美と健康の真実を考える

Vol.3 津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』2018年東洋経済新報社

2019.06.22

津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』2018年東洋経済新報社

The Best Diet: Simple and Evidence-based Guide to Healthy Eating

レビュー

「もっと早くに先生の食事の話が聞きたかったよ。」外来診察中に患者さんからかけられた一言が、本書執筆のきっかけになった。人間は食べたものでできている。何を食べるかの日々のあなたの選択は、確実にあなたを病気に近づけたり、遠ざけたりしている。日本には健康に関する誤った情報があふれかえっている。科学的根拠に基づいた知識を得ることで、自ら健康になるか病気になるかを選択する力を持っていただきたい。

「炭水化物は健康に悪く、食べると太る。」「βカロテンやリコピンは健康に良い。」「果汁100%のフルーツジュースは健康に良い。」これらが、「科学的根拠のない健康情報」の代表例だ。専門資格を持つ医師や栄養士が正しいことを発信しているとは限らない。アメリカやイギリスの医学部ですら、食事と栄養に関する教育は不十分だが、日本ではもっと遅れている。また、科学的な判断に必要な統計学や疫学の専門知識を持たない栄養士も多い。

省庁が発表する「ガイドライン」ですら歪められてしまっている可能性がある。厚生労働省と農林水産省が共同で発表している「食事バランスガイド」には、ご飯を茶碗で一日3〜5杯食べることを推奨しているが、この量は科学的根拠に基づく判断によると、糖尿病のリスクが上がりはじめる可能性がある量なのだ。2015年、厚労省は玄米や麦などの精製度の低い穀物を含むレストランのメニューに「健康的な食事」のマークを付けてお墨付きを与えようとした。しかし、自民党の農林水産関係の会合で、「白米の生産に影響が出る」という判断で取りやめになった経緯がある。農家保護の立場から「忖度」して、正しい情報を発表しづらいのだろう。

ハーバード大学などアメリカのトップクラスの研究・教育機関が発信している、科学的根拠に基づく理想的な食事に関する知見と、日本であふれている誤った健康情報とのギャップに危機感を覚えざるをえない。本書では、健康になるという観点で、現時点で最も「正解に近い」食事を説明している。これらの研究の層は厚く、質も高いことから、近い将来、新しい研究結果によって大幅に変わることは考えにくい。


ポイント1

日本には体に良い食事と健康に関する情報が溢れかえっているが、問題は、これらの情報の多くが間違っている、もしくは健康になるという観点からはそれほど重要でない情報をあたかも重要で効果があるかのようにうたっている点で、その質は落胆するほどに低い。また、専門資格を持つ医師や栄養士が正しいことを発信しているとは限らない。欧米の大学・医学部の、食事と栄養に関する教育は不十分だが、日本ではもっと遅れている。また、科学的判断に必要な専門知識を持たない栄養士も多く、発信している情報の信憑生について疑問を持たざるを得ない。本書を読んだ人は、「○○だけを食べていれば健康になれる」といった類のあやしい健康本や、テレビ番組に惑わされることもなくなるだろう。

ポイント2

長生きするためには、科学的根拠にもとづいた正しい食事をとることが最も確実である。数多くの信頼できる研究によって本当に健康に良いと考えられている食品は以下の5つ。①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類。

逆に、健康に悪いと考えられている食品は、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと)鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)②白い炭水化物、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。

ポイント3

予防やダイエットを念頭に健康的な食事を考える場合は、「成分」ではなく、食品や食生活全般に注目すべきである。食事や栄養に関する発見が都合良く解釈され、営利企業のマーケティングの手段として利用されていることに注意しなければならい。食品を成分の集合体としてのみ捉える考え方を「栄養至上主義(ニュートリショリズム)」と呼ぶが、「成分」は多くの消費者の興味を引きつけるため、マーケティングに使われているのだ。


著者プロフィール

津川友介(つがわゆうすけ)

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授。東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。共著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学:データから真実を見抜く思考法』(ダイヤモンド社)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。


