美と健康の真実を考える

Vol.2 江田 証『小腸を強くすれば病気にならない ─ 今、日本人に忍び寄る「SIBO」(小腸内細菌増殖症)から身を守れ!』2018年 インプレス

2019.06.14

江田証『小腸を強くすれば病気にならない──今、日本人に忍び寄る「SIBO」(小腸内細菌増殖症)から身を守れ!』(2018年)インプレス


レビュー

納豆などの発酵食品やヨーグルトを食べているのに、お腹の調子が良くならない、お腹にガスが溜まる、お腹が張って仕方がないという方、もしかしたらSIBO(小腸内細菌増殖症)かもしれません。

小腸に問題があると、狭心症や心筋梗塞のリスクが高まるばかりか、糖尿病や慢性腎臓病、膵臓の病気、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎などの皮膚の病気など、全身の疾患に関わることがわかってきました。

逆に小腸を健康に保つことで、生命活動のエネルギー発電所である「ミトコンドリア」が活性化して、元気がわいてくるといいます。

本書は日本で初めて小腸にスポットライトを当て、小腸をどうすれば元気にすることができるかを解説した書籍です。著者の江田証(えだあかし)氏(医学博士・江田クリニック医院長)は、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医で、米国消化器学会(AGA)インターナショナルメンバーを務めるカリスマ消化器専門医です。江田氏は、「本来あまり細菌がいないはずの小腸だが、近年、日本人の小腸内細菌が爆発的に増えている!」と警笛を鳴らしています。

お腹の不調に悩む人が増えつづける今日、「SIBO」(シーボ)という病気が現代人の小腸を襲っているのです。SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)は小腸の中で腸内細菌が爆発的に増えてしまう病気で、大腸にあるべき微生物が小腸の中に入り込み停滞して、本来の居場所である大腸に移動しないときに起こるといいます。

SIBOの症状は、「過敏性腸症候群」と酷似しており、過敏性腸症候群とみられていた患者の85%がSIBOだったという衝撃的な論文が発表されています。また、SIBOは高齢者になるほどリスクが高く、健康な高齢者の35%の人が罹患しているというデータもあります。

現在の医学では、体内の慢性的炎症は、老化を早めると言われていますが、SIBOの影響で小腸のびらんや潰瘍などの炎症が多いことが報告されているのです。

SIBOという病気は欧米ではかなり脚光を浴びていますが、日本の医師はまだその存在すら知らない人がほとんどだと江田氏は述べています。


ポイント1

昨今の腸内細菌ブームで、腸内フローラや大腸の健康には一躍脚光が当たっているが、もっと大切なことは「小腸の健康を保つ」こと。小腸が良くないと、狭心症や心筋梗塞にかかるリスクが高まり、糖尿病、慢性腎臓病、膵臓の病気、自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎などの皮膚の病気等、全身の病気に関わることがわかってきた。つまり「小腸を強くすれば病気にならない」といことだ。

ポイント2

現代人の小腸を襲っている危機、それは「SIBO(小腸内細菌増殖症)」という病気。腸内細菌が過剰増殖すると、小腸のびらんや潰瘍などの炎症が起き、食べたものはうまくエネルギーにならず、ミトコンドリアの働きすら悪くなる。つまり、老化を早め、様々な病気のリスクを高めることになる。

ポイント3

SIBOの予防や治療の要は、発酵性の糖質が少ない、「低FODMAP食」が重要。現代人の食卓は小腸で吸収が悪い糖質であふれている。SIBOの患者は、日本で普及している腸内細菌健康法の「発酵食品」や「水溶性食物繊維」はかえってお腹の調子を崩すことになる。


著者プロフィール

江田証(えだ・あかし)

1971年、栃木県に生まれる。医学博士。江田クリニック院長。

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。消化器系癌に関連するCDX2遺伝子がピロリ菌感染胃炎で発現していることを世界で初めて米国消化器学会で発表し、英文誌の巻頭論文として掲載。

毎日、国の内外から来院する200人近くの患者さんを胃内視鏡、大腸内視鏡で診察しているカリスマ消化器専門医。テレビ、雑誌などマスコミに頻繁に取り上げられ、深くて軽妙な解説に人気がある。

著書には『医者が患者に教えない病気の真実』(幻冬舎)、『パン・豆腐・ヨーグルト・りんごを食べてはいけません』(さくら舎)、『なんだかよくわからない「お腹の不調」はこの食事で治せる!』(PHP研究所)など多数ある。


本文要約

SIBO(小腸内細菌増殖症)とは、どのような病気なのでしょうか?!

