にわたって残す傷は脳に有害で、コルチゾールは食物摂取を抑制する働きのあるニューロンを殺してしまう。また、コルチゾールは特に「カンフォートフード」(脂肪と糖分がたっぷり詰まった、高エネルギー密度の食べ物)によるカロリーの取り込みを押し上げることがわかっている。

睡眠時間が短い人は、やがてBMIが増え始める。生化学レベルでは、睡眠不足はコルチゾールを増やし、レプチンを減らすことが判明しており、その過程で、飢えと空腹感に似た症状が出る。脳のレベルでは、睡眠不足は空腹ホルモンであるグレリンを増加させ、報酬系を活性化するのだ。


細胞があなたを太らせる

細胞が脂肪で満たされるしくみ

脂肪細胞は、種にとって飢饉などにおそわれたときに生き残るためのエネルギーの貯蔵庫で、必要不可欠なものだ。したがって、脂肪細胞は、健康でいられるか、それとも長引く苦しい死に至るかの違いを生み出す。脂肪の貯蔵組織の大きさは、脂肪細胞の「数」と「サイズ」という2つの要因に左右される。1970年代初頭、ロックフェラー大学のジュールズ・ハーシュは、脂肪細胞の数は2歳までに決まることを実証した。

妊娠中に母親の体重が増えれば増えるほど、産まれてくる子の体重も増える。妊娠中に飲食したものは、良きにつけ悪しきにつけ、子どもの運命を左右する。母親は幸福も不幸ももたらすことができるのだ。

脂肪細胞の数は、4つの異なる生理学的な経路によって、生まれる前から決まっている。肥満の遺伝子原因説では、合計しても、肥満の原因の9%を説明するにすぎない。たとえあらゆる悪い遺伝子を持っている人がいたとしても、それらによる体重増加はたったの10キログラムだ。これでは現在起きている肥満の世界的流行は説明でない。肥満原因の探求は、遺伝子以外のものに目を向けるべきである。

エピジェネティクスは、遺伝子をオンまたはオフに変え、時が経つにつれて様々な病気を発症させる、遺伝子周囲の環境の変化(通常は不適切な変化)のことを指す。エピジェネティクスのパターン変化は、遺伝子の働きを変え、胎児が胎盤を通して受け取り、将来肥満になるリスクに巨大なインパクトを与える可能性がある。

イギリスの疫学者デイビッド・バーカーは、母体の栄養状態が胎児に影響を与える様子を調べた。その結果、妊娠週数に比べて小さい赤ちゃん(SGA)として、とても小さく生まれた乳児は、将来、肥満、糖尿病、および心臓病にかかるリスクが高かったのである。つまり、子宮で栄養が足りないと、肥満になりやすいということだ。

しかし、妊娠週数に比べて大きい赤ちゃん(LGA)もまた、後に肥満とメタボ症候群になる。こうした赤ちゃんにも高インスリン血症とインスリン抵抗性があるが、未熟児の赤ちゃんとは違い、LGAの赤ちゃんが大きく生まれてくる理由は、妊娠糖尿病(GDM)のせいなのだ。妊娠糖尿病の母親から生まれた赤ちゃんが後の人生で肥満と糖尿病にかかる率は3倍だ。

ところが、母親が妊娠糖尿病でなかったLGAの赤ちゃんでも、インスリン抵抗性を引き起こしてメタボ症候群になるリスクは2倍になるのだ。胎児の栄養不足と栄養過多は、両方ともエピジェネティクスを変化させ、ベータ細胞(膵臓内のインスリンを作る細胞)を継続分割しにくくす。LGAの子どもたちは、インスリンの貯蔵量が少なく、成長していくにつれて体重が増え、最終的に糖尿病になる。だが、これは予防可能で、最初の子を産んだ後に肥満症治療手術を受けて、母親を治せば、子どもが将来肥満になるリスクを低下させることができる。

なぜ、そんなことが起きるのだろう?通常の場合、胎児の脳が発達するにつれて、胎児の脂肪細胞からくるレプチンが視床下部に対し、肥満にならず正常に発達するようにシグナルを送る。ところが、レプチン不足またはインスリンのレプチン拮抗作用のいずれかにより、正常な視床下部の発達が損なわれて、正しいシグナルを受け取ることのできない脳を持つ赤ちゃんが生まれてくる可能性がある。こうした赤ちゃんの脳は、体が常に飢えていると判断してしまうのだ。

「オビソーゲン」(太らせ因子)という環境内の化合物(有害物質)が、3つの分子スイッチに作用して、脂肪細胞を分化させるスイッチをオンにすることがある。胎児初期にこうした物質に短期間でも晒されると、「脂肪細胞の積み荷」を増加させ、将来的肥満になる土台が築かれてしまうのだ。

これらの論理的思考が伝えているのは、病気にかかるリスクを左右する主な決定因子は、あなたが産まれる前に、脂肪細胞が発生する時点ですでに生じているということだ。

「貯蔵ホルモン」の出すぎを止めるにはどうすればいいのだろう?インスリンがなければ脂肪蓄積は起きない。肥満の原因は数多くあるが、何らかの形のインスリン過剰(高インスリン血症)こそ、肥満の人の圧倒的多数がたどる「最終的な共通経路」だ。この経路をブロックすれば、脂肪細胞は空のままになる。

今日の思春期の子どもたちが分泌しているインスリンの量は、1975年当時の同年齢の子どもたちに比べると、なんと2倍だ。高いインスリンのレベルは全肥満の75〜80%の原因になっていると思われる。あなたがインスリンを増やす方法は、3つある。

白い炭水化物を食べる。とりわけ精製炭水化物が豊富な食事を食べたために、あなたの膵臓が余分なインスリンを作りはじめると、この余剰インスリンが脂肪細胞にエネルギーを貯蔵させる。

特定の食べ物を食べたために肝臓に脂肪が蓄積されると、肝臓が不調になり、膵臓は、肝臓に仕事をさせるために、さらに多くのインスリンを作らざるをえなくなる。

副腎が分泌するストレスホルモン、コチゾールが上昇すると、肝臓と筋肉に働きかけてインスリン抵抗性にし、インスリンのレベルを上げて、エネルギーを脂肪として貯蔵する。さらに、脳にも働きかけて、より多くの食べ物をとらせる可能性がある。

さらには、現代社会においてインスリンと体重が増加する方法が、もう1つある。以下の3つのクラスの医薬品は、インスリンのレベルを押し上げて、多大な体重増加を引き起こすことで悪名高い。1)炎症をコントロールする「ステロイド剤」2)気分を安定させる「抗精神病薬」3)糖尿病の治療に使う「血糖降下薬」。

減量がこれほどまでに難しいのは、「貯蔵ホルモン」インスリンのせいだ。少なくとも今のところ、希望は1つしかない。すなわち、生化学反応を反転させることだ。エネルギーの貯蔵をやめさせ、レプチン反応性を治さなければならない。インスリンレベルを下げれば、それが2つともかなう。生化学反応を治したかったら、環境を治さなければならないが、これは簡単なことではない。


皮下脂肪は「長生きの素」、内臓脂肪は「死の脂肪」

体重計で私たちが測っているのは、自分の体を構成している4つの要素の合計体重だ。問題はそのうち1つだけだ。

人は、骨が多ければ多いほど長生きできる。小柄の年配女性が股関節を骨折すると、最後の一撃になってしまう。

筋肉も多い方が健康にいい。筋肉はブドウ糖を取り込む。運動をすればするほど筋肉も増え、筋肉が増えれば増えるほどインスリン感受性も高まる。骨と筋肉を築き上げることは、エネルギーを貯めないで燃やす方法を手に入れることになる。その結果、体重にかかわらず、健康状態が向上するのだ。

皮下脂肪は身体中の約80%を占めるが、皮下脂肪は多ければ多いほど健康にいい。皮下脂肪がほとんどない小柄な高齢の女性は、股関節の骨折からだけでなく、病気にかかりやすいので早死にしやすい。研究によると、平均的に言って最も長い寿命をまっとうするのは、BIMが25から30の人なのである。体重過多は良いことなのだ。ごくまれな例外を除けば、あなたの皮下脂肪が慢性病の要因になることはまずない

私たちに常に害をもたらす唯一の要素が、内臓脂肪だ。内臓脂肪の別名は、腹部脂肪、異所性脂肪、または太鼓腹という。内臓脂肪は体全体の体脂肪の約20%、または総体重の約4〜6%を占める。腹が出ているかいないかは、50代で心臓発作かがんによって命を落とすか、80歳を超えて生き続けられるかの違いを生む。貯蔵内蔵脂肪は貯蔵皮下脂肪より代謝的にアクティブで、炎症を引き起こす。つまり、インスリン抵抗性を引き起こし、それが、糖尿病、がん、心血管疾患、認知症、老化をもたらすのだ。慢性代謝性疾患は、脂肪が筋肉、そしてとりわけ肝臓につき始めたときに起こる。

内蔵に脂肪がつくのは、エネルギーがすぐ手に入るようにするためで、ダイエットをすれば最初に減るのは内臓脂肪だ。しかし、皮下脂肪はなかなか減らない。レプチンを作るのは皮下脂肪だが、脳は、レプチンがあなたに良いことだと知っているからだ

BMIにも問題がある。BMIでは、骨、筋肉、皮下脂肪、内臓脂肪の4つの要素がそれぞれどれだけあるか見分けることができない。BMIよりましな測定手段は、胴回りである。手っ取り早く、費用もかからない、他のどんな健康パラメーターよりも、病気と死のリスクをよりよく反映する。医師は、大きな「りんご」型を示す胴回りを見て、糖尿病、心臓病、脳卒中、がんのリスクが高いことを知るのだ。