本文要約

科学的根拠にもとづく本当に体に良い食事

長生きのためには、エビデンス(科学的根拠)に基づいた正しい食事をとることが最も確実だ。以下が、数多くの信頼できる研究によって本当に健康に良いと考えられている食品である。①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類の5つ。

逆に、健康に悪いと考えられている食品は、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)②白い炭水化物(じゃがいもを含む)、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。

表1.「健康に良いかどうかで分類した5つのグループ」

表1.のグループ1の食品は、「最強のエビデンス」と言われる研究手法によって証明された食品である。医学研究のエビデンスは、①ランダム比較試験と②観察研究の2つに大別されるが、一般的にランダム比較試験の方が研究結果のエビデンスレベルが高いとされる。そして、それよりもさらにエビデンスが強いのが、複数の研究結果を取りまとめた「メタアナリシス」という研究手法で、最強のエビデンスと言われる。またメタアナリシスの中でも、複数の質の高いランダム比較試験をまとめたメタアナリシスが「最強のエビデンス」ということになる。


白米と砂糖ではあまりに味が違うが、科学的には「白い炭水化物≒糖」と考えられている。炭水化物は「糖質+食物繊維」で、全粒粉を使った茶色い炭水化物は食物繊維の量が多く、精製された白い炭水化物は食物繊維の量が少ない。そして極限まで食物繊維の量を少なくしたものが砂糖などの糖で、体内で分解・吸収される。

巷の「糖質制限ダイエット」や「炭水化物ダイエット」は、「炭水化物」の摂取量を減らすことを推奨しているが、「炭水化物ならなんでも減らす」という考えは間違いだ。炭水化物には、体に良いものと悪いものがあるからだ。

白い炭水化物は、血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気のリスクを高め、茶色い炭水化物の多くは、肥満や動脈硬化のリスクを下げると言われている。白い炭水化物には、小麦粉を使ったパンやパスタ、ラーメン、うどんなどと、じゃがいも、白米がある。また、茶色い炭水化物には、全粒粉、大麦、オート麦、ライ麦、キヌア、玄米、雑穀類、蕎麦粉がある。小麦粉の精白過程において、胚芽と表皮が取り除かれて胚乳だけが残る。つまり、ビタミンB、ビタミンE、食物繊維などの成分が取り除かれてしまうのだ。

アメリカ、英国、北欧の国々で行われた78万6000人のデータを用いたメタアナリシスによれば、1日70gの茶色い炭水化物を摂取したグループは、それをほとんど食べないグループと比べて死亡率が22%低くかった。別のメタアナリシスによる研究では、茶色い炭水化物の摂取量が多いグループは、低いグループに比べて心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化による病気になるリスクが21%低かった。また、玄米を多く食べる人たちは、ほとんど食べない人たちに比べて、糖尿病のリスクが11%低く、一日50gの白米を玄米に置き換えることで糖尿病のリスクを36%下げることができると推定されている。

スーパーやコンビニの商品の中には「全粒粉」と表示があっても、実は全粒粉が少ししか含まれておらず、ほとんどが小麦粉という商品がある。蕎麦にも同様に「蕎麦粉入りうどん」のような商品があるので注意が必要だ。食品のラベルは、原料を使用した重量割合の多い順に表示されている。健康を考えれば、できるだけ全粒粉の割合の高いものを選ぶべきだ。

日本人の大好きな白米は「少量でも体に悪い」といって良いだろう。2012年に世界的権威のある英国の医学誌に発表された研究結果では、白米の摂取量が1杯(158g)増えるごとに糖尿病になるリスクが11%増えるという。また2010年に、権威あるアメリカ栄養学会の学会誌に掲載された、国立国際医療研究センターの南里明子氏(現在の所属は福岡女子大学)らの研究によると、日本人においても白米の摂取量が多いほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかである。白米の摂取量と糖尿病のリスクとの間には正の相関があるため、白米食は、減らせるのであればできるだけ減らす方が良い。