正常な小腸の腸内細菌の数は、1万個程度ですが、SIBOではなんと10万個以上に爆発的に増加します。腸内細菌は、通常ガスが存在しない小腸で食べ物をエサにして大量のガスを発生させ、小腸を風船のようにパンパンに膨らませます。医師は小腸にガスが見られると、消化管の通過障害や腸閉塞、小腸炎などの病気を疑います。

ガスが過剰になると深刻な「鼓腸症」になり、痩せている人でも5ヶ月も過ぎた妊婦のような外観になってしまいます。腹痛が生じ、下痢または便秘、その両方を繰り返すこともあるのです。しかし、医師の間でもSIBOが小腸ガスの原因であることはあまり知られていないのが実態です。

ガスが小腸を通り過ぎると、小腸は縮みますが、膨らんだり縮んだりを繰り返すと粘膜の壁が薄くなり、穴が開きやすくなったり、消化吸収の機能が低下します。最大の免疫臓器である小腸が弱れば、感染症にかかりやすく、うつなどの精神疾患、ニキビ・湿疹、肌荒れ、むずむず足症候群、不眠、肥満、慢性的な鉄欠乏症貧血の原因にすらなるのです。

過剰に増えた腸内細菌は、体がビタミンB12などを吸収する前に横取りし、私たちの体と栄養を奪い合う「敵」になりえます。ビタミンB12は、赤血球やDNAの合成に関与しており、欠乏すると正常な造血ができない状態になり、貧血になってしまいます。また、ビタミンB12には神経細胞を健全に保つ働きがあり、欠乏するとシビレ、うつ、疲労感、記憶力を低下させます。一方、ビタミンB12の血液中の濃度が高い人ほど、認知症になりにくいというデータがあります。

SIBOでは、ビタミンE、D、Aの欠乏が生じることがあります。ビタミンEが欠乏すると、免疫系の弱体化、視力障害、筋肉の劣化につながります。ビタミンDの欠乏は、骨粗鬆症や免疫力の低下、感染症やガンのリスクを高め、ホルモンのトラブルを引き起こします。またビタミンAの欠乏は、夜盲症などの視力の低下や免疫系の弱体化をまねきます。

SIBOはアミノ酸やタンパク質の吸収障害を引き起こします。精神を安定させるホルモン、セロトニンはアミノ酸から作られ、安眠に必要なホルモン、メラトニンはそのセロトニンから作られます。つまり、SIBOによって、うつ症状や不眠症になりえるということです。

気分の変化は胃液の分泌に影響を与え、ストレスを感じると消化不良によって食欲が減退しますが、腸も脳に影響を与えていることが研究でわかっています。ダメージを負った腸は、脳に強いストレスを与え、メンタルバランスを崩すのです。そしてある種の自閉症には、腸内細菌の乱れが関係していることがわかっています。しかし、プロバイオティクスによる乳酸菌で腸内環境を整えることで、ストレスに耐性が生まれ、治療につながることがわかってきました。

脳と腸は密接な影響関係にあるため、ストレスや精神的・心理的トラブルは、SIBOを引き起こす原因にもなります。BDNF(脳由来神経栄養因子)は、脳の海馬などに存在する神経細胞の活性化やその増殖を促す物質ですが、腸内細菌をなくしてしまうと、このBDNFが発現しなくなります。また同様に、人間の情動をつかさどる扁桃体という部位でもBDNFは発現しなくなります。つまり、腸内細菌がいなくなると、記憶力の低下や、無感動・無感情になってしまう恐れがあるのです。