自分の代謝状態を見極める簡単な方法がある。ウエストをお尻回りで割った比率が女性で0.85、男性で1.0を超える場合は、インスリン抵抗性があることを示す警告になる。この比率が0.8以下であれば、代謝的に正常だ。

もう一つの方法は、首のうしろ、脇の下、指関節を見ることだ。これは過剰なインスリンが皮膚の上皮細胞増殖因子受容体を活性化させたものだ。黒色皮膚腫も軟性繊維腫も、インスリン抵抗性があることを視覚的に知らせてくれる印で、将来慢性代謝性疾患を抱えるリスクを負っていることを教えてくれる。

ダイエットして体重を落とすとき、脂肪もいくらかは落ちるが、ダイエット中に意識して運動し、筋肉を落とさないよう心がけない限り、実際には脂肪より多い量の筋肉がそぎ落とされるのだ。


メタボ症候群があなたを殺すまで

少なくとも集団レベルでの統計では、太っていればいるほど早く死ぬ。2003年に行われた生命表の分析では、BMIが45の人は、20年分の人生を失うことが示された。しかし、人は肥満で死ぬわけではない。肥満と「旅する」病気によって死ぬのだ。そういった代謝不全こそが、肥満を悲惨なものにしている。「メタボ症候群」には、糖尿病、高血圧、心臓病、がん、認知症など、あなたを殺す病気が詰め込まれている

メタボ症候群になるには、なにも太っている必要はない。正常体重の40%までもがメタボ症候群にかかっているのだ。そして、インスリン抵抗性がメタボ症候群の明らかな特徴である。メタボ症候群は次の10のリスクを引き起こす。1)肝臓のインスリン抵抗性 2)高インスリン血症 3)脂質異常症 4)高血圧 5)心臓発作・脳卒中 6)肝硬変 7)不妊症など 8)2型糖尿病 9)がん 10)認知症

では、メタボ症候群になるプロセスとはどのようなものなのだろう?プロセス1)肝臓に脂肪が貯まる。肝臓は余分なブドウ糖をグリコーゲンに変える。グリコーゲンは危険なものではなく、必要なときに分解されてブドウ糖に戻る。食事性脂肪の消化によってもたらされる脂肪酸、タンパク質の消化によるアミノ酸、アルコール摂取によるエネルギー、または果糖分子エネルギーなどの余分なエネルギーは肝臓が処理して、脂肪に変える。

要するに、肝臓にとっては、グリコーゲンは味方だが、脂肪は敵なのだ。そして、肝臓脂肪の蓄積を促すものは何であっても、メタボ症候群の潜在的な引き金になる。

プロセス2)退治できなくなるほど活性酸素が増える。ブドウ糖は、地球上のあらゆる生命体にとって、ナンバーワンのエネルギー源だ。ブドウ糖が食べ物から得られなければ、肝臓は利用できるものを使って、それを作り出そうとする。

ブドウ糖の代謝経路は、2つある。「解糖系」は、ブドウ糖を、中間エネルギーのピルビン酸に分解し、少量のエネルギーを放出する。もう一つは、「クエン酸回路」で、この代謝はミトコンドリアの中で起こり、ピルビン酸を燃やして二酸化炭素と水に分解し、大量のエネルギーを放出する。

体に取り込まれたエネルギーの約80%は、クエン酸回路で代謝される。体がエネルギーを燃やすとき、いくらか殺菌の役目をする毒性の代謝物「活性酸素」がミトコンドリア内で作られる。

活性酸素は、肝臓や膵臓といったほかのタイプの細胞の中で作られたときには、細胞のDNAやタンパク質や細胞膜などを傷つける可能性がある。ダメージを受ける前に活性酸素の力を消すには、「ペルオキシソーム」という抗酸化剤の助けが必要で、これは細胞のもう1つの部位だ。

ペルオキシソームが細胞内で生成される活性酸素の速度に追いついているときは、あなたもあなたの細胞も健康なままだ。だが、追いつけなくなると、細胞は傷ついたり死んだりしてしまう

代謝障害を引き起こすユニークな特徴を持つ食べ物とはなんだろう?それは次の4種類だ。「トランス脂肪酸」は、ミトコンドリアによって分解されない。この脂肪酸は以前から、慢性代謝性疾患、とりわけアテローム性動脈硬化と関連づけられ、かつてあらゆる加工食品に含まれていたが、徐々に私たちの食生活からなくなりつつある。

米国食品医薬品局と食品業界はトランス脂肪酸の問題を認知しており、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグは、市内のレストランでのトランス脂肪酸の使用を禁止した。しかしトランス脂肪酸の削減にもかかわらず、肥満と糖尿病を抱える人はますます増えている。

分枝鎖アミノ酸とは、9種類の必須アミノ酸のうちの、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称で、体では作り出せないため、食物によって摂取することが必要になる。分枝鎖アミノ酸は、トウモロコシに高濃度で含まれているため、トウモロコシを飼料として育ったあらゆる家畜は、あなたの総身体負荷に潜在的に寄与していることになる。

ボディービルダーは、プロテインパウダーとして分枝鎖アミノ酸を大量にとる。彼らがボディービルディングをやっている限り問題ない。だが、それ以外の人にとっては大問題だ。デューク大学のクリストファー・ニューガードは、メタボ症候群を抱える患者の血流では、これらのアミノ酸のレベルが通常より高いことを指摘している。

アルコールは、毎日少量飲む場合、とりわけ、ワインの形で体内に取り込まれるときには、メタボ症候群を「予防する」ように見受けられる。だが、大量のアルコール摂取は明らかにメタボ症候群を押し進める。ビールや焼酎のようなアルコール飲料がメタボ症候群を進行させるという明らかな研究結果も、アメリカではビールについて、日本では焼酎について示されているのだ。

アルコール原因説では、子どもがメタボ症候群にかかる理由や、なぜサウジアラビアやマレーシアのように飲酒が禁止されているイスラム国でも肥満が猛威を振るっているのかが説明できない。

果糖こそ、世界中で消費量が増加した食べ物で、見境なく大量に使われ、子どもたちが制限なく食べ続けている「食生活のヴォルデモート」(『ハリーポッター』シリーズの悪役)なのだ。果糖はここ30年間で消費量を増やしており、相関関係に加えて因果関係も判明している。果糖こそ問題の核心だ。


社会があなたを太らせる

わたしの患者の例だが、13歳の少女が3カ月で9キロ痩せた低炭水化物ダイエット法のメカニズムを説明する。私たちの体は、かつて食べ物が少なかった時代も今も、脂肪をエネルギー源として燃やすことに完全に順応している。

食物がなかなか手に入らない太古の時代、彼らの肝臓は、体重とエネルギー供給状況に応じて、2つの方法のいずれかで食事性脂肪を処理していた。エネルギーが不足しているときには、「脂肪酸」(長鎖脂肪酸)から、炭素2個づつを「アセチルCoA(コエー)」(アセチル補酵素Aとも呼ばれ、ケトン体のもとになる)の形で切り出す。これらのフラグメント(破片)は肝臓内またはほかの臓器内のミトコンドリア(細胞の一部で、エネルギーが生成される場所)によってエネルギー源として燃やされる。

一方、エネルギー供給が余分にあるときは、脂肪を「定比重リポタンパク」(LDL、いわゆる悪玉コレステロール)として知られる粒子に詰め込んだ。これらのLDL粒子は血流に乗って体を循環し、最終的に中性脂肪(脂肪の塊)として脂肪細胞に入り込み、食べ物が少ないときのエネルギー供給源として蓄えられる。

インスリンがないとき(飢えているとき)には、この貯蔵中性脂肪が分解されて「遊離脂肪酸」になる。このサイクルは繰り返される。つまり、貯められた中性脂肪が血流に放出されて肝臓に再び入り、炭素を2個づつ切り出して、ふたたびアセチルCoA(ひいてはケトン体)になるのだ。

これが、低炭水化物ダイエット法のよりどころだ。ケニア中北部に暮らすマサイ人やサンブル人(肉を食べ、ミルクと動物の血を飲む)、北極圏のイヌイット(魚、肉、クジラの脂を食べる)など、自然界に存在する食習慣として今でも残っている。

1900年代初頭にイヌイットのもとで数年間暮らした北極探検家のビリャルマ・ステファンソン(1879〜1962)は、その間クジラの脂身だけを食べて暮らしていたが、体調はそれまでの人生で最高だったという。彼は、炭水化物を全く食べないイヌイットには、がん、心臓病、糖尿病をはじめ、ほかの慢性病を患う率が驚くほど少ないことを記録した最初の人になった。しかし、残念なことに、近年、イヌイットの食生活に加工食品が入り込んだことにより、これはもはや真実ではなくなってしまった。

私たち人類は、灌漑と農業技術を身につけ、雑食動物になった。そして私たちは、脂肪と炭水化物を一緒に食べるようになった。脂肪たっぷり炭水化物たっぷりの食事も、1回きりならなんでもないだろう、だがそれが1万回(10代にさしかかる年齢になるまで食べつづける約10年分の食事に相当)にもなると、ダメージが生じかねない。こうして慢性代謝疾患やメタボ症候群が増加するのだ。

自然界にある食べ物は、脂肪か炭水化物のいずれかを含んでいるが、両方含んでいることは滅多にない。肉、魚、鳥は炭水化物を含まない。穀物、根菜、塊茎(ジャガイモやヤムイモなど)には脂肪がない。アボカド、オリーブ、ココナッツといった果実は脂肪を含むが、その炭水化物含有量はごくわずかだ。

私たちが「グルメ」になり、ついに「大食漢」となり、脂肪と炭水化物を同じ食事でとるようになり、人間の細胞はミトコンドリアの消耗というしっぺ返しを食うようになった。これが、素晴らしくもあり恐ろしくもある加工食品の本質だ。しかし大きな例外がある。それは、脂肪と炭水化物を同時に含む食べ物だ。それはとても甘い。