2011年のハーバード大学の研究者らの観察研究によれば、白い炭水化物を食べている人は体重が増加しているが、茶色い炭水化物を食べている人は体重が減っていることがわかった。つまり、単に炭水化物を減らせば痩せるという考え方は正確ではないということだ。


糖質制限ダイエットの中には、果糖を多く含む果物を避けるよう推奨しているものがある。これは「健康的な食事」という観点からは間違いである。果糖は血糖値を上げるという点では良いと言えない。しかし、果物を丸ごと食べれば血糖値は、それほど上がらないことが知られており、健康に良いエビデンスが十分にある。イェール大学予防医学センターのデイビッド・カッツは、「食品中の成分に気をとられすぎたため、逆に本当に栄養のある食品を摂取しなくなってしまうという失敗である」と警笛を鳴らしている。

予防やダイエットを念頭に健康的な食事を考える場合は、成分ではなく、食品や食生活全般に注目すべきである。カリフォルニア大学バークレー校のマイケル・ポラン教授は、「食事や栄養に関する発見が都合良く解釈され、営利企業のマーケティングの手段として利用されている」ことに注意喚起を促す。食品を成分の集合体としてのみ捉える考え方を「栄養至上主義(ニュートリショリズム)」と呼ぶが、「成分」は多くの消費者の興味を引きつけるため、マーケティングに使われているのだ。

緑黄色野菜や果物に多く含まれる「βカロテン」は、ガンが予防できるかもしれないと考えられるようになり、βカロテン入りの清涼飲料が一世を風靡した。しかし、βカロテンを含んだ飲料は、健康に良くなく、むしろ有害である可能性が高いことがわかってきた。βカロテンは肺がんを予防するどころか、むしろ肺がんのリスクを上昇させることが明らかになったのだ。それだけでなく、死亡率や心筋梗塞のリスクまでも高めると報告されている。βカロテンの健康被害は男性よりも女性の方が大きく、βカロテンのサプリメント摂取は、膀胱がんや胃がんのリスクを高めることも報告されている。またアルコール飲料を飲む人にとっては脳出血のリスクを高めることもわかっている。

トマトに多く含まれる「リコピン」は、体に良いのか?食品としてのトマトは、それなりに体に良いが、その「成分」であるリコピンが体に良いというエビデンスはない。また、野菜の中で特にトマトが健康に良いというエビデンスもないため、今のところがんばってリコピンを摂取する必要はないだろう。


塩分と白い炭水化物の量が多い「日本食」が健康に良いというエビデンスは弱い。日本人の塩分摂取量は、ハンバーガーやピザなど「不健康な食事の代表」のような食事のアメリカ人よりも20%も多いのだ。塩分の取りすぎは高血圧を引き起こすが、高血圧を放置すると血管がダメージを受け、その結果として動脈硬化が起き、いずれは血管が詰まって脳卒中や心筋梗塞を引き起こすことになる。塩分の悪影響を軽減するには、①塩分摂取量を減らすか、②カリウムを多く含む食品を摂取することが求められる。

一方、オリーブオイルやナッツ類、魚などが中心の「地中海食」が健康に良いというエビデンスは複数ある。脳卒中、心筋梗塞による死亡リスクが低く、乳がんになる確率を大幅に減少させることも明らかになっている。地中海食は表1.の健康に良い5つの食品を取り入れ、健康に悪い3つの食品を避けた食事なのだ。


チョコレートに健康効果があると考えられるようになったのは、1940年代にハーバードの研究者らによる、パナマのサンブラス諸島に住む先住民族・クナ族の食習慣に関する調査だ。島に住むクナ族は、すりつぶしたカカオの実にトウモロコシを混ぜた飲み物を1日10杯ほど飲む。そこで、都会で現代的な食生活をしているクナ族出身者と比較したところ、島に住む原住民の方が血圧が低く、心臓病などの発生率も低いことがわかった。