SIBO の患者は、腸粘膜の通りが良くなり過ぎて、本来通してはいけないものまで腸粘膜を通過させてしまう「腸粘膜の透過性の亢進」が起こります。これを「リーキーガット症候群(漏れる腸)」と呼びますが、細菌が作った毒素(LPS)や、未消化の栄養分まで通してしまうのです。人間の免疫システムは、これらを「異物」として認識し抗体を作ります。本来、抗体は外部から侵入する細菌やウイルスを攻撃するものです。しかし、このような異常事態が続くと、免疫システムは、自分の体の成分に対して、間違って攻撃するようになるのです。これが慢性関節リウマチや甲状腺炎、強皮症などの膠原病や自己免疫疾患です。膠原病がある人には、SIBOの罹患率が高いことがわかっています。

腸のトラブルは肌にも現れます。肌の健康を保つのに重要な栄養素は、亜鉛やマグネシウムで、亜鉛が不足すると肌は荒れ、アトピー性皮膚炎が起こり、アレルギー性鼻炎などの免疫異常、アレルギー症状も生じます。ビタミンEは肌の健康を保つのに重要ですが、ビタミンEの不足は腸内細菌が作り出す有害物質の「フェノール類」の影響を受けています。マグネシウムや鉄が不足すれば生理痛が悪化し、むずむず足症候群が発症するのです。

ロザケア(Rosacea)という「顔の赤みが見られる人」では、肌の健康な人に比べてSIBOにかかっている割合が10倍であるという統計結果が出ています。ロザケアの有名人といえば、クリントン元大統領や故ダイアナ妃ですが、故ダイアナ妃はかなりロザケアで悩んでいたようで、精神的にも鬱などのトラブルを抱えていたようです。

マグネシウムが不足するとプロゲステロンというホルモンが減少してしまい、子宮の収縮が強くなり、生理痛が酷くなります。チョコレートには、マグネシウムが大量に含まれています。女性が生理前にチョコレートを無性に食べたくなるのは、生理痛を抑えるために体が欲している理にかなった行動なのです。ところが、チョコレートには多くの糖分が入っており、SIBOの女性が食べると、糖が小腸のバクテリアのエサになり、これが大量のガスを発生させます。月経前に無性にチョコレートを食べたくなる月経前症候群の女性は、チョコレートを食べ過ぎるのをやめて、マグネシウムの多い食物を摂るか、マグネシウムのサプリメントをとったほうが安全です。


では、なぜSIBOになってしまうのでしょうか!?

SIBOの大きな原因のひとつが、小腸の運動力低下です。その大きな原因のひとつは、なんらかの全身性疾患で、その代表が糖尿病です。糖尿病になると、小腸や大腸などの消化管の動きが悪くなることがわかっています。また、パーキンソン病、甲状腺障害、急性腸炎のあと、膠原病、神経筋疾患(筋ジストロフィーなど)、アミロイドーシスなどの全身性の病気で腸の動きが悪くなります。

特に「パーキンソン病は腸の病気ではないか」と言われています。脳と腸の関係を切る手術をした人には、パーキンソン病になる人が少ないからです。腸内細菌が腸の中で起こす変化が脳に影響を与え、パーキンソン病の発症に関与していることが疑われているのです。パーキンソン病や認知症の人に便秘が多いのは、偶然ではありません。

大きなストレスや間食などの生活習慣も、小腸の動きを悪くします。また抗生物質の乱用や胃薬による胃酸過少、免疫力の低下、炭水化物の消化不良、食べ過ぎ、重金属が体に蓄積、大腸のバウヒン弁に障害がある、胆のう除去などの機能的な問題があるなどの原因によるものや、急性胃腸炎の後に発生したりします。

抗生物質の乱用は、腸内の善玉菌まで殺してしまうため、腸内細菌叢のバランスを崩し、SIBOにつながります。抗生物質とは、細菌の壁を壊すことで細菌を死滅させますが、ウイルスは細胞壁を持たないため、「ウイルスには効きません。」日本の現状では、風邪(ウイルス感染)にまでも抗生物質が処方されます。抗生物質の服用には慎重になる必要があります。

