美と健康の真実を考える

Vol.1 光岡知足『最新版 老化は腸で止められた』2014年 青春出版社

2019.05.31

光岡知足『最新版老化は腸で止められた』2014年 青春出版社


レビュー

腸が健康でないと、体内老化が進みやすく、病気にかかりやすくなる。腸には老化や病気から体を守る「免疫機能」を担う免疫細胞の7割以上が集中している。腸内環境を作る主役が「腸内細菌」だが、腸内フローラが荒れた状態になると、増殖した腐敗菌(悪玉菌)の作用によって、「腸内腐敗」を引き起こし、大量の有害物質が発生する。この有害物質が血液によって全身に運ばれ、さまざまな病気や老化症状をもたらすことになる。

こう語るのは、世界に先駆けて「腸内細菌学」を樹立し、腸内細菌学のパイオニアで世界的な権威、東京大学名誉教授の光岡知足氏だ。今日ではポピュラーに使われるようになった「善玉菌」や「悪玉菌」、「日和見菌」と命名したのも光岡氏である。

本書は、腸内細菌研究をもとに、免疫のカギを握る「腸内フローラ(マイクロバイオーム)」を改善し、腸から体内老化を食い止める方法を紹介している。今日、私たちの食生活は欧米化し、「高タンパク」「高脂肪」「低食物繊維」の食事に変化した。更には「高糖質」のファーストフードや清涼飲料水、抗生物質や遺伝子組換(GMO)飼料によって飼育された牛や豚などの食肉に囲まれている。

光岡氏は、健康や外見の若々しさを望むなら、「まず、腸をきれいにすることだ」と言及している。外敵が侵入する最前線に配備され、免疫のカギを握る腸内細菌の働きを知ることは、美容やアンチエイジング、健康法を実践するうえで、ファーストステップとなる必読書と言えるだろう。


著者プロフィール

光岡知足(みつおかともたり)

東京大学名誉教授。農学博士。1930年、千葉県市川市生まれ。東京大学農学部卒業。同大学院博士課程修了。理化学研究所主任研究員、東京大学農学部教授、日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)教授を歴任。専門は細菌分類学、微生物生態学。腸内フローラの系統的研究により、「腸内細菌学」という新しい学問を世界に先駆けて樹立したこの分野のパイオニアで、ビフィズス菌などの腸内細菌研究の世界的権威。「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の名づけ親としても知られる。日本農学賞、科学技術長官賞、日本学士院賞、メチニコフ賞などを受賞。主な著書に『腸内細菌の話』『健康長寿のための食生活』(以上、岩波書店)、『人の健康は腸内細菌で決まる!』(技術評論社)など多数ある。


ポイント1

善玉菌が腸内細菌全体の20%を維持し、腸内腐敗を予防・改善すれば、100歳を過ぎても健康に生きることは不可能ではない。

ポイント2

肉の食べ過ぎや、お酒の飲み過ぎ、体力の低下、睡眠不足、風邪をひきやすい、トイレの時間が長い、肌荒れや吹き出物、気分が沈みがちなどの症例に心当たりがあれば、腸内の老化が進んでいる可能性が高い。

ポイント3

善玉菌の代表・ビフィズス菌を増やすことが、美容や健康のための絶対条件。


腸内腐敗が引き起こす老化と病気

健康な人の腸内フローラは、善玉菌が腸内細菌全体の約20%で、これを維持できれば、100歳を過ぎても健康に生きることは不可能ではない。細菌は、人間の体のいたるところに常在しているが、腸内には100種類以上、100兆個の天文学的数字の細菌が棲息している。善玉菌の代表格はビフィズス菌で、老化や体の変調をもたらす悪玉菌の代表格は、ウェルシュ菌や大腸菌だ。これらの細菌たちがお花畑のように集まってつくる腸内フローラは、あなたの生活習慣や生き方によって日々変化し、宿主であるあなたの健康を大きく左右する。

体がだるくてやる気が起きない、休んでも疲れが取れない、風邪をひきやすい、まだ40代なのに50歳過ぎに見られてしまうという人。そんな人の腸の中は、惨憺たる状況だと思った方がよい。

(表1.善玉菌・悪玉菌・日和見菌とは)

体調が悪くなるのは、ビフィズス菌が減少して、悪玉菌の勢力が優勢になったときだ。「疲れ」「ダルい」「風邪をひきやすい」は初期段階だが、放置すれば便秘や下痢、さらには胃がんや大腸ガンといった重大な疾患をもたらすということを、しっかり認識しなければならない。

(※表2. 腸内細菌のバランスが病気に直結していた)

生まれたばかりの赤ちゃんの腸内は、細菌がいないか、ごくわずか。しかし次第にさまざまな細菌が増殖し、便から大腸菌や、腸球菌、クロストリジウム、ブドウ球菌などが検出されるようになる。