チョコレートは、高血圧患者の血圧を下げる作用があることがわかっている他、心筋梗塞などによる死亡率を下げる、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくく血糖値が上がってしまう病態)を改善する、アルツハイマー病の発症率を下げる、脳卒中のリスクを下げることが示唆されている。しかし、チョコレートの種類によっては、糖質が多く含まれる。砂糖の量が少なく、カカオが多く含まれるものを選べば安全だろう。


「加工されていない野菜や果物」は、オリーブオイルやナッツと同等の健康メリットがある。重要なのは、ジュースやピューレなどの加工品は、加工の過程で健康上のメリットが失われてしまうということだ。16の観察研究をまとめたメタアナリシスによると、野菜や果物を食べれば食べるほど死亡率は減るものの、一日の摂取量が5単位(385〜400g)を超えると、死亡率は変わらなくなることがわかった。(※摂取量1単位は、野菜で小皿1杯、バナナで1/2本、りんごで小玉1つ。)心筋梗塞や脳卒中などの疾患による死亡率は、野菜・果物の摂取量が1単位増えると4%下がり、糖尿病の発症率も果物をほどほどに食べている人の方が低いと報告されている。つまり、野菜や果物は、心筋梗塞や脳卒中を予防する可能性が高いと考えて良いだろう。一方、野菜や果物の摂取量とガン(肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなど)との間に関係はないと考えられており、ガンの予防効果はあまり期待できない。

果物の中でも、ブルーベリーやブドウを食べている人ほど、特に糖尿病のリスクが低いことがわかっている。この研究は、2013年当時ハーバード公衆衛生大学院の研究員であった村木功氏(現在の所属は、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室)が英国医師会雑誌に発表したものだ。

多くの果物は糖尿病のリスクを下げるが、カンタロープメロン(赤肉種のマスクメロン)は糖尿病のリスクを上げる。血糖値に注意が必要な人は、メロンを避けた方が良さそうだ。


また、フルーツジュースを多く飲んでいる人ほど糖尿病のリスクが高いこともわかっている。果物には果糖が含まれるが、血糖値の上昇を抑える食物繊維も含まれる。一方、フルーツジュースには水溶性の食物繊維は含まれるが、不溶性の食物繊維の多くが取り除かれている。つまり、果糖のみを摂取していることになるので、血糖値が上昇して糖尿病のリスクが高まると考えられている。果物はたくさん摂り、フルーツジュースは避けることをおすすめする。

野菜ジュースが健康に良いというエビデンスはない。研究が行われていないためわからないというのが実情だ。しかし、野菜ジュースも同様に不溶性の食物繊維が除かれているため、野菜を積極的に摂取する方が良いだろう。


魚の摂取量が多い人ほど死亡リスクが低いことが明らかになっている。いくつかの研究は、魚に含まれる「オメガ3脂肪酸」の摂取は、心筋梗塞などの動脈硬化による病気を予防するという傾向を示している。また、魚をたくさん食べると乳がんや大腸がん、肺がんのリスクが下がることもわかっている。一方で、胃がんについてはリスクが下がらないことがわかっており、前立腺がんについては予防効果はないものの、ガンになった時の死亡リスクを下げる可能性があることがわかっている。

乳製品のとりすぎは前立腺がんや卵巣がんのリスクを高める可能性があることが過去の研究から示唆されていたが、2015年のメタアナリシスによって乳製品の摂取量が一日あたり400g増えるごとに、前立腺がんのリスクが7%上昇することが明らかになっている。

日本の各省庁が開示している健康的な食事に関する情報は、関連業界の政治的ロビイングの影響を受けている可能性があることを理解しておく必要がある。ガン発生との科学的関係の可能性があっても、「できるだけ摂取しないようにするのが良い」と推奨するのは政治的に難しいのだ。乳製品と卵巣がんの関係を示す強いエビデンスはないが、前立腺がんはどの乳製品をとってもリスクが上がることから、乳製品の摂取は控えめにするのが望ましい。