胃薬を服用しても胸焼けが改善しないばかりか、ゲップが多くなった、お腹が張った、吐き気がするなど、症状が悪化する人はSIBOの可能性があります。胃酸が減少することで、小腸の細菌を殺すことができなくなり、過剰な細菌が産生するガスによってSIBOが悪化していることがあります。適度な胃酸は、小腸に必要で、胸焼けは胃酸過多だけでなく、胃酸過少によっても引き起こされるのです。

腸管は、免疫グロブリンや抗菌性・抗ウイルス・抗真菌作用をもつ「ディフェンシン」というタンパクを含有する粘液を分泌することで、小腸内の細菌数をコントロールしています。しかし、この免疫力の低下でSIBOを発症するので、SIBOは「免疫不全症候群」とも結びつけられています。

何らかの原因で、鉛、アルミニウム、カドミウム、有機水銀、銀、ヒ素などの重金属が蓄積すると、腸管の動きが悪くなります。細菌が抗生物質やプロバイオティクスからのがれる隠れみの「バイオフィルム」は、これらの重金属を利用して作られるのです。

食中毒や急性胃腸炎などの感染症が原因でSIBOが発症することもよく知られているほか、大腸のバウヒン弁の閉まりが悪いことで、細菌が大腸から小腸へ逆流して発症します。この現象は「逆流性小腸炎(Backwash ileitiss : BWI)と呼ばれています。最近では、バウヒン弁の慢性的逆流によって小腸の粘膜に遺伝子の突然変異が起こり、「小腸がん」を起こすのではないかと考えられています。

胆嚢を除去すると、胆汁が十分に濃縮されず、細菌を殺菌する能力が落ち、細菌が増殖するので、SIBOには十分気をつける必要があります。


SIBOと関連する病気

SIBOに関連する病気に「クローン病」があります。クローン病は、口から直腸までの消化管のすべての部分に潰瘍やびらんなどの炎症がおこりえる難病で、未だ原因不明です。腹痛や下痢、血便などの症状がしつこく慢性的に続きます。 クローン病にかかりやすい部位は小腸で、クローン病にSIBOが合併する率は23〜34%ほどとされています。2005年、オーストラリアのモナッシュ大学のギブソンとシェパードは、クローン病の発症は小腸で細菌が増え、これによって発生するガスが関与しているのではないか、と仮説を立てています。西洋の食事にたくさん含まれる発酵性の炭水化物(高FODMAP食と呼びます)によって、クローン病が引き起こされているのではないかというのです。

発酵性の高い炭水化物である「高FODMAP食」を食べ過ぎることによって、吸収されにくい食べ物が大腸に届くようになると、大腸に存在する腸内細菌によって急激な発酵現象が起こるようになります。この発酵による大量のガスによって、大腸の壁は過度に引きのばされ、粘膜障害が起こり、小腸の細菌増殖とあいまってクローン病が発症するというのです。

日本ではクローン病の認定者数が1976年の128人だったのに対し、2013年には39,799人と300倍に急増しています。しかも、10代から20代の若者が数多く発症しています。これは「食生活の欧米化」が原因とも言われていますが、詳しい理由はわかっていませんでした。これだけ短期間に腸の病気が増えるということは、遺伝的なものでは説明がつきません。クローン病も潰瘍性大腸炎も、食事が大きな原因のひとつであることは間違いないでしょう。日本の100年前までの、魚介類や野菜中心の「低FODMAP食」生活だった頃には、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者はいなかったと言われています。

その他、SIBOと関連する病気には、「過敏性腸症候群」、「機能性ディスペプシア」、「セリアック病」などがあります。


SIBOの予防と改善のポイント

お腹の具合が悪い人は、腸をいったんいったん空にすることで改善することができます。東北大学では伝統的に過敏性腸症候群に対する心理療法として、入院のうえ「絶食療法」が保険適応にて行われており、成果を上げています。

「断食」を行うと脳に良い効果をもたらす「ケトン体」が放出されます。ケトン体は脳の異常興奮を抑えるため、不安や緊張の脳波であるベータ波が減り、精神を安定させるアルファ波が増え、多幸感が生じ、イライラが減り、さまざまなことに対する感謝の心が生じ、過敏性腸症候群が良くなります。断食は精神的に良い効果をもたらし、ケトン体は脳を保護し、「てんかん発作」も減らします。そしてSIBOの予防や改善には以下のような方法が紹介されています。