生後3〜4日目になると、乳酸菌の一種のビフィズス菌が出現し、乳酸と酢酸を作り、その作用によって腐敗菌である大腸菌の活動が抑えられている。母乳やミルクしか飲んでいない赤ちゃんの便のにおいは、まったく臭くなく、ヨーグルトのような酸っぱいにおいがする。色は黄色っぽく、ビフィズス菌が優勢で、腸内が非常に安定していることの証明だ。

ところが離乳期に近くなり、成人の食物に近いものを食べるようになると、腐敗菌が勢力を増長させ、バクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性レンサ球菌などの嫌気性菌群が出現する。

女性に多い腸内トラブルの「便秘」は、つきつめれば腸内細菌の仕業だ。腸内温度が37〜38度の腸内に便が長く留まっている状態は、炎天下に生ゴミを放置しているのと同じ。放置された便は、腸内細菌の働きによって腐敗(腸内腐敗)し、有毒ガスや有毒物質を発生させる。

腸内に発生した有毒物質は、免疫器官である腸管自体に直接障害を与え、一部は腸管から血液中に吸収されて全身に運ばれ、各臓器や器官に悪影響を及ぼす。

肌にでれば、肌荒れや吹き出物を、自律神経に影響すれば、イライラや不眠症状、頭痛や肩こりにまでつながったりもする。免疫系に影響すれば、大腸ガンなどの発ガンリスクを高めるとも言われているのだ。

健康な人の腸内に棲みついている細菌の集団は「正常腸内フローラ」と呼ばれ、「定住菌」と2〜3日で姿を消す「通過菌」に分けられる。ビフィズス菌などの定住菌は、食物と一緒に入り込んだ「病原菌」が少量であれば、体外に排出する。しかし、病原菌が大量に押し寄せてくると、定住菌はすみに追いやられ、腸内フローラのバランスが崩れるというわけだ。

腸内で発生した有害物質は、便秘や下痢、肌荒れ、発育障害、肝臓障害、動脈硬化、高血圧を引き起こす。中には発ガン物質を産生するものや、免疫細胞である白血球を暴走させ、その炎症作用で自己免疫疾患を引き起こすなど、さまざまな病気や老化を引き起こす要因なのだ。

では、腸内細菌のどんな働きで、私たち宿主の老化を早めたり病気を引き起こしたりするのだろうか?

もともと少数派の悪玉菌だが、わずかに増えるだけで腸内フローラは悪化する。そして腸内に棲む大腸菌やウェルシュ菌、ブドウ球菌などが、タンパク質を腐敗させ、アンモニア、アミン、フェノール、インドール、スカトール、硫化水素といった有害物質を生成することが明らかになっている。

まず、タンパク質が消化されてアミノ酸になり、腸内細菌の脱炭酸酵素の働きによって、各種のアミン類ができる。

アルギニン、オルニチン、プロリンからは、プトレシンを経てプロリジンになり、リジンからはカダベリンを経てジメチルアミンができる。これらの各種アミンが実は、「強い発ガン物質として知られるニトロソアミン」の原料になるのだ。

この中でアルギニン、オルニチン、リジンはとくに動物性タンパク質に多く含まれる。アルギニンとオルニチンは動物の骨や軟骨、皮、腱などのゼラチンにも多く含まれ、リジンは牛肉や魚肉などの肉類のアミノ酸の中でも最も多く含有されているものなのだ。

脂肪をとると、脂肪の吸収を助ける胆汁が分泌される。この胆汁に含まれる胆汁酸は、腸内細菌の働きで「二次胆汁酸」という発がん性や発ガン促進作用のある、極めて有毒な化合物に変えられる。つまり脂肪を摂り過ぎると、大腸ガンのリスクを高めるということだ。

腸の老化には、毎日の食事の内容が大きく関わっているが、現代の日本人の食生活は、自ら進んで腸内老化を進行させているかのようだ。食の欧米化で、腸内腐敗を増殖させる肉類や脂肪、砂糖のような消化しやすい糖質を多く摂る人が増え、食物繊維や発酵商品を摂る人が少なくなってきた。

近年、日本人の死亡率で「大腸ガン」が急増しているが、さまざまな研究で「欧米型食事(洋食)」と密接な関係性があることが明らかになっている。

(表3. 悪玉菌が発ガン物質をつくるメカニズム)


こんな症状に要注意

年齢とともにビフィズス菌は、かなり減少する。なんと老年期では10人に3人の割合でビフィズス菌をまったく持っていない。逆に悪玉菌の代表格の大腸菌とウェルシュ菌が増えてくる。ウェルシュ菌は、腸内のタンパク質を分解・腐敗させ、アンモニア、アミン、フェノール、インドール、スカトール、硫化水素といった有害物質を生成するが、実はこれらの物質は強い臭気を放つのが特徴だ。