2015年10月、世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、「加工肉には発癌性があり、赤い肉はおそらく発がん性がある」と発表した。加工肉は、一日あたりの摂取量が50g(ホットドッグ1本、ベーコンスライス2枚)増えるごとに、大腸ガンのリスクは18%増加すると報告されている。そして赤い肉の場合、1日100g摂取するごとに大腸がんのリスクが17%増加するとされる。

このレポートに対する反対の声明が、世界中の精肉業界から発表された。日本でも日本食肉加工協会など国内3団体も共同で「加工肉に対する信頼を揺るがしかねない」との声明を出した。もちろん関連業界は売り上げに大きな影響を与えるので反対せざるを得ないのだろう。あらゆる手段を使って、赤い肉や加工肉は健康に悪いものではない、という印象を与えるマーケティングをした。中でも、日本人の摂取量は少ないため、この結果は当てはまらないという主張をしばしば目にするが、日本人が摂取している量であったら本当に問題ないのだろうか。

国立がんセンターの研究者が日本人8万人を対象に行った研究でも、赤い肉や加工肉の摂取量が多くなると、大腸がんのリスクが高くなる傾向が認められた。大腸がんは「結腸がん」と「直腸がん」に分けられるが、結腸がんでその影響が認められたのだ。女性においては、摂取量が一番多いグループは、一番少ないグループと比べて結腸がんのリスクが48%高かった。日本人の食事の西洋化の影響もあり、日本人の大腸がんは急激に増えている。食事の影響を大きく受ける大腸がんは、日本人にとって最も重要なガンの一つであると言っても過言ではない。

牛肉や豚肉などの赤い肉や、ハムやソーセージなどの加工肉は、大腸がんのリスクを上げるだけでなく、脳卒中や死亡率の上昇にもつながる体に悪い食品である。普段の食事では、できるだけ赤い肉や加工肉を減らして、魚や鶏肉を食べることをおすすめする。

卵の摂取量が多い人ほど、糖尿病や心不全のリスクが高く、糖尿病患者は心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高いことが報告されている。卵はあまり食べない方が良く、少なくとも1週間に6個までに抑えることが健康にとってベストだと私は考えている。ちなみに、卵の殻の色や黄身の色は、栄養とは関係がない。

「私は加工肉、赤い肉、白い炭水化物などは『体に良くない』と説明しているのであって、『食べるべきでない』と主張しているのではない。」健康だけが人生の目的ではないから、幸福度と健康を天秤にかけて、何を食べるか選択すべきだと思っている。しかし、毎日甘いものを少量食べると選択する場合でも、それを正当化するために「甘いものも少量であれば健康に影響はない」と解釈することはおすすめしない。科学的根拠を曲解することは、他の人にも間違った情報を与えてしまうリスクがあるからだ。


病気の人、子ども、妊婦にとっての「究極の食事」

病気の人、子ども、妊婦にとっての健康的な食事に関するエビデンスは残念ながら弱いが、わかっている範囲で説明する。

糖尿病の人にとっての「究極の食事」

糖尿病の治療の目的は、血糖値というデータを直すのではなく、糖尿病によって引き起こされる脳梗塞や腎臓病を防ぐことにある。糖尿病の患者さんは、炭水化物と糖分の摂取量を少なくするほど血糖値が良好になることが明らかになっている。ステーキなどの肉を食べても、血糖値はほとんど上がらない。炭水化物、糖質さえ我慢すればステーキでも何でも食べて良い、という指導をしている人たちがいるようだが、それは間違いである。血糖値は下がるかもしれないが、心筋梗塞や大腸がんなどのリスクが高まってしまうからだ。

糖尿病の人は腎臓が悪くない限り、白い炭水化物以外に制限食品はない。白い炭水化物を減らす代わりに、茶色い炭水化物の摂取量を増やすべきだろう。白米の代わりに玄米、うどんやラーメンを食べる代わりに蕎麦を食べることで、長期的に脳卒中やガンのリスクが下がることが期待できる。

高血圧の人は塩分を控えるべし

血圧が高い人にとっては塩分が大敵で、高血圧は長期的に腎臓病を引き起こす。家庭では、塩分を減らす代わりに、ダシを強めにしたり、レモンやシソなど香りの強いものを合わせると良い。コショウやトウガラシなどの辛味の強い食材も塩気の代わりになる。舌に刺激を与えることが、塩分制限の秘訣である。