  1. 適度な胃酸を保つ
  2. 胆汁の分泌を良くする(座りっぱなしをやめる。立ち食いをする。座ってばかりいると胆汁の流れが悪くなる)
  3. 小腸の消化管運動(MMC)を良好に保つ
  4. 大腸から小腸への逆流を防ぐ
  5. 小腸内のバクテリアを飢えさせる
  6. 抗生物質を使う(天然のサプリメントを使う)
  7. 小腸のバクテリアにエサ(糖質)を与えない食事をとる(成分栄養)
  8. 免疫力を高めるサポートをする
  9. SIBOマッサージ

SIBOを予防する食事「低FODMAP食」

お腹の調子が悪い人は、以下の問題のある「糖質」を含んだ食事をできるだけ避ける必要があります。FODMAPとは、F(Fermentable):「発酵性」の糖質。O(Oligosaccharides):「オリゴ糖」には、ガラクトオリゴ糖(GOS)とフルクタンがあり、ガラクトオリゴ糖はレンズ豆、ひよこ豆などの豆類に含まれる。フルクタンは小麦やタマネギ、ニンニクなどに含まれる。D(Disaccharides):「二糖類」には乳糖があります。M(Monosaccharaides):「単糖類」にはフルクトースがります。フルクトース(果糖)は果実、ハチミツなどに含まれる。And。P(Polypls):「ポリオール」にはソルビトールやキシリトールなど、「〜オール」という名称の糖質です。ポリオールはマッシュルームやカリフラワーなどに含まれる。

これらの糖質は、腸内細菌にファーストフードを提供する、消化困難な糖質(短鎖炭水化物)なのです。「低FODMAP食」は、ハーバード大学、イエール大学、コロンビア大学、ローマ財団(過敏性腸症候群の権威)などがその効果を証明する論文を発表している科学的根拠の高い食事法です。日本消化器病学会も推奨しています。

小腸で消化しづらい糖質が大腸に届くと、大腸の富栄養化が起こり、異常発酵を引き起こし、過剰な水素ガスと過剰な短鎖脂肪酸が発生させます。短鎖脂肪酸は適量であれば肥満や動脈硬化を抑え、血糖値を安定させる良い効果がありますが、過剰になると「酸性便」の原因となり、腹部膨満感や下痢を引き起こすほか、右側の大腸の動きを麻痺させることが解明されています。

今日の食卓は小腸で吸収が悪い糖質にあふれ、現代人の小腸は疲れています。SIBOを食事で予防したり治療したりするうえでいちばん大切なことは、細菌が好んで食べる食品を避けることです。これは基本的にほとんどの炭水化物、とくに発酵性の炭水化物を避けることです。細菌が食べない唯一の炭水化物は不溶性食物繊維です。

アメリカの食生活は、「悲しい食事」です。砂糖たっぷりの食事、ジュース、ピザ、シリアル、パスタ、パンなど単純な炭水化物中心の食事をすると、細菌は炭水化物を大食いしてどんどん増え、異常増殖を招きます。グルテンや体に悪い油(オメガ6脂肪酸等)など、腸に炎症を起こしやすい食品だらけです。これがSADダイエット(Standard American Diet)です。皮肉にも「悲しい食事」と読めます。

この現代人が食べている典型的なSADダイエットは、腸に最悪な状況をもたらします。そのうえ吸収しにくい大量の添加物、過剰なストレス、運動不足。そんな現代人は当然ながら、腸に問題を抱えている人が増えています。その典型がSIBOなわけです。SIBOや過敏性腸症候群のお腹の不調で悩む日本人は、1700万人にのぼると推計されています。

小腸はこれまで医師にとっても内視鏡で観察することができない、ブラックボックスの臓器でした。SIBOという病気解明の背景には、ダブルバーン内視鏡とカプセル内視鏡という手段の開発があり、小腸の病気も正しく診断できるようになってきました。医療技術の進歩が大きく貢献しています。しかしSIBOは、いまだ日本において診断も治療も健康保険では保険適応になっていない疾患です。