心臓病は20世紀初頭から徐々に広がりだした。イギリス人の生理学者かつ栄養学者だったジョン・ヤドキンは、糖分だけが血清(血液中の)中性脂肪とインスリンレベルを上げることを示した最初の人物である。ヤドキンは、慢性病の性質を研究するなかで、1957年に、冠状動脈血栓(心臓発作)の原因の根源は食事構成に潜んでいるという仮説を立てた。さらに1964年までには、心臓病と最も密接に関連しているのは、ショ糖の摂取であることを突き止めたのだ。

ヤドキンは、このテーマに関する労作の出版や、果糖分子の生化学反応に関する数多くの論文を発表し、世間に大きな影響を与えた。果糖分子の過剰摂取が、冠状動脈性心臓病、糖尿病、胃腸障害、眼疾患、およびほかの炎症性疾患の原因になると最初に警告したのもヤドキンだった。

一方、第二次世界大戦中の戦闘食「Kレーション」の考案者としてよく知られていたミネソタの疫学者だったアンセル・キーズは、1960年代と70年代に、心臓病患者のコレステロールのレベルが高いことを示す多くの研究論文を発表した。キーズはアメリカでもイギリスでも、最も上等な食生活を送っている富裕層のあいだで、心臓病が最もよくみられることに気がついた。そして、コレステロールと食事性脂肪が心臓病の直接原因であることを証明しようとしたのだ。

1980年に発表した「『7カ国』研究」は500ページの大作で、食事性脂肪はそのコレステロールにより、唯一の心臓病の原因であるという概念を説明するものだった。しかし残念なことに、その論文には、1)都合の悪いデータを除外していた、2)トランス脂肪酸の影響だけを見ていた可能性がある、3)脂肪が低い国は糖分も低かった、4)ショ糖と飽和脂肪酸、どちらが原因かわからない、という問題点が4つある。

とはいえ、1980年代の初頭では、糖分、炭水化物、脂肪のタイプについての懸念は、まだ知られていなかった。「連邦栄養ガイドライン」によるお墨付きとともに、キーズはノックアウトパンチを繰り出して食の戦い(糖分と脂肪)に勝利し、ヤドキンは抹殺されてしまった。

私たちは食事性脂肪を40%から30%に減らすように指導され、食品業界は低脂肪食品(ローファット・フード)の需要を満たすために、製品を一新させることが必要になった。これはレシピの改変を意味したが、油脂分を取り除くと、食品はダンボールのように味気ないものになってしまう。企業にとって、おいしさは売上に直結する。

こうして、低脂肪食品をおいしくしなければならなくなった食品業界は、炭水化物、すなわち糖分の含有量を増やしたのだ。1990年代には、脂肪を含んでいる牛乳などは、消費が低下するなど、手に入る食品に大きな変化が起きた。反対に、炭水化物につきものの繊維が取り除かれた精製炭水化物の売上は、天井知らずになった。精製炭水化物は大量のインスリンを意味し、それはまた、脂肪組織に、より多くのエネルギーが貯められることを意味する。その後遺症として、肥満が大流行したのだ。

2000年代初頭までには、炭水化物を制限した食事法が、その真価を問われることになった。肥満と2型糖尿病の治療において、低脂肪ダイエットと直接対決することになったのだ。そして、比較対照試験の結果から、私たちは次の5つの教訓を得たのである。

まず、炭水化物の制限は、糖尿病治療の第一目標であるブドウ糖のコントロールを向上させる。第2に、低炭水化物ダイエットには、少なくとも低脂肪ダイエットと同等の体重減少効果がある。第3に、炭水化物を脂肪で置き換えることは、一般的に、心臓病マーカーと発生率によい影響を与える。第4に、炭水化物制限は、メタボ症候群の症状を改善する。第5に、炭水化物制限の有益な効果は減量とは関係なく生じる。

歴史上成功したアトキンス・ダイエット(タンパク質と脂肪)やオーニッシュ・ダイエット(野菜と未精白穀類)、そして「伝統的な」和食(炭水化物とタンパク質)は、それぞれ正反対の食事法に見えるが、1つ共通項がある。すべて糖分を制限しているのだ。

砂糖は表向き炭水化物だが、本当は脂肪(果糖が肝臓で代謝される方法から)と炭水化物(ブドウ糖が代謝される方法から)が1つに合わさったものなのだ。両方の代謝経路は超過勤務をしなければならない。だからこそ、砂糖は雑食動物の真のジレンマなのである。

私たちが消費している総カロリーの20%から25%が、ティースプーン22配分に当たる砂糖からきている。世界の人口は2倍しか増えていないのに、砂糖の消費量は過去50年間で3倍になった。これは世界の1人あたりの砂糖摂取量が50%増えたことを意味する。米国心臓病協会が科学的声明のなかで提唱した1日の糖分最大摂取量200キロカロリーという値は、実質的に地球上のすべての国で破られている。

異性化糖はアメリカとカナダでは広く使われているが、EU諸国と日本では、それほど多用されていない。それ以外の国ではショ糖(砂糖の主成分)を使っているが、それでも肥満とメタボ症候群の発生率については、アメリカのすぐ後ろを追いかけている。

「100%天然果汁」のオーガニック飲料メーカーは、健康増進効果をいくつも売り込み、添加甘味料は使っていないから体にいいと主張する。それは真っ赤な嘘だ。フルーツが体にいい理由は、食物繊維が含まれているからだ。カロリー面から言うと、100%天然果汁のオレンジジュースは、清涼飲料水より、むしろカロリーが高い。ノンカロリー甘味料以外の甘味料は、すべて果糖を含んでいる。33%の糖分摂取は飲料からきている。そして、甘い飲料を最も多く飲んでいるのは、行政や医療のサービスを十分に受けられない貧しい人々なのだ。

生命に必須であるにもかかわらず、植物性ブドウ糖は完璧ではない。果糖抜きで自然界に存在するときは「デンプン」と呼ばれ、「エンプティー・カロリー」として、貯蔵または燃やされるエネルギーになる。しかし、アトキンス・ダイエット、パレオ・ダイエット、そしてカロリー制限を行なっている人たちが皆口をそろえて言うように、ブドウ糖分子には3つの代謝的欠点があり、時を経るうちに組織を損ない始めるため、摂取制限を行う必要が出てくる。

体内に入ったブドウ糖の20%は、肝臓に行き、残りは体内の他の臓器によって代謝されるが、その後のプロセスはどうなるのか。まず、インスリンの影響で、血糖値が上がって体重が増える。肝臓に行ったブドウ糖の大部分は、グリコーゲン(動物デンプン)の生成に充てられる。グリコーゲンは肝臓細胞には害を与えない。また、肝臓がブドウ糖を血中に放出するのを妨げ、糖尿病の予防になる。そして、少量のブドウ糖は、肝臓のミトコンドリアによって代謝され、エネルギーになる。

肝臓に行ったブドウ糖のうち、グリコーゲンにも、エネルギーにもならなかったブドウ糖は、中性脂肪に変換される。血中の大量の中性脂肪は、心臓血管疾患のリスクを高める。ブドウ糖は細胞内のタンパク質と結びつくと老化の原因になるのだ。

つまりパスタ、白パン、米などを大量に食べると、インスリン反応を抑制してしまい、体重が増えるが、病気になることはない。しかし、長い年月にわたりブドウ糖を取り続け、(とりわけ、食物繊維が欠けているときは、)体重が増えた場合には、内臓脂肪が病気をもたらすということだ。

しかし、同じ量のカロリーをエタノール(アルコール、酒の主成分)または果糖でとった場合、肝臓にとってもっと強烈なパンチ(というより手榴弾)になり、ブドウ糖の場合より、もっとずっと早く体を壊してしまう。

エタノールは、「発酵」という炭水化物代謝の副産物として自然に生じる物質だ。120キロカロリーのエタノールを飲むと、その10%(12キロカロリー)は胃と腸の中で代謝され、10%は脳と他の臓器の臓器で代謝される。この脳での代謝が、酔いという作用をもたらすのだ。肝臓に届くのは、ブドウ糖の4倍の96キロカロリーだ。悪影響は用量に比例して生じるということだ。

多量のエタノールが肝臓に入り込むと、活性酸素が形成され、細胞が傷つく。そして、エタノールは直接ミトコンドリアに行く。残りはすべて「新生資質合成」と呼ばれるプロセスによって脂肪に変えられ、脂質が蓄積すると、肝臓のインスリン抵抗性と炎症が引き起こされる

このプロセスが繰り返されると、最終的には、アルコール性肝疾患が引き起こされ、その結果、ジワジワ苦しみながら死ぬか、よくても肝臓移植が必要になる。もう1つの可能性として、脂質が肝臓を出て骨格筋に蓄積するケースがあるが、そこでもインスリン抵抗性により、心臓病が引き起こされる。

最後に、エタノールは脳の報酬経路に作用するため、これが制御不能になると、依存症が引き起こされる。

自然界では、果糖は決して単体で存在せず、無害なブドウ糖とつねに一緒だ。この2つの分子の化学組成は同じ(C6H12O6)だが、同じものとはとても言えないくらい果糖は、ブドウ糖よりずっと多くの悪さをする。

果糖は、体中の細胞をより速く老いらせ、老化現象、がん、認知機能の低下など、さまざまな退行変性プロセスを引き起こしかねない。今では、果糖がメタボ症候群の主要因になっていることを示唆する研究がたくさんある。