つまり、便やオナラが「臭い」ということは、「体が悪い」ということなのだ。有害物質が腸内で大量発生している証拠に他ならない。また実際の年齢は30〜40代でも、腸内年齢は60代で、見た目も老け込んでいるということも十分考えられるのだ。

腸内フローラの状態は、ストレスによっても変化する。過酷なストレスが続くと、腸内環境は悪玉菌優勢の状態に変化するのだ。NASA(米航空宇宙局)のホールド博士らによる、1976年の有人宇宙飛行(スカイラブ計画)に関わる実験では、「不安」という精神的ストレスにさらされると、腸内の悪玉菌が増加することが解った。

同じくアメリカの話だが、「夫婦ゲンカの末に、妻が夫を半日監禁したあと、ピストルで射殺した事件で、その妻の腸内フローラを調べたところ、悪玉菌がいっぱいだった」という報告もある。

光岡氏自身も、自衛隊のレンジャー部隊で働く若者たちの腸内フローラの変化を調査したことがあると言う。「訓練に入る前は一般の若者と大差ない状態だったのが、2週間の過酷な訓練を終えた後で調べてみると、老人のそれを思わせるような悪玉菌優勢の状態に変化していた」と言うのだ。

理想的な便の色は黄色だが、発酵食品や食物繊維を多く摂る健康な大人の場合は、細菌の働きで発酵が促進され酸性に傾き、黄色みがやや強い黄褐色になる。逆に、肉類など動物性脂肪やタンパク質だけをたくさん摂ると、腸内で腐敗が進みアルカリ性に傾き、便は茶褐色〜黒褐色になる。また、便秘をすると腸内の腐敗がさらに進んで、かなり黒ずんだ褐色になる。

なお、どす黒い便、真っ黒な便というのは、胃や腸のどこかで出血していると考えられ、至急医師の診断を仰ぐ必要がある。


多彩なビフィズス菌の働き

光岡氏によれば、健康のためには「ビフィズス菌が腸内に多いこと」が絶対条件とのことだが、ではビフィズス菌の働きとはどの様なものなのだろうか?

ビフィズス菌は乳酸や酢酸(短鎖脂肪酸)を作り出し、病原菌の増殖を抑え、病原菌が体内に侵入してきても感染を防ぐ働きがある。

ビフィズス菌は腸内腐敗を抑え、病気や老化を防ぐ。

ビフィズス菌は、ビタミンB1、B2、B6、B12、K、ニコチン酸、葉酸などを体内で作り出すため、腸のぜん動運動を促進し、便通がよくなる他、下痢の予防にも役立つ。

ビフィズス菌には体の免疫機能を刺激して高める物質が含まれていることが明らかになっている。また、腸内のビフィズス菌も、その一部は自己融解して、菌体成分が吸収され、免疫刺激に役立っていると考えられている。

ビフィズス菌は、ある種のニトロソアミンを分解することが明らかになっており、ガンの予防剤としても期待されている。

食物として取り入れられたり腸内でできた有害物質が、ビフィズス菌の菌体に吸着されて、そのまま排泄される。

血液の中にコレステロールがたまると、動脈硬化を引き起こし、ひいては心臓病の引き金になるが、ビフィズス菌には、この血中コレステロールを下げる働きがある。


知らないうちに腸にダメージを与える悪習慣

スタミナ料理・コンビニ食を選んでいないだろうか?肉の食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎは腸年齢を老け込ませる。とくに動物性脂肪は大腸ガンと密接な関連性を持っている。

疲れが抜けきらないことはないだろうか?体力低下は「年のせい」ではなく、腸内環境の悪化が原因かも….

知らず知らず睡眠不足になっていないだろうか?寝不足は仕事の能率だけでなく、腸の働きにも悪影響を及ぼす。

風邪をひきやすくないだろうか?腸内環境が悪化すると、免疫力が落ち、ウイルスや細菌に感染しやすくなる。

「トイレの時間が長い」と言われていないだろうか?便座に座ったら小ぶりのバナナ状の便が2〜3本。時間にすると、トイレに入ってから出るまで、わずか2〜3分が理想的。「トイレが長い」は腸内赤信号。

(表4. 便秘の種類が違えば解消法も違う)

本書の後半では、「36時間で一変!体の中から若返る腸内クリーニング法」と題して、具体的に腸で老化を止める効果的な食事や快便の工夫、運動メニューなどが掲載されている。スローライフで、美と健康を目指す読者の皆さんには、おおいに活用して頂ける内容だ。

(表5. 食物繊維含有量)


 

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