腎臓病の人にとってはカリウム、タンパク質、塩分が大敵

慢性腎臓病とは、腎臓のろ過機能が低下して、体の中に老廃物が蓄積し様々な不調を起こす状態のことである。したがって慢性腎臓病の人にとっての「体に良い食事」は、健康な人にとってのそれとは異なる。

腎機能が低下した人は、野菜や果物に多く含まれるカリウムというミネラルの摂取に注意が必要だ。血中のカリウム濃度が高くなると、心臓が不具合を起こし、「心室細動」という命に関わる重篤な不整脈を引き起こしてしまう。

また、腎臓病の患者さんはタンパク質の摂取制限も必要になる。タンパク質の取りすぎは、タンパク質が代謝されて生じる「尿毒素」が蓄積することになるのだ。頭がぼーっとして、だるく感じたりする。透析患者さんの場合、やはりタンパク質を分解することで生じるリンというミネラルも体内に蓄積される。透析の機械はリンを十分に取り除くことができないのだ。リンが慢性的に蓄積していると、動脈硬化が引き起こされてしまう。リンは、無機リンという形で食品の保存料やコーラなどの炭酸飲料にも多く含まれるので注意が必要だ。

さらに、腎臓病の患者さんにとっては、塩分も大敵となる。塩分の摂取量が多いと血圧が高くなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がってしまうのだ。透析では、体に余分な水分や塩分も取り除くが、摂取量が多すぎると、1回の透析で取りきれなかったり、透析中に血圧低下を引き起こしてしまう。透析中にに血圧低下を起こす頻度が高い患者さんほど、脳卒中などのリスクが高いことが知られている。

高齢者は、白いタンパク質や赤身肉など、病気になるリスクを上げる食事を控えた方が良いものの、あまり細かい食事制限をせず、食べられるものをなるべく多く食べ、筋肉の維持や転倒のリスクを避けた方が良いという研究結果が集まってきている。

小児の肥満が社会問題化している。小児期の肥満は、大人になってから糖尿病、高血圧、心筋梗塞、脳卒中を起こす可能性が高いだけでなく、若年死との関係も示唆されている。小児期は、味覚が形成される時期でもあるが、甘いお菓子で育った子どもは、大人になっても果物よりお菓子を好むようになってしまう可能性がある。栄養のない不健康な食品(Empty calorie)でカロリーを摂取するのではなく、魚や鶏肉などの良質なたんぱく質、加工していない野菜や果物、茶色い炭水化物からとってほしい。親の責任は重大である。

妊婦さんにとって何よりも大事なのは、果物と野菜をたっぷり食べることだ。果物や野菜に多く含まれる「葉酸」は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるので必須である。特に妊娠初期が重要で、1日5単位(385〜400g)は食べて欲しい。

逆に、妊娠中は、食中毒や寄生虫感染を起こす可能性のある「生もの」は厳禁である。火の十分入っていない肉、生卵、半熟卵、カビで発酵させたチーズなども同様の理由から避けるべきである。生野菜にはトキソプラズマという猫のふんが原因の寄生虫が付いていることがあるので、生野菜はしっかり洗って食べるか、火を使って食べるようにして欲しい。トキソプラズマは土中にも存在するので、ガーデニングなどの土いじりも避けた方が良い。

一方、「妊婦が辛いものを食べると、生まれてくる子供が短気になる。」、「体が温まる食物は食べた方がよく、体を冷やす食べ物は妊娠中は避けた方が良い。」といったものは、科学的根拠のない都市伝説である。


本書のコラムには、インターネットを使って正しい情報を入手する方法を掲載している。本書では繰り返し、日本のテレビや健康に関する本で紹介されている情報の多くが間違っていると説明している。もし食事と健康に関する疑問があったら、ぜひ本書を手にとってみてはいかがだろう。

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