果糖は、ブドウ糖とは違い、肝臓でしか代謝されない。肝臓細胞からアデノシン3リン酸(ATP)が奪われ、老廃物である尿酸が生成され、痛風をもたらすとともに、血圧を上昇させる

果糖は、直接ミトコンドリアに入り、アセチルCoAが過剰に生成され、それを代謝するミトコンドリアの能力を超え、パンクさせる。余ったアセチルCoAはミトコンドリアを離れ、代謝されて脂肪になり、心臓病を押し進める原因になる。

そして肝臓がインスリン抵抗性になり、血糖値が上がり、糖尿病につながる。余分なエネルギーを脂肪細胞に送り、肥満になる。エネルギーの行く先は内臓脂肪だ。インスリンの血中濃度が高いと、さまざまながんが発症する危険性があるのだ。

高インスリン血症は、レプチンシグナルを遮断し、脳は「飢えている」と判断して、空腹感が高まる。果糖はまた、「リーキーガット」(腸管壁侵漏症候群)引き起こす可能性があり、体は炎症や、より多くの活性酸素にさらされ、インスリンレベルをさらに押し上げることになる。

果糖は、細胞に直接ダメージを与えかねないメイラード反応をブドウ糖より7倍速く引き起こし、老化とがんの発症を加速させる。また、インスリン抵抗性と認知症に関するデータには、はっきりした因果関係がある。アフリカ系とラテン系のアメリカ人は、アメリカ最大の果糖消費グループで、同時に認知症のリスクも高いグループになっているのだ。

アルコールと同じように、果糖の有毒性は摂取量による。少量のアルコール摂取(1日最大50グラム、ワイングラス3杯分)は体にいいことが、研究でわかっている。HDL(善玉コレステロール)を増やし、赤ワインには、インスリン反応性を向上させて、長寿をもたらすと考えられているレスベラトロールというおまけも付いてくる。少量の果糖もインスリンの分泌によい影響を与えるという研究がある。しかし、人口の半分以上が制限値を超えてしまっているのだ。

脳は果糖を代謝しない。しかし肝臓が果糖を代謝する方法は、エタノールを代謝する方法に酷似している。果糖は肥満の唯一の原因ではないが、慢性代謝性疾患においては主要原因だ。慢性代謝性疾患は、あなたをゆっくりと殺す。果糖はあなたの肝臓をフライにして、アルコールがもたらすすべての病気をもたらすのだ。

地球上最大の2型糖尿病発症率にみまわれているのがサウジアラビアとマレーシアであるのもうなずける。イスラム圏の国だから酒は飲まないのだが、その代わり、清涼飲料水(ソフトドリンク、ジュース)を浴びるように飲んでいるのだ。国際糖尿病連合によると、糖尿病の世界的流行は、現在(2017年)4億2500万人もの成人を苦しめているという。つまり全世界の人々の約5.6%までが糖尿病にかかっているということだ。一方、砂糖の消費量が低下した少数の国々では、糖尿病の有病率が0.18%減少している。

1日に一人当たり150キロカロリーが総摂取カロリーに加えられたとしても、糖尿病の有病率はほとんど影響が出ない。だが、もしこの150キロカロリーが清涼飲料水からきていたら、糖尿病有病率は7倍に跳ね上がるのだ。糖分はカロリーより危険なのである。「糖分は毒」なのだ。議論の余地はない。


果糖中毒の解毒剤1「食物繊維」

胃腸病専門医は、結腸がんと憩室炎(大腸の壁が外に飛び出してできる憩室に炎症が起こる病気で、便秘の人がかかりやすい)の双方を予防する食物繊維の価値を私たちに認識させた。これは両方とも、本当のことだ。

だが、食物繊維は、実はもっとずっと偉大だ。食物繊維は肥満の世界的大流行を解決する鍵を握っている2つの「解毒剤」の片方なのである。米国農務省は食物繊維を必須栄養素には分類していない。にもかかわらず、食物繊維の「食事摂取基準」は、1000キロカロリーあたり14グラム、そして実質的に1日25グラムの食物繊維を摂るようにと勧めているのだ。

食物繊維には水溶性と不溶性の2つの種類がある。水溶性食物繊維は、消化と吸収を遅らせ、結腸内の細菌(マイクロバイオーム)に発酵させられてガスになる。

一方、不溶性の食物繊維は多糖類(非ブドウ糖炭水化物)で、セルロース(セロリの筋など)がその例だ。不溶性食物繊維はまったく消化されない。水に溶けないため緩下剤的効果があり、食べ物とその廃棄物が腸内を移動するスピードを増加させる

代謝の面から見ると、水溶性と不溶性の食物繊維の組み合わせは最強だ。不溶性食物繊維は、格子細工のようなものを構築して水溶性食物繊維が引っかかるようにする。一方、水溶性食物繊維はこの格子のギャップを埋めて、しっかりしたものにする。この組み合わせは、腸から血流へ向かう栄養素の流れをゆっくりとし、肝臓ははいって来るものを完全に代謝する余裕ができるため、「オーバーフロー」がなくなるのだ。

残念なことに、今日私たちが口にする食べ物の多くは、この両方の食物繊維が含まれていないことが多い。精製された穀物は、製粉や精米の過程で、ふすま(ブラン)と胚芽の両方が取り除かれている。食物繊維は、いったん取り除かれたら元に戻すことはできないのだ。

穀類を丸ごと取り込むと、腸はゆっくりと外側のふすまを剥ぎ取り、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)をおだやかに上昇させ、やがて低いピークに到達させる。しかし外側のふすまを加工して取り除いてしまうと、肝臓にはブドウ糖が押し寄せて、血糖値が急速に上がり、高いピークに達する。それはまた、インスリン濃度の高いピークをもたらす。つまり、食物繊維から最大の恩恵を引き出すには、手を加えていない全粒を含む食品を摂ることが必要だ。

フルーツは果糖を含むとはいえ、もともと天然の食物繊維も含んでいる。フルーツに含まれる果糖が、食べる人に重大な健康問題を引き起こさない理由は、果実の固形部分に食物繊維があるからだ。

一方、ジュースは丸ごとの野菜と果実に含まれる不溶性食物繊維が取り除かれている一見すると、ヘルシーな飲み物に見える、フルーツを丸ごと「スムージー」にするというものがある。これには問題がある。ミキサーの刃による剪断作用が、フルーツの不溶性食物繊維を完全に破壊してしまうのだ。

食物繊維は、インスリンレベルを低く保ち、エネルギーが肝臓に押し寄せるのを抑えることによって、肥満とメタボ症候群との戦いを助ける以下の特性がある。

1)血糖値を下げ、脂肪を作らない。2)悪玉コレステロールのレベルを下げる。3)早く満腹感を感じさせる。脳の視床下部に、満腹であることを知らせるためには、ペプチドYY(PYY)と呼ばれるホルモンが血中に放出される必要がある。PYYシグナルを生成するには、食べ物が腸の中を7メートル近く進んでいなければならない。不溶性食物繊維は、腸の中で食べ物を速く移動させるのに最適なのだ。4)食事性脂肪の吸収を遅くする。5)腸の善玉菌を増やし、「太らせ因子」を食い止める。腸内細菌は数千種類もあるが、科学界では、これまで「バクテロイデス門」、「フィルミクテス門」、「古細菌」の3種類に的を絞って研究してきたが、腸内の細菌構成が、ある種の人々の体重増加を促す一因となっていることは、ほぼ確実である。食生活の食物繊維内容を変えることは、腸内細菌の内容を変えることになり、「善玉」細菌を増やして、「太らせ因子」となる細菌を食い止めることができる。

「インスリン抵抗性とアテローム性動脈硬化の研究(IRAS)」と題された論文では、食事に関する分析で、インスリン感度と相関関係にあったのは、たった1つ、食物繊維だけだった。このインスリン感受性の向上は大部分において、不溶性の食物繊維がもたらしたものだった。食物繊維は、サプリメントのような錠剤ではなく、食べ物でとらなければならないようだ。食物繊維は、代謝によし、糖尿病によし、腸によしの栄養素なのだ。


果糖中毒の解毒剤2「1日15分の運動」

運動は健康状態を最適に保つ鍵だ。運動だけで有意な減量ができたことを実証する研究は、ただの1つも存在せず、それはメタアナリシス(複数の研究について有意差を調べる分析研究)でも裏付けられている。体重が減ったあとに減量し続けるには、エネルギー摂取量をさらに減らさなければならなくなるのだ。運動しても減量できない2つ目の理由は、運動すると筋肉がつくからだ。これは健康にはいいが、体重減少にはつながらない。

身体活動は、エネルギー消費要因の中では少数派に属し、活動の内容や強さによって異なるものの、総エネルギー消費量のうちのたった5%から35%(ジムマニアの場合)にしかすぎない。あなたの摂取カロリーが最も大量に燃えるのは、寝ているときとテレビを観ているときだ。しかし、運動の効果は、減量面は別として、多くの面におよぶ。

運動はまさしく、もう1つの解毒剤だ。肥満を治しはしなくても、それにまつわるネガティブな影響をすべて緩和してくれる。運動は交感神経系を直接活性化し、筋肉にシグナルを送って新しいミトコンドリアを作るように促す。それにより、より多くのエネルギー(ブドウ糖または脂肪酸)が燃やせるようになる。古いミトコンドリアは効率が悪く、活性酸素をより多く生成する。運動は古いミトコンドリアを一掃し、筋肉はクリーンで効率のよいエネルギーが使えるようになる。

運動は体内のストレスを掃除して「精神を安定」させてくれる。運動をすると、血中コルチゾール濃度がただちに上昇するが、すぐに降下して、その日1日低いままにとどまる。血圧を下げるには、運動をするといい。運動はストレスを緩和して、エンドルフィン(気分をよくする脳内化学物質)を分泌させ、一日中気分よく過ごせるようにしてくれるのだ。