予防が大切ですが、発酵食品やヨーグルトなどの乳製品、サプリメントを勧める「腸活」ブームが、万人に当てはまるものではないということを認識する必要があります。

図1.「高FODMAP/低FODMAP食品一覧表」を参照


SIBOを治療する7つのステップ

SIBOは新しい分野で、治療法も日々更新されています。最新の医学論文や治療家によって効果が確認されている情報による、7つのステップの概略を示します。

第一ステップ:「SIBO食」を実行する

SIBO食の中には、「低FODMAP食」やセリアック病治療に考案された「SCDダイエット(特定炭水化物ダイエット)」、ナターシャ・キャンベル・マクブライト医学博士が開発した「GAPSダイエット」(「すべての病気が腸に端を発している」という考え方に基づいています。)、SIBO研究の権威・マーク・ピメンテル教授(シダーズ・サイナイ医療センター)が考案した「シダーズ・サイナイ・ダイエット」が紹介されています。

第二ステップ:SIBOマッサージ

バウヒン弁の機能不全を改善するマッサージです。

第三ステップ:抗生物質を使う

抗生物質が近代で医学上の最大級の革新で、多くの伝染性疾患を根絶する助けとなり、現在でも多くの人命を救っていることは否定できない事実です。しかし、抗生物質を使うと、体に害を起こしている細菌を殺すことはできますが、同時に体に良い働きをしている善玉菌を殺してしまいます。「抗生物質=悪」と一般的にとらえられています。

一方、細菌の数を抗生物質で減らすことは有効であるという報告がされており、主に米国を含む海外で治療として行われています。望ましいのは、「リファキシミン(商品名:リフキシマ)」という抗生物質で、血液中に吸収されない難吸収性で、腸管の中の細菌だけを殺菌します。しかし、複数の研究によると、すべての患者の半数が一年以内に再発しており、長期的な治療効率は必ずしも良くありません。

第四ステップ:腸管運動促進剤を使う

腸の運動性を改善し維持することは、SIBOの治療において非常に重要です。

伝播性消化管収縮運動(MMC:Migrating Motor complex)は、胃や小腸の中の食べ物や細菌を大腸の方まで洗い流していく運動です。MMCが起こるのは、食事後2時間ほど経ってからですから、小腸の動きを良くするには、「間食」を止めるべきだということです。SIBOを撃退し、小腸を健康に保つためには、何も食べない時間を(少なくとも3時間45分)作ることが必要なのです。

第五ステップ:小腸の中の細菌を飢えさせる(エレメンタルダイエット)

「成分栄養剤(エレメンタルダイエット)」を飲むと、細菌がそれを食べる前に速やかに小腸から血液中に吸収されてしまい、細菌に利用されるスキを与えません。成分栄養剤は、アミノ酸を中心とした消化をほとんど必要としない成分で作られた、きわめて吸収のよい栄養剤です。このステップの目的は、「小腸内の細菌を飢えさせ全滅させること」なのです。

第六ステップ:天然由来の抗菌作用のある成分をとる

ニンニクは「天然の抗がん剤」として認定されるほど、自然な抗菌作用を持つことがわかっています。米国国立がん研究センターは、ガンを予防しうる食品を列挙した「デザイナーズフーズピラミッド」を発表していますが、そのトップがニンニクなのです。ニンニクのように、様々な食品に細菌を抑える効果が期待される食品が存在します。そのような食品を利用するのです。

図2.「デザイナーズフーズピラミッド」を参照

第七ステップ:再発を防ぐ

SIBOの治療で一番厄介なは、再発率が高いことです。抗生物質の治療後に「プロバイオティクス」をとる、腸管の運動機能を保つ、胃酸を適度に保つ、小腸を癒す、リーキーガット症候群を改善するために、オメガ3を積極的にとり、オメガ6を避ける、炎症を起こす食品を避け、抗酸化作用のある食品を食べるなどが大切です。


いろいろ試してみてもお腹の張りや、便秘や下痢がなかなか解消されないとお悩みの方は、是非本書を手にとってみてはいかがでしょうか。江田氏は「本当に大切なものは、目に見えない」Le plus important est invisibleと、サン・テグジュペリの『星の王子さま』の一文で締めくくっています。



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