おそらくこれが最も重要なことだが、運動は肝臓のクエン酸回路のスピードを上げて、エネルギーがよりクリーンに燃やせるようにしてくれる

運動とダイエットは「同時に」することが重要だ。あなたが吸収するエネルギーのすべての分子は、次の3つの運命のうち、いずれかをたどる。まず、燃やされる。インスリンレベルは上がらず、体重も増えず、代謝にダメージを与えない。2番目に、貯蔵される。インスリンレベルは上がり、体重が増え、代謝はいくらかダメージをこうむる。3番目に、エネルギーが尿に出てしまう。代謝は大損害を受け、腎臓もダメージを受ける。糖尿病をきちんとコントロールしないと、腎臓透析を受けなければならなくなるのがその例だ。運動すれば減量できると考えるのはやめよう何らかのダイエットとともに運動するのでなければ、減量は望めない

太っているけれども健康な人を非難するのは適切なことだろうか?頑張りつづける限り、その人は『ヴオーグ』の表紙を飾っている棒みたいなモデルより長生きすることができるだろう。実際、BMIが25から30のあいだの太り気味の人は、BMIが19未満のやせっぽちの人より長生きしている。

体重にかかわらず、継続的な運動(たった1日15分間でさえ)は、健康を増進する唯一最良の手段である。3年間の人生を手に入れるのに、たった273時間の運動ですむのだ。言い換えれば、6万4000%の投資利益率である。あらゆる医療のなかで最もうまい話ではなかろうか。


サプリメントは気休め薬

ウィリアム・フレッチャーは100年以上前に、ビタミンB1と脚気(心不全と神経障害を引き起こす病気)の関係を発見した。食物繊維をはぎ取った精米を食べると脚気になるが、精米されていない米を食べると脚気が予防できることが判明したのだ。

老いを防ぐ抗酸化物質はまだ見つかっていない。シリアルの広告では、ひとつかみのブルーベリーが、ほぼ必ず乗っている。おそらくこれは、消費者の目をそらすための策略だろう。シリアルに含まれているはずの抗酸化物質は製品の加工過程で排除されてしまっているからだ。

「酸化ストレス」、つまり活性酸素によるダメージが老化のプロセスを進める最大の要因であることを証明する文献は増える一方だ。抗酸化物質であるビタミンCとEは、血管機能やインスリン抵抗性を改善するという研究結果は得られていない。むしろ、高用量のビタミンEは死亡率の増加に関係づけられている。ときおり、メタボ症候群の治療薬として抗酸化物質がヒットを飛ばすこともあるが、たいていは惜しいところで成果が確認されないままに終わっている。

特効薬として、いまだに実現していない希望の源はビタミンDだ。ビタミンDのレベルが、糖尿病、高血圧、心臓病といったメタボ症候群に関連する主な病気に反比例することは間違いない。ビタミンDの欠乏は、日照不足(皮膚は日光を浴びてビタミンDを生成する)、または食事におけるビタミンD不足からくる。3分の1のアメリカ人が、ビタミンD不足に陥っている理由の1つは、日光を疫病神のように避けるよう教え込まれてきたためだ

もう1つの理由は、食事でとるビタミンDの最大の源だった牛乳の1人あたり摂取量が、過去60年間に半減したことにある。この牛乳の摂取量の減少にあわせて始まったのが、糖分の添加された飲み物(清涼飲料水とジュース)の摂取量の増加だ。現在私たちが唯一手にできる疫学データは、この2つを分類していない。

内臓脂肪を減らすかもしれない夢のサプリメント候補、それが「レスベラトロール」だ。レスベラトロールは食べ物ではあまりとれないが、赤ワインには高濃度で含まれている。この物質は細胞内の適切な場所に作用する。動物モデルでは、活性酸素が引き起こす炎症の抑制に効果があり、その過程で、がんを予防し、アテローム血栓症を低下させ、内臓脂肪を減らし、インスリン感受性を向上させ、潜在的に神経機能を保護する作用まであることが示されている。しかも、それらすべてを、実質的に副作用なしで可能にするのだ。レスベラトロールは有望な物質ではあるものの、ヒトの研究は始まったばかりで、本流になるにはまだ時間がかかりそうだ。

ビタミンCやベータカロチンといった抗酸化物質をもっと取り込めるように食生活を変えると(より多くフルーツと野菜を食べ、加工食品と糖分を抑えるようにすると)、ほぼどのケースでも、メタボ症候群の兆候と症状が改善する。しかし、これらの抗酸化物質をサプリメントの形でとると、通常、効果はまったく現れない

実際、ビタミンEサプリメントは、臨床研究で5度も大敗を喫している。その内容は、次の通りだ。1)ベータカロチン(ニンジンのオレンジ色の成分で、ビタミンAの前駆体)とビタミンEをヘビースモーカーに与える「α-トコフェロール、β-カロチンのがん予防効果試験」(ATBC試験)を行なったところ、研究参加者のがんと虚血性心疾患のリスクが高まった。2)2005年に行われた「心疾患転帰予防評価試験」(HOPE試験)で、ビタミンEは心不全の一因になることが示された。3)2005年の「女性の健康イニシアチブ」で、ビタミンE摂取を10年間追跡した結果、心臓病およびがん抑制における効果がまったくなかったことが示された。4)2009年の「セレニウムとビタミンEのがん予防効果試験」(SELECT試験)では、ビタミンE摂取グループが、前立腺がんのリスクを増加させていた。5)2008年に行われたコクラン・メタアナリシスで、ビタミンEは認知機能の低下率を改善していないことがわかった。

長期的かつ適切に行われた「アイオワ女性健康調査」という対照研究では、複数の栄養サプリメント(特に鉄分)の摂取が、死亡リスクをやや増加させるという結果となり、サプリメント流行のど真ん中に最も鋭い杭を打ち込むことになった。

研究対象のすべてのサプリメントのなかで、長期的メリットがあると示された唯一の物質はカルシウムだったが、それは折れる骨の数を減らすという形で、延命に寄与していただけだった。

しかし、負の結果はほとんど耳にすることがない。なぜなら、政府機関はこうした結果を公表しないし、サプリメントを市場から取り除く圧力もかからないからだ。これは本当のジレンマである。微量栄養素は重要だ。体の生化学反応はそう言っている。しかし、臨床研究でサプリメントとして投与されたときには効果が出ないのだ。つまり、天然の微量栄養素を含んでいる本物の食べ物はメタボ症候群を予防するが、加工食品はメタボ症候群を引き起こすということだ。そして、栄養サプリメントは、破壊されてしまったものを元に戻すことはできないということなのである。

では、なぜ本物の食べ物には効果があるのに、サプリメントにはないのだろう?おそらく、問題が栄養不足であった場合、それは有効だった。しかしメタボ症候群は、もっと複雑な問題で、栄養過多を治療するのは、もっと難しい。足りないものを足すのは、余っているものを引くよりずっと簡単なのだ。その理由として、以下の仮説がある。

1)食品を加工する際に添加される糖分や保存料などの毒性の強い物質が、栄養サプリメントのすべての有効な効果を減らしてしまう。

2)微量栄養素よりもっと重要な、食物繊維を取り除いてしまっている。

3)繊維とともに旅する微量栄養素は、食物繊維とともに取り除かれてしまう。脚気の例で、ビタミンB1が失われたのは、精米によって食物繊維を剥ぎ取ったせいだった。フラボノイド、葉酸をはじめ、多くの微量栄養素が食品加工で台無しにされている。いったん食べ物が「生物学的に」死んでしまったら、栄養補助食品を振りかけたところで、生き返らせることはできないのだ

4)ある種の抗酸化物質は、大量に供給されると酸化物質に変わるため、逆効果になる。その完璧な例が「鉄分」だ。鉄分は補足酵素を働かせるために必要だが、あり過ぎると、みずからの酸化が始まってしまう。それはサビだ。褐色反応と同じことが、体内でも起こる。

5)栄養補助食品であるサプリメントは、医薬品と同じレベルの厳しい品質管理をくぐり抜けてきているわけではないつまり、品質基準が緩いのだ。1994年にアメリカ政府が可決した「栄養補助食品健康教育法」は栄養補助食品業界に対して、彼らの製品の安全性と効き目における通行手形を実質的に渡すことになってしまった。米国医学研究所は2008年に含有物質の下限値を定めたが、上限耐用摂取量は定めなかった。

これにより、企業は有効性を示さなくてよくなった。しかし、サプリメント製品の品質がバッチ(製造ごとの単位)ごとに変わらないことは保証できるのだろうか?天然の植物が正確に識別されて正しいサンプルの材料になっていることが保証できるのだろうか?そして、米国農務省が通達している1日あたりの推奨許容量の1000倍のビタミンCを取ることは、風邪の治療において、何らかの目に見える効果をもたらしているのだろうか?栄養補助食品業界がこうした疑問から逃げおおせている唯一の理由は、米国食品医薬品局(FDA)が業界を監督していないからだ。1つ確かなことがある。食品関係の売上の6%に当たる1239億ドルの売上(2008年)を誇る栄養補助食品業界は、砂上の楼閣だということだ。私たちの身体によりポジティブな影響をもたらす特効薬は、「本物の食べ物」なのだ。


脂肪細胞を増やす5つの「太らせ因子」

「太らせ因子」とは、科学者たちが生み出した造語で、体重増加と肥満を促す、内分泌撹乱物質(EDC)のことを指す。太らせ因子が肥満を促す方法はいくつかある。

化学物質をエストロゲンにするのは、さほど大変なことではない。エストロゲンは、そこいらじゅうにある。私たちが食べる食品にも、プラスチックにも、水道水にも入っている。最近まで農薬にも使われていた。おそらく、殺虫剤として使われていた最も有名な化合物はDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタンの略)だろう。DDTが虫を殺すのは、それがエストロゲンの一種だからである。

レイチェル・カーソンは、1962年に上梓した『沈黙の春』(青樹簗一訳、新潮文庫、1974年)で、DDTが動物の病気と人間のがんの原因になることを示唆した。この殺虫剤の使用はアメリカでは1972年に、メキシコでは1997年に禁止された。(日本では1981年に製造と輸入が法律で禁止されている)。だが、ここにきて予期しない事態が起きている。DDTはアメリカでは、40年以上も使われていないにもかかわらず、その分解物であるDDEが、いまだに妊娠中の女性の尿の中で検出されているのだ。そして、DDEはほぼ確実に、赤ちゃんがまだ生まれていないうちに余分な脂肪細胞を作り出しているのだ。

もう1つよく知られているエストロゲンは、ビスフェノールA(BPA)だ。この化合物は、ポリカーボネート・プラスチック・ボトルが酸にさらされるたびに漏れ出す。言いかえれば、アメリカで販売されている液体のほぼ全てが、潜在的なリスクを負っているわけだ。(日本で使われているペットボトルは、ポリエチレンテフタレート樹脂が原料なので、BPAは含まない)。

最後の大物エストロゲン曝露因子は、大豆やアルファルファに含まれる植物性エストロゲンの「ゲニステイン」だ。ゲニステインは、ラットで脂肪細胞の分化を引き起こすことがわかっており、出生時のゲニステイン曝露は、生後3カ月と4カ月の脂肪細胞を予測する指標になる。

もしあなたがベジタリアンだったら、牛乳やチーズを通して、ゲニステインを摂取しているだろう。そしてヴィーガンの人は、もともと大豆製品(豆腐など)をよく食べているだろうから、ゲニステインは、ほぼ避けることができない。ゲニステインが人間の肥満の一因になっているかどうかは、まだ判明していないが、心配の種ではある。

フタル酸エステルは、プラスチックを柔らかく曲げやすくする可塑剤で、薬や栄養サプリメントのコーティング剤から、パーソナルケア製品、そしてゴム製品のアヒルのような子供のおもちゃまで、非常に多岐にわたって使われている。最近では、尿中のフタル酸エステルの濃度が、ニューヨーク市の子どもたちの胴回りと相関関係にあることが判明した

アトラジンは有機塩素剤の一種で、催奇形性、つまり生命体に高い頻度で構造的奇形を引き起こす農薬だ。アトラジンはヨーロッパでは使用が禁止されているが、アメリカでは使われており、アイオワ州などは、アトラジンまみれと言ってもいい。アトラジンは、同州が全米一の生産量を誇るトウモロコシの主要な農薬なのだ。過去20年間、メキシコ湾の北側には、デルタに生息するほぼすべての魚が死に絶えた「死の区画」が存在している。これは、ミシシッピ川にアトラジンが流れ込んだ結果だ。血中のアトラジン濃度は、大人における肥満症とインスリン抵抗性に相関する

トリブチルスズ(TBT)は、あまり知られていない化合物だが、こと肥満について言えば、とんでもない物質である。TBTは殺菌剤で、船が腐らないようにしたり、フジツボが船体に貼りつかないようにしたりするために使われている。船やボートに使われることから、私たちの飲み水にも入り込んでおり、その影響を避けることは不可能だ。TBTは脂肪細胞を増殖させるシグナルを模倣し、コルチゾール代謝を活性化して、内臓脂肪の蓄積を促す。さらに悪いことに、妊娠中のラットを一度トリブチルズに接触させただけで、生まれた子ラットたちは、出生時にすでに脂肪肝になっており、生涯にわたって肥満とメタボ症候群に悩まされる運命を背負うことが判明している。

タバコの煙には、醜悪な化合物が大量に含まれている。その1つがチオシアン酸塩というシアン化合物の仲間だ。チオシアン酸塩は甲状腺の機能を抑制する。親がタバコを吸っている家庭では、学齢期の子どもたちの甲状腺レベルが低下することが判明しており、学業の認知能力に悪影響を与えている可能性がある

さらに悪いことに、チオシアン酸塩は胎盤を通って胎児に届くだけでなく、母乳にも入りこむ。喫煙が低出生体重児(在胎週数に比べて小さく生まれてくる赤ちゃん)の原因であることはよく知られており、低出生体重児の赤ちゃんは、のちに肥満になって、メタボ症候群を発症する高いリスクを抱え込む

世界中の肥満と糖尿病の大流行をもたらしている可能性のある原因は大気汚染である。喘息と肥満と糖尿病が、1人の患者に集まりがちなことは、ずっと以前からわかっていた。今や複数の新たな研究で、高速道路や幹線道路の近くに住んでいる人は、これら3つの問題を抱える高いリスクにさらされていることが証明されている。

肥満は何らかの感染症によってもたらされたものなのだろうか?そこで登場するのが、アデノウイルス36(Ad-36)だ。このウイルスは、通常の風邪の症状をもたらしたあとに脂肪細胞を乗っ取る。あなたの脂肪細胞を分化させて、細胞分裂を起こさせるのだ。ある研究では、Ad-36が陽性反応を示したのは、正常体重の子どもでは7%だったところ、肥満児では15%だった。だが、肥満グループに限って言えば、Ad-36が陽性だった人は、陰性だった人に比べて、平均で16キロ近くも体重が重かった。これは、Ad-36にかかると、肥満した人はもっと太る可能性があることを示唆している。

大豆ベースの粉ミルクには、太らせ因子が詰まっている。豆乳の粉ミルクは、体重増加の一因として有名だ。「アイソミル」という名の粉ミルクのショ糖含有量は10.3%にも達する(コカ・コーラのショ糖含有量は10.5%)。これでは、まるで赤ちゃん用ミルクセーキだ!さらに、豆乳ベースの粉ミルクにはゲニステインが含まれている。これらを、ビスフェノールAを含む哺乳瓶に入れたとしたら・・・・。そのような環境曝露を減らすには、普通、政府による法律の制定と公衆衛生当局による介入が必要だ。だが、それをやり遂げる度胸のある政府機関があるだろうか?


食品業界が「毒」を使いたがる理由

「肥満とは多くの原因からなる複雑な問題ですから、たった1つの簡単な解決策のようなものはありません。異性化糖をはじめ、ほかのどのような食品や素材にしても、それだけを肥満の大敵としてやり玉にあげるのは無責任ですし、科学的にも正しくありません。肥満を克服する唯一の持続可能な手段は、バランスのとれた生活を送り、多岐にわたる食品を過不足なくとり、日々の生活に多くの身体活動を取り入れるよう人々を促すことです。」──全米清涼飲料協会のプレスリリース(2004年3月25日)

まあ、それはそうだ。異性化糖とショ糖は、生化学的な面から言っても代謝の面から言っても、あらゆる意味で同等だと言っていい。だが、真実はそこまでだ。米国砂糖協会も米国トウモロコシ精製業協会も、原料がなんであっても、糖分はすべて無害だとして、無理やり容疑者リストから外そうとしている。業界は「どの食べ物でとろうがカロリーは同じ働きをする」と信じ込ませたいのだ。彼らは、果糖、ひいてはあらゆる糖分は、ただの「エンプティ・カロリー」だと信じ込ませたいのである。もしそうであれば、糖質はほかの栄養素と変わらなくなるから、ほかの栄養素よりよいわけでも悪いわけでもなくなる。

データが示す通り、私たちの糖分摂取量は、任意カロリー(マイプレートで許されている自由裁量分のカロリー)のリミットを大幅に上回ってしまっている。食品業界は、糖分を加えれば加えるほど、消費者はその商品を買う、ということも知っている。

アメリカが異性化糖まみれになった歴史は、以下の通りだ。1959年にキューバ革命が起き、アメリカの通常の砂糖供給が途絶えた。カストロ政権との交渉も取引も完全に決裂し、アメリカは糖分の渇望を癒してくれる新しい原料を探さなければならなくなった。

もともと日本の発明品だった異性化糖がアメリカに上陸したのは1970年のことだった。異性化糖が食生活に導入されたことにより、アメリカの砂糖の生産者物価指数が安定する。異性化糖のコストは、平均してショ糖の約半分ですんだ。

食品価格の変動が政情不安をもたらすことを抜け目なく見抜いたリチャード・ニクソン大統領が、農務長官のアール・“ラスティ”・バッツに、政治的検討課題のリストに「食べ物が載らない」ように命令する。バッツに与えられた任務は、食べ物の値段を安くする手段を見つけること。異性化糖は、その目的にぴったりだった。

こうして異性化糖は、ファームビル(1930年代の大恐慌時代に農家を救済するために開発された農業法案で、5年ごとに見直される)でトウモロコシ栽培の助成金を整備する誘因の1つになる。たとえ作る値段のほうが売る値段より高くなっても、アメリカ政府はその穴埋めをする用意があったということだ。

マクガバン特別委員会の「勅令」により、1970年代末、米国農務省は食事性脂肪の消費量を抑える方向に舵を切った。低脂肪食品の味を良くするには、どうすればいいか?その答えは糖分を足すことだった。さまざまな加工食品を「低脂肪・高糖質」バージョンに変えていくなかで、食品業界は利益が増大したことに気づく。

1980年のアレン台風は、一挙にカリブ海全体のサトウキビを根絶やしにした。砂糖の先物取引価格は急騰し、コカ・コーラ社はそれまでショ糖を異性化糖に切り替えることに消極的だったが、粗糖不足に直面して、異性化糖を含む製品をスーパーの棚に置き始める。その後、食品産業全体が、コカ・コーラ社に追随した。


食品業界が糖分を使いたがる4つの理由

人間の舌は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味という5つの味覚を感知することができる。しかし糖分は、残り4つの味覚の欠点を補うことができるのだ。糖分はアンバランスな味を隠して、あまり美味しくない食品でも、食べたくさせてしまう。端的に言うと、糖分をふんだんに使えば、たいていのものは美味しくなる。そして食品業界は、まさにそれを実践しているのだ。

食べ物の焼き色は、目も、味を感知する舌の味蕾もそそる。どんな食べ物でも糖分を加えればよく褐色化する。食べ物の褐色化はメイラード反応だ。料理と味には好都合だが、あなたの動脈にとっては、そそられる反応ではない。

もし砂糖を使わなかったら、焼き菓子はつまらないものになってしまう。生地が膨らまないので、ペチャンコになる。パンも、ふっくら膨らませるには、エサになる砂糖をイーストに与えることが必要だ。また、砂糖がなかったら、ごく薄いウェイファー・クラッカーもパリパリにはならない。

糖分は水分活性つまり微生物が利用できる自由水の割合を減らす。水分活性が高ければ高いほど、微生物が増えやすくなり、カビが生えやすくなる糖分(と塩分)は水分活性を減らすので、糖分が含まれた食品は腐りにくくなる。だから食品業界は糖分を保存料として使うのだ。気が抜けた炭酸飲料は飲んだことがあっても、腐った臭いがするものを飲んだことはないだろう。炭酸飲料水のビンのなかでは、何も育たないからだ。

食品に糖分を添加すると、保湿性、つまり水分を保持する能力も向上する。この特性は、とりわけ焼き菓子のようなご馳走が固くなってしまうのを防ぐのにとても重要だ。地元のパン屋さんで買うパンが固くなるのは、2日ぐらいだろう。スーパーで買った食パンが固くなるのは、2〜3週間後だ。

食品業界が食べ物から食物繊維を取り除くのは、繊維があると保存期間が短くなるからだ。ファストフードの定義は何かご存じだろうか?それは、食物繊維抜きの食品」である。なぜなら、食物繊維が含まれた食品を冷凍すると質感が変化してしまうからだ。繊維のない食品なら、冷凍してから世界中に輸送して、すぐに調理することができる。だが、食物繊維を取り除くことは満腹感を取り除くことになり、炭水化物の負のインパクトを悪化させて、高インスリン血症、肥満、そしてメタボ症候群を引き起こすことになる。

これから紹介するのは、食品業界や彼らの「大使」が、糖分を食品や飲料に添加することについて、人々を説得する際に使う方便である。

1)食品業界は、果糖は血糖値を上げない、と言って反論する。果糖のグリセミック指数はとても低いから、それは間違っていない。グリセミック指数は食べ物がどれだけインスリン抵抗性を引き起こすかを示す値で、食べ物が体重を増加させる可能性を数値で表したものだ。

だが、思い出して欲しいのは、果糖は、自然界に単独で存在せず、果糖はいつもブドウ糖と組み合わさって存在しているという事実だ。ショ糖は果糖とブドウ糖が組み合わさったもの、異性化糖は人工的に作られたものだが、同じく果糖とブドウ糖の組み合わせだ。そしてブドウ糖は、かなり大々的にインスリン抵抗性を引き起こすのだ。そのため、ブドウ糖が代謝されるとインスリンの量が跳ね上がる一方で、果糖が脂肪肝と肝臓のインスリン抵抗性を引き起こす。炭水化物と脂肪のコンビネーションは、ヒトにメタボ症候群を抱えさせるにはぴったりの手段なのだ。

2)食品業界は、結晶果糖(人工的に作り出した果糖だけの糖分)を甘味料として米国食品医薬品局に認可させたがっている。つまり、食品業界は、果糖は糖尿病患者にとって望ましい甘味料だというお墨付きを得たいのである。

彼らが主張する科学的根拠は、ブドウ糖を果糖で同じカロリー分を置き換えると、ヘモグロビンA1c(糖尿病患者で血糖コントロールができているかどうかを調べるために検査する物質)が上昇しないことを示す複数の「比較対照」試験があることだ。

ヘモグロビンA1cが上昇しない理由の1つはおそらく、結晶果糖は小腸で不完全にしか吸収されないため、ブドウ糖とヘモグロビンA1cに与える影響が最小限のものになるからだろう。とはいえ、もしあなたの身体が結晶果糖を吸収しないのだとしたら、残留果糖による胃腸消化管症状が腸をめちゃくちゃにして、痛みと膨満感と下痢を引き起こすことになる

さらには、果糖が糖尿病患者のヘモグロビンA1cの血中濃度を上げないからといって、ダメージを与えないわけではない。日本の研究者たちは、果糖がヒトの体内でタンパク質と結合することを示している。さらにそのことは、果糖が細胞内部のタンパク質にダメージを与える可能性があることを否定しないショ糖およびデンプンのいずれかを自由に摂取させた動物実験では、ショ糖を摂取した方のマウスは肝臓細胞に著しい炎症を起こして、肝硬変に陥った。同様に、ヒトにおける諸研究でも、ショ糖の消費は肝臓に起きた炎症の程度と相関することが証明されている

3)食品中の糖分と食物繊維に関する情報は、誰でもはっきり読めるように、栄養成分表示ラベルに記載してあるではないか、と食品業界は反論する。その情報に基づいて、みずからの意思で、とるかとらないか決断をくだすことができるはずだと。

しかし、そうとも限らないのだ。栄養成分表示ラベルでは、炭水化物の項目に「総糖質量」が記載されている。つまりこれには、単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース)や、すべての二糖類も含まれているのだ。二糖類には、ブドウ糖が2つ結合した麦芽糖(ビールに含まれている)や、ブドウ糖とガラクトースが結合した乳糖(乳製品に含まれている)、そしてブドウ糖と果糖が結合したショ糖(砂糖もこれ。どこにでも顔を出す糖分!)などの種類がある。

栄養成分表示ラベルによって消費者に本来教えられるべきななのは、「加えられた糖分」だそれと同時に表示すべきなのは、どれほどの量の食物繊維が食品に含まれていて、どれほどの量が取り除かれてしまっているか、ということだ。

だが、消費者がこうした情報を手にすることはできない。1990年に発効した栄養表示教育法(NLEA)は、食品に含まれる糖分をまとめて「総糖質量」として表示することを認めている。内容の区別もなければ、「添加甘味料」の項目もない。

消費者がこうしたことを知らされない本当の理由は、食品業界に雇われたロビイストが圧力をかけているからだ。1989年に米国食品医薬品局に対して業界が行なった主張は、「ラベルに添加甘味料を明記したら、ライバルにすべてのレシピを真似されてしまう。これは機密情報だから、それを明かすようなことはできない」というものだった。そして、米国食品医薬品局は、この言い訳を受け入れてしまったのだ。

4)食品業界は、「需要と供給」の法則に従っただけだと言う。食品業界は、マーケティングに費やすコストの面から言えば、自動車業界に次いで大きな業界だ好むと好まざるとにかかわらず、私たちのチョイスは、マスコミよって欲しくなるように仕向けられたものになる

食品の広告に費やされる額のうち、フルーツ、野菜、穀物セクターが占める割合は5%にも満たない。政府も農務省も、食品業界が費やすほぼ無限の資金にはまったく太刀打ちできない。1997年、米国農務省は健康的な食生活キャンペーンに3億ドルを費やしたが、そのときジャンクフードの宣伝に使われた額は110億ドルもあり、そのうちの42億ドルは子ども向けだった。

食品業界は、アメリカ中の学校に大量の宣伝をしている。経済的支援を受ける見返りに学校は飲料会社と独占マーケティング契約を結び、製品供与、スコアボードや電光掲示板、衣類、学校用品などを通して校内で宣伝を行うことを許可するのだ。2000年に行われた調査では、カリフォルニア州の高校の72%が、ファストフードと飲料会社に校内での宣伝を許可しており、禁止していたのはほんの13%にすぎなかった。


「果糖中毒」から更生する最強プログラム

成功するダイエットの共通点は「低糖分」「高食物繊維」

成功するダイエットの共通項は、2つある。すべて低糖であること、そして高食物繊維(ゆえに高微量栄養素)であることだ。私たちは、ついに結論に達した。これこそ知りたかったことであり、これこそが重要な点だ。

自然界に存在する果糖は、サトウキビ、フルーツ、ある種の野菜、蜂蜜からもたらされる。最初の3つは果糖よりも食物繊維の方が多く含まれ、最後の蜂蜜はミツバチにがっちりガードされている。自然界で糖分を手に入れるのは簡単なことではないのだ。

しかし人間はそれを簡単にしてしまった。そして、これこそ食品業界もアメリカ政府も認めたがらない真実なのである。なぜなら、一度認めてしまったら、糖分の量を減らさなければならなくなるが、彼らはそうすることができないし、そんなことをしたいとも思わないからだ。そしてこれこそ、「工業化しグローバル化した食習慣」が導入された国々すべてで、肥満率と慢性メタボ症候群の有病率がうなぎ登りに上がっている理由なのである。

ダイエット甘味料ははたして賢い代替え手段なのかどうかを知るためのデータは、現在のところ確実なものがない。一見すると、ダイエット甘味料は、ショ糖または異性化糖に代わる素晴らしい代替物のように見える。カロリーを増やさずに甘味を加え、問題の果糖を除くことができるからだ。アメリカは、肥満大流行のせいで、ゆっくりと、だが確実に、ダイエット飲料への依存を強めている。2010年の時点で、アメリカにおけるコカ・コーラの売上の42%はダイエット製品だった。

だが、ちょっと待ってくれ。もし糖分摂取の33%が飲料に占められていて、42%の飲料が今ではダイエット製品だとすれば、体重を落とした人がいて当然だろう。にもかかわらず、砂糖をダイエット甘味料で置き換えた飲料が、肥満した被験者の体重減少に貢献したことを示す研究は、ただの1つもないのである。

人工甘味料が危険な理由は、私たちの無知によるところが大きい。第1に、体に与える影響がまったくわからない。第2に、脳に与える影響がまったくわからない。第3に、腸内細菌の構成を変えてしまう可能性がある。第4に、糖分の依存を強める可能性がある。そして第5に、一度認可されると検証されない。ダイエット甘味料の安全性の問題は非常に複雑だ。米国食品医薬品局の公式見解は、「認可されたなら安全だ」というもの。だが、本当にそうだろうか?市販されてから30年も経つ、アスパルテーム(人工甘味料)に関する懸念はいまだに消えていない。


果糖から身を守る!スーパーに行くときの5つのルール

1)空腹で買い物をしない。2)生鮮食品売り場に直行する。3)ラベルが付いていないものを買う。4)腐らない食べ物は買わない。5)「隠された糖分」に用心する。

食品業界はラベルに記載しなければならい糖分を隠すために、少なくとも40種類の呼称を使い分けている(砂糖には56の名前がある)。日本でも、「原材料名」の記載欄に、使用量が多い順に材料名を記載することは同じだが、糖質については「栄養成分1人前」の欄に「炭水化物」という項目があるだけで、総量はわからない

では、どうやったら糖分の摂取は抑制できるだろう?まずは、糖分が添加された飲み物を日々の生活からすべて取り除くことだ。炭酸飲料は「果糖の運び屋」だと思えばいい。そしてジュースは炭酸飲料よりもっと悪い。炭酸飲料1杯に含まれる糖分はティースプーン5.4杯であるのに比べ、ジュースは5.8杯分だ

次に、レシピを見直して、砂糖が必要な場合は、3分の1に減らして、3分の2にしよう

最後に、デザートは特別な機会だけに食べることにしよう食品に栄養成分表示ラベルが付いているということは、それが加工食品であるということだ。栄養成分表示ラベルで本当に見るべきなのは、次のことだ。もし食品が液体だったら、糖分は5キロカロリー未満でなければならない食品が固形だったら、食物繊維を3グラム以上含んでいなければならない

もし「部分水素添加」(トランス脂肪酸の別名)という文字が現れたら、その食品は、腐らないように加工されているということだ。もし何らかの形の糖分が最初から3番目までの素材にあがっていたら、その食べ物はデザートであってしかるべきだ。

約567ccのコカ・コーラには27グラムの「総糖質」が含まれている。約170グラムの標準的な「ヨープレイト」ヨーグルトにも約27グラムの総糖質が含まれている。けれども、ヨーグルトは健康食品だろう?ヨープレイトの27グラムの総糖質のうち、どれぐらいが乳糖(つまりラクトースで無害)であり、どれくらいが添加された砂糖(ショ糖)なのだろう?

甘味料がまったく添加されていないギリシャヨーグルトは、約680グラムあたり64グラムの総糖質を含んでいる。これは、170グラムあたりで言うと16グラムに相当する。とすれば、ヨープレイト1個には、11グラムの砂糖が添加されていることになる。つまり、ヨープレイトを食べると、普通のヨーグルトに加えて約237cc分のコカ・コーラを飲むのと同じになるのだ。

食べ物に、聞いたことのある会社のロゴが付いていたら、それは加工食品だ。UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)付属ベニオフ小児病院のWATCHクリニックでは、肥満に悩む小児患者の両親にショッピングリストを渡している。このリストは、インスリンに与える影響に応じて食品を分類したものだ。本物の食べ物は加工食品より高くつくため、多くの人は、この推薦リストを見て、上から目線のリストだとか、貧しい人に対する侮辱だとか感じるかもしれない。とはいえ、アメリカでは食品に費やされる金額のうち、食べ物自体に使われるのはたった19%でしかない。残りの81%は、包装代とマーケティングに使われている。これははなはだしい追加料金だ。とりわけ貧しい人々にとっては言語道断だろう。


自炊しなくてもできるテイクアウトの4つのルール

1)ファストフード店は、どんなことがあっても避ける。2)食器を使わないで、立ちながら食べられるものを買うのはやめること。3)何らかの形のタンパク質を必ずとるようにする。4)スムージー、フラペチーノにも手を出さないように気をつけよう。


外食で食欲をコントロールする4つのルール

週に2回ファストフードを食べる子どもたちの肥満リスクは60%、そして週に3回食べる子どもたちのリスクは300%に達する

1)包装されている食べ物に用心する。2)炭酸飲料は厳禁。3)無料のパン、チップスも厳禁。4)デザートは週1回まで。

マイケル・ポーランは『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載された「アンハッピー・ミールズ」と言う記事で、次のように勧めている。「Eat foof. Not too much. Mostly plants.」ほどほどの量を植物中心に食べよう。私は、それを凝縮して「Eat real food.」本物の食べ物を食べよう。「植物中心に食べよう」の部分は、地面から生えてきた状態の植物を食べるか、または、地面から生えてきた食べ物を食べた動物を食べればいい。さまざまなダイエット法に欠けているのは「本物の食べ物は、本質的によいものだ」という考えである。

ある食品業界の重鎮が私にこう言った。「2つの条件がそろいさえすれば、変わることはできる。まず、単独ではやらない」。つまり、業界の残りのメンバーも同じことをするのでなければやらない、ということだ。もう1つの条件は「売上を減らすことはできない」だった。

肥満との闘いには、前線が2つある。個人での闘いと公衆衛生レベルでの闘いだ。食べ物に何が入っているか、それらが体に何をしているかについて自分を教育することは、あなたと、あなたの子どもたちの個人的な食物環境をコントロールする闘いの半面でしかないのだ。すなわちあらゆる人の食物環境を改善する闘いは、政府を教育することにかかっている

われわれの行動は変えられるだろうか?いや、行動を変えようとしても、アメリカ全土にいる6000万人の「ダイエット常習犯」を見ればわかるように、失敗するのは目に見えている。事実、こと肥満については、親が子どもの行動を変えることはできない。「行動」の定義は「生理的な刺激に対して生じる定型化した運動反応」なのである。

どんな人間の行動も、発現するにはホルモンシグナルを必要とする(たとえば、性的衝動にはアンドロゲンとエストロゲン、親らしい行動にはオキシトシン)。こうした行動は、本当に先天的なものなのだ。もし私たちの大部分が、ドーナッツが欲しいとわめいている生理的な反応を常時無視することができたとしたら、そもそもこの本は必要ない。あなたの体はいつもあなたの意志を裏切る。そしてあなたは必ず失敗する運命にあるのだ。

私たちは認めなければならいのだ。自分のホルモンと自分の生化学的反応から逃れることはできないと。脳の摂食経路、つまり空腹、報酬、ストレスのいずれか、または複数の経路でホルモンの機能異常を抱えている人は少なくない。

肥満管理のゴールは、次の各点を確実にして、ホルモンの機能不全を修復することにある。

行動1)インスリンを減らす— 体脂肪を減らし、レプチン抵抗性を改善する。→ 食物繊維を取り、糖分を減らし、運動する

行動2)グレリンを減らす— 空腹感を減らす。→ 朝食にタンパク質を取り、寝る4時間前から食べない

行動3)ペプチドYYを増やす— 満腹感が早く抱けるようにする。→ お代わりは20分間待ち、食物繊維を取る

行動4)コルチゾールを減らす。— ストレスと空腹感を減らし、エネルギーが内臓脂肪として貯蔵されるのを防ぐ。→ 運動する!


声を上げれば、ルールが変わる

肥満対策についても同様に、一般市民の激しい抗議は強力な推進力になる。私は、カリフォルニア州ウォルナットクリークにある「ウェルネス・シティ・チャレンジ」という権利擁護団体のメンバーであることを誇りに思っている。これは、シェフのシンディ・ギアシェンが設立した団体で、彼女はまさに嵐を巻き起こすパワーを持っている。本物の食べ物を取り入れて病気を克服し、幸せを広めることを目的に、たった1人で、視聴執務室、商工会議所、教育委員会、カイザー・パーマネンテ病院をはじめとする諸病院、レストラン協会、地元のセーフウェイ・スーパーマーケット、そしてSYSCO(食材調達会社)を動員し、1年かけて、マルティネスとコンコードにある、あらゆる公共の食物提供施設を完全に一新したのだ。自動販売機はりんごとオレンジを売るようになり、炭酸飲料は姿を消した。

高校の生徒たちは、本物の食べ物の調理の仕方を学び、教師に朝食として提供した。生徒たちは、教師が体重を減らし、学校に来て教えることを楽しむようになる姿を驚きの目で見つめた。そして今では、自分たちも、それまでファストフードの売店で買っていた朝食をやめて、本物の食べ物を食べたいと思うようになった。このデモンストレーション・プロジェクトは、米国心臓協会をはじめ、多くの団体の後援を受けて行われ、そのメッセージに力を感じた多くの篤志家の協力を集めている。

願わくは、あなたもそのひとりになって欲しい。本書では個人的感情をはさまずに肥満の科学とロジックを説き、それらがどのように個人と社会を救えるかについて考察した。だが私も1人の人間だ。私たち、私たち国、私たちの地球に降りかかったことを考えると気が滅入る。この本は、子どもたちによりよい世界を手渡したいという、私の心からの叫びだ。今こそ、大声を上げるべきときなのだ。そうすれば、子どもたちは「地を受け継ぐ」ことができるかもしれない(『マタイ福音書』第5章第5節より、およびコンピューターゲーム「Inherit the Earth」の題名)